私情協ニュース2

平成16年度 大学情報化全国大会開催される



 通算で18回目を迎えるこの大会は、文部科学省の後援を受け開催している。
 今回の大会は、「e-Learningの実際」をメインテーマに掲げ、9月7日から9日までの3日間、アルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)で開催された。
 今回の参加者数は、521名(172大学、28短期大学、賛助会員28社)であり、昨年とほぼ同様の参加となった。賛助会員42社による展示会では、2日目の午後から教育の情報化関連の多くの展示が行われ、大変好評であった。
 初日は、教育におけるe-Leaningの事例紹介を行い、その後にまとめとしてパネルディスカッションを行った。まず、事例紹介の前半は「e-Leaningの組織的な取り組み」をテーマに3大学から学部または大学規模の事例を紹介いただいた。また、後半は「各教育分野におけるe-Learningの活用」をテーマに、社会科学系、情報系、医学の3分野から実践事例を紹介いただいた。
 パネルディスカッションは「e-Learning導入のノウハウと今後の課題」と題し、先の事例紹介講師6名、コメンテーター1名、そして参加者を交えての活発な議論を行った。最後に、「私情協の事業紹介および補助金活用の留意点」として、当協会で実施している「授業情報技術講習会・e−講習(ネットワークによる自学自習)」の説明と参加者募集の紹介、教育改善のための産官学連携と今後の課題、情報化関連補助金活用の留意点等の説明を井端正臣事務局長より行われた。
 2日目はA、B、C、D、Eと並列に五つの会場に分かれて、合計71件の大会発表が行われ、例年同様に立ち見の会場が出るほどの盛況であった。また最後には懇親会が催された。
 3日目の午前は、「e-Learningと著作権」をテーマに前半は、当協会で10月開始の電子著作物権利処理事業の概要とメリットが紹介、後半は、玉井克哉氏(東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門教授)による著作権に関する留意点の解説と質疑応答が行われた。
 午後は「ユーザによる教育・学務関連システム紹介」をテーマに、教育システムや学務関連システム導入事例を6大学からユーザの立場で紹介された。
 次に、各セッションの内容について報告する。



第1日目(9月7日)

事例紹介
「e-Learningへの組織的な取り組み」


「e-Learningによるリメディアル教育の実践と高大連携への展開」

千歳科学技術大学光科学部助教授 小松川 浩氏

 千歳科学技術大学で取り組んできたe-Learningによるリメディアル教育の実践についての報告がされた。この取り組みの第一の特色は、高大連携プログラムを通して、地域の大学と高校、中学、教育委員会などが協力してコンテンツの作成を行っていることである。そのために毎月e-Learning研究会を開催し、数学に関しては中学から大学初級までの教科書レベルのコンテンツを3,000以上作成しているという。極めて具体的かつ実践的な報告であり、2006年問題を迎える我々にとって大変参考になる報告であった。


「教育学習支援と大学生活情報のための総合的システム」

明治大学政治経済学部教授 安蔵 伸治氏

 明治大学で全学的に取り組んできたデジタル大学の実現を目指した「oh-o!Meijiシステム」についての報告がなされた。そこでは、「教育の情報化」という理念を掲げ、明治大学で開設されている11,000ものすべての授業についての情報をデジタル化し公開したり、授業情報の発信などより積極的な利用の推進活動を行ったりしている。その際に、教員に対する啓蒙活動や、支援体制の構築、著作権などの法律的な面の教育など、さまざまな問題に対しての具体的な事例が報告され、参加者にとって大変参考になった。


「e-Learningによる大学通信教育課程の実践と評価」

早稲田大学通信教育課程教務主任 西村 昭治氏

 本発表では、早稲田大学の通信教育課程で行ってきた「eスクール」の1年間の実践結果が報告された。このeスクールは、約200科目の授業をe-Learningによって実施しているという。およそ30名の受講者で1クラスを構成し、1クラスに1名の教育コーチを配置し、インターネットを用いて受講生の質問に回答したり、受講生のレポートを取りまとめ担当教員に伝達したり、BBSの討議を取りまとめたりなどの役割を担わせている。2003年度の入学者は169名であり、その8割以上が社会人であった。授業アンケートの結果をみると、概ね良好な評価を得ていた。学習意欲の高い学生が多いとはいえ、退学者が5名しか出なかったことは驚異的であり、e-Learningの成功例として高く評価できる報告であった。

 以上の3件の事例紹介により、これまで個人の献身的な努力によってなされてきたe-Learningシステムの構築や教育コンテンツの作成などが、かなり組織的な取り組みになってきた印象を受けた。今後、e-Learningに大学として組織的にどれだけ取り組んでいるかが、大学を評価する際の重要な指標になっていくであろう。



事例紹介
「各教育分野におけるe-Learningの活用」


「社会科学系教育におけるe-Learningの活用」

武蔵大学経済学部教授 松島 桂樹 氏

 現在多くの大学が従来の典型的な一方向的な知識提供から学生の多様なニーズに適した知識へとナビゲートする双方向性の役割が重要であると考え、e-Learningに取り組まれている。多人数とのコミュニケーションを重視した双方向の授業や携帯を使用した情報交換など、経営学教育における実践事例と今後の課題について述べられた。


「情報系教育におけるe-Learningの活用」

東京工科大学メディア学部長 山口 治男 氏

 e-Learningには質の高い教材と新しい教育方法の提供や授業改善などの可能性がある。東京工科大学におけるe-Leaningを取り組むにあたっての目標、学生必携ノートPCおよび共通ソフトの選定、情報メディア環境の現状やシステム活用状況、サポート体制、セキュリティ問題、取り組み後の効果などが紹介された。


「医学教育におけるe-Learningの活用」

東京女子医科大学医学教育学教室教授 吉岡 俊正氏

 現在の日本の医学部では1学年100名前後の学生が同じカリキュラムで教育を受けることが多い。多数の学生に多様化した医学知識と技術、問題解決能力・プロフェッショナリズムなどを個人のレベル・ニーズに合う教育を行うためにe-Learningが活用できる。「多数の学生が同時に学ぶためのIT活用」と「学生が個人のレベル・ニーズに応じて学ぶためのIT活用」についての事例が紹介された。



パネルディスカッション

「e-Learning導入のノウハウと今後の課題」

パネリスト    
 千歳科学技術大学光科学部助教授  小松川 浩氏
 明治大学政治経済学部教授  安蔵 伸治氏
 早稲田大学通信教育課程教務主任  西村 昭治氏
 武蔵大学経済学部教授  松島 桂樹氏
 東京工科大学メディア学部長  山口 治男氏
 東京女子医科大学医学教育学教室教授  吉岡 俊正氏
コメンテーター  
 青山学院大学経営学部教授  玉木 欽也氏
司会  
 情報化全国大会運営委員  宮脇 典彦氏
(法政大学経済学部教授)

 午前中に事例紹介いただいた6名の講師の他に、コメンテーターとして青山学院大学の玉木欽也氏に加わっていただき、参加者からも様々な意見が出されて活発な討論を行うことができた。
 冒頭に、玉木氏より事例紹介を受けて以下の論点があげられ、それをもとに意見交換を行った。

1) e-Learningを用いることにより新しい授業方法が開発され、教育の向上、学生への動機付けに寄与する。
2) LMS等により教育支援が整ったが、今後は学生の学習環境、生活環境を整え、自学自習に役立てていく方向性が必要ではないか。
3) 知識獲得だけでなく概念を学ぶことができ、あるいは実習授業に役立つような質の高いコンテンツをどのように作成していけばよいか。
4) 持続可能な取り組みをするための大学内、大学間、高大等の組織作りをいかに行うか。

 その結果、「コンピュータを使いこなせることが比較優位だった時代は終わり、これからはITやネットワーク技術を道具として、いかに質の高いコンテンツを作成するかが重要」であるという認識が共有された。特に4番目の組織作りについてはパネリストからこれまでの苦労話も紹介され、「(中規模の)大学ではLMS等は他で作成したものを用いればよく、授業の中身を自学で責任をもって作成することが最重要である」という意見が出されたことが印象的であった。




第2日目(9月8日)

大会発表(71件)
*敬称略

A-1   高セキュリティ下におけるe-Learningシステムの導入
北海学園大学 天笠 道裕、福永 厚、穴澤 務

 在学する1,000名の学生に対し、授業時間内・外、さらに学内・外からの活用を可能とするe-Learningシステムを導入した。開発に当たり運用管理体制の整備強化、ユーザ教育の充実をテーマにしながら高セキュリティ管理の徹底をも実現するe-Learningの導入に取り組んだ発表である。


A-2   安田女子大学・短期大学の情報教育を支えるネットワーク
安田女子大学 日々野 政彦、村岡 隆二

 同一キャンパス内にある大学・短期大学のネットワークの更新を機会に、e-Learningの基盤整備を念頭に構築したシステムの紹介である。キャンパス・ネットワークシステム開発に当たり、教育利用の促進、セキュリティ強化と管理工数の軽減を主目的として開発された。


A-3   Public Key Infrastructureの導入に関する検討
日本大学 栗野 俊一、鈴木 潔光、戸塚 英臣、山中 善仁、新谷 隆弘

 大学内に認証基盤を設ける検討グループを設置し、大学に望ましい認証基盤とは何かについて検討した。その結果PKI(Public Key Infrastructure)システムを導入することを内定した。本報告は、本格的な導入に先立ち、当該システムの有効性についての導入実験の報告である。


A-4   イントラネットによる教育支援データベースの構築
中京大学 山本 茂義、桑村 哲生、齊藤 史郎、柳本 哲也
(有)エー・シー・プラネット   田中 邦彦、苅田 信雄

 学生が利用する大学案内や電子化教材、成績管理等のデータではなく、教授会・各種委員会の議事録・資料、教員情報、講義情報、行事予定等これまで直接教育に関わらないデータベースを教育改革の一環として教員・職員間の緊密な情報交換のために、教養部教員向けに構築し運用した。


A-5   TIESを利用した教材の電子化とe-ラーニング導入の組織的な支援
帝塚山大学 堀 真寿美、細谷 征爾

 継続的に教材を電子化し、e-Learningを活用して講義を行うには、教員に相当のITスキルと労力が要求される。この労力を軽減するために、組織的に教材作成と教員支援を独自に開発したソフトウェアで教材のデジタル化を推進している。このソフトウェアは他大学に無償提供されている。


A-6   教職員と学生間のシームレスなコミュニケーション環境の実現
阪南大学 前川 利之、花川 典子、森  章
富士通(株) 赤澤 佳子、井上 俊治

 学生にとって重要な、授業支援サービスと事務サービスを融合したWebベース総合教育支援システムの開発・運用について報告したもので、個人情報を除いては、学内外からのシームレスな利用を可能とするポータルサイトを、既存のパッケージを組み合わせて短期間に構築している。


A-7   抽選過程を取り入れた履修登録システムの開発
明海大学 疋田 春水

 教室定員以内の適正な人数に履修学生を割り振るために、抽選過程を取り入れた履修登録システムを独自に開発し、2ヶ年運用した結果を報告している。履修申告時に該当科目の登録可能残数に比例した重みで確率的に受講の可否が決まることで、履修確定までの手間と時間の削減を図っている。


A-8   Student Relationship Management System (SRMS)
東海大学福岡短期大学 八尋 剛規、成嶋 弘

 修業年数が少ない短期大学において、学生の大学生活全般に関するきめ細かい指導を行うためにWebベースの学生カルテ管理システムを開発し運用している。入学前情報、指導履歴、資格取得情報などのほか、個別の指導履歴情報を教職員間で共有し指導に生かしている。


A-9   発表中止


A-10   シラバスの電子・映像化と学内LANによるその視聴
東京成徳大学 川合 治男、福山 裕宣、半田 勝久、岩瀬 弘和、渡部 泰夫、
毛利 昭、松本 寿三
 
 履修申告前の時点で講義の補完的役割を果たすために、マルチメディア・シラバスを導入し学生の学習意欲向上を図っている。そして学生・教員へのアンケートやヒアリング調査を実施し、利用者の実態・教育効果を報告している。今後は、予習用教材や補講・復習コンテンツの充実への発展を計画している。


A-11   携帯情報端末を用いた学生実験レポート管理環境の構築
日本大学 遠藤 拓、池田 正則、上田 剛、杉浦 義人

 工学系の学生実験においてレポートの提出状況と点数を適切に管理するために、リアルタイムなレポート管理システムを構築している。学生番号や実験番号を表すバーコードを携帯端末で読み込んで成績を入力し、ホストPCに送信し管理している。作業の効率化により従来以上のきめ細かい指導を実現している。


A-12   学生証の情報化方法についての検討
日本工業大学 小林 哲二

 携帯電話を利用した電子的な学生証の可能性を考察し、紙ベースの学生証を始め、ICカード学生証等との比較を行っている。携帯電話学生証では、学生証情報と2次元コードを画面に表示して二次元コードスキャナで読む。これらの機能および発行・運用コスト・セキュリティの面での比較を行っている。


A-13   バーコードリーダを用いた出席確認システムの構築
大阪国際大学 小林 正樹、福田 朋広

 学生証に記されたバーコードを活用し、簡便で安価に出欠をとることを可能にした例を紹介している。授業時にバーコードリーダによる出席認証を行い、学籍番号と認証時刻をデータベースソフトで記録する。1セメスターでの実施結果から、混雑・正逆判別・複製および偽造などの問題への考察を行っている。


A-14   ウェブページを使った出席管理システム
熊本学園大学 境  章

 出席管理の容易化・厳正化の一つの手段として、Webページを使った出欠管理システムの開発・実施状況について述べている。入学時に学生全員にパソコンを貸与し、出席登録時に科目名・時刻の一致確認の他、クッキーを利用してアクセス制限情報を書き込み、代返防止の工夫をしている。


A-15   ノートPC所有の義務化とその支援体制について
中部大学 清水 幸子、飯嶋 一弘、水島 章次

 学生のノートPC所有義務化に向け、初期教育・教室環境・学生サービスなどに関する七つのワーキンググループで学生支援体制を構築している。学生には、ノートPCの機種は限定せずに推奨仕様を提示し、PC所有に関わる諸問題の解決のためにコンピュータ・コンサルテーションセンターを設置している。


A-16   全学的なノート型パソコン貸与への取り組み
兵庫大学 河野 稔

 全入学生を対象にしたノートPCの無償貸与の取り組みについて、現状と諸問題を述べている。学生による学習の主体的デザイン促進と共に、学習コンテンツ作成・公開や学生・教職員間のコミュニケーション支援環境を進めている。情報科学センターの支援の他、導入業者による機器保守サポートを実施している。


A-17   学生ノートPCによる学内ネットワークの活用と認証について
中部大学 岡部 仁、岡崎 明彦
 
 平成16年度からノートPC所持の義務化を図るなかで、安全で可用性・利便性の高い教育ネットワークをコンセプトに、認証サイトを設置して暫定ネットワークでの利用者認証と通常ネットワークへの切り替える仕組みを構築している。その中でネットワーク認証の問題点・今後の課題について考察している。


B-1   ノータッチディプロイメントを利用したe-Learning用教材開発について
広島工業大学 横田 壽、大田 一希
 
 数学の記述式演習問題をネット上で解くことを目的として筆者らが開発した数学学習支援システムCAMLが紹介された。問題は半自動で生成され、「微分積分学」の履修者を対象に運用した結果、自己学習の習慣化に成功するとともに、3年間下がり続けていた期末試験結果の向上につながった。


B-2   用語に基づく知識獲得のための設問・評価システム開発環境
青山学院大学 佐久田 博司、矢吹 太朗、足立 陽祐
 
 筆者らは、e-Learning環境で用語に基づく基礎概念を取得するための設問・評価システムを開発した。穴埋め問題、選択問題の作成、修正、削除をスムーズに行い、受講者の個人毎の解答記録の管理を行うことができる。実例として「設計情報工学」分野の問題を作成したが、幅広い分野での利用が可能である。


B-3   軽度レポート課題の多数回均等配布システムによる自習活動の活性化
創価大学 小林 登史夫
会津大学   陳 文西

 学生毎に異なる軽度なレポート課題を与える配布システムを開発し、「微生物工学」および「食品工学」で実施、成果を得た。ペーパーで提出されたレポートはTAがコメント後学生に返却され、採点結果は教員に一覧表として渡される。今後は数式、画像を入れ、さらにペーパーレス化を図りたい。


B-4   綜合教育におけるメディア技術の活用
実践女子大学 犬塚 潤一郎
 
 学習者をコンテンツの享受者とするのではなく、e-learning教材の製作者という立場から授業参加させる手法を取り入れた。学生が撮影から内容編集、配信コンテンツ化までを一貫して行うことにより、関連情報や補足資料を積極的に収集するなど、学生の授業参加姿勢に大きな向上がみられた。


B-5   オンライン教材を用いた「情報設計」の授業実践
金沢工業大学 平山 亮、山本 敏幸、鈴木 章夫、榊原 吉一、小林 誠

(都合によりD−11の時間帯・会場にて発表)
 情報の効果的な表現、使い易さなどを考慮し、Webページを通じたコミュニケーションの仕方などを学ぶ「情報設計」を授業時間内だけ習得させることは難しい。そこで、本研究は、授業に対応した予習・復習を効果的に行うオンライン教材を作成し、学生が各自のノートパソコンで予習・復習を行うことで、どのくらい授業を補完できるかを調べている。


B-6   ITを活用した文系学生向けまちづくり教育のデザイン
江戸川大学 天野 徹
 
 まちづくりの現場における具体的な問題解決に必要な、分離融合型の想像的な知を創り上げる能力を育成するため、CGやCADを導入し、IT環境をフルに活用したコンテンツ作りを通じた教育を行い、一定の成果を得た。今後はこれまでの経験を踏まえ、「想像的」で「インテリジェンス型」の実現を目指す。


B-7   国際地域デジタルアーカイブの構築
東洋大学 中挾 知延子、芦野 俊宏
 
 東洋大学国際地域学部では、eラーニング環境に向けてコンテンツホルダとしての地位の確立を目指し、16年度の学部新規プロジェクトとして「国際地域デジタルアーカイブ」を進めている。現在は教材のデジタル化を進めており、秋にサーバを導入し、本格的な運用に入る予定である。


B-8   デジタル化による巨大曼荼羅図の詳細閲覧
高野山大学 藤吉 圭二
 
 チベット・ラダック地方とムスタン地方で撮影された巨大曼荼羅図をデジタル化し、複数のユーザが拡大・縮小を自在に行いながら閲覧できるようにした。画像内部の任意の場所にテキストデータを書き込むこともできるので、今後は学生も参加した曼荼羅アーカイブ構築を進めていくことが課題である。


B-9   科学的情報編集能力を育む情報基礎教育の提案
常葉学園大学 小田切 真
 
 筆者は平成13年より3年間、静岡県富士市の中学校において地域の歴史と日本史・西洋史を「クロノスシステム」を活用して比較する活動を通して、「新しい関係を発見する能力」を育てるとともに、受講者が協調して構築したデータベースを基に、「地域の未来を創造する」学習展開を実践した。


B-10   文科系総合大学におけるコンピュータネットワーク構築実習の取組
帝塚山大学 日置 慎治
 
 シスコ社の「シスコネットワーキングアカデミー」を利用した、ネットワーク技術資格取得を最終目標とする教育が紹介された。実技を含むこの高度なカリキュラムが文科系の学生を対象に大きな成功を収めている注目すべき事例である。


B-11   情報処理システム設計・製図
日本工業大学 飯倉 道雄、林田 煕、吉岡 亨
 
 従来のシステム設計技法では、利用者・発注者が設計書を正確に認識できない問題がある。SDDに基づき、設計書を図式化することにより、これを解決することが提案され、それによる学生演習を試みた事例および学生の反応が紹介された。


B-12   オンキャンパス教育におけるeラーニングの意義
大阪経済大学 草薙 信照
 
 各種の学習形態の特質を議論した後で、具体的な事例として3種類の形態の教材が紹介され、その得失が利用方法、コスト要因、開発時間、著作権などについて議論された。また開発だけでなく学習モデルの重要性についてもいくつかの指摘がなされた。


B-13   LMSを利用した情報処理系科目のオンライン授業評価について
日本大学 石川 元康
 
 情報処理系科目でWebCTをLMSとして利用し、オンラインアンケート機能を活用して、毎回の授業評価に活用した。また従来型のマークシート式アンケートとの比較を行った。授業の内容の難易度がある程度オンラインでは反映されるので、授業改善に有用との結果が示された。


B-14   情報処理演習授業におけるオンライン履修情報の活用について
日本大学 豊川 和治
 
 プログラミング演習の授業にハイブリッド方式の導入事例が紹介された。LMSにはWebCTを利用し、そのオンラインモニタ機能を活用した。教材のアクセス回数や日時、課題の提出日時等と、成績で3レベルに分けた学生との相関を調べた結果、興味深いデータが提示された。


B-15   授業評価アンケートの分析
武蔵工業大学 横山 真一郎
日本電子計算(株)   松尾 純、樋田 清久
 
 大学における授業評価アンケートの事例研究ならびに分析方法に関する詳細な議論が提示された。設問について因子分析を行い、重回帰分析の手法を用いて考察した。今後も、定量的な授業評価モデルが構築できるように研究を行っていくための方向性が提示された。


B-16   ビジネスシミュレーションを用いた教育における到達度の評価尺度の構成に関する考察
摂南大学 松永 公廣
 
 大学での教育では問題解決能力の育成が重要である。ビジネスゲームを演習に導入することにより学習の到達度の評価尺度を構成する方向性が追求された。ゲームの演習前と後では、学生の各種項目間の関連性の理解について一定の進歩が測定された。


B-17   自習用個別学習Web教材により補完する講義の理解度向上法の試み
日本大学 山本 登
 
 教育における「学びの科学」の重要性と分析が提示された。そして科目「命令アーキテクチャ」のための講義ノートをもととした教材開発が紹介された。これは全体で画面数が400にのぼる膨大な力作であり、期末試験の成績との相関などが発表された。


C-1   文科系単科大学におけるプログラミング言語教育
九州ルーテル学院大学 赤坂 亮、松岡 英里奈
 
 文科系学生を対象にしたプログラミング教育方法の一つの事例が報告された。この事例ではプログラミングの体験を目的としている。そのため、コード全体を記述させるような教育方法は避けている。Webサイトに教材と穴埋め式の演習問題を置いておき、学生の復習に役立てている。


C-2   状態遷移図によるロボットプログラミング環境とロボカップ出場における教育実践
山梨学院大学 伊藤 栄一郎

 状態遷移図を記述するだけでロボット用のプログラムを作成できるシステムを開発し、そのシステムを利用して学生が実践的なサッカーロボットの制御プログラムを作成し、ロボカップジャパンに出場するまでの体験が報告された。プログラムレスのプログラミング教育の方法として興味深い報告であった。


C-3   プログラミングにおける補助教材の開発
大阪国際大学 中井 哲夫、岡本 容典、下條 善史
 
 プログラミング初学者を対象とした視覚的な教材ソフトの開発について報告された。この試作ソフトは、ユーザがフローチャートを構成する部品をDrag & Dropすることにより視覚的なフローチャートを作成し、さらに、ソースコードの生成や実行まで行うことのできるものである。


C-4   多教室同時開講型プログラミング演習科目の試みとその効果
武蔵工業大学 後藤 正幸、大野 昭彦、萩原 拓郎、横井 利彰
 
 100名規模のプログラミング教育を多教室で同時開講するためのシステム構成と、TVMLを用いたWeb教材、双方向通信による演習授業の運営方法などについて報告された。アンケートの結果、講義配信側教室の学生も講義受信側教室の学生にも比較的受け入れられたことが報告された。


C-5   数学の学習を支援するマルチメディア教材の開発
北海道工業大学 佐藤 宏一、金田 嶢
 
 eBookを用いた数学の学習を支援するマルチメディア教材の開発について報告された。教材は、基礎事項、スライドショウ、問題解説、プロセス問題、添削問題、練習問題などで構成しているが、問題解説は対話型の教材コンテンツとしたところに特徴がある。


C-6   Webソフトウェア「表いらず基本統計分布
明星大学 舩津 好明
 
 数表なしで統計的推定や検定に必要な数値を求めることのできるWeb教材の開発について報告された。その教材では、分布の種類やパラメータを入力すると、その確率密度関数のグラフや必要な積分値、関連する説明文などを表示するようにしている。


C-7   基礎物理教育用電子教材の作成
福岡大学 寺田 貢、香野 淳、永田 潔文、西村 秀紀、平松 信康
 
 学生の学習支援を目的とした基礎物理学の補助教材の概要について報告された。利用目的に合わせた提供方法を教員側が選択できるように、ビデオ教材とWeb教材の2種類の教材を用意し、さらに、力学と物理数学、基礎電磁気学の3教科の関連性が容易に理解できるよう工夫してある。


C-8   ITを活用した統計教育のためのマルチメディア教材および共同シラバスの構築
東洋大学 渡辺 美智子
玉川大学   二宮 智子
東京情報大学   桜井 尚子、藤原 丈史
立教大学   酒折 文武、山口 和範
鹿児島純心女子大学   末永 勝征

 CCC統計学グループの活動を通して共同開発した統計教育のためのマルチメディア教材ついて報告された。開発した教材は、講義スライド、解説文、演習用データ、分析操作シート、グラフなどから構成され、これらを目的に応じて利用できるようデータベース化している。さらに、次世代型電子シラバスシステムの構築も進めている。


C-9   cgiによるプログラム学習のための独習システム:有機化学を例として
創価大学 伊藤 眞人、守谷 崇、秋山 秀俊、山本 直樹
神奈川大学   竹内 敬人
 
 インターラクティブな独習を可能とすることを目的とした有機化学のための独習システムの紹介である。システムはcgiプログラム本体と画面テンプレート、データファイルから構成されている。有機化学では問題や解答に数式、化学式、構造を表す図などが含まれるため、データファイルをHTML形式としている。本サイトへのアクセス件数は毎年増加しており、2003年には4万回を超えるアクセスがあった。


C-10   CAI教材「沐浴できるかな?」の作成と評価
聖隷クリストファー大学
看護短期大学部 神崎 江利子、宮崎 昌子、松本 かよ、櫻井 文子、高橋 俊子、
塚田 トキヱ
 
 「母性看護学実習」における沐浴実習のCAI教材を作成し、授業に用いた効果が報告された。CAI教材活用の前後での学生の理解度の変化を調査したところ、概ね理解度が増加した。また、CAI教材活用が学習への動機付けや、未知な経験に対する戸惑いの軽減につながることが報告された。


C-11   社会福祉実践教育におけるシミュレーション型教材の開発
淑徳大学 戸塚 法子、松山 恵美子
 
 「社会福祉実践」の実習教育用e-Learningシステムの開発と教育効果が報告された。このシステムはストーリー形式のアニメコンテンツからなり、作成の多大な努力が感じられる。学習画面のスムーズな切り替えが、学習効果に大きく影響することが示され、多様な学習環境に対応する柔軟な教材の開発の必要性が報告された。


C-12   ファイルサーバを用いた聴覚障害学生支援のためのビデオ字幕挿入システムの試作
広島大学 田中 芳則
 
 聴覚障害学生支援のためにビデオ教材に字幕を挿入するシステムの試作が報告された。講義で用いるビデオの字幕挿入には、文字おこし、調整、校正、字幕挿入まで多大な労力が必要である。字幕挿入の作業は、映像データと字幕データをファイルサーバを活用して合成し、効率的な方法で行われている。


C-13   発表中止


C-14   慈恵医大総合試験システム−Web-based Training への道
東京慈恵会医科大学 福島 統、飛内 峰和、綱川 ルリ子、南波 勉、小松 一祐
 
 慈恵医大における総合試験を蓄積した膨大なデータベースを作成し、そのデータベースを用いた自主学習トレーニングシステム(WBT)が報告された。学生は自主的にWBTサイトにアクセスし、問題を検索して選択し、解答を入力、最後に採点結果が表示される。分野ごとの正答率がわかるので、弱点分野が即座に分かるようになっている。


C-15   基礎医学実習シミュレーション教材の開発と応用
自治医科大学 岸 浩一郎
スターメディカル(株) 河田 諭
     
 「基礎医学実習」のシミュレーション教材の開発が報告された。クイズ形式の選択や、アニメキャラクターなど親しみやすくゲーム性もあり、システムを利用することによる学習意欲を高める工夫が随所になされており完成度が高い。医学部と看護学部でこの教材を用いた学習効果の測定を行う予定であることが報告された。


C-16   情報倫理教育のための統合ディジタルビデオ教材の開発
千里金蘭大学 高橋 参吉、中野 由章、中 正樹
大谷女子大学   大倉 孝昭
九州工業大学   西野 和典

 情報倫理教育のための統合デジタルビデオ教材の開発とパイロット的評価が紹介された。この教材はビデオ教材、PowerPointのスライド、メニュー、コメント記入、簡易テストが同じ画面上で確認できるのが特徴である。コメントの記入の多寡により学習者の興味が調べられることも興味深い。


C-17   動画を含む電子教材開発支援の課題
武庫川女子大学 岡田 由紀子

 西洋服飾史やダンスの教材など動画を含む電子教材を開発する上での課題点と評価が報告された。作成には構想、シナリオ作成、素材獲得、編集、出力など多大な労力が必要であるが、学生の評価は概ね好評であった。教員の作成時間の捻出、開発期間の短縮、著作権のサポート体制、などの課題が報告された。


D-1 発表中止


D-2 GLOBALBASE技術を利用した新しいGISポータル教材の開発
東洋大学 藤田 晴啓
国際日本文化研究センター   森 洋久

 分散処理システムとして世界中の9台のサーバと統合するGLOBALBASE技術を利用した地理情報システムに各種の学術情報を入力し、学習教材に活用するシステムが紹介された。意欲的な大規模システムで、いろいろな分野での教材として今後利用される可能性が高いと考えられる。


D-3 文書作成能力の検証作業支援と学習効果指標の確立
東海大学 小堺 光芳
明治学院大学   渡邊 光太郎
 
 キーボードによる文書入力の正確性を検証するソフトの作成とその利用効果が報告された。このソフトでは作業時間とミスの相関や、どのようなミスタイプが多いかを検証することも可能である。この検証作業をフィードバックすることにより大きな学習効果が期待されることが報告された。


D-4 教育支援ソフトCelebの開発
神戸学院大学 小野坂 敏見、早木 仁生
日本ソフト開発(株)   中居 久幸、藤田 敏之、山田 保之

 インターネットを利用したe-Learningを支えるソフトとして、学外での教材配布等の教育支援をするCelebを開発し、その評価が報告された。Word、Excel、PowerPointなどのファイルのULとDLが可能である。使いやすさ、覚えやすさの面では満足できるものであり、学生からの大きな不満はないことが報告された。


D-5 海外大学の大学院生を対象とする遠隔教育システムの構築
福岡工業大学 倪 宝栄
 
 海外(中国)の大学院生を対象とする遠隔教育システムの導入とその効果が報告された。ビデオカメラの映像と音声をストリーミングデータとし、同時に教材データもストリーミングデータとしサーバに送り、受講者はWebページにアクセスして受講するシステムである。受講者がビデオカメラを操作できる点が特徴であり、それが好評であることも報告された。


D-6 IP電話を併用した中国とのインターネット遠隔授業の試み
いわき明星大学 渡邊 景子、叢 小榕、高山 文雄
 
 IP電話を併用した中国とのインターメット遠隔授業の試みが報告された。低価格パソコンとWebカメラ、NetMeetingを用いたシステムであり、音声部分はIP電話で補完された。ナローバンドのため時間のずれはあったが、安価で構築できるシステムでも遠隔講演は可能であることが報告された。


D-7 ビデオ会議システムを利用したシミュレーション株主総会の試
大阪国際大学 市川 直樹、韓 尚秀、岡本 容典、田窪 美葉
 
 韓国群山大学校とビジネスゲームを、インターネットを利用して、3年間共同で行ってきた。最近、安価なビデオ会議システムで、韓国にて開発されたAll-Friend、12ライセンスを購入し、それを利用し、来年度の郡山大学校との株主総会の開催に備えて、本学のみで実験的に実施したものの報告である。


D-8 遠隔学習<Webアクティビティー・システム>の研究
東京情報大学 安岡 広志

 本研究は、遠隔学習に関するもので、「何を見せて、何を学べるのか」という課題を、新しい手法・切り口から試みている。特に、知覚領域の中から視覚情報、音声情報にまとをしぼり、様々な参加型遠隔学習システム(インタラクションWeb)を制作している。


D-9 インターネット授業と教室授業の併用に関する実践報告
大阪国際大学 矢島 彰
 
 本報告は、教室授業のクラスとVODのクラスの二つを併用することの意義を「情報システム論」の講義において実践し、論じている。その結果、インターネット授業によって学生への個別対応が可能であること、教室授業の必要性を確認できたことを結論づけられた。


D-10 情報科教育法にWebを活用した協調グループ学習法
東北工業大学 小島 正美
 
 「情報科教育法」の教育に、Webを活用し、協調学習システムを取り入れる模擬授業を行った。模擬授業の項目は学生に選択させ、テーマごとにグループ分けして、模擬授業の立案をグループごとに考えさせ、まとめた内容を発表し、その評価は受講している学生が行うことにしたところ、学生の顕著な勉学意欲向上が見られたと報告された。


D-11 発表中止


D-12 集合型e-Learningの実践−「教え」から「学び」への授業変革−
吉備国際大学 錦織 毅夫、今村 俊介
九州保健福祉大学   林 正俊
 
 対面授業は意欲のある学生にとっては主体的な「学び」になり得るが、実情は多くの怠惰な学生を教師が「教え」る形になっている。本研究の目的は、教師が教える授業から、学生が自らの意欲で主体的に学ぶ形態へと授業を変革することであり、このために、対面授業にe-Leaningを取り入れ、その効果を調べている。


D-13 外国語教育の教室学習と自宅学習のすみわけと連携のために
法政大学 鈴木 靖
 
 大学での授業時間を有効に使い、教育効率を高めるためには、教室学習と自宅学習の棲み分けと連携が必要ではないかという問題意識から、筆者は過去数年e-Learningシステムの開発と実践を試みてきた。本報告は、これまでに発表した二つのシステムを統合した外国語教育のための汎用的e-LearningシステムACTSの機能とその導入成果についてである。


D-14 WBTシステム「もも吉」によるe-Learning English科目の実践
成蹊大学 田辺 春美、松原 和子、阿部 陽子
 
 対面授業を行わずにWBTのみによって指導するe-learning Englishという新しいタイプの授業がどのように行われ、学生にどのように受け止められたか、いかなる授業効果が得られたか、そして、どのような課題を解決しなければならないかを報告している。


D-15 ADL手法に基づいた在宅英語学習カリキュラム
皇學館大学 児玉 玲子
 
 学習者一人ひとりに「学習」が分配され、学習者は自分の意思で自分のレベルとペースに合った学習を時間と場所によらず自由に行い、必要に応じてインストラクターからサポートや面多リングを受けることができる学習形態であるADL(Advanced Distributed Learning)の効果について報告している。


D-16 二言語同時学習におけるCALLシステムの融合的活用
京都外国語大学 小野 隆啓、舟杉 真一、村上 正之、寺嶋 浩介
 
 本研究は、英語を基軸として、二ヶ国語を同時に学習する新しい授業形態を実践するものである。本取組みによって、授業内で教員が積極的に学生とインタラクションを持ちながらCALLシステムを用いるため、語学的演習や文化的知識の理解をより効果的に進めることができると報告している。


D-17 早稲田大学法学部の英語カリキュラム改編と統合的課題を中心とした英語授業実践
早稲田大学 原田 康也
 
 英語学習の基本は、英語を聞き、文章を読み、その内容に基づいて質疑応答をし、そうした質疑応答の内容を元に文章を作り、それを口頭発表するといった統合的なものである。本研究は、早稲田大学法学部の英語カリキュラムにおいて、この見解の実践した筆者の報告である。


E-1 大学における情報基礎教育としてのe-Learningの実践
神田外語大学 中山 幹夫、井谷 荘太郎

 WBT(Web-Based Training)と呼ばれるインターネットを用いた方法によるコンピュータリテラシー教育の実践報告。情報基礎科目を、学習時間や学習場所の制約がなく、学生が自宅のPCも活用して自分のペースで学べるもので、学生は音声による指示に従って学習する。受講者数は1,000人前後だが、平均値では学習効果が認められた。教材開発はアウトソーシングを行い、大学は開発費を負担せず、使用料のみを負担する。


E-2 コンピュータリテラシーから“literacy+numeracy”へ
城西大学 青山 満
埼玉大学   春日 博
 
 学生の情報基礎技能が向上してきており、情報基礎教育もパソコン使用法を越える教育が必要となったとの認識を背景とするカリキュラム編成の工夫が報告された。使い方よりも「何に使うのか」という使用目的に着目したカリキュラムを工夫している。専門教育の下支えとなる、Web閲覧、Word入門、Excel入門、プレゼンテーション方法を要素とする、レポート作成術に取り組んでいる。また、Excelについても数量分析に展開している。


E-3 情報検索のスキルをどう高めるか
関西学院大学 中村 広幸
東京経済大学   山田 晴通
 
 学生のPC所有率、Web利用率ともに高い現状があるが、情報内容の吟味が不十分であるとか、出典・著作権への配慮が不足するなどの問題が生じており、この面の教育を行うため「データアクセス法」という科目を導入した。サイト検索、図書検索などについて実習を交えた学習を展開。PCの操作法を越える教育の一つの方向性として重要性が指摘された。


E-4 発表中止


E-5 生体情報及び表情を用いた電子教材利用者の心理状態推定方法の検討
東海大学 野須 潔
 
 電子教材学習者の心理状態をリアルタイムで推定する目的で、心拍数測定器、皮膚温度測定器、表情撮影用デジタルビデオカメラ等で構成されるシステムを構築し評価した。被験者の「驚き」「納得」「困った」「面白い」といた感情を示す状態での心拍数、皮膚温度、表情の変化を測定したところ、「面白い」心理状態と他の心理状態を識別できることがわかった。


E-6 学生実験用web教材の制作と評価
東京理科大学 日下部 慧、鈴木 路子

 化学実験において学生の予習が十分でないため、説明のために時間が費やさざるを得ない問題がある。これを解決するための予習支援Webを制作し、その効果を測定した。学生を実験群と統制群に分け、実験群には予習支援Webを利用させた上で化学実験を行わせ、統制群には通常の化学実験を行わせる。予習に有効だったとの評価は得られたが、実験レポートの平均点を両群で比較すると、実験群の成績が不良であった。Web教材の消化がされていないことによるものではなかったかと考えられる。


E-7 発表中止


E-8 インターネットを併用した音楽教育プログラムの構築
武蔵野短期大学 荻原 尚、木川 裕
 
 音楽実技科目の時間数削減が進んでいるが、これをコンピュータを用いて楽譜画像と音声データを組み合わせた教材ならびにセルフトレーニングによる体系的音楽教育プログラムによって補う方策の内容と実績が報告された。


E-9 自発学習促進のためのオンライン教育
東京国際大学   桑原 政則
 
 担当科目である「東南アジア社会文化論」の講義展開で用いているインターネット利用の概要について報告があった。内容は、学習の指針、指示などをホームページ上に細かく提供するため、内容が周知でき、学生は自らホームページを作成することによって、リテラシの向上、主体的で立体的な学習態度がもたらされた。




第3日目(9月8日)

e-Learningと著作権

「オンラインによる著作権処理への私情協の取り組み」

社団法人 私立大学情報教育協会事務局

 当協会ではインターネットを介して、大学または大学関係者が日々作成する教材、講義ノート、研究用の素材、資料などを電子化したコンテンツ(電子著作物)の著作権処理の代行を10月より開始することとなり、その電子著作物権利処理事業の概要やメリットについて紹介した。


「著作権に関する留意点とQ&A」

東京大学先端科学技術研究センター知的財産権大部門教授 玉井 克哉氏

 電子著作物を取り扱う際に注意すべき点、許諾の必要性など一般的な著作権での留意点について、具体的な例を上げながらわかりやすく紹介され、また、日頃抱えている教材作成に伴う著作権上の問題や不安な点について会場から質問が寄せられ、同氏に丁寧に解説いただいた。本セッションを通じて、参加者の著作権に対する理解をより深めることができた。



紹介
「ユーザによる教育・学務関連システム紹介」

「タブレットPCを用いた自学自習教材作成システム」

武庫川女子大学薬学部教授 松山 賢治氏

 薬学治療学の教育範囲は多岐に亘り、総合的な教育が必要で、市販の教科書では決して対応できない
 憾みがある。そこで短時間、低コストで研究室単位でも簡便に取り組めるタブレットPCにSKYMENU Digital Chalkをインストールして作成したIT教材作成した。本発表では、本システムとそれを使用した授業事例について紹介された。


「多目的活用のための教材開発ツールと授業支援のシステムの連携」

玉川大学情報システムメディアセンター副センター長 橋本 順一氏

 全学的なe-Learningの教材開発ツールと授業支援システムとの連携についての実践事例を紹介され、市販ツールによるコース開発の評価、システムのメリットや今後の課題について明確に示された。市販ツールを用いることにより、授業計画の作成・編集や教材モジュールコピーが容易で、安価なことなどがメリットとしてあげられた一方、いくつかの機能制限や操作法の習得が必要であること、バージョンアップや寿命、追加改善などサポート面について課題があることなど述べられた。


「学生参加型の教育システムと成績評価」

甲南大学理工学部長 太田 雅久氏

 授業内容の理解を助けるため、多人数の授業での補完として、授業後に教員と受講生がネットワークを通して対話ができるよう、BBSを中心としたシステムを開発された。授業後に教員が授業内容に関連した問題を出し、学生はその週のうちに回答を提出することになっており、他の学生と教員のやりとりを見ることができる。システムの活用により、教員と学生が共通の問題意識を持ち授業内容の理解に役立つことができたこと、また、教員と他の学生との対話の中から自分に役立つ内容を見いだすなど、学生に自主性が生まれるようになったことが報告された。


「Webによるクラス授業支援システム」

関西大学工学部教授 冬木 正彦氏

 2002年2月工学部における双方向教育のためのe-Learningシステム導入に向けた検討を開始し、同年12月に自発的学習促進クラス授業支援システムとしてCEAS1.1の利用が始まった。以後、改良を加えている。授業資料の配布、課題提示、評価を一体化したもので、授業と学習を統合的に支援して教育の質の向上をねらいとしている。また、教材には担任者が使える任意の形式のファイルを使えるようにして教員の負担の軽減を図っている。今後の課題として、利用者の拡大、教員の相互啓発・研鑽を行える組織的な対応、公開可能なコンテンツの開発、優れた教育方法の抽出・公開があげられた。


「Webによる就職支援サービス」

東洋大学情報システム部事務情報システム課課長 高橋 清隆氏

 事務システムのスリム化と効率化のため、ホストコンピュータから脱却し、サーバ・システムを導入してパッケージソフトを活用している。これにより開発期間の短縮、コストの削減、システムを使う職員の意識改革が進むものと期待している。システムの内容としては、就職支援サービスとしてWebによる進路希望登録、企業検索、進路決定報告、お知らせ通知などを準備した。今後は、早期からのキャリア支援に活用できるよう計画していると報告された。


「学生情報のデータベース化とポータルサイトシステム」

早稲田大学メディアネットワークセンターマネージャー 久保田 学氏

 早稲田大学の情報化推進プログラムは第1期、第2期と進み、現在は第3期の「グローカルユニバーシティの実現」を目指す段階に来ている。国際化・学外連携を視野にいれた総合的アプローチを展開するものである。今回は、このプロジェクトのうち、履修申請や休講情報等のデータベースを連携して一画面で情報を提供するシステムであるWaseda-netポータルの稼動状況について報告された。


文責: 情報化全国大会運営委員会



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