情報教育と環境


高崎商科大学における情報教育環境



1 沿革

 本学校法人高崎佐藤学園は明治39年(1906)創立者佐藤夕子氏による佐藤裁縫女学校創設以来90数年に亘って実学教育の実績を積んできています。昭和63年(1988)4月には地元産業界や地方自治体などの要望により高崎商科短期大学商学科を開学し、平成5年(1993)4月に秘書科を増設しました。そして、平成13年(2001)に「実学重視」「人間尊重」「未来創造」の建学の精神を基にして、流通情報に関する専門的な理論と実務を兼ね備えた「21世紀を担うビジネスリーダーの養成」を目的として、従来の短期大学商学科を改組転換し、高崎商科大学流通情報学部を設置しました。同時に、短期大学部秘書科を現代ビジネス学科に名称変更し、大学1学部1学科、短期大学部1学科としたこじんまりした学園であります。本学は開学以来、情報関連講義や実習講義に限定された情報教育施設の充実のみを図るのではなく、学生はもちろんのこと、全教員のIT活用能力の向上、情報関連以外の多くの一般講義においてもIT化の推進に取り組んでいます。


2 情報環境施設

 本学のメディアセンターは、従来の図書館部門と情報システム部門を統合したメディアに関する新しい組織になっています(図1参照)。教育環境では、40名定員の学生向けOA教室が2部屋、50名定員のOA教室及びOA自習室が1部屋ずつあり、合計で約150台のPCが設置されています。他に、情報コンセント付きの教室が5部屋あり、この中には100名収容の講義室も含まれています。又、平成14年度から無線LANを、ゼミ室3部屋と100名収容の教室に設置しました。他に60名収容のプラズマディスプレー付き無線LAN教室を3部屋設けました。その他、学生ホールや廊下にも情報コンセントが設置されています。無線LANや情報コンセントを数多く配置したのは学生一人一人にノートPCが貸与されているためで、授業時の教材配信やレポート作成に利用できるようにするためと、何時でもどこからでもインターネットやメールの利用あるいは予習復習等ができるようにするためです。
 現在までの貸与ノートPCは2年次までの約400台、編入生40台程度ですが完成年度に至っては約1000台となる見込みです。これら学生向けPCのスペックは最下位機種でもデスクトップPCではPentium・350MHz以上、ノートPCではMobile Pentium・500MHz以上、全PCに128MB以上のメモリーを標準搭載しています。学生向けPCのOSはWindows 2000 Professional(一部Windows 98が存在)、であり、マイクロソフト社との契約によるCampus Agreementで提供されるOS、Office、開発環境などのソフトが使用できるようになっています。この他にも、ノートPC、無線LANカード、プロジェクターの貸し出しなども行っています。もちろん、学内に設置された全PC及び情報コンセントからインターネットを利用できます。学内には高速LAN(100Mbps)を設け、学生が存分にネットワークを活用できる環境を提供しています。このようなインフラ基盤をベースに、Webを活用した学生向けのサービスも提供しています。

図1 メディアセンター組織


3 Webを活用したサービス(Web Campus)について

 Web Campusは、当初事務の効率化を主眼として検討してきた教務事務システムでしたが、学生に対するサービスの機能を追加し、Windows 2000 Server/SQL Server 2000上でシステムを構築しました。Web Campusには以下の機能が盛り込まれています。

1)新入生の履修登録機能:新入生自ら履修希望科目の登録を自習室に設置のPCを使って登録する。登録終了後は時間割も印刷される。
2)電子掲示板機能:ある目的に沿って利用することができる自由掲示板。
3)iモードサービス:携帯電話に休講情報や教室変更情報が表示される。
4)就職情報:学園内の就職指導室から発せられる就職情報などの閲覧機能。
5)施設予約:テニスコートや体育館などの施設の予約ができる。
6)教員に対するサービス:研究費の登録や残高情報、各委員会の開催通知、委員会議事録の公開などの機能。

 上記システムは平成13年度からスタートしましたが、特に新入生の履修登録は、学生自身がWebを通じて履修登録を直接行うことで事務作業が大幅に効率化され、学生自身の履修に対する姿勢がより主体的になったというメリットも生じています。また、各学生の履修状況が即座に分かり、使われる教科書が判明するので、講義で使う書籍や教材発注の円滑化などの相乗効果も生じました。つまり、一人一人の学生向けに、書店が教科書のパッケージを作成して提供できる仕組みを確立したわけです。Web Campusを使うときはIDとパスワードが必要となります。


4 ネットワーク環境

 本学の学内ネットワークについては、第1次ネットワーク本稼動開始が1992年となっており、短期大学の情報のやり取りが主でした。ネットワーク本部は5kmほど離れた付属高等学校に設置されていました。この第1次整備当時の情報環境は、高崎商科短期大学の秘書科と商学科の学生に対するもので、主に教育用PCのみで使用していた状況でした。
 第2次ネットワークの構築は、1999年に設計を開始し、2000年4月に本稼動を開始しました。この第2次ネットワーク整備では、今までの短期大学商学科の改組(4大流通情報学部へ改組)に伴って大幅に行われました。本部を大学し移管し、学内ネットワークを光LANとし100MbpsEthernet方式の基幹通信網を設置しました。教育用PCの台数増加とPCの個人環境の保存、3号館OA教室及びゼミ室の増設、3号館研究室の増加、イントラネットの構築、インターネットの強化などに基幹通信網の整備は欠かせませんでした。さらに、この第2次ネットワーク整備ではセキュリティ対策を大幅に強化し、多重ファイアウォール構成、メールシステムの多重化なども採用しています。インターネットへの接続環境は商用バックボーンへ直結した経路を設置し、インターネット通信は実通信帯域を常時1.5Mbps以上となるような経路を確保しています。しかし、増え続ける学内PC数、ダウンロードデータ量の増加、上昇し始めた学生のストリーミング・コンテンツ利用などの問題によって、この通信帯域では十分であるとは考えておりません。いずれその検討時期が訪れることになると思います。
 学内LANのイントラネット利用を促進するため、現在次のような機能整備への取組みを行っています。

1)授業用ホームページ(HP)、ゼミ研究成果の公開HP、学生プライベートHP、学生会HP、サークル等HPの開設
2)学生アイデア利用促進のためのツールの開発:イントラ掲示板、チャットの導入とオープン化、携帯HPの公開、イントラテレビ電話の導入とオープン化など
3)Web Campusとイントラネットの使い分けについては検討中
4)ECサーバ(電子商取引サーバ)のオープン化
5)ネットビジネス研究所(注1)地域支援広報
6)学習支援センター(注2)、ネットビジネス研究所、メディアセンター活動の広報

図2 学内ネットワーク構成(全体図)


5 情報教育環境整備への取組み

 高崎商科大学では、情報教育環境の整備に伴い一般的な講義科目へのIT活用・応用を推進しています。 このため、本学では全教員の研究室にデスクトップPCを配備し、教材の作成・提示、学生レポート提出フォルダの整備を行ってきました。このようなファイルサーバの整備は、学生ひとり一人が持参する貸与ノートPCによって教室で、学生ホールで、あるいは自宅でレポートの作成ができ、講義の予習復習ができるようになっています。同時に、教材の紙ベースの配布物・案内を極力削減することができるようになってきています。また、勉学に対する積極性や適正などを選抜の判断基準とするAO入試の受験生を対象に、HPを通じて受験登録できる「オンラインエントリーシステム」を導入し現在受付を開始しています。これは、ITを活用した受験環境整備の一端であります。今後一般入試の願書受け付けなど入試手続き全般にもオンライン化を拡大する予定です。
 Campus Agreementは、マイクロソフト社との契約により学習支援という観点から多大な効果を発揮しています。特に流通情報学科という新しい学問領域を実践していくには、多彩なカリキュラムが必要となるため、多数の汎用アプリケーションを包含するCampus Agreementは効果的です。また、本学ではIT活用の観点から、北関東IT推進協議会JGN専門部会に参加し、北関東地区におけるいくつかの大学・群馬県庁・栃木県庁などの自治体などが連携して教育環境の向上、大学連携などの研究を行っています。

文責:高崎商科大学流通情報学部教授
メディアセンター長 竹本 宜弘

(1)ネットビジネス研究所:学問としてのノウハウ蓄積を
社会システムとして具現化する研究所
(2)学習支援センター:学生の成績管理ならびに資格
取得などの相談センター


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