私情協ニュース1

社団法人 私立大学情報教育協会
第19回事務システム研修会開催される



 今年度の事務システム研修会は、A日程(平成12年10月11日−13日)、B日程(平成12年10月18日−20日)の2回に分けて、グランドホテル浜松にて開催された。
 今年度は、「学園情報(IT)化の鍵となる職員の意識改革」をメインテーマに掲げ、学内の基幹業務システムと業務を横断したテーマについて様々な切り口からグループを設定し討議を行った。
 従来の大学における事務システムは、どちらかというと管理系のデータ処理に主眼が置かれていた。しかし、近年ではインターネットを初めとしたネットワーク技術を背景に情報共有や情報サービスを提供する領域へ業務の拡大がなされている。そこで、この研修会では個々のシステムの具体的な内容、問題解決の手法を理解するに止まらず、大学全体の情報システムについて今後の在り方を探ることとした。
 研修会をより有意義に進めるために、グループ討議に先立ち「21世紀への大学創造と職員の意識改革」をテーマに、孫福 弘氏(慶應義塾大学塾監局長)による基調講演を行った。21世紀を目前に大学を取り巻く環境が時々刻々変化している中で、多くの大学が大学改革に取り組んでいる。大学改革は取りも直さず社会の要請に応えることに他ならない。講演の中で孫福氏は、職員の果たす役割は大きく、既成概念を取り払い、「事務」「事務屋」からの脱皮を図り、ビジョン形成ができ、戦略思考を持ち政策提言でできるプロフェッショナルへの意識転換が必要であり、全体的視野と政策的視点を持つ専門家集団であれ、と熱弁を振るわれた。
 これを受けた形で、大学改革を推し進めるには取り分け職員の役割は大きく、そのためには職員の意識改革が必要不可欠であるとの共通認識を持ち、グループ討議に臨んだ。各グループでは、単にテクニカルな話題に終始することなく、局面局面で、基調講演を踏まえた上で、あるべき姿のヒントを見出せる積極的な議論の場となり、本研修運営委員会がねらいとしていた研修会の形に近づいたと考えられる。


A−1 入学業務システム

(13大学、賛助会員2社、15名)

 大学は受験者数の減少に伴い、入学業務の経費節減、入試業務の合理化、合理的な入学業務システム構築の必要性に直面している。
 本グループでは、このような大学を取り巻く厳しい現状の中で、多様化する入試制度への対応や入学業務システムの諸問題について、問題解決の方策を模索検討した。
 研修討議については、4大学のミニ事例発表と、参加者事前レポートの問題点項目、情報交換希望項目を基に行った。入試回数の増加や入試形態の多様化により、システム開発・修正・運用コストの増大、志願票受付締め切りから入学試験実施・合格発表までの処理期間が短くなり、入試業務の効率化・合理化が必要になってきていることなど、研修参加者の問題意識が強く出ていた。


A−2 学生個人情報の管理と活用

(29大学、賛助会員1社、34名)

 本コースでは、「学生個人情報の合理的な管理と活用〜卒業生、校友管理を見据えて」をテーマとして、在学生・卒業生の個人情報の共有化と、効果的な活用方法について討議を行った。また、個人情報の取り扱い、情報セキュリティ等の問題についても、規程面、技術面などで取るべき対応策を意見交換し、望ましい情報共有、情報管理のあり方を模索した。
 事例紹介は、獨協大学の新情報システム(Webを利用した職員、教員および学生との情報共有)、甲南大学の「学生情報の管理と活用」(既存の情報資源を活用した情報共有)、福岡大学の「卒業生情報の同窓会との共同運営」(卒業生情報の管理と活用)の3大学から行われ、これらを参考に活発な討議をした。
 統一テーマ「学園情報(IT)化の鍵となる職員の意識改革」の徹底と、新しい情報環境の中では、学籍管理と活用の問題と表裏一体となった個人情報保護と開示の問題が非常に重要な意味を持つことについても、認識を高めることができた。


A―3 カリキュラム・時間割管理とシラバスデーターベース

(36大学、賛助会員2社、38名)

 この研修会を通して、参加者はシラバスが持つべき情報項目の拡大とそのデータベース化、そしてネットワークを通しての開示が、学生のキャンパスライフや教職員の活動に大きな力になることを認識した。シラバス情報を大学構成員が共有することによるメリットは大きく、単なる授業概要や予定にとどまらず、利用教材、資料、書籍、授業の進め方、事前学習、レポート、課題、利用施設、教員プロフィール、授業評価など、従来のシラバスに盛り込まれるべき関連情報項目は数多く学内に存在し、それらを整理し的確に見やすく活用しやすい形で開示することは、今求められている大学の活動そのものの情報開示の一つの在り方であるという理解が得られた。
 すなわち、ネットワークを通して、企業の就職担当者、父母、高校の後輩、地域などへ大学の授業の一旦をシラバスで開示することの意味は重要で、その影響は大きく、大学の評価につながる貴重な情報であることを理解した。
 さらに、シラバスは時間割、カリキュラム、履修登録、施設情報、教員情報などと一体のものであり、教学事務がこれら情報を総合的に捉え整合性のとれたデータベースとするには教職員の意識改革、教学事務改善、大学事務全体の改革が必須であるとの結論を得た。


A−4 履修登録と成績管理システム

(56大学、賛助会員3社、70名)

 大学審議会答申の「多様な学習需要に対応する柔軟化・弾力化−学生の主体的学習意欲とその成果の積極的評価−」で指摘されているように、今後の大学では、セメスター制、大学間相互履修、他地点遠隔講義など、カリキュラムの多様化が進行すると考えられ、それに伴い、履修登録、成績管理のシステムは、煩雑化する業務を柔軟に処理できるように改善する必要がある。本グループでは、今後、ますます多様化するカリキュラムに対して、教学システムはどのような点に留意しなければならないのかを考え、履修登録、授業支援、成績登録、単位認定、成績通知書等、一連のシステムに内在する問題点を整理し、理想的な教務システムを模索するために、四つのミニ事例発表後、2グループに分かれて討議を行った。グループ討議ではWebによる履修登録や成績登録方法を中心に活発な討議が行われた。


A−5 奨学金管理システム

(18大学・賛助会員2社、21名)

 学生指導にも重点を置いた奨学金システムのあり方とその活用方法について討議し、これからの奨学金システムの望ましい方向性、新たな活用方法を見いだすことを目標とした。
 3大学のミニ事例発表を通じて、各大学の現状や問題点について討議した。大学間での進み方の差はあるものの、システム化・情報の電子化は進んでおり、情報管理、作業軽減など効果も出ている。しかし、情報の共有・他業務での利用・情報活用といった面で進んだ大学は少ないように思われる。今後、情報の共有化や情報活用能力を高め、奨学金管理システムから、学生支援システムへ変わっていく必要があることを認識した。


A−6 インターネット時代の就職支援業務

(32大学、35名)

 就職協定の廃止、経済の停滞という社会的情勢に加え、インターネットによるリクルート情報の交換が拡大する環境の中で、各大学の就職支援はどのように情報環境を整え、業務を高度化すべきか討議を進めた。
 参加者は、ほとんどが就職業務担当者であったが、すでに就職情報の Webページを稼動させていたり、新しい試みを手掛けているという現実的な経験や課題を抱えている参加者がほとんどであり、活発な事例紹介や課題提起が行われた。
 就職支援業務は、卒業生を社会に送り出す立場から、大学の顔としての職務意識を持つ必要があるとともに、近年は、 「キャリア」や「インターンシップ」というキーワードのもとで、学生の入学から学外活動なども含めた支援が必要になってきている。
 社会に役立つ学生を送り出すという目標のため、高度な情報の収集、学生との双方向の情報交換など、大学の就職支援のための情報環境向上策について討議を行った。


A−7 学術情報サービスシステム

(29大学、賛助会員1社、32名)

 今回は「学術情報システムの変革を目指して」というテーマで実施した。コンピュータによる学習環境の場を図書館に取り入れた国士舘大学、ホームページを情報提供の場だけではなく、電子ジャーナル、外部データベースのアクセス管理機能へ発展させた東京女子医科大学、電子図書館への取り組みと国立情報学研究所の提供する多言語システムに対応した福岡大学からミニ事例発表をいただきながら、学術情報システムがどのような方向に変化していくのか論議を交わした。海外の電子ジャーナルの急速な普及、コンピュータを利用した学習環境の変化によって、今までの学術情報のあり方が変化し、大きな変化への対応が求めらている。独立した建物であることや外部との連携、市民の利用など、学術情報を提供する場としての可能性を参加校の取り組みを通して、討議することができた。


B−8 人事・給与システム

(23大学・賛助会員1社 27名)

 情報通信技術の進展に対応し、業務の一元化と効率化、人材活用のための情報分析などの問題点について、他業務との連携を考慮したシステム構築と改善について討議を行った。
 人事・給与システムとしてトータル的に運用している大学は、まだ半ばのようであるが、これから人事・給与システムを構築していく上で情報の共有化、個人情報の開示、そのためのセキュリティ問題などについて、大学の規模による温度差はあるが、重要な問題であることを認識し、システム構築にあたっては、何を目的として整備するのかを、構築段階から構想を持って取り組むことが重要であることを確認した。


B−9 管財・施設管理システム

(29大学、賛助会員3社、35名)

 本テーマは今年度初めて設定され、固定資産および物品の調達ならびに管理に関するシステムのあり方について討議した。また、大学の全施設を経営的視点から総合的に企画・管理・活用することが極めて重要になってきている状況を重視して、LCM(ライフサイクルマネジメント)、FM(ファシリティマネジメント)の概念について触れ、人材育成の場としての施設面からの対応についても合わせて討議した。進行は日程の前半を参加大学の事例紹介を中心に討議され、後半は小グループを編成していくつかのテーマについて討議した。特に今回参加された方々でLCM並びにFMの概念を初めて知る人も多く、建物の生涯を考えた長期的・総合的な視点からのシステム開発の必要性が確認された。


B−10 ホームページを利用した戦略広報システム

(31大学、1短期大学、賛助会員1社、40名)

 本グループは、メインテーマとして「転換期を迎えるホームページ広報」を取り上げ、ホームページ広報の持つ効果と限界についてもう一度見直す時期という意識から、様々な論点について討議を行った。そして今回は参加者全員が、小グループに分かれて同一の設定条件の下で、対象となる問題について討議を行う形式をとった。かなり活発な討議がなされていた。
 まず、ホームページのリニューアルにあたって重要と思われる項目について討議が行われた。各グループ表現は微妙に異なるが、目的、伝達対象、管理運営体制作り、担当者のスキル、コンテンツのデザイン、新しい技術、予算といった要因が挙げられていた。特筆すべきはマーケティング(視聴者の立場からの視点)をすべてのグループが項目に選んでいたことである。ミニ事例紹介で述べられたように広報の意味を、本来のPR(パブリック・リレーション)に留まらず、広告(アドバタイジング)として捉えている。私学の立場からこの意識は最重要のものであろう。
 次に、トップページに置くべきリンクベスト10について討議がなされた。多かれ少なかれ各グループとも、初回アクセス者とリピーターを配慮したユーザー別誘導型ページの特徴と部門・部署別ページの特徴両者を考慮したページ構成を考えているように思える。これも重要な項目であろう。検索エンジンのリンクはすべてのグループがその必要性を指摘している。
 そして、リスクマネジメントについては、すべての起こりうるリスクに対し、学外、学内のケースで討議されている。これらの解決には、迅速かつ慎重に対処するための委員会組織の存在、情報収集・調査能力、ソフト・ハード面、技術に対するバックアップ、フォローアップのための支援組織、そしてリスクマネジメント・マニュアルの作成の必要が窺がえた。
 日頃、直接間接的にホームページ広報に関係する参加者が多いこともあり、説得力のある回答であった。


B−11 学園の戦略的情報化計画

(18大学、賛助会員1社、20名)

 教育研究面での情報技術の活用がますます進む中で、大学の教育は、地球的な規模での広がり(グローバル化)、および、教室を超えた遠隔授業の展開(オープン化)、教材の電子化と共有化、ネットワークによる教員と学生のコミュニケーション(バーチャルオフィスアワー)、生涯学習への対応など、これまで経験しないような新しい展開が要請されている。
 このような変化を踏まえて、大学の情報化戦略をイメージするには、現在の組織化や人事制度を超えて考えることが、より現実に対する問題点を明確にできることから、今回は、メインテーマを「情報化推進組識と人材育成」として行った。
 討議はまず、早稲田大学から「早稲田大学における情報化推進のための人材育成」と題して、専任職員全員の情報スキルの底上げを目指した情報化スキルアップ研修の実施事例発表があり、その後2グループに分かれグループ討議を行った。情報を推進するための意識改革とは何か、情報化を阻害する要因は何か、情報化リーダや研修制度の問題点、アウトソーシング、研究職員制度、情報化による余暇時間の有効利用、などについて議論が交わされた。


B−12 学園統合システムの構築・運用

(17大学・賛助会員1社、18名)

 学園の事務システムが一通り構築され、運用されているが、時代の要請として情報の開示などが要求されている中、また、情報テクノロジーの飛躍的な進歩の中で、事務システムの再構築のときを迎えているのが現状である。本コースでは、そのような環境の下で、「情報の共有」を一つのキーワードとして全学的な基幹業務や各職場の個別業務を運用するにあたり、有効となる統合情報システムの構築に向けてどうあるべきかを討議した。
 メインテーマである「統合化が目指すもの」は、まさに業務改革であり、そして職員個々の意識改革に他ならないとの共通認識を得た。情報技術が進歩し、データの共有が要求され、情報を有効に活用するための統合情報システムが必要である。これを実現するためには、現場の知識の重要性を意識し、組織内での横の連絡を密にとりながら、部署間の垣根を越え推進しなくてはならない、との結論に達した。


B-13 イントラネットによる業務の効率化

(25大学、賛助会員1社、26名)

 全員に事例発表をしてもらうことを予定して募集した。1大学あたり十分な発表時間がとれないにもかかわらず、多くの大学が内容のある事例発表を行い、深い討議を進めるための良い素材となった。
 各グループの討議内容の報告を受けて以下の方向性が示された。

 イントラネット・グループウェアを推進していく上でも、職員の意識改革は避けて通れないところである。当グループでは、自らが考え、自らが方向性を見い出すことができるところまで討議ができたため、非常に有意義な研修会となった。

文責:研修運営委員会


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