巻頭言

学生のための情報技術利用環境の整備

三浦 宏文(工学院大学学長)


 本稿では、工学院大学のコンピュータ環境と教育について紹介することにしたいと思います。
 本学は、学生に対して常に、最新の情報技術利用環境を提供してきていることは、自信と誇りを持って言うことができます。
 学生へのサービス提供の歴史を少し振り返りますと、1993年から、全学生に対して、個人識別番号(個人ID)とパスワードを配布し、インターネット(電子メール、電子ニュースなど)の利用ができるようにしました。さらに、1996年からは、全学生・学生団体が学内のサーバにホームページを作成できる環境を提供し、今日では、非常に高い利用率の下に、広く活用されています。
 上記二つの事項は、学生に提供するべき環境としては、基本的なものと思われますが、わが国の全大学の中で、かなり先進的な導入実績であることは確かであります。
 学生の利用形態に関しては、最近は、個人のパソコン所有もかなり多くなりましたが、端末が多数準備されている演習室は、授業以外にも解放されており、学生が自由に利用できるシステムになっています。4年生以上の学生は、卒業論文や大学院研究に取り組むために研究室に配属され、そこで端末を利用できますが、3年生までの学生は、上記の演習室でいつでもインターネットなどを利用して、IT技術の真髄を身につけることができるようになっています。端末は、演習室ばかりではなく、カフェテリア室などにも配置されており、全学で、数百台が分散配置されています。本学の新宿校舎では、2部が開講されており、2部の学生にも配慮して、夜10時まで演習室は利用可能になっています。
 基本的情報リテラシー教育についても触れておきます。1991年より、全学科(情報工学科を除く)の学生を対象とする「情報処理概論及演習」という必修科目を開設しています。この科目の運営のための情報処理基礎教育運営委員会を設置し、教育内容の検討と教員間の情報交換を行い、委員が協力して、学生の特性を考慮しつつ、演習室の環境に合わせた教科書を開発しています。現在使用されているのは、タイトルは、「情報処理の入門と実践−リテラシーツールの活用法−」および「Excel環境におけるVisual Basicプログラミング」(いずれも共立出版)です。それぞれ、前期、後期の教科書になっています。2部の学生には、選択科目として提供しています。

 本学は、明治20年(1887年)に創立されました工手学校をルーツとして、117年の歴史を誇っておりますが、具体的な技能・技術を身に付けて、実社会に役立つ人材を育てようという教育方針が常に底に流れています。上述の情報教育への対処の仕方も、学生に対して、技術の先端に触れる機会を、少しでも早く、少しでも多く与えて、豊富な体験を促進しようとする意欲が如実に示されていると思います。
 本学は、新宿と八王子にキャンパスがあり、二眼構想を謳っていますが、居ながらにして他のキャンパスの演習や講義に気楽に参加できるような情報システムの実現を夢みています。

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