私情協ニュース2

平成14年度大学情報化全国大会開催される


 これまで「私情協大会」と呼ばれていた私情協の行事のメインである大会は、今年から名称を「大学情報化全国大会」と替えた。通算で16回目を迎えるこの大会は、今回から文部科学省の後援を受けることになった。これまでも事例発表に限っては私学以外にも広げていたが、参加対象者を広く国公立にも広げ、我が国のすべての大学等を対象に教育の情報化に資することを目指して、文部科学省の後援を機会に、名称を大学情報化全国大会に改称した次第である。
 今回の大会は、昨年度のテーマを発展させて、「サイバーキャンパスの推進」というメインテーマを掲げ、9月3日から5日までの3日間、アルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)で開催された。今回の参加者数は、466名(153大学、24短期大学、賛助会員31社)であり、昨年とほぼ同数だった。賛助会員37社による展示会では、2日目の午後から教育の情報化関連の多くの展示が行われ、大変好評であった。
 初日は、e-leaningの最近の状況に焦点が当てられた。まず、基調講演として、清水康敬氏(国立教育政策研究所・教育研究情報センター長)による「サイバーキャンパスとこれからの大学教育」で、サイバーキャンパスに関する視点とe-learningの取り組み方の方向性が示された。続いて、「e-learningへの取り組み」に関してメーカー、塾、大学のそれぞれから合計7件の事例紹介が行われた。これらに関連して、初日の最後に、私情協の最近の取り組みである「サイバー・キャンパス・コンソーシアム(CCC)」および「大学等電子著作物権利処理事業」の紹介が、井端事務局長から行われた。
 2日目は例年通り、A、B、C、Dと並列に四つの会場に分かれて、合計61件の大会発表が行われ、立ち見の会場が出るほどの盛況であった。
 3日目の午前は、当協会のネットワーク研究委員会・不正侵入対策小委員会および情報倫理教育振興研究委員会の主催で「大学におけるネットワークセキュリティポリシーのあり方」が発表された。午後は、先進的で具体的な事例紹介と最新の情報技術の紹介に当てられた。前半は、北村 了氏(金沢工業大学)から「マルチメディア・キャンパス―キャンパス・ネットワークと教材のマルチメディア化―」、柴山 守氏(大阪市立大学)から「図書館部門における近世資料デジタルアーカイブと提供技術」の紹介があった。後半は、翻訳ソフトの現状として、日本アイ・ビー・エム(株)から「翻訳ソフト開発への取り組み」、シャープシステムプロダクト(株)から「翻訳支援ソフトの特長技術と英語学習支援機能」の紹介が、また、教育支援システムの現状として、日立公共システムエンジニアリング(株)から「Web対応授業支援ソフトの紹介」が、松下電器産業(株)から「教材作成支援システムへの取組み―音と映像で、伝わるe-learning−」が行われた。
 なお、2日目の最後は、例年同様に懇親会が催された。
 次に、各セッションの内容について報告する。



第1日目 9月3日

基調講演
「サイバーキャンパスとこれからの大学」

国立教育政策研究所
教育研究情報センター長 清水 康敬氏

 これからの大学のサイバーキャンパス化の在り方について遠隔授業やe-learningの日本の先駆者である清水康敬氏より講演いただいた。概要は、主に以下の通りである。「今後、大学のサイバー化による大学の高度化は必須である。その時の視点として大学運営を教員中心から学生中心へ移すことが重要であると共に、e-learningが最も重要なキーワードになる。ただし、e-learningを安易に考えて導入したり、拡大解釈をしてバラ色の予想をして導入したりすると失敗をする。例えば、これまでの集合教育をそのままe-learningに置き換えたり、一部の人の努力のみで実施したりしたら失敗をする。また、遠隔授業をやればe-learningだとか、コンピュータを使った双方向ならばe-learningだと言うのも間違いである。管理者が理念を持って取り組む、目標を限定する、オンキャンパスとオフキャンパスをサンドイッチ型(ハイブリッド型)にする、学習者に意欲がない限り続かない、等々多くを示唆された。e-learningとは、「ディスプレイの提示内容に対して、能動的に学習者がインタラクティブに学ぶ形態」と定義でき、最低限、提示機能、チュータリング機能、対話機能の三つの機能が必須条件である。e-learningの成立条件は、アメリカの成功例、失敗例が示すように、内容が明確に限定されていて、両者に情報リテラシーがあり、学習者に意欲があることである。これ以外に、定着させる努力が必要であり、かつ著作権処理をしっかりとやっておく必要がある。メディア利用のコース開発における我が国とアメリカとの根本的違いは、インストラクションデザインという概念と専門家の存在にある。これは我が国には存在しない。分析、設計、開発、実施、評価のステップを確実に進んでいかなければならない。」
 最後に、大学教育のサイバースペース化は避けて通れないこと、そのためには、e-learningのための質の高い教育内容を考える、高いインセンティブを持たせる仕組みを構築する、総合化された高度の情報環境を整備する、受講後のフォローアップをしっかりとする仕組みを持つ、著作権に配慮をする、等が必要であると強調された。


事例紹介「e-learningへの取組み」

1. 「鹿島におけるe-learningへの取組み−MITとの未来型教育システムに関する研究−」

鹿島建設株式会社
河村 一氏

 鹿島建設(株)では、ITソリューション部を作り、事業拡大の一環として、e-education ビジネスを開始し、キャンパス情報環境構築とともに、マサチューセッツ工科大学(MIT)と未来型教育システムに関する研究をスタートさせた。具体的には、MITのWebによるコースマネージメントシステムCaddieを日本語化して、日本に導入する。なお、MITが開発した教育支援システムCaddieとは、講義コンテンツを体系的に蓄積することを主な目的とした教育環境改革支援ツールである。これらに関する具体的な説明の前に、MITが現在行っているIT技術を用いた新しい教育改革とそのための組織、開発をしている各種のプログラムやシステム等の紹介がなされた。特に、MITの新しい修士プログラムであるシステム・デザインアンドマネージメントにおける遠隔授業やオープンコースウエアの現状が紹介された。


2. 「インターネットを活用した日本人学校向け遠隔教育の試み」

NTTコミュニケーションズ株式会社
薗 一春氏

 NTTコミュニケーションズが行った、「外国にある日本人学校と日本人のための補習校との間での遠隔授業の実験」の概要が紹介された。例えば、香港には日本人学校があるが、シンガポールやグアムには補習校しかなく、日本人の教師はいない。そこで、香港の日本人学校の教師が、シンガポールやグアムの補習校の生徒にインターネット経由で遠隔授業を行う試みで、音声と共に、プロジェクターを用いて双方向に画像を共有できるようにしている。さらに、これらのやり取りをそれ以外の補習校、例えば、フランス、イギリス、アメリカ、ハンガリー等の各地に点在する補習校でも聴講することができるシステムの実験である。このシステムは、教師が一人で、受講者が各地に点在しているような環境での授業、研修、セミナー等をオンラインで実行できるe-learningの経済的なプラットフォームを提供できる可能性がある。


3. 「トレンドマイクロにおける“e”を活用した人材教育への取り組み」

トレンドマイクロ株式会社
成田 均氏

 本発表は社員個々のエンプロイアビリティ(雇われる力)を高めるために、社員教育を徹底して実施している実践報告である。知識集約型産業の安定的成長をさせるには、組織中心の教育に対する投資だけでなく、社員個々の意識を高揚させる必要があるとの認識のため、eCumpusは構築された。この報告では社内教育とe-Learningの定着のポイントして次のようにまとめている。1)スタート時から、大きな成果は生まれない。2)運用ルールやサポート体制等を明確に。3)段階的なアプローチを前提として計画を立てる。


4. 「Global English 法人、学校用学習サービス」

グローバルイングリッシュ・ジャパン株式会社
佐藤 洋氏

 インターネットによる英語学習コンテンツの作成とサービスを開発した英語学習ソフトの内容と利用状況の紹介である。特に注目されるのは、独自の教授法の開発とインターネットの機能を効果的に活用している点と、これらのコンテンツとシステムを大学の正規の授業やエクステンションの授業に導入し、教員との連携で単位を与えていることである。今後、コンテンツの作成や配信に大学や教育機関だけでなく、ITスキルの高い企業と協調してより効果的なコンテンツの開発が行われる可能性を示唆する発表である。


5. 河合塾におけるe-Learningの方向性」

学校法人河合塾
三品 壽氏

 企業内研修や資格試験対策等では、目標収斂型のコンテンツから成る管理誘導型のシステムが普及している。修了資格や単位認定といった強制力のない予備校でのe-Learningの試みとして、テーマ・分野ごとに3分以内で修得できる「モジュール」を必要に応じて自由に組み合わせて利用できる、河合塾で開発した分散型のシステムについて紹介いただいた。
 利用者は問題モジュールから必要に応じてヒントモジュールを参照しながら解説モジュールで解法を学び、そこから各テーマ別のモジュールに進み講義を見ながら学習していく。特に問題解説でアナログ(手書き)表現が用いられていたり、講義のエッセンスが3分以内の動画でまとめられていたりと、大変ユニークなシステムとなっている。


6. 「インターネット利用遠隔教育による高大連携教育」

岡山理科大学 総合情報学部助教授
大西 荘一氏

 岡山情報ハイウェイと岡山ギガビットネットワークを活用し、約40km離れている岡山理科大学と岡山県立鴨方高校との間で平成14年4月から実施されている、インターネットによる遠隔教育についてご説明いただいた。
 情報科学科1年前期に設置されている「インターネット入門」という1単位の科目を大学で講義し、鴨方高校の生徒が、ネットワークを経由し同時双方向で、パワーポイントと教授者・学習者の動画像が映し出された画面を見て、高校に居ながら大学の授業を受けることができる。また授業を補完するために、VODを含む非同期双方向・いつでも型のホームページも開設した。鴨方高校からは16名が参加し、8名がC判定以上の成績を収め、鴨方高校と岡山理科大学の両方の単位を取得した。
 岡山県では、独自に設置した岡山情報ハイウェイに全県立高校が1.5Mbpで接続されている。岡山理科大学はこのインフラを活用して、さらに広範な高大連携を目指し、「同時に複数の高校との遠隔教育」と「高大連携に適合した科目の開設と教材の開発」という課題に取り組んでいる。


7. 「サイバーユニバーシティーコンソーシアムを目指して
−インターネットオンデマンド授業/海外共同ゼミの実践−」

早稲田大学教務部デジタル化事業推進室室長・
遠隔教育センター所長 筧 捷彦氏

 早稲田大学が全学体制で取り組んでいる「情報化推進プログラム」の全容と、二つの実践事例と今後の展開について紹介いただいた。プログラムは第I期(1997-1999年度)に5万人の学生が共通して利用でき、多様な研究を支える情報環境を構築、提供し、第II期(2000-2002年度)にオープン教育センター設置や海外協力ゼミなどによる教育のオープン化と、プロジェクト研究所による研究のオープン化を行い、第III期(2003-2005年度)で「世界と大学の連続性・異文化の日常化」をキーワードにグローカルユニバーシティの実現を目指す、という内容になっている。
 遠隔教育推進・支援体制としては、教務部情報企画課が全体の企画、調整を行い、遠隔教育センターが講義の配信、ITセンターが利用者支援を行っている。また情報ネットワークを基盤とした21世紀の大学モデル実現に賛同した24社の企業から成るDCC(Digital Campus Consortium)を立ち上げ、デジタル化事業推進室がその事務局となり事業化を推進している。
 実践事例として、「オンデマンド授業」と「海外共同ゼミ」についてビデオ上映と詳細な解説があった。早稲田大学が主催するCCDL(Cross-Cultural Distance Learning)には、現在世界の33大学が加盟している。最後に、今後の遠隔教育事業計画とCUC(Cyber University Consortium)の紹介があった。



第2日目 9月4日

大会発表(61件)

A-1  聴音のためのトレーニングプログラム利用とその効果

武蔵野短期大学  荻原 尚氏、木川 裕氏

 一般教育科目である「音楽」の授業の中で用いる「聴音」、「音楽理論」、「MIDI」から成る教育プログラムを開発中である。今回は140名の被験者を、プログラムを利用するグループと利用しないグループに分け、アンケート調査によって聴音用トレーニングプログラムが学生の聴音能力向上に役立つことを確かめた。


A-2  コンピュータによる予復習システムの利用−幼児教育学科における英語教育を題材として−

武蔵野短期大学  尾形 重政氏、木川 裕氏

 幼児教育学科の学生を対象に、苦手意識を克服するとともに、モチベーションの向上を図るため、授業カリキュラムに対応した予習・復習のための自学自習のプログラムを実験的に構築した。「英会話I」を履修している146名を対象にアンケート調査とヒアリングを実施したところ、一定の効果が確認できた。


A-3  中国語音声学習補助システム(声調編)

成蹊大学  湯山 トミ子氏、武田 紀子氏

 日本語に比べ、一音節で急激かつ曲線的に変化する中国語の声調を、効率的かつ効果的に習得することができる学習補助システムを開発した。発話された音声を波形により視覚的に提示し、ネイティブスピーカーの声調と比較することによって、効果的に矯正でき、試用期間ではあるが、使用した学生から一定の評価を得ている。


A-4  音声波形分析装置(Multi-Speech)による英語のリズムの習得

東京女子大学  大塚 貞子氏、小野 祥子氏

 学生の英語発音の波形とネイティブスピーカーのモデルの波形を、音声波形分析ソフトを用いて視覚的に提示し、リズムの違いをフィードバックして学生自身が矯正できるような環境を作り、実際に繰り返し学習を行った。学生は各自の欠点を理解し、意欲的に練習し、リズム感ある発音への改良に効果があった。


A-5  リメディアル教育のためのWBT型個別化学習システムについて

いわき明星大学  高山 文雄氏、鈴木 亮史氏、川合 英俊氏

 工業系へ進んだ学生の基礎学力を向上させるリメディアル教育として数学を取り上げ、個別化教授法を指向したCAIシステムを構築した。各単元からランダムに4問を出題し、全問正解の場合に上位の単元に進み、2回不正解の場合は教員への質問を促す。学生の数学への興味が高まるなどの効果がみられた。


A-6 電子カルテを用いた情報工学実験の試み

拓殖大学 佐々木 整氏、蓑原 隆氏、近藤 秀文氏
西田 誠幸氏、竹谷 誠氏

 Javaプログラムを習得する「情報工学実験」という授業での指導や努力過程の評価等を円滑、適切に行うため、患者を学習者とし、病歴や所見、処置などを学習履歴や学習過程に置き換えた「電子カルテ」を用いる、プロトタイプシステムの開発を行っている。今後実際に授業で用い、実用的なシステムの完成を目指したい。


A-7 マネジメント・ゲームにおける経営学の習得とプレゼンテーション能力の育成

大阪国際大学 市川 直樹氏、韓 尚秀氏、田窪 美葉氏

 韓国群山大学校も参加し、単一製品の市場において、複数のチームが売上高、市場占有率、資本利益率等を争うマネジメント・ゲームを通じて経営学の実践的習得を図り、併せて経営計画発表会、株主総会を通じてプレゼンテーションスキルの向上を目指している。今年度はソフトをWeb化し、ゼミ対抗戦を検討している。


A-8 構造物の変形と力の流れをイメージ化する教育支援システム

広島工業大学 浅野 照雄氏、岩井 哲氏

 力の作用による物体の変形をコンピュータでビジュアル化し、それを誇張することによって現象を認識しやすくする教育支援システムを構築した。構造物の変形を曲げ応力度および断面力とともに示し、力の流れを鮮明に意識できるようにした。模型の曲げモーメントや変形をイメージさせ、その後本システムで確認させ、能力開発を図った。


A-9 文系学部学生のフレッシュマン・キャンプにおけるリテラシー教育について

日本大学 山口 秀樹氏、白瀬 朋仙氏

 商経学科1年生対象の夏期休暇を利用した2泊3日の情報機器合宿と、国際情報ビジネス学科が導入したゴールデンウィークに実施する2泊3日のフレッシュマン・キャンプでの講座内容とを比較し、短期大学における初等情報教育の総括の意義と、4年制大学での初期段階のリテラシーへの認識を高める効果について発表された。


A-10 パソコンをツールとして使用する授業空間の演出

奈良産業大学 中尾 泰士氏、日下 直也氏

 これまでのコンピュータ教育は、コンピュータ・リテラシーが主流でいわゆるPC教室で行われていた。しかし、これからはリテラシー教育の役目から専門の教育研究にツールとして使用されるのが本質である。ツールとしてPCを使いこなせる教室のデザインについて発表された。


A-11 記述式試験の採点支援ソフトの作成と考察

日本工業大学 小林 哲二氏

 期末試験に出題される問題の解答を記述式で行うことは、選択式より多くのメリットがある。しかし、その効率性から教員の負荷が大きくかかってしまう。この問題を記述式で解答された用紙をスキャナーで画像形式で取り込み、ソフトで採点支援するシステムを開発した。


A-12 データベースを備えたインタラクティブな学科Webサイトの開設と運用およびシステム開発

愛知工業大学 中村 栄治氏、池田 輝政氏、沢田 克敏氏

 よりきめの細かい学生指導をするために、個々の学生の多くの情報をリアルタイムに教員間で共有できるシステムは有効である。また、個人(学生)対個人(教員)間でそれらの情報がプライバシーを保ちながら可能にできたらより効果的である。この実現を携帯電話の活用も含め開発した。


A-13 授業支援に関するシステムの開発とその運用について

神奈川大学 内田 智史氏

 ネットワーク化された大学のコンピュータ演習室にフリーソフトやWebサーバを構築しアプリケーションを作成するJava等の安定したツールや言語が提供されている。これらを用いて、自前で安価に授業を支援するシステムを開発し運用したことについて報告された。


A-14 汎用性を考慮したメールシステムの設計と構築

高千穂大学 中山 良一氏、渡邉 恵子氏

 学生の電子メールを中心とするインターネットを介したコミュニケーションが学生の間で普及拡大している。特に携帯電話を端末とする学生も多い。このことに注目し、学生の多様化する接続環境を支援する大学のインターネットを基盤としたメールシステムを見直し、新しいシステムを構築した。


A-15 マルチサーバを利用した理系学生のための情報通信システムの設計と構築

千葉工業大学 高木 徹氏

 理工系の情報環境が多様化し、通信環境やファイル共有環境を整備するためのサーバを構築するのが困難となっている。そこで、インターネットと学内LANを活用して総合ネットワークシステム(マルチサーバ)を設計した。このシステムは現在は設計段階で実装されていないので今後の成果に期待したい。


B-1 安・即・易のE-Learningシステム開発

大谷女子大学 大倉 孝昭氏
大谷女子短期大学 近藤 篤俊氏

 大講義室で行う授業科目において、出席者に対する授業フォローを目的としたコンテンツ作成・配信システムの開発事例が報告された。対面授業をデジタルビデオに収録し、授業終了直後に配信するものである。安価・簡易である点に特長がある。


B-2 Java応用による理工学教育を継続的支援するWEBコンテンツ開発

広島工業大学 宋 相載氏

 学生参加型の双方向教育へと授業を改善する目的で、出席確認、Web作成支援、レポート提出・確認、授業評価機能を持つWebコンテンツ開発計画が報告された。特長は、諸機能がオブジェクト指向のビジュアル・アプリケーションに適した開発言語を用いる点にあった。


B-3 専門教育のために備えるべきマルチメディア教室の機能の検討

愛知医科大学 安藤 裕明氏

 教室システムの構築例が報告された。クローニングツールでは、OS等約6GBの雛形データ作成時間が25分、124台のPCへのネットワークによるリストア時間は20分であった。また、市販製品利用の授業支援システムでは、キーボードロック、出席管理、教材配布・回収機能の使用頻度が高かった。


B-4 課外学習環境の改善のためのパソコン利用予約システムの導入

武庫川女子大学 濱谷 英次氏

 PC教室の混雑による順番待ちを解消するための利用予約システム開発事例について報告された。学内のキャンパスネットワークに接続された端末を通じて予約するが、予約可能な日数、時間帯区分、利用時間を変数とする予約スケジュールについて利用者の評価はおおむね良好であった。


B-5 嘉悦大学Web履修申請システム導入の目的とその適用

嘉悦大学 森本 孝氏、宮本 勉氏、坂口 寿一氏
鷲見 研作氏、南 憲一氏、滑川 光裕氏

 2001年度から導入したWebによる履修登録システムの運用実績が報告された。特長としては、学生の個人情報を納めたデータベースと連携をとることにより、履修可能科目の表示や即時のエラーチェックが可能になる。また、個別指導のためのデータとして教育向上機能が期待されるとの意向が表明された。


B-6 教育的立場から見た情報環境の整備−教務手続きのIT化(履修登録)−

京都文教大学 中村 博幸氏、石田 晋治氏、村山 孝道氏

 小規模文系大学における教育のIT化の事例が報告された。学生へのPC携帯の義務化、LANの開設、学生IDの配布などを行い、2001年度からWebによる履修登録を開始した。履修登録と学生データベースとの連携において、セキュリティ対策が今後の課題であることが表明された。


B-7 阪南大学におけるWebによる履修登録システム

阪南大学 濱 道生氏、小林 清作氏

 履修登録システムの導入により、正確な時間割作成が可能になったこと、在宅のまま登録が行えたこと、卒業見込み証明書の発行が早期化したこと、留学先からの履修登録が可能になったこと、窓口指導業務が軽減されたこと等の利点が報告された。


B-8 リアルタイム完結型Web履修登録システムについて

日本福祉大学 加藤 由美氏

 Webによる履修登録システムの独自開発例が報告された。履修登録時に卒業・進級・資格取得の可否等の判定を行う付加機能を持たせるとともに、学生自身によるエラー修正を可能にした。今後は、履修状況の集計・分析機能の追加などが計画されている。


B-9 コミュニティサイト構築ツール「XOOPS」を利用した授業支援

千葉経済大学短期大学部 江上 邦博氏

 授業時間中に学生の知識や理解度を確認する必要性から、学生からのメッセージを教員に伝え、教員がそれを評価するシステム構築に、コミュニティサイト構築用ソフトウェアであるXOOPSを用いた事例が報告された。履修者に好評であり、意図した成果が得られた強力なツールに成長する可能性があると表明された。


B-10 再起動で復元するマルチブート環境によるパソコン教室の構築

国際基督教大学 冨田 重成氏、小林 智子氏

 情報処理教室にある多くのパソコンを初期化するのはかなりの労力がかかる。前の学習者が書きこみ、変更をしているからである。本発表は、7教室240台のクライアントを、再起動時に、起動時間を大幅に短縮し、かつ常に特定の初期状態に即座に復元できるシステムの構成とその実施結果の報告である。


B-11 学生によるオンライン授業評価とそのリアルタイムな分析が及ぼす授業改善への効果

四国大学 山本 耕司氏、辻岡 卓氏、稲井 千寿子氏
青木 記子氏、細川 康輝氏、戸川 聡氏

 オンライン端末を使って授業評価ができ、かつ、分析結果も即座にWeb上で確認できるシステムを開発、運用している。ゼミ、卒論も含めて学部全部の授業に対して900名の学生を対象に授業評価を実施し、83%の授業評価の回答率を得ている。授業の最後に一括して評価をするのではなく、学期全体のいつでも評価できるために、現在の授業にすぐにフィードバックできるメリットを持つ。このため、学生の実態と教師の予想との間の隔たりに早期に気がつき、教員側だけでなく学生自身の問題をも早く気づかせることができるようになった。


B-12 Webシステム性能改善

南山大学 瀬尾 好広氏、池内 仁氏

 アプリケーションサーバを並列に稼動させることで、これまでのネックであったWebを使った履修科目登録・変更・確認システムの性能を改善することができた。負荷試験の結果、要求が集中するサーバを見出し、そこを比較的低性能の計算機で並列化した。その結果、総処理時間が処理要求数に線形に比例するようになった。


B-13 学習院におけるマルチメディア支援体制

学習院大学 水上 悦雄氏、入澤 寿美氏
学習院女子大学 市川 収氏
未踏科学技術協会 松本 喜以子氏

 教職員対象の「コンピュータシステム支援組織」の3年間の活動内容とその成果に関する報告である。機器の管理と保守、機器利用トラブルの支援、よろず相談等が主な業務である。窓口が一元化されたことにより、ユーザにとって対応が分かりやすく、かつ解決を早めることができた。今後、すべての教職員がうまく利用するよう広めることが期待されている。


B-14 ログオンメッセージおよび課題提出システム構築によるユーザビリティの向上

奈良産業大学 日下 直也氏

 学生がPCにログオンした時、その学生の個人向けのメッセージを表示するシステム、および課題提出が統一的にかつ簡潔にできる二つのシステム構築を通して、ユーザビリティの向上を図った。両者とも便利で分かりやすく、シンプルであるといった効果がある反面、管理者の負担増加や機能の追加要求などの課題も残されている。


B-15 マルチメディア資料検索/管理Webアプリケーションの開発

関西大学 冬木 正彦氏、北村 裕氏、植木 泰博氏、原 和宏氏

 外国語教育研究機構が所蔵するマルチメディア資料に対して、Webブラウザを通して学内外から検索でき、貸出予約や貸出業務等の管理を支援できるシステムを構築し、運用を始めた。利用者に対するサービスの向上と窓口業務の支援の効率化に貢献しているが、いくつかの改善点や要望等が寄せられており、今後、それらを改善していくとともに、レスポンス時間や信頼性等の各種の評価を実施して行く予定である。


B-16 ノートコンピュータを用いた教育の情報化とその効果

広島工業大学 長坂 康史氏

 学生全員にノートPCを購入させて行っている講義におけるノートPCの利用方法とその効果に関する報告である。講義そのものだけでなく、出欠管理、資料配布、レポート提出にも利用している。このような講義形態に対して、58%の学生が「効果的である」、5%が否定的、37%が「どちらともいえない」という回答であった。講義資料をWeb上で公開して、いつでも閲覧、ダウンロードできるようにしておくことは、学生も望んでおり、教育効果が非常に大きいことが分かった。


C-1 新入学生の対インターネット意識について

立正大学 山下 倫範氏、細谷 順二氏
武蔵野短期大学 木川 裕氏
日本データパシフィック(株) 平 治彦氏

 新入生の情報倫理意識やインターネット中毒性をアンケート形式で調査した。その結果、インターネットの過度な利用に対する弊害意識や裏側での仕組みに対する不安感が伺えた。情報基礎教育において、このような意識、特にネット依存症にも対応する情報倫理教育のためのWBTが必要であることが報告された。


C-2 女子学生のコンピュータに対する意識の変化−1991年と2002年の比較−

日本女子大学 立花 厚子氏、山内 恵美子氏

 1、2年生を対象として、個人環境やコンピュータ意識と関連用語の知識度についてアンケート調査を行い、比較した。パソコン所有率やネット接続など環境条件、用語の知識は向上し、意識としては資格取得、日常生活での必要性や、楽しいものという意見が増えた。意識変化に対応した教育内容が必要である。


C-3 学習効果測定を導入した英語カリキュラム−その実践と効果測定方法の有効性

明海大学 川成 美香氏

 1、2年生向けの集中英語教育科目の効果測定に、従来利用しているTOEFLに加えてPhone Passというシステムを利用し、その効果を評価した。これは10分程度の電話による応答をもとに評価ができるもので、双方のスコアに相関が見られた。口頭表現力評価の手段として有効である。


C-4 計算機用語認知度による情報関連理解度の測定と、情報教育効果評価への応用

広島工業大学 中村 靖氏、小嶋 弘行氏、喜久川 政吉氏

 ノートPC所持の効果を調べる目的で、所持する学生集団とそうでない学生集団とについて、入学直後、2ヶ月後および8ヶ月後に計算機用語知識の調査を行った。用語は計算機一般、ハード、ソフト、ネットワークの分野について設定した。結果としてPC所持組の方が20%以上の認知度の向上を示し、PC所持の効果が示された。


C-5 マルチメディア・ハンドリング・ツールを用いた教育評価システム

甲南大学 辻田 忠弘氏、土井 康孝氏、植木 雅昭氏
吉川 太朗氏、西河 俊伸氏

 マルチメディア・ハンドリングツールを用いて学生の顔写真、学籍番号、出席状況や成績等をデータベース化し、成績評価を行うシステムを開発した。過去の学生の評価を参照して公平な評価ができるようにした。学生も出席状況や成績を見ることができる。出席点と期末試験との相関がほとんどないことがわかった。


C-6 オンデマンド型遠隔授業の実現と評価

文教大学 宮川 裕之氏、中條 安芸子氏、佐久間 拓也氏

 同一科目の授業を学生の希望にしたがってオンデマンド型と対面型とに分けて同時に受講させ、その比較を行った。前者は理解度クイズを置き、その成績で先に進むようにした。終了後のアンケート調査の結果、進度の評価が同一である点を除き、授業の満足度やわかりやすさ、質問のしやすさなどすべての点で前者の評価が高かった。


C-7 情報等教育用統合ソフトの作成と動画像教材を用いた教育実践

神戸学院女子短期大学 中野 修氏、橋本 寿夫氏、アントニー・コミノス氏
劉 幸宇氏、NeoSys Ltd.、前浪 裕吾氏
神戸山手女子短期大学 渡辺 卓也氏
姫路工業大学 林 治尚氏
摩耶兵庫高校 明石 雅夫氏

 文字入力、語学学習、教材アクセス、URLアクセス、マニュアル閲覧などを統合したソフトを開発し、リテラシー教育に利用している。動画を取り入れることで親しみやすさを持たせた。教材は情報化教育法を履修した学生が授業の中で作成したもので、利用者の意見をフィードバックし、その動機付けにも役立てている。


C-8 会計教育におけるCAIの実践

愛知工業大学 岡崎 一浩氏

 会計における借り方・貸し方の仕分けを有向グラフ化し、パワーポイントでビジュアル化した。キャッシュフローなども図表で説明できる。これにより質問への説明が容易になり、またネットに載せることで復習も可能となった。試験の成績でその効果が明らかになった。


C-9 武蔵大学経済学部E-教育コンテンツについて

武蔵大学 松島 桂樹氏、梅田 茂樹氏、久保田 敬一氏

 経済、経営、金融の3学科の1年生を対象に、各学科で身につけるべき知識を標準化し、それをまとめたWebコンテンツを作成した。学内ネットで公開し、教員の補助教材や学生の自習教材として利用できる。この教材に基づく共通基礎科目の設置や、2年生以上の学生についての上級コンテンツの開発も進めていく。


C-10 双方向のインターネット遠隔教育実施報告とその教育効果

東京理科大学 田崎 美弥子氏、日下部 慧氏、加納 誠氏、新妻 弘氏、津田 惟雄氏

 遠隔地に勤務する理数教育の教職につく社会人等を対象として、オンデマンド型教材(Web)と双方向型教材(テレビ会議方式)の講義配信を組み合わせた遠隔地教育の実施結果について述べたものである。修士入門レベルの心理学、数学、物理学、化学について、公募受講者を対象に実施した結果、有効性を確かめている。


C-11 ウェブ補助教材の受容意識変化について

東京経済大学 佐藤 修氏、一瀬 益夫氏、安藤 明之氏
若尾 良男氏、中 光政氏、竹内 秀一氏
堀 泰裕氏

 多様な学生にきめ細かく対応するためにWebによる教材の受容性について検討し、自主的な参加型・協調型学習を目指して実証的に研究したものである。受容度には、有用性の評価が直接に影響していること、主観的規範や使いやすさの評価は利用意図には直接影響しないこと等を示している。


C-12 画像プログラミング演習によるC言語導入授業の試み

大阪電気通信大学短期大学部 高見 友幸氏、津村 一郎氏
大阪電気通信大学 加藤 常員氏

 C言語学習の授業において、プログラミング導入段階の題材として画像データを選び、基礎演習授業を行った試みについて述べている。画像データ処理を主要課題とすることでオブジェクトを視覚的存在として理解しやすくするとともに、演習内容に豊富な変化と興味を持たせることを可能にしている。


C-13 電気工学基礎科目におけるインターネットを利用した教育システムの開発

福岡工業大学 梶原 寿了氏、池田 和生氏

 インターネットアプリケーションによって、基礎科目の学習状況を把握するシステムを構築し実施した結果について述べている。システムはMacintoshベースで開発環境とデータベースシステムを用いて構築し、教材(文書ファイル、手書き、写真)をサーバに載せ、択一式の問題の解答状況を教員がWebブラウザで把握し補習へ役立てている。


C-14 ホームページを利用した計算化学教材の開発

奈良大学 湊 敏氏
奈良教育大学 山辺 信一氏

 計算化学の理解を目的として、高校の化学教科書程度の知識を基本とした教材の開発を行ったものである。水素結合の分子軌道計算を取り上げ、3次元表示にWeb3D技術、アニメーションにCGソフト、計算の疑似体験にJavaScript、Q&AコーナーにCGI技術を用いて構築している。


C-15 “モジュール化”による効率的な情報処理教育用テキストの作成:ネットワークを利用した教育教材の共有化への試論

日本大学 後藤 靖宏氏
羽根 秀也氏

 情報リテラシー教育用の教材について、市販テキストではなくモジュール技術で大半を共有しながら、教員の判断で独自のテキストを構成しテキストを生成するシステムを構築した実例について述べている。LinuxOS上でTeXで本情報を蓄積し、構成選択後にpdfやPostscript形式のファイルを生成している。


C-16 ストリーミングプレゼンテーションを利用した教材作成について

東和大学 草間 和美氏、伊藤 政代氏、中田 由紀氏
野口 亜希子氏、若菜 啓孝氏

 家政科(食物栄養専攻)の食品学実験の実験方法について解説したWeb教材を作成した実例について報告された。対象は一度実験を履修済みで今後もこの操作を必要とする学生とし、デジタルビデオ映像(ストリーミング化)、プレゼンテーション資料、写真を編集するソフトウェアを用いて配信する例で比較的容易に可能なことを紹介している。


D-1 インタラクティブなWebを使った「知る・学ぶ・理解する」参加型教材の研究

早稲田大学 安岡 広志氏

 視覚伝達デザイン科目におけるインタラクティブなWebを使った、新たな参加型教材の導入による教育効果が報告された。自らが黄金比の分割、遠近法、色相同化などをWebを通じて体験すること、また、他人がそれにどのように感じているかわかることにより、視覚デザインに関する創造性や独創性の訓練のために一定の効果があることが報告された。


D-2 MBL(Model Based Learning)ライブラリによる教育コンテンツの開発

青山学院大学 佐久田 博司氏
九州工業大学 小林 史典氏
日本大学 青木 義男氏
長岡技術科学大学 永澤 茂氏
新潟工科大学 大金 一二氏
(株)富士通インフォソフトテクノロジ 高橋 和彦氏
MIT Jerome J.Connor

 Javaを利用した動的なWeb上の教育コンテンツ教材について、学習者自身も応用アプリケーションを作成できる環境を構築した。さらに、それを利用した教程を作成し、5年間の実践における教育効果が報告された。その効果についての検討は図形認知のMCT、MRT試験などにより行なわれた。


D-3 データサイエンス教育のためのWeb教材の開発

関西学院大学 雄山 真弓氏
関西学院 丹羽 時彦氏

 従来のリテラシー中心の情報教育を改善し、文化系・理科系に共通する両者に必要なデータサイエンス教育を提案し、そのために開発したWeb教材を報告している。特に、分析前のテーマ設定、注意事項なども含め、さらにデータ分析、グラフ表現を用いた統計解析、それらの分析を基にした報告書の作成を目的とする教材となっている。


D-4 非情報系短期大学の情報リテラシー教育におけるLinuxの活用検討

岐阜聖徳学園大学短期大学部 津森 伸一氏

 Linuxを利用した情報教育を提案し、そのもとでのメリット・デメリットを考察している。Windows環境と操作性が類似するいくつかのソフトを試用し、その評価を報告している。Linuxでは初期導入や管理にある程度の技術をもつ人材が必要であるが、大幅なコスト削減が期待され、今後のソフトの発展が期待される旨の報告があった。


D-5 総合メディア構想第2プロジェクト:上智大学におけるマルチメディア化教材の試み

上智大学 大久保 成氏、島 健氏、鈴木 雄雅氏
金山 勉氏、峰内 暁世氏、伊藤 潔氏

 1998年度より続けられてきたCALLシステムを発展させ、教材の領域を限定しない新たな全学的な教材開発システム「VILLAGE」の全体構想と2001年度の導入成果が報告された。特徴としては、教員が基本方針を出し、学生の参加協力の下で教材を開発するもので、スポーツ科目とマルチメディア技術科目の教材が取り上げられ、その成果が紹介された。


D-6 金沢星陵大学におけるCAIによる学習環境改善計画

金沢星陵大学 二口 聡氏、岡部 昌樹氏、中本 義徳氏
井上 清一氏、沖野 浩二氏

 平成14年度に導入された1年次全学生(1,700名)向けの情報リテラシー科目(主として情報倫理教育の科目)のCAI教育の導入経過とその内容が報告された。情報担当教員とセンター職員とで構成されるCAI導入委員会で行われた検討の結果に基づく授業計画、授業内容と受講者の現状などが報告された。


D-7 Webサイトを利用した「文学」の授業について

岡山理科大学 小田中 章浩氏

 教養共通科目である「文学」をWebサイトを利用して行う教育を試み、その授業内容と効果、および問題点が報告された。基本的には、学生の作文がWebに掲載され、さらにそのコメントがWeb上に掲載される方式である。他の試みとの比較やこのような試みの意義についても報告された。


D-8 講義支援のためのHPの作成とその利用について

東京工科大学 大山 恭弘氏、Jin-Hua She氏

 工学部機械制御工学科の制御工学についての講義をWebを用いて支援する補助教材を作成し、その内容と半期の講義の効果が報告された。このWeb教材では講義内容で説明した実機のシミュレーションが可能である。試験およびレポート提出の直前は利用が多く、一定の成果があったことが報告された。


D-9 大学における創造性・知的財産権一体的教育の試行

東海大学 伴野 明氏、辻 秀一氏

 知的財産権の体験型講義であるが、グループによる発明の発想、創造、発明概要書の作成、特許の申請、特許明細書内容のディベートという一連の授業をWebを効果的に利用しながら一体的に教育する講義の内容を紹介し、その成果が報告された。Web上の情報や特許データベースを利用することにより、大きな教育効果があることが報告された。


D-10 インターネットを活用した体験学習型英語教育システムの構築

九州女子大学 佐藤 美惠子氏

 米国サンフランシスコの「KOIT」ラジオ局と教室をインターネット接続し、英語教育でコンピュータをリアルタイムな情報入手や情報表現のツールとして活用することにより、臨場感溢れる教育環境を創出し、教室自体を「知的生産の場」にする新しい教育システムを提案している。


D-11 情報システム構築による問題解決−学習支援システムの構築を事例として−

沖縄国際大学 大井 肇氏、安里 肇氏、平良 直之氏

 情報関連カリキュラムの専門演習で、「初級システムアドミニストレータWBTシステム」の情報支援システム構築を行うことによって、システムの立案・検討から設計、開発、運用、評価までの流れの中で、情報システムを活用した問題解決の本質を理解させる実践的なビジネスリテラシー教育の事例を紹介している。


D-12 ネットワークシステムの構築実習

青山学院大学 水澤 純一氏、鈴木 哲氏

 演習室に準備してあるデスクトップコンピュータに学生持参のノートPCを連携させて、ブラウザインストール・メール送受信、ファイル共有・FTP、Webサーバの構築、メールサーバ立ち上げ等の課題実習を通じた情報教育実習に不可欠なネットワークシステム構築実習の事例を紹介している。


D-13 パソコン組み立て実習によるハードウェアとネットワーク知識の深化

奈良産業大学 大西 菊太郎氏、仲西 康晃氏

 PC組み立て、OSインストール、ネットワーク接続、サーバ/クライアントシステム構築、商用データベースのインストール・設定、ストリーミングサーバ構築、サーバ運用セキュリティ等の実習教育を通して、システム管理と運用に対する知識と理解を深めるための教育計画を紹介している。


D-14 プレゼンテーション課題における達成目標と課題成績の関連について

帝塚山大学 田中 あゆみ氏、落合 史生氏
北星学園大学 竹原 卓真氏
大阪信愛女学院短期大学 上田 博之氏

 情報処理演習におけるプレゼンテーション課題を対象に、学生の達成目標という個人内の動機付け要因と課題逐行の関連性を教育心理学的な側面から検証を行い、達成目標と課題成績の関連、達成目標や課題成績と自己評価の関連、課題成績変動の規定要因等の統計的な研究を報告している。



第3日目 9月5日

大学におけるネットワークセキュリティポリシーのあり方

私立大学情報教育協会
ネットワーク研究委員会不正侵入対策小委員会、
情報倫理教育振興研究委員会

 当協会ネットワーク研究委員会がとりまとめた「私立大学向けネットワークセキュリティポリシー」2002年度版について、関連委員らが以下のようなテーマで解説を行った。
1)「ネットワークセキュリティーの考え方、策定と運用方法の概要」では、佐々木良一氏(東京電機大学工学部教授)がネットワークポリシーの重要性と要件やセキュリティに関する大学の基本方針、人、物、技術等の各種対応策、構成員の種別に応じたガイドライン作成手順、運用体制、利用者教育のあり方等について解説した。
2)「ネットワークセキュリティーポリシーモデル」では、奥山徹氏(朝日大学経営学部教授)が学生、教員、職員向けのセキュリティポリシーモデル例を解説した。
3)「ネットワークセキュリティーポリシー〜運用と失敗しないために〜」では、奥山氏が策定に際しての留意点および作成と運用の失敗事例を解説した。
4)「技術的対応〜私立大学向け不正侵入検知・監視システムのあり方〜」では、後藤邦夫氏(南山大学数理情報学部教授)がネットワークへの不正侵入を防御するための技術的な対応策等を紹介し、技術では解決できない事項としてネットワークを利用する全構成員に対する情報倫理教育の必要性を解説した。


事例紹介

1. 「マルチメディアキャンパス−キャンパスネットワークと教材のマルチメディア化−」

金沢工業大学 情報処理サービスセンター
電子計算課技師 北村 了氏

 金沢工業大学では平成14年度よりICチップを埋め込んだ公開鍵利用の大学内個人認証システムが稼働している。ここでは、その特色を利用したキャンパスネットワークと情報インフラの概要が紹介された。
 まず、学生並びに教職員の両者向けのサービスとしてWebによる修学支援システムがある。これは、履修システム、休講情報、書籍雑誌検索、マルチメディア教材、ビデオライブラリー、就職のための企業情報検索システムなどがすべて利用可能な統合化されたシステムである。さらに、教職員向けには学習履歴システム、修学履歴システム、成績報告システムなどが利用可能であるが、セキュリティに注意し、部署、教職員ごとのアクセス制御と暗号化通信を行っていることが報告された。また、このシステムの特徴として、学生個々人が学習、資格、課外活動、就職活動などの修学履歴・情報を登録し、参照することができる。
 サポート体制としてはパソコンセンターとマルチメディア考房を設置し、単なるハードやソフト障害のアドバイスだけでなく、CGやMIDIを利用した教材やホームページ作成などの支援も行っている。
 全体として、自ら問題点を発見し、解決する能力を有する技術者の育成を支援するために、場所、時間、スペースに依存しない教育環境を実現するために工夫されたシステムである。まだ、稼働して間もないため、現実の教育効果や問題点は報告がなされなかったが、今後の進展とその成果が期待される。


2. 「図書館部門における近世資料デジタルアーカイブと提供技術」

大阪市立大学 学術総合情報センター
教授 柴山 守氏

 大阪市立大学学術情報総合センター所蔵の「日本経済史資料」の4件の画像を含む古文献資料を基にした、近世資料画像データベースの構築とそのWebによる提供の概要が紹介された。
 初めにこのプロジェクトを統括した学術情報総合センターの概要が報告された。このセンターは図書館部門だけではなく、研究ならびに教育組織としても位置づけられており、12名の専属教員と120名の学生、大学院生の所属する大きな組織である。
 近世資料はすべてデジタル化され、0次資料としてネットワークと独立に保存されている。そのコピーを1次資料として画像データベースと目録・全文データベースに登録し、検索エンジンOpenText5を利用する形で、Web上で提供している。その際、バーチャル図書館の視点での提供を行っている。すなわち、1次情報や目録記述の標準化や情報検索の標準化、資格を含めたインターフェイスの向上などを考慮している。利用者の個別的環境を設定することができ、閲覧の過程、結果の記録、研究成果公開なども可能となっている。また、デジタル資料画像のため、目録と内容の同時閲覧、元文献と現代語訳の同時閲覧なども可能となっており、研究時におけるユーザインターフェースが格段に向上している。
 このほか、東京大学史料編纂所などの他の歴史的データベースとの統合化研究の状況についても報告がなされた。運用面や運営面に関する内部的状況まで分かりやすく説明され、充実した内容紹介であった。



技術動向紹介

 このセッションでは、前半に翻訳支援ソフトの技術動向について、後半には授業支援ソフトウェアの技術動向について、賛助会員から紹介いただいた。

1. 翻訳ソフト

(1)「翻訳支援ソフトの特長技術と英語学習支援機能」

シャープシステムプロダクト株式会社
情報システム事業本部 副持 陽士氏

 同社では、利用者の要求の度合いに応じて5レベルの製品を提供しており、最上位版では英日・日英専門用語辞書を含めて187万語の辞書と、対訳例文23.5万例を搭載している。特長として、英語習熟度に応じて自動的に原文下に訳語を表示する「おまかせ訳ふり」による速読の補助、日本文入力による対応英文例の検索表示などがある。学習者は、各自の習熟度に応じたアシストを得られ、またパソコンや携帯電話を活用した場所を選ばない英語クイズなどにより学習意欲を支援している。

(2)「翻訳支援ソフト開発への取り組み」

日本アイ・ビー・エム株式会社
ソフトウェア開発研究所 宮平 知博氏

 同社の翻訳支援ソフトは、英日パターンベース翻訳エンジンをベースにしており、パソコンでのローカルな翻訳ソフトでは、ブラウザ翻訳、テキスト翻訳、辞書引き、簡単英作文、英文読み上げ機能など、多くの利用の入り口を用意したものとなっている。他方で、サーバ上での機械翻訳エンジンとそのインタフェースにも力を入れており、マルチプラットフォーム上での動作や、Java/C言語でのインタフェース、Java RMIによる翻訳サービスの遠隔利用などを可能としている。また英語を中核として10カ国語間での相互翻訳を支援している。
 今後、音声認識との連携によるリアルタイム翻訳や、複数文の流れに配慮した文脈解析などの技術の発展に期待したい。


2. 教育支援システム

(1)「Web対応授業支援ソフトウェアパッケージ IT's class」

日立公共システムエンジニアリング株式会社
文教システム部 村井 智公氏

 同社では、Webベースの教材作成・学習環境を構築している。シラバスの編集と公開、お知らせの配信(パソコン、携帯電話等での受信)、レポート提出管理、レジュメの作成・提供(テキスト、画像)、Q&A、アンケート作成・集計機能を提供し、必要に応じて構成にフレキシビリティを持たせたものとなっている。

(2)「教材作成支援システムへの取り組み」

松下電器産業株式会社
首都圏本部 明内 裕志氏

 同社では、ブロードバンド利用を前提として音と映像を利用可能なeラーニングのシステムを提供している。各種マルチメディアを活用した講義の複数動画自動収録とWebコンテンツ生成、受託収録サービスを提供するほか、同期型カンファレンス/セミナーシステムにより、各種資料の提示を前提としながら最大12名による双方向のeラーニングとコラボレーションの環境を可能としている。
 現時点で技術的には必要の可能性のある様々な機能が提供されているといえるが、今後各大学の状況(設備、教員、スタッフ、学生、教育手法)における潜在的な需要に、どれだけ柔軟に対応できるかが本格的な活用の鍵となるものと思われる。


(文責:大学情報化全国大会運営委員会
 委員長 明治大学 向殿 政男
 委 員 専修大学 大曽根 匡
  拓殖大学 高橋 敏夫
  東海大学 高橋 隆男
  法政大学 宮脇 典彦
  武蔵工業大学 横井 利彰
  立教大学 坂田 周一
  早稲田大学 船木由喜彦
 湘南工科大学 後藤 宣之)


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