教育支援環境とIT

大阪芸術大学における情報システムの活用



1.はじめに

 芸術は、基本的にアナログ発想に基づくものですから、0か1かを出発点とするデジタル技術の延長上には芸術は存在しない、と言えるでしょう。しかし、情報技術の発達は芸術表現の幅を広げるとともに、教育支援や、広報、学生サービスという点からも、諸種の情報システムは芸術系の当大学にも、今やなくてはならないものです。
 以下、大阪芸術大学における情報システムの活用の現状と今後の課題等について紹介します。
表1 大阪芸術大学 学科一覧
芸術学部




美術 * 油画・日本画・版画コース
彫刻コース
デザイン * コミュニケーションデザインコース
ライフデザインコース
工芸 * 金属工芸コース
陶芸コース
テキスタイル・染織コース
ガラス工芸コース
写真 *  
建築 *  
環境デザイン *  


舞台芸術  
映像 *  
芸術計画  
文芸 *  
放送 *  


音楽 *  
音楽教育  
演奏  
*通信教育部にも設置
 
大学院
芸術制作研究科 修士課程
芸術文化研究科 博士課程(前期・後期)


2.各学科における教育支援環境

 大阪芸術大学は芸術学部に14学科を、大学院に2研究科を開設しています(表1)。
 これらのうち、専用のコンピュータ実習室を有する学科・研究科及びインターネットを活用した教育以外の主な利用目的は次のとおりです。
(学部)
デザイン学科
  2次元・3次元の各種デザイン制作
工芸学科
  染・織用途のテキスタイルデザイン制作
写真学科
  画像合成写真制作
建築学科
  2次元・3次元の建築設計図面制作
環境デザイン学科
  都市環境デザイン制作、都市特性や植生・水系等自然環境の分析
映像学科
  CG動画制作、映画・ビデオのノンリニア編集
芸術計画学科
  デジタル・アーカイヴの制作
放送学科
  ビデオのノンリニア編集
音楽学科
  音響合成、作曲、音響データベース作成
   
(大学院)
芸術制作研究科
  上記制作や編集並びに専門的な研究
 このうち、デザイン学科のコンピュータ実習室は11室稼動しており、基礎的な画像処理、DTP、2次元や3次元のCG・Webデザイン、デジタル動画・アニメなど、多様な目的の授業や実習・制作を行っています。
 大学院芸術制作研究科のコンピュータ実習室については、グラビアページに紹介した建築・環境デザイン両領域の専用実習室の他に、デザイン領域の実習室が2室あります。うち一つはDTP作業を行うための部屋ですが、他の一つは一層充実した設備を備えており、学部より高度な制作のために活用しています。また、ここにはノンリニア編集機も備えて、映画・映像領域の院生が幅広い制作を行えるようにも配慮しています。


3.学生専用のコンピュータ・ルーム

 前項のコンピュータ実習室以外に、当大学は学生がいつでも自由にインターネットにアクセスして、必要な情報を入手したり、求人企業を探して応募したり、あるいは授業における課題に取り組むことができるよう、「インターネット・ルーム」を2室(合計でWindows2000搭載120台、iMac20台)オープンしています。
 その他に、大学院では図書室の一角を院生専用のコンピュータ・ルームとし、また、芸術制作研究科のコンピュータ実習室を極力開放しています。


4.通信教育部音楽学科におけるWeb教材開発

 平成13年度に開設した通信教育部において音楽学科では、当初からWeb教材を開発し、これを有効に活用して受講者と双方向の教育を進めています。以下にその概要を紹介します。
 この通信教育システムは主に四つのシステムによって構築されており、特徴的な機能、役割は次のとおりです。
基本(教育支援)システム
    学生から大学への問い合わせ
スクーリング及び試験の申込み、履修登録レポート(課題)提出
フォーラム活用による人的交流(学生相互、教員を含む)
教材配信システム
    Web教材の配信を行う。学生は配信された教材によって対話的に学習を行う。
教務関連の事務システム
メールシステム
    学生相互のコミュニケーションのための通信環境
 なかでも学習関連の「Web教材配信」「課題提出・添削」「質疑応答」は通常の授業形態に代わるものとして極めて重要な役割を担っています。

(1) 音楽学科通信教育の基本システム

 通信教育の中心的な役割を担う基本システムの画面は、次のとおりです。
図1 基本システムトップ画面
(2) Web教材

 次に、学習の根幹をなすのがマルチメディア・コンテンツによるWeb教材です。現在、音楽学科の11科目の15領域の教材をWeb教材としてインターネットで配信を行っています。
 特色としては、従来の活字の場合、五線譜に記譜された情報は楽器を用いて演奏しない限り音を聞くことができませんが、Web教材であれば専用ソフトを利用することにより、入力した和音や音の流れを実際に鳴らせて聞くことができる、ということにあります。

(3) 教育上のメリット

 導入後2年余り、以下のような通信教育システムのメリットを改めて実感しています。
1) 情報の良質化
  テキスト情報に加えて静止画、動画、音声等を用いることができる。
2) 反復学習が容易
3) 時間・空間を規定しない
  学習する側も、添削や学習指導を行う側も時間・空間を規定しない。
4) 教材内容の更新、追加が自在
  印刷教材に比べて教材内容(コンテンツ)の更新や追加が容易で、コンテンツの陳腐化を防ぐことができる。
5) 学習に双方向性がある
  対話的に学習を進めることができる。将来的には創作そのものもネット上で対話的に進めることを検討中。
6) 多様な情報へのリンクが可能
  教材からネットワーク上の多様な情報に対して直接的にリンクを行うことができる。


5.情報ネットワークとホームページ

(1)情報ネットワーク

 大阪芸術大学の情報ネットワークは平成9年に整備され、学内で情報教育が始まりました。
 当初学内LANであった情報ネットワークは、昨年から大阪芸術大学短期大学部や大阪美術専門学校をも含めた大阪芸術大学グループ全体を結ぶ「塚本学院情報ネットワーク」に拡充しました。
 これによって、グループ各校間の遠隔授業も可能になり、本年6月に大阪芸術大学のホールで開催された学長主催シンポジウムの際には、その一部始終を学内のみならず短期大学部や美術専門学校にも配信しました。

(2)ホームページ

 塚本学院情報ネットワークの完成を機に、各校のトップページを全面的に改訂しました。
 その際、ホームページを見て情報を得ようとする人は「早く知りたい」、「もっと深く知りたい」という欲求が強いので、ボタンやバナーを増やし、見やすく配置するとともに、知りたい情報に早くたどりつけるよう、階層構成に配意しました。
 以降、大阪芸術大学のシステム管理課が一元管理する体制に改め、各校のコンテンツの充実を図っています。内容面で重視していることは、次のとおりです。
1) 学院や各学科、教員や学生が催す展覧会・コンサート、特別講義などをこまめに紹介する。
2) 将来、芸術の勉強を志す中高生が興味を持つようなコンテンツを数多く掲載する。
3) 学生サービスに係わる情報を多く掲載する。

図2 Web教材画面
 その成果は、朝日新聞社の大学ランキングにおいて、ホームページの部では全国の大学中、一躍58位にランクされるという結果となって表れ、担当者一同ますます張り切っています。
 ホームページ(図3および冒頭カラーページ)については、実際にご覧いただければ幸いです。
図3 本学ホームページ
http://www.osaka-geidai.ac.jp
(文責 大阪芸術大学庶務部長  
兼システム管理課長  大川 良樹)




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