教育支援環境とIT

「教え」から「学び」への授業変革をめざして〜吉備国際大学〜



1.大学の概要

 本学は岡山市より電車で1時間弱の山あいの城下町高梁市に1990年に社会学部2学科で開学しました。急速に進む「国際化社会」、「高齢化社会」と「IT社会」を本学の教育の重要な課題として捉え、その充実に努めてきました。現在では保健科学部、社会福祉学部、政策マネジメント学部を増設し、4学部13学科、大学院4研究科、通信制大学院1研究科が設置されています。本年度の学生数は学部3,564名、大学院76名であり、専任教員は169名、職員は78名です。国際化社会に対応して、地方の大学から国際的に通用する人材を育てようと、「吉備発国際人」、「Global Understanding」をモットーに全学をあげて教育・研究に努力しています。情報リテラシーに関しては、Webを活用した学習支援システムを構築しており、文科系の学生も自然にデジタル・ディバイドを解消できる環境を整えています。


2.IT設備の概要

 情報処理教育を行う設備としては、それぞれ50台、30台、8台、50台、8台のPCを備えた情報処理教室5室と貸出しノートPC80台、各机に情報コンセントを備えた教室が5室、無線LANを備えた教室が14教室あります。また、遠隔講義システムを備えた教室が3室あり、最新の教育形態に活用されています。ネットワークは学内幹線はギガビット回線、学外は岡山情報ハイウェイを通して学術情報ネットワークSINETと接続しています。


3.情報教育およびIT支援教育の概要

(1)情報教育
 高等学校で教科「情報」が必修となり、2006年には入学生全員が情報リテラシーの基礎を身に付けていることになります。これに備えて、本学の教育開発センターで情報教育の内容を検討中です。ワープロ、表計算、ホームページ作成の入門的教育は不要になり、卒業後の実社会で役に立つ知識・技能として、高度の機能を使った実務文書の作成、プレゼンテーションソフトによる発想のとりまとめと発表、リレーショナルデータベース実習、アンケートデータの解析と仮説検定といったことを可能なところから実施しています。
 もちろん、大学の情報教育は街の中のパソコン教室の教育とは違って、実習だけでなく自然科学に特有な理路整然とした考え方を身につけさせることも重要な目的であり、コンピュータの動作を理解するための一連の理論体系も講義しています。このことは、日頃、知識を教えられることの多い学生にとって、考え方を学ぶ上で特に重要と考えています。

(2)Web学習支援システム
 学生の学習を支援するポータルサイトで、図1(a)は学生一人ひとりに対応した時間割一覧画面、同(b)は授業内容・計画の画面です。左側にメニューが並んでいますが、日々の授業計画、予習・復習の指示、教材コンテンツ、講義補足資料、レポート提出、小テスト、等で授業を支援するとともに、掲示板、学年暦、コミュニケーション機能、等により学生同士、学生と教職員間の種々のコミュニケーションに活用されています。
図1(a)Web学習支援システムの授業一覧画面
 
図1(b)各授業ごとの内容・計画画面
(3)遠隔講義システム
 本学では2年前から、遠隔講義システムを備えた大講義室を整備し、関連大学(九州保健福祉大学、岡山理科大学、倉敷芸術科学大学)とリアルタイム遠隔講義を行い、お互いに単位を認定しています。昨年度からはインターネットを利用したオンデマンド授業も本学の正規科目として単位認定を行っています。また、特色ある授業を行っている他大学の先生にネットを通して本学の授業に参加していただき、学生を遠隔で指導するといった授業も行われています。

(4)e-Learning
 インターネットにつながったPCがあればいつでもどこでも学ぶことのできるe-Learning教材として、本学の特色を生かした「筋力トレーニング」、「文化財情報学」、「ボランティア情報」「社会福祉士国家試験演習」が作られ学生の利用に供しています。図2はその入り口の画面です。次ページの図3にその内容の一部を紹介します。まだ、これらのコンテンツでの学習で単位を認定するまでにはなっていませんが、一部の授業で、補助教材として、あるいは学生の主体的な自主学習のために活用されています。
図2 e-Learningのメニュー画面
(Internet Navigwareを使用)
 
図3 e-Learning教材の一例
 「いつでもどこでも」学べる通常のe-Learningを大学の正規の授業で実施するためには、学生に強い学習意欲が必要です。そうでないと学生は試験の直前に慌てて知識を詰め込むだけで、学習効果は上がらないことになってしまうからです。また、実施するための組織や制度を整える必要があり、多額の予算も必要です。本学では、手軽に実施できるe-Learningとして、「集合型e-Learning」とでも言うべき形態を実行しています。これは通常の講義形式の授業で、先生が講義する代わりに前もって用意した授業コンテンツに学生をアクセスさせ学習させる形態です。授業時間が来ると学生と先生はPCのある教室に集まり、学生はPCに向かい、自らの意欲と自らのペースで学習を始めます(怠惰な学生は一つの部屋に集められて強制的に学習させられると思うかもしれません)。先生は講義をする必要がないので学生の間を巡回し、個別に質問に答え、個別に指導します。時には重要なポイントを黒板で説明したりします。進度の早い学生は、一定の範囲の学習が終わりしだいに学期の途中でほぼ1ヵ月ごとに行われる修了テスト(期末テスト相当)を受け、次の高度の学習に進むことができます。遅れている学生や成績の悪かった学生は次回に同じ範囲のテストを受けられますので、マイペースで勉強でき、しかも何度もテストを受けられるということで、学生は喜んでいます。最終評価の成績も講義形式のときに比べて格段に良い結果が出ています。この形式のe-Learningを実施するには、受講学生数だけのPCのある教室があることと、先生が自分の講義内容をe-Learningコンテンツに仕上げることが必要です。通常のe-Learningではコンテンツを専門家に外注して多額の費用をかけて作るようですが、それは必ずしも必要ではありません。先生の熱意が感じられる手作りのコンテンツのほうが学生を惹きつけるようです。ホームページ作成ソフトを使えば、ワープロ+αの知識でPowerPointとビデオを同期させたコンテンツでも簡単に作ることができます。組織もいらず費用もかけないで、手軽にできるe-Learning形態として読者の皆様にお勧めしたいと思います。

(5)大学院教育での活用例
 本学には大学院4研究科と通信制大学院1研究科がありますが、IT革命の急速な進展を考慮して、先進のIT環境を整えています。社会福祉学研究科の例を紹介します。
 院生は貸与された最新のノートパソコンを自分の机の上に置いて、常時使用しています。大学院となると担当教員も数が限られ、専門分野も限られますので、外部の先生にネットを通して指導を受けることが特に有効になります。本年度の修士課程1年生達は、関西地区のある先生のネットによる遠隔授業を受けて、コンピュータ上に100人程度の住民の仮想的なコミュニティを作り上げて、統計処理を行い、福祉の問題点を洗い出し、改善を提言するといった学習を行っています。本学の設備と教授陣ではできないこともこのようにITを活用して可能になるという一例です。


4.今後の計画

 「教え」から「学び」への授業変革を目指して、2002年より本学の授業情報化に取り組んでいます。はじめに本学サイバー・キャンパス・コンソーシアムを立ち上げ、上述の4件のe-Learningコンテンツを作成し、また、集合型e-Learningを開始しました。本年度からはさらなる充実を目指して、多くの科目でe-Learningコンテンツを作成し、授業に取り入れていきます。コンテンツ作成に必要な装置と支援組織を充実させて、どの教員でも容易に魅力あるマルチメディア・コンテンツを作成できる体制を整える計画です。その後は、用意された豊富なコンテンツを活用し、最終目標である「教え」から「学び」への授業変革を実現し、「吉備発国際人」を送り出しつつ、「個性輝く」大学を完成させる計画です 。


文責: 吉備国際大学授
  教育開発センター教 錦織 毅夫




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