巻頭言

学生の勉学意欲を高める支援システム:TIES(タイズ)


石澤 末三(帝塚山大学学長)


 昨年、「特色ある大学教育支援プログラム」(COL)に応募しました。学生の勉学意欲を引き出す方法として、帝塚山大学が独自に開発した教育システム、TIES(Tezukayama Internet Educational Service)を全面に押し出しての応募でした。
 TIESの誕生は、7年前の経済学部教科課程委員会で交わされた議論に端を発します。そこでの議論はいかにして学生諸君の勉学意欲をかきたて、授業内容の理解度を高めるか、その一点に集中しました。最初は議論百出で、これといった方向性を見出すことはできませんでした。しかし、議論に議論を重ねた結果、市販の教科書に頼らず学生諸君の理解度に合わせた、わかりやすい教科書(レクチャーノート)を自分達で作ろうという結論に達しました。(日本の市販教科書は一般的に、米国のそれと比べ薄過ぎるため、説明が簡潔すぎる嫌いがあります。また学生の勉学意欲をかきたてるような事例が少なく、教科書として不適切であるというのがおおかたの委員の意見でした。)
 当初は紙ベースのレクチャーノートを考えていました。しかしどうせ作るなら、インターネットの特性をフルに生かすことのできる電子化したレクチャーノート(電子教材)を作ってはという意見が一部の委員から出されました。この意見は、皆に受け入れられました。そうすることで例えばレクチャーノートにIMF(International Monetary Fund)とのリンクを貼り付けておけば、授業の中で必要なときに必要なデータを取り込み、データに基づいた実際の経済の動きを説明することができます。さらに一歩進めて、経済理論が予測する理論値とデータとを比較することで、経済理論そのものの妥当性を検証するという高度の作業を学生諸君に課することも可能となるからです。
 このように、現実のデータと経済理論の行き来は、ややもすると抽象的で理論偏重に陥りやすい経済学の授業が、学生諸君にとって身近なものになります。ひいてはそれが彼らの勉学意欲を促進するものと確信し、電子教材作りに着手しました。
 TIESは、狭い意味では電子教材を作成するために帝塚山大学が開発したソフトウェアを指すこともありますが、広い意味では電子教材を使った教育システム全体を指す言葉です。経済学部から始めたこのシステムは、他の学部でも活用され、大学全体のIT教育の大きな柱になっています。
 現在のところ、すべての学部から提供される電子教材は約800、練習問題700種類に上っています。学生一人一人の学習履歴を把握しながら、それらを体系的に組み合わせて授業を行っています。電子教材作成者は45名、利用講義数は53コマ、履修学生数は2,460名に達しました。また電子掲示板機能を利用し、授業終了ごとに毎回行う学生評価によって、授業に対する学生の希望や不満を把握し、次の授業に反映させることも可能になりました。TIESシステム発足以来、順風満帆というわけではありませんが、一歩一歩着実に歩を進め、ようやくここまでたどりついたとの感想を持っています。
 次なるステップとして、TIESが持っている学習履歴機能を活用し、教務、学生生活、就職の各部局の担当職員と教員が連携し、学生の進路に関する指導を組織的に行えるシステムを導入したいと考えています。



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