私情協ニュース1

第28回臨時総会開催される


 第28回総会は、平成13年11月26日(金)午後1時半より、東京市ケ谷の私学会館会議室にて開催された。当日は、議事に入るに先立ち文部科学省専門教育課の西阪 昇課長から来賓の挨拶があり、引き続き第9回情報教育方法研究発表会の受賞者の表彰の後、平成14年度文部科学省の情報関係予算の概算要求及び13年度第1次補正予算について私学助成課の田村課長補佐より説明があった。次いで、サイバー・キャンパス・コンソーシアムの実験事業、学系別情報教育研究委員会の「授業改善のためのITの活用」の発刊、大学間教育情報交流システム等について報告があった。以下に主なものを報告する。


1.情報関係補助金の14年度概算要求及び13年度第1次補正予算について

1)14年度概算要求に当たって、政府の方針は国債の発行額を30兆円以内とするため、例年より2兆円減額することになった。そのため、一般の補助金を含む政策経費は一律10%カットとなったが、教育、科学技術、ITなどの重点7分野については、改めて内閣府の査定を受けて9月末までに10%を超える要求を認める。10%削った額の倍まで要求して、最終的には選定して10%まで落とすような形の要求ができた。
2)経常費補助金は、全体で78億円の増、2.5%増額の3,220.5億円、教育研究装置施設補助金は10%減のところ調整して10億円増、4.9%増の214.5億円、研究設備関係補助金は3.3億円増、5.8%増の59.8億円を要求している。
3)概算要求に対して経済財政諮問会議から二つの点が指摘されていた。世界水準の大学を目指すために競争の原理を導入することと、特殊法人を通す予算に関しては一律10%カットになったことから、経常費補助金の増額要求が従来の枠組みでは困難になったことにより、大学院の高度化、学術研究の推進、学部教育の改革を「私立大学教育研究高度化推進特別補助」としてとりまとめ、国から直接執行する要求とし、393億円とした。
4)経常費補助金特別補助の情報化推進特別経費は、教育学術コンテンツは前年同額、借入、ネットワーク維持費等は、それぞれ4億円の増で要求。教育・学習方法等改善支援経費も情報化を含め7億円の増を要求。
5)特別補助の新しい形態である私立大学教育研究高度化推進特別補助は、従来の高等教育研究改革推進経費と新規要求のサイバー・キャンパス整備費で構成。特に、サイバー・キャンパス整備費は、世界の大学との連携、国内の大学との連携に配慮したもので、教育研究の水準向上を狙いとしている。私情協の事業でも大学コンソーシアムという形で充実を図っていくので、共同授業、教育の多様化に取り組まれるのであれば、ぜひ活用いただきたい。内訳としては、情報通信装置、情報通信施設、情報処理関係設備、ネットワーク維持費・コンテンツ開発など、組み合わせて補助を行うということで総計12.5億円を要求している。
6)1次補正予算として、大学では構造改革を加速するために特に緊急性の高い施策として、改革先行プログラムとして15億円ほど情報処理関係設備、装置施設が計上、さらに私立大学産学連携研究基盤整備事業として、6億円が計上された。なお、今回は当初募集との調整もあり、追加募集を行わないこととした。なお、NTT株を利用した2次補正予算が新聞報道の通り、11月30日までに財務省でとりまとめることになったことから、急遽、要望があれば情報分野でも追加募集の形で準備することが必要となってきた。現在、学校法人に連絡しているが、情報通信装置・施設について至急申請の希望があれば文部科学省に連絡いただきたい。


2.サイバー・キャンパス・コンソーシアムの実験事業について

 教育にネットワークを活用することにより、地域、国を越えて高いレベルの教育を享受することができるようになったことから、米国の大学を中心にネットワークによる教育の国際化が展開されつつある。大学教育の高度化、世界に通用する教育の質的向上を目指すためには、それぞれの大学のアイデンティティを生かしつつ、大学の枠を越えて可能な範囲でネットワークを介して大学が連携協力することにより、1大学ではなし得ない魅力ある教育を展開し、教育のグローバル化に対応していくことが喫緊の課題と判断し、ここに日本の大学および世界の大学との連携を視野に入れたサイバー・キャンパス・コンソーシアム(CCC)の構築を呼び掛けることにした。
 CCCを設立するメリットは、1大学では得られない教員、コンテンツを共同で使用することを通じて教育水準の高度化に寄与することが可能となる。経営面でも必要な環境を1大学ですべて準備することがなく、重点的な教育投資が可能となる。
 連携の対象は、加盟大学を中心に、外国の大学、非加盟の私立大学、国立・公立大学も加えていく。参加は自由で連携可能な範囲で進めていく。参加校の中から拠点大学を募り、「サイバー共同支援センター」を設置。拠点大学の負担を軽減するため国の補助金と賛助会員協力を最大限に活用。事業内容としては、関東・関西地域の37大学によるプロジェクト会議を経て、事業の可能性、実験の進め方等について検討した。

(1)シラバスとITを活用した授業運営情報の共有

 私情協のポータルサイトから授業科目ごとのシラバスとITを活用した授業事例を閲覧する。

(2)電子化された教材・素材等の共同使用

 電子化された教材・素材等の所在情報を分野ごとにCCCのWebサイトに集め、リンク形式で大学のWebサイトに接続、コンテンツをを閲覧・使用できるようにする。著作権問題がクリアされている講義ノート、素材、練習問題、過去の試験問題、授業の映像情報など提供可能なもの。コンテンツの使用は、タイトル別に細分化、モジュール化(部品のように整理)を呼びかける。

(3)教材の共同開発

 学系別委員会もしくは参加大学を募り、授業水準、授業内容、授業方法、情報環境などについて検討をした上で、補助金を活用して実施。

(4)授業の支援及び共同授業

 授業分野ごとにネットワークによる授業連携の希望を募り、私情協のポータルサイトで探索・実現できるようにする。授業の形態としては、大学間で学習成果の講評を行う方法、複数の大学教員で共同して授業を行う方法、自大学にない授業をネットワークで合同受講、大学外の専門家をネットワークで公募しビデオ・オン・デマンド等授業を支援、事前にコンテンツを複数大学の教員がWebに集積、学生に開示して予習させ、ネットワーク上で意見発表、外国大学とビデオ・オン・デマンド方式での授業連携などが考えられる。

(5)生涯学習プログラムの共同運営

 私情協のポータルサイトに生涯学習プログラムの概要情報を掲載、リンクにより各大学のサイトに接続できるようにしたい。当面は、e-ラーニングによるフォーマットの研究を行う予定。

(6)電子出版物等の共同購入

 私情協のポータルサイトで公募し、オンラインで購入することにより、経費節減を実現。  実験的に進める上で共通理解すべき点としては、


3.「大学教育への提言:授業改善のためのITの活用」について

 当協会では、授業改善のために情報技術を活用することが極めて重要であることを普及啓発するために、5年前の平成8年に「私立大学の授業を変える:マルチメディアを活用した教育の方向性」を公表の後、5年おきに見直すことになり、平成10年度から本格的に研究を開始し、16の学問分野別の委員会が授業改善のために情報技術活用の実情を具体的に提示し、可能性と限界をとりまとめた。本報告は、1章が「大学教育改革とIT」、2章が「ITを活用した授業改善モデル」日本文学分野の授業から薬学分野まで16 の学問分野の授業をとりあげ、子細に報告している。
 1章では、21世紀の社会の特徴として、情報通信技術が世界中に行きわたり、地球的規模で情報が共有され、共生と競争が増大する社会が展開すると定義した上で、グローバル化時代に求められる人材は、世界中の人々と協調・共生し、地球社会の一員としての自覚の下、自ら課題を探求し、主張を的確に表現しつつ行動できる能力を持った人材の育成が求められると大学審議会の答申を咀嚼。その上で、大学教育改革の方向性について、大学は、社会のニーズに積極的に対応し、国際競争力に通用する高レベルの教育プログラムをいかに提供できるかが、問われることになるとして、米国のマサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学でのインターネット等を活用した授業の配信や学ぶことを希望する学生、社会人に対して限りなく学ぶ「場」を提供することを通じて、教育の独自性発揮を紹介。日本の大学も社会や世界に通用する教育プログラムへの対応が遅れると、米国の大きなグローバル化の波に飲み込まれてしまう虞れがあると指摘。他方、私立大学の問題として学生の学力の低下と大学改革の成否が教員の自己改革に負う部分が大きいことも指摘。
 このような内外の事態を打開していくためには、教員一人一人が授業改善に取り組むことを指摘。その一つの手段として、授業にITを活用することにより魅力ある授業の提供と大学のネットワークを介したコンソーシアムで大学の負担を軽減することが可能としている。
 教育の情報化の必要性では、教育そのものが、社会や世界の人々が共有すべき知的資源であるとし、大学は社会資産、世界資産の創造に貢献するために、教育の情報化が不可欠であるとしている。情報化の実情として、平成12年11月に実施の日米マルチメディア教育セミナーで得られた点を紹介。学ばせることに比重をおいているため、授業に必要な知識の習得は、ネットワーク上のWebサイトで提供し、事前に学習させるようになっている。Webサイトに授業に必要な教材を掲示して、事前学習を徹底させている。また、教員もこれを利用して授業の内容・水準を把握することにより、カリキュラムの連携を実現しており、日本の大学でも大いに参考になるとしている。
 このような授業を実現するには、教育支援体制が構築されていることが前提で、日本の大学として学ぶべき点と指摘。21世紀に積極的にとり入れることが望ましいモデルを以下の通り掲げた。
(1)問題発見・解決の能力を高める方法
 インターネット等により教室と教室外の社会とを接続し、リアルタイムで社会、企業などから体験情報、現場情報をスクリーン上に展開する方法で、理論と実際とのギャップを認識させたり、社会や企業が直面している課題を紹介し、学生自身に考えさせる場や学ぶことの動機付けを提供することができるとしている。その上で、授業そのものをすべてデジタルの映像で保存し、データベース化することにより、大学の知的資産として学内のネットワーク(イントラネット)で永続的な利用が可能なようにする。
(2)授業内容を豊かにする方法
 一人の教員ですべてを満足させることは不可能なことから、他大学の教員と協力し、得意とする分野を分担し、衛星通信やインターネットを通じて配信する方法。
(3)学生の勉学意欲の向上と授業水準の向上を可能にする方法
 学生の授業成果をWebページに掲載し、ネットワークを通じて学外の教員、専門家から評価を受ける方法。担当教員による指導の壁を超えて、社会または世界の第一線で活躍する専門家の指導が受けられることから、授業の目標を高い水準に設定できる。
(4)多人数教室での対話型授業を可能にする方法
 学生のパソコンまたは携帯電話から教卓のパソコンに小テストの回答を送信し、成績の評価に組み入れる方法やチャットを活用して学生の反応を見ながら授業を進めることができる。
(5)事前・事後学習の支援を充実させる方法
 授業に必要な授業の映像、講義ノート、テキスト、練習問題・過去の試験問題、学生からの質問と応答、学習成果と外部からの講評、基礎学力の自習室、シラバス・教材リスト、時間割・教室など情報をWebサイトに類別に部品化しておき、学生がいつでも学べる環境を整備しておくことが望まれる。
 そのための課題と対応策としては、
1)大学として教育重視の政策を明確化する
2)学ばせるための教育システムとして、成績評価の厳格化を1回の試験による方法以外に、毎授業での理解度を把握する小テストや電子メールによる意見発表、チャットによる質疑などを評価の対象に加えるなど工夫する。時間や場所の制限なく学習可能な環境を提供するため、シラバスの電子化、学内LANで常時、授課題学習を行う。講義ノート、テキスト、よくある学生からの質疑応答、練習問題・過去の試験問題、学習成果と評価、基礎学力補習教材などに区分して掲載し、学内LANを通して自学自習を可能にする方法がある。
3)ファカルティデベロップメントを普及する
4)授業の独自性や通用性・共通性を確認し、評価を受ける
5)カリキュラムの連携を図る
6)教育改善に顕著な業績を上げている教員に大学として教育業績を認めるプラス思考の評価制度を創設する。
7)一部の部署を設置して対応しても限界があることから、職員それぞれが授業支援にどのように関われるのかを検討し、授業改善のために可能な範囲で様々な行動を起こすことが要請される。とりわけ、学内LANやあらゆる方法で教員に接触し、学生からの意見の連絡をはじめ、他大学での授業改善の工夫などコミュニケーションを取るように努力し、教員に授業改善に向けての意識を促すことが重要である。その際、職員を増員するのでなく、職員の能力を再開発する中で意識を高めることが必要となる。その上で、コーディネートの支援、コンテンツ作成支援、教室での機器の操作支援、情報機器、学内LANおよびセキュリティの管理支援、教員の情報リテラシーの研修・相談助言、著作権の権利処理の支援などがある。
8)教育情報のディスクロージャーを積極化する
私立大学情報教育協会が開発したシステムを有効に活用する
9)キャンパスのマルチメディア化を促進する
10)インターネットを活用したコンテンツの整備
などを掲げている。



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