私情協ニュース2

第9回短期大学部門検討会議開催される



 第9回短期大学部門検討会議は、平成13年6月23日(土)に追手門学院大学において開催された。

1.情報機器活用教育の事例紹介

 5短期大学から「短期大学教育の情報化に関連した情報機器を活用した教育の展開例」について紹介があった。


(1)「情報機器を活用した授業−文学を中心に−」
大阪青山短期大学 三木 慰子氏

 情報機器の本格的活用は97年一般教養科目の文学の講義からである。講義内容は、高校でも馴染みのある「奥の細道」を扱った。
 情報機器活用という点からは二つある。一つは、芭蕉や近世の旅事情を扱ったビデオを見せたり、ホームページからの情報提供プリントの配布する。もう一つは、コンピュータ室を利用してインターネット検索、その情報を基にしてさらに文献調査を図書館でも行う。図書館に行って様々な本を開き学ぶ姿勢と、他の本にも出会えるということを忘れてほしくない。そのこととインターネット検索などが、うまく関係づけられるようにすることが今後の課題である。また、「文章表現法」では、情報関係の担当教員との連携プレーで情報機器を活用した授業が実現した。「文章表現法」で自己PR文を学生に作らせて添削し、情報処理の講義内に電子メールを使用して提出させ、学内ホームページに掲載した。この他、学生に共同で創作童話を作成させ小冊子にする一方で、学内・学外のホームページに掲載した。
 「教育工学」という講義では、完成した創作童話をもとに電子紙芝居制作をした。


(2)「インターネットを活用した異文化理解と英語習得を目指した授業」
徳山女子短期大学 田中 数恵氏

 授業は、授業の前半を教室で講義し、それからコンピュータ室に移動して作業をする形をとっている。
 「Keypalプロジェクト」は、Keypalを紹介して、英語で電子メール文通をするプロジェクトである。「自己紹介ホームページ作成」では、初歩的な間違いのない英文を書くことと、ホームページ作成の基礎知識を学ぶこと、スキャナーやデジタルカメラなどが使えるようになることが目標である。「異文化アンケート調査」は、テーマに基づいた質問事項を考えてアンケートを実施。調査結果を授業中、また、ホームページ上で発表する。ニュースレター制作「HELLOプロジェクト」では学生が英語でエッセイを書いて、それらをまとめたものを年2回ホームページ上で発行する。
 従来の教室の中だけの授業では、架空の場面や目的を作り上げて行う擬似的な言語練習しかできなかった。しかし、インターネット上で学外の人と出会ったり、また、交流を始めたりするときは、現実的な本当の意味をもってくることになり、これがインターネットの素晴らしさだろうと感じた。


(3)「コンピュータを使用したファッションデザイン実習」
夙川学院短期大学 橘 喬子氏

 「ファッションデザイン実習」は、アパレル商品企画の展開やプロモーションのためにコンピュータを活用してマップを制作、サンプル商品をショー形式でプレゼンテーションし、評価を受ける授業である。
 授業の目標は、今日の経済や社会現象、文化、生活者の消費動向などの情報を的確に把握し、豊かな感性と理解力を養う。オリジナル素材の創造とともに、新しい感覚のオリジナルデザインの発想を目指すための表現力や技術を養うといったことにある。また、「バーチャルファッションショーと実物作品とのコラボレーション」という実験的な企画を実施した。コンテストに入選した作品と、コンピュータで作り上げたバーチャルな作品を比較する実験という形で企画し、企業の協力を得ながら実施した。
 教育効果としては、アパレル企画の流れを理解し、コンピュータと手作業の両方の利点を使い分けることができ、サンプルを制作することによって、その価値観や感性を実感できる。ショーやパネル作品のプレゼンテーションによって、やりがいや達成感を得ることができるなどの点がある。


(4)「ハンズオンとデジタルポートフォリオ作成を取り入れた情報教育」
東京家政学院筑波女子短期大学部 余田 義彦氏

 計測・制御に関わる知識や概念を、ロボットとその制御プラグラムを実際に見て触って、いろいろ試しながら作る活動(ハンズオン活動)を通して学ばせていくことにした。実際に自分でいろいろ体験しながら学んでいくことを、教室の中に取り入れ、モノ作りと平行してポートフォリオを作成し、自己評価・相互評価を行う。これは、学習の過程、学生の学びを記録させて、能力を評価していく手法である。作業の過程をホームページ化して、学内外へ公開していく。
 この授業は、1年生の後期の選択科目「コンピュータ工学」で実施した。目標は二つあり、一つは、コンピュータでいろいろな機械を制御する。もう一つは、プランニング、問題の分析、工夫であるとか活動の過程や成果の記録を振り返っていくことである。
 レゴブロックを使って、グラフィカルにプログラムを組む。授業は、最初の10分間は課題の進め方の説明をする。どういうロボットを作ればいいかは課題を与え、学生がそれぞれグループを組んで開発方針を話し合い、デザインして、メカを組み立て、プログラムを作り、動作させてその評価・改良を行う。同時にその様子をポートフォリオとしてまとめていく。


(5)「インタラクティブなネットワーク教材の活用と今後の課題」
青葉学園短期大学 宮本 美登里氏、前沢 明枝氏、畠山 美紀子氏、深沢 弘美氏

 Webベース学習支援システムは、学内LAN上のWebサーバに教材データをデータベースとして蓄積し、Webブラウザで学生が自由に閲覧できる学習支援のためのシステムである。学生は通常のWeb操作で、簡単にサーバ上の教材を使って、その日の授業の復習をしたり、力試しのミニテストを実施したりすることができる。また、教員への質問ができ、かつ、そのネットワーク教材をWeb知識の少ない教員でも簡単に作成、変更、蓄積し、科目を超えた教材の共有化ができるように開発してある。
 前期の「情報処理概論」、後期の「情報処理論」で、教材提示、ミニテスト、掲示板機能を活用している。昨年1年間運用し、他教科への拡大を図れないかと考え、小テストをよく行う英語教育にこのミニテスト機能を活用する試みをスタートした。
 今後の課題は、質問に対処する効率的な方法はないのか、大量の質問のデータをすべて表示して公開したほうがいいのかといった問題点がある。また、現在、情報基礎関連の授業と英語教育でしか利用されていないこのシステムを、コンピュータ室を利用しない科目にも拡げたい。なお、このシステムは現在、学内のみの利用であるが、学外からの利用をどうするのか。そのときのアクセス権をどう管理するかといった問題点がある。



2.全体討議

 事例発表の後、質疑応答の形で以下のような活発な意見交換が行われた。その一部を紹介する。

−事例紹介(4)に関して−
学生の授業結果をホームページで公開するとき、ある種の基準・ガイド等はどうなっているか。
電子メールで自己PR文を学内の学科のホームページに載せたことはある。学外は、私(余田氏)のホームページの授業発表欄のところに学生の許可を得て、名前を伏せて載せた。
最初の頃は今のような匿名性ではなく、顔写真やメールのアドレスもおおらかに公開していた。今は、大きなガイドラインを設けて公開はやめてほしいと学生が言った場合は、非公開にするという対応をとっている。
評価を学生相互でするだけではなくて、外からの評価を得るためにどういう工夫が考えられるか。
外からの評価を得るための努力は、Web上に何でも学生が作ったものはいろいろな形で載せていくという以外には特にはない。一般公開するということが、一つ評価を得る努力になるという感じがする。外部評価者にプロでやっている卒業生をうまく巻き込めないか、また限りなくプロに近い人たちをうまく巻き込めないかと思っている。

文責:短期大学会議運営委員会委員長
東海大学短期大学部 加藤 昭


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