私情協ニュース1

第29回・第30回通常総会の開催概要



第29回通常総会の開催概要

 第29回総会は、平成14年3月28日(木)午後1時半より、東京市ヶ谷の私学会館会議室にて開催。当日は、議事に入るに先立ち文部科学省私学助成課の田村課長補佐から補助金予算の概要と執行について説明。次いで、審議に入り、14年度事業計画と収支予算、正会員の会費規程の変更の後、13年度補助の配分内示状況、学内LAN補助申請の留意点、サイバー・キャンパス・コンソーシアムの参加状況、大学等電子著作物権利処理事業の構想、法人化10周年、創立25年記念事業について報告があった。以下に主なものを報告する。


1.14年度情報関係補助金の申請について

<文部科学省の説明>

1)平成14年度の予算編成は大変厳しい結果になった。国全体で私学助成を含む一般歳出は、前年度より2.3%減となった。しかしながら、私学助成の関係予算は、経常費は伸び率も2.1%、55億円の増、装置設備補助は全体で最低でも1割減のところ5%程度の減となり、全体で11.5億円の減となった。設備補助は、2.3億円の増。その内、情報関係は、全体で322億円から350億円へと28億円の増、8.71%となった。経常費の特別補助では26億円の増、装置は全体では減のところ前年度を維持、設備は1.38億円の増加となった。さらに、新規項目としてのサイバー・キャンパス整備事業に概算要求満額の12億5,000万円を計上した。
2)補助金の執行で大きく変わった点は、経常費補助金特別補助の一部を私立大学教育研究高度化推進特別補助という形で文部科学省が直接交付することになった。予算折衝の過程で世界水準の大学を目指すために私学のレベルアップを図るということであれば、情報関係の予算を抜いては考えられない等の話があり、情報関係の予算すべて文部科学省からの直接執行に変更した。実際の事務手続は、日本私立学校振興・共済事業団の協力を得ることを考えている。したがって、学校法人から文部科学大臣宛ての申請は、一度事業団に提出し、相談や質問、額の調整は事業団で対応していく形を考えている。
3)採択は、これまでは事業団が専門の審査委員会等を設けていたが、文部科学省で委員の選定等を行い、私立大学教育研究高度化推進専門委員会を設けて、審査を経て10月頃に内定を予定している。交付時期は、3月末ではなく12月・1月等を目途に考えている。従来から国が直接補助を行っている装置、設備の補助金は、調整等にかなり時間がかかることから、提出依頼を5月頃とし、締切に関しては7月頃と考えている。
4)第二次補正予算は、2月に成立した。情報通信関係の希望が多く、執行では、予算10億円を超えて14億7,000万円ほど執行した。当初予算以外でも補正予算があることを念頭において、準備しておくことも有効になると考えている。
5)購入補助で導入した設備は、補助効果が存続する期間は処分できないように文部科学省令で規定されている。情報関係の電子計算機は6年となっていたが、14年3月25日付けでパーソナルコンピュータについては4年、それ以外のサーバなどは5年に短縮するよう改正が行われ、13年度補助事業から適用される。


2.平成14年度事業計画について

 平成14年度の事業計画案の基本方針は、13年度からの事業を継続し、事業内容の充実を図ることを基本としつつ、新しい課題については、新規事業として計画した。
 「情報技術を活用した学系別教育の研究・支援」では、学系分野を1減3増の16から18に増やし、大学相互の連携による授業の支援環境の実現に向け研究を行う。また、必要に応じて学系別の研究集会を企画・準備し、委員会活動における成果の公表を通じて、会員以外の私立、国公立大学の教員も交えて広範な意見交流を行う。
 「情報倫理教育の研究・支援」では、被害防止、加害防止を内心に働きかけて倫理観を醸成する教育を普及・啓発するため、共通教材を構築し、サイバーセンターにコンテンツを掲載・紹介するとともに、対面による情報倫理教育研究集会を継続。
 新規事業の「大学等電子著作物権利処理事業」では、教員や大学が所有する電子著作物の提供・利用をネットワークを介して円滑に安心して進められるような仕組みを作り、さらに、大学以外の機関が所有する電子著作物をネットワークを介して利用できるよう代行処理を行う。文化庁が所管する著作権等管理事業法も一部適用しながら、私情協独自の規約を作り、15年度からの本格実施に備えて実験を行う。
 「ネットワーク関係の事業」では、1)超高速のスーパーSINETのノード校を増やすように働きかけるとともに、教育利用の制度化の可能性を模索する。2)ネットワークの不正侵入への対応として、セキュリティ・ポリシーのガイドラインのとりまとめと検知監視システムモデルの仕様を提示。さらに、LANのセキュリティ問題、技術的問題を講習する学内LAN運用管理講習会の企画・準備を行う。3)マルチメディアを使用した大容量の教育情報の増大に備え、衛星通信と地上線を併用したマルチメディア衛星通信システムのモデルを示す。
 「基本調査」は、13年度実施の教員個人調査の集計結果の報告と大学としての情報環境の整備計画について自己点検を含めた基本調査を14年度時点で行い、集計結果は15年度5月の総会に報告する予定。
 新規事業の「ネットワークによる教育連携の促進・支援」は、実験として進め、グループを作り、運営、体制、事業内容について個別のグループで調整し、15年度からの本格実施に備える。40グループ程度を見込み、その中で拠点校を作り、世界標準を考えた大学連携のための技術的な問題、コンテンツ作りなど段階的にルールを作成していく。
 「教育支援システムモデルの開発」では、授業中に学生の理解度を把握するシステム、コンテンツを簡単に電子化するシステムのモデル指針を作り、大学に実現の可能性を提示して教育システムの構築に理解を働きかける。また、教員の情報技術力を高めるために、授業情報技術講習会の企画実施も継続して行う。
 「ネットワーク組織管理センター」は、事業の広域化に伴いLANの高速化を図る工事を行うとともに、コンテンツの充実を図ることを計画。特に国庫助成の申請に関する情報のWebサイト化を計画。
 研修会等の開催については、13の会議・講習会等を計画している。

1)大学情報化全国大会は、文部科学省の後援を予定。広域的に事業を進める必要から、大学の教育研究、事務の全般にわたって情報化を進めていく目的に沿って名称を改称。特に本年度は、eラーニングの実情を理解した上で、大学としての情報化対応を探求するところに焦点を合わせて運営することを計画。
2)教育の情報化フォーラムは、教育の情報化の問題を検討する会で、文部科学省の後援事業を予定し、参加資格の対象を拡大して進めていく。
3)情報教育方法研究発表会は、文部科学省の後援事業として多くの大学に参加を呼び掛ける。多くの参加が可能となるよう、ネットワークによるライブ配信も部分的に計画している。
4)理事長・学長等会議は、特に教育の支援体制の問題を中心に議論を考えている。
5)情報倫理教育研究集会は、共通教材によるモデル授業を予定。
6)学系別の情報技術活用研究集会は、18の委員会が必要に応じて開催する研究集会で、委員会の活動、教材等コンテンツ環境の整備など非加盟校を含めた議論を予定。
7)短期大学部門検討会議は、教育の情報化フォーラムと併催し、短期大学教育の質的充実に寄与することを計画。
8)情報技術講習会は、教員の情報技術能力を養成するため、ネットワークによる講習も含めて拡大する予定。
9)事務部門管理者会議は、事務局管理者に補助金の活用、大学連携、著作権処理の代行などの事業に対する協力を呼び掛ける。
10)情報センター等部門研修会は、センター等部門としての教育支援の在り方を中心に研修を行う。
11)大学情報化職員研修会、12)大学情報化職員基礎講習会は、職員が担当部署の業務を通じてITを活用して教育支援に貢献できるように、情報の活用、コミュニケーション、職員としてのプレゼンテーションなどについて能力の向上を図ることを計画。
13)学内LAN運用管理講習会は、ネットワークの運用管理者の養成を推進するため、セキュリティをはじめとする技術指導を行う。

 「会誌」は、『大学教育と情報』を年に4回発行しており、インターネットでも公表。
 「情報教育環境の整備促進」では、既設補助金予算の充実・拡大。「相談・助言」は、従来どおり、補助金に関する問題については事務局で積極的に対応。「記念事業の実施」は、新たに実施する教育の大学連携事業、電子著作物の著作権処理代行事業について紹介を予定。「内外諸機関との連携協力」については、事業の広がりに伴い国立大学協会をはじめ民間の著作権団体などの関係機関などとも協力関係をもつことを予定。


3.サイバー・キャンパス・コンソーシアム事業の参加状況等について

 本年2月に参加募集したところ、3月26日時点で加盟大学318校のうち137校、43%。短期大学では、183校のうち20校、11%の合わせて157校からの参加となっており、今後さらに増える可能性がある。大学では5割に近い大学が参加されるものと予測される。分野別の参加状況は、まだ参加決定の大学、短期大学のすべてから参加教員リストが返ってきていないが、大学753名、短期大学63名の参加となっており、約40グループ以上のところで大学の教育連携が形成される。連携の内容についてはまだ定かではないが、教材・素材の共同使用、次いで共同開発、授業の共同化となっている。14年度は実験として連携の希望を整理した上で、可能性の高いものから始めることになる。連携環境、連携のためのルールなどの基本問題については、拠点校による会議を別途構成して、世界標準を視野に入れて段階的な実現を考えている。また、本協会にコンテンツを集中化するということは一切考えていない。基本的には個々の大学でコンテンツを管理し、それを私情協がポータルサイトを経由して利用できるように環境を作るものであること。経費負担の問題は、グループで取り扱う事業の内容に合わせて検討いただくことになることから、費用が発生しないこともある。15年度に向けて補助金を活用して整備することも考えられる。


4.大学等の電子著作物権利処理事業の構想について

 事業の意義は、電子著作物を教育研究に円滑に利用できる仕組みを作ることを通じて、大学等の教育研究の質的向上に寄与するもので、著作権者の権利を保護し、その利用の円滑化を図るためのシステムをネットワークを介して代行できるようにする。
 電子著作物の権利者は、著作者、著作権者、著作隣接権者、実演家の他に、肖像権者、有体物の所有者とするが、その際、権利者が大学であるのか、教員であるのか明確にしておくことが必要になるので、本協会でモデル規程を作り、それを参考に大学に電子著作物の権利者に関する規程を別途整備することを働きかける必要がある。
 実施対象は、加盟校をはじめ、非加盟校である私立大学、国公立大学にも呼び掛け、希望される大学と、本協会で特定する企業・団体等の関係各機関を考えている。
 事業は、大学等における電子著作物と企業・団体等における電子著作物に区分して行う。大学側の権利処理の代行は、利用許諾の条件を本協会に一任する場合と、一任しないで大学等が定める条件で取り次ぎを行う場合がある。
 一任する場合は、文化庁が所官する著作権等管理事業法に沿って、本協会が定める著作権の使用料に基づき、権利者から権利の委任を受けた私情協が、利用者に利用許諾をする。例えば、他大学の教員の講義ノートを、ネットワークを介して教員が自分のパソコンに蓄積し、サーバにアップして授業で利用する場合で、これは複製および公衆送信に該当し、著作権法上利用許諾が必要なことから、事業法の適用を受ける。他方、管理事業法の適用を受けない例としては、提供者が提示の利用料金で電子教科書を使用させる場合で、本協会のシステムを介して料金を私情協が代行徴収し、許諾が得られるよう取り次ぎをする。なお、企業・団体等が使用を希望する場合には、ケース・バイ・ケースで当事者間で協議することを考えている。管理事業法の適用を受けるものについては、協会としては使用料を決めることになっており、各大学の意向を聞きながら決めることにしている。14年度は試験的にはじめ、15年度から本格的な体制を整えたい。
 企業・団体等の著作権代行については、本協会のサイトに提供者の利用許諾条件を提示し、ネットワークを活用して仲介する。その際、著作権使用料等の代行徴収とは別途に学校側の意見を咀嚼して料金等の利用条件について交渉することも予定している。
 事業の内容は、電子著作物の権利者を学校、企業・団体から登録し、私情協のサーバで公開をする。その上で許諾手続の代行、著作権使用料の代行徴収を行う。専門家を置いて相談・助言ができるようにする。
 事業の実施体制として、電子著作物の管理は各権利者が行うことを基本とし、著作権侵害の防止対策としては、電子透かしなどのセキュリティ対策を実施するよう呼びかける。
 電子著作物の料金の考え方は、多くの電子著作物が安心して提供いただけるよう、また、利用者の側から過度の負担にならないことを考慮して、著作権の使用料と著作物提供の対価を考えている。著作権の使用料は、教科書・講義ノート・研究論文の区分、プログラム・データベースの区分、資料・学習の成果物である作品、演習・練習問題、試験問題、授業の録画の四つの種類に分け、教育利用の場合は1授業科目あたりの単価、研究利用の場合は1研究あたりの単価を考えている。使用料の額の設定については、十分関係者の意見を伺い、その上で文化庁に届け出る予定にしている。
 今後の進め方は、5月の総会で事業具体化に伴う規約、管理事業法の約款、民間団体との規約、権利処理代行システムの紹介を予定している。順調に行けば、7月に正式に著作権管理事業の登録を文化庁に行い、9月には実験授業として関係者による対面の説明会を開き加盟校への理解を周知することにしている。10月には実験事業の公募を行い、11月から実験を開始し、その後で、非加盟校、国立大学を含めて企業・団体等への説明・働きかけを行い、15年4月に本格実施と考えている。



第30回通常総会の開催概要


 第30回総会は、平成14年5月31日(金)午後1時半より、東京のホテルニューオータニの会議室にて開催。当日は、13年度事業報告と収支決算を決定の後、14年度情報化関連補助金の申請、15年度情報化関連予算に対する要望の基本方針、サイバー・キャンパス・コンソーシアム事業の実施計画、大学等電子著作物権利処理事業の具体化、情報機器を利用した授業改善調査の結果、私立大学のセキュリティポリシーのガイドライン、平成14年度理事長・学長会議の開催計画について報告があった。以下に主なものを報告する。


1.平成14年度情報化関連補助金の申請について

 昨年までの補助金の仕組みと変わっている点を中心に説明があった。

1)私立大学教育研究高度化推進特別補助は、競争の観点を強めることをねらいとしており、有識者から成る委員会で採択制又は傾斜配分としている。
2)情報通信設備の借入、教育学術コンテンツは採択制で6月28日を締切としている。教育学術情報ネットワークは、当初採択性の予定であったが、サイバー・キャンパスに申請・採択されているようなところを含めて何らかの上乗せ補助を行う傾斜配分を考えており、7月12日を締切としている。
3)情報通信設備の借入は、初年度は契約に時間がかかることから4月から9月までの6ヵ月分を除外して、10月から3月までの6ヵ月を対象としていたが、かなり早く契約等を行うことに鑑み、契約月数に応じて補助を行うよう変更した。また、競争の観点を強めることから、各学校で保存しておく使用計画、管理運営体制についても提出いただき、審査の材料にと考えている。この内、使用計画の「コンピュータおよびマルチメディア機器の年間使用時間」は、個々の機器の使用時間ではなく、コンピュータを使用する授業時間であることを注意いただきたい。
4)教育学術情報ネットワークは、どのような形で傾斜を行うかについては、なお検討したいと思っている。
5)教育学術コンテンツは、採択制となったことにより、従来は「ソフトウェアの概要」に合わせて枠の中では「機能、用途および選定理由」程度であったが、ソフトウェアの使用計画、ソフトウェアの使用による期待される効果等を記入いただくよう変更した。これに併せて、情報通信設備の借入、購入補助の対象となっている設備で使用するソフトウェアを対象にしていたが、そのような要件は全部撤廃することにしたので、ソフトウェアで必要なものであれば全て申請することが可能となった。予算には限りがあるのでどこまで採択できるかわからないが、門戸を広げて情報教育の推進に役立つソフトウエアを多く採用することを考えている。
6)「(2)教育学術情報データベース等の開発」の「また」以下のところで、従来から「マルチメディア教育用ソフトウェア」が対象になると記載してきたが、内容が不明であったので「コンテンツの作成」というように書き換え、その例示として、授業に使用する講義ノート、テキスト、学習成果、演習試験の問題、その他、授業録画、授業に使用する情報等について、以上のようなコンテンツ1組で100万円以上のものを対象にしていくことを考えている。
7)特別補助の使用後の成果について、内定通知を出す時に年度の事業が終わった時点で使用の状況、成果をA4判1枚程度にまとめて提出いただくことを考えている。
8)情報装置設備は、計画調書を5月27日付で発送した。提出期限は7月22日とした。補助金担当の研修会を6月4日の東京地区をはじめ全国6地区で行う。
9)サイバー・キャンパス整備事業は、国内外の大学等々と連携・交流を深めたような教育・研究を行うもので、優れたものを重点的に補助していくことを考えている。他の経常費補助金や装置設備の補助金の募集とは多少異なっており、構想調書を提出いただき、情報関係の選定委員会で採択の後、具体的な費用などの計画調書の提出を行う2段階で考えている。同一大学のキャンパス内だけで遠隔教育を行うというようなもの、コンテンツを作るだけというものについては対象としない。あくまで事業計画として3年、4年かかっても構わないが、最終年度までに何らかの形で国内外の他の大学等と連携を図れるものを対象にしていく。基本的には一度採択されたものは優先的に採択していくことも考えている。この補助金を情報関係予算の目玉に育てていきたいと考えているので、初年度の採択率はどのぐらいになるのかわからないが、積極的な申請を期待する。


2.平成15年度情報化関連予算に対する当協会の基本方針

 基本的には前年度の要求方針に大きな変更はないが、特に15年度の要求では、コンテンツ関係で新しい新規項目を一つ考えている。教育のコンテンツを開発するところまでは補助金があるが、市販化されているデータベース、電子ジャーナルなどの電子著作物を利用することで開発の手間を解消することが可能となることから、著作権の権利処理の費用も含めた利用に伴う経費を新たな補助対象とすることの可能性について文部科学省に要望を考えている。15年度国の一般歳出は14年度以下にするという厳しい方針が出ていることもあるので、実現できるように努力していきたい。ソフトウェア、データベースの既設補助の他に、教育学術情報の利用という枠を設けて、ネットワークの上で提供が可能なWeb情報の権利処理費用、データベース、電子ジャーナル、eブックなどを活用することにより、大学の教育コンテンツの環境整備を促進することが必要と判断した。既設補助の方針については、資料の通り、大学等の申請希望を積み上げて、政策的な配慮をしつつ要求をしていくことを考えている。


3.サイバー・キャンパス・コンソーシアム事業の実施計画

 現在、大学147校で46%、短期大学22校で12%となっており、903名の教員が参加している。グループは、人文、社会、理学、工学、情報、医歯薬、生活・家政、教育、デザイン、教養など、全体で40グループを予定している。当面は、グループでテーマを決定し、ネットワーク上に拠点校を決め、その後詳細な準備に入ることになる。連携に必要な諸々の環境についての調整は、緩やかな申し合わせで進め、時期を見て拠点校による会議などを経て共通点を見出すように考えている。ネットワークでミーティングすることを前提にして、7月、8月と準備を行い、9月からグループの実験に入れるように考えている。


4.大学等電子著作物権利処理事業の具体化について

 3月の総会での基本構想の報告を受けて、本事業に関する全体の規約を作成した。特に、4条では、大学等における権利処理の許諾条件を協会に全部委任してしまう場合と、委任せずに条件を提示する場合のいずれの権利処理も代行するとした。また、大学の外にある企業、団体などが所有する電子著作物についても段階的に権利処理の代行を考えている。権利者の登録、開示は、協会の様式にしたがい、それをデータベース化して公開する。料金は、11条の通り「本協会の料金による」場合と、「本協会の料金にはよらない」場合とし、どちらでも選択することが可能。権利者が利用許諾の条件を有料・無料含めて定める場合には、希望通りの条件で権利処理を代行する。その際利用者からは、システムの利用料についてあまり過度にならない範囲で負担をいただく。協会の定める料金による場合については、著作権法で利用許諾が必要な複製、公衆送信に対して使用料を設定して自動的に許諾が得られるようにする。教育での複製は、経済的な損失を被らない範囲であれば著作権法上許諾が要らないが、許諾の具体的な範囲の取り決めがないため、ガイドラインとして30人未満は無料にしてはと考えている。研究利用は、特に著作権法上許諾不要の規程がないので、すべて有料としている。また、検索した上で内容を閲覧する場合には、著作権法上は私的使用として許諾が不要であるが、見るだけでも十分利用価値がある著作物については、複製、公衆送信の権利関係のバランスを考慮し、私情協独自の判断で、1年間あたりの閲覧料を別途設定するような工夫をしている。このような料金規程を含めて、著作権の管理事業法に即して管理委託契約約款を作成した。内容については文化庁の助言を受け策定してきた。
 権利処理の代行のイメージは、ログイン、検索を行い、閲覧するかどうかの選択をする。そして、研究、教育の利用目的を選択して、課金の確認の段階に入る。その際二次著作物の場合には原著作者から個別に使用の許諾を取っていただくことを前提に権利処理の代行を進めたいと考えている。
 企業などの代行は、別途申し合わせを行い、コンテンツの著作権を持っている関係機関と私情協が接触して、代行事業への参加を要請していく。その際、使用料は先方の希望を取り次ぎすることになるが、大学のスケールメリットを活かして許諾条件を緩和するなど大学の要望を限りなく反映できるように交渉することを考えている。代行の手数料は、過度の負担にならないように考えていきたい。後日改めて文書で意見をいただき、その上で進める予定にしている。


5.教員による情報機器を利用した授業改善調査の結果について

 加盟校の講師以上の58,231名に調査した結果、25,213名から回答があった。基礎学力の低下という大きな教育問題になってきており、授業運営に支障を来している。授業への希望は、教える授業から学ぶ授業にしたい。3年間で情報機器を授業に使用している教員方が1割以上増えた。大学で3割、短大で4割近くになった。使用していない教員も3年後は条件が整えば使用するが大半となっており、割合は高くなると思われる。授業での使用状況は、インターネットでの情報検索、学生間とのコミニュケーションとなっており、Webサイトを活用した自学自習、いつでもどこでも学習が可能なeラーニングの取り組みが本格的に始まるように見受けられる。学系別には、専門家の助言を得る授業、大学間による講評授業、擬似環境のシミュレーションなどが特徴的となっている。今後の使用計画としては、教育のオープン化を意識した授業が計画されている。教育効果は、3年前と比べ理解力が高まっているが、問題点としてはノートをとらない傾向がかなり増えている。教員の負担が重くなっている。問題点については、経済学のように、本を読まなくなってネットの知識だけで済ませようとする、心理学のように、指導をメールだけで始めたら休む暇がなくなってしまって大変などの指摘もある。教材・資料の電子化は、65%が電子化しているが、35%は情報技術の能力がない、学校側の支援体制とか環境が不充分という意見が大半。支援体制で重要なものを3年前と比べると、コーディネートスタッフの確保、教室で助言・支援するTA、機器操作の要員確保が多い。基本問題としては、教育ポリシーが大学にないことから、大学が本格的に教育改善についてどう考えるのかという組織的な検討が必要であることが判明した。


6.私立大学のセキュリティポリシーのガイドライン報告について

 大学をあげてこの問題に取り組んでいただく必要がある。予算、人的な対応も必要になることから、トップマネジメントに携わる管理者の方に理解いただくよう概要をとりまとめた。実際にセキュリティ対策を実施する部門、実際に管理に携わる人を対象に基本方針、対策基準、実施手順の3階層モデルを重点的にとりまとめた。特に対策基準は、かなり膨大な資料となっており、私情協のWebページ上に置いて参考に資することにした。官邸版と言われるポリシーのガイドライン、あるいは国立大学版と比較して、実施手順等のところは私立大学の実情を考慮して、不正侵入の検知するIDS等を含めてとりまとめたところが特徴である。本書を活用して会員大学の情報資産の保護、加害者を出さないように全学をあげて取り組んでいただきたい。



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