私情協ニュース1


第38回通常総会開催される



 第38回総会は、平成17年3月29日(火)午後1時半より、東京のアルカディア市ヶ谷(私学会館)にて開催された。当日は、17年度事業計画、収支予算の決定の他、教育改善調査の中間速報、情報倫理eラ−ニング教材の改定などについて報告・協議した。以下に主な内容を報告する。
 議事に入るに先立ち、文部科学省私学助成課の俵課長補佐から17年度情報係補助金の政府予算決定内容と申請について概ね次のような説明があった。

1) 平成17年度予算は、昨年度に引き続き非常に厳しい予算になっている。17年度予算編成等に関する建議の審議会において、「学生総数が減少をはじめているにもかかわらず毎年度恒常的に増額が続いており、予算縮減に向け厳しく見直しを図るべきである」という指摘がされ、大変厳しい状況にあったが、大学、高校含め4,575億8千万円と対前年度比20億円増で最大限の配慮が払われた。
2) その中で情報化関連の私立大学等経常費補助金は、高度情報化推進特別経費として教育学術教育ネットワークが16年度に比べ3億5,000円の増、教育研究情報利用経費が2億5,000万円増と合わせて6億円増額となっている。また、大学教育高度化推進特別経費は、高度教育研究改革推進経費を教育・学習方法等改善支援経費に統合し、申請を一本化した。
3) 私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費補は、対前年度24億3,000万円減の143億4,900万円、研究設備補助金は対前年度2億8,000万円増の60億6,800万円となっている。その内、情報通信施設(マルチメディア装置)は、各大学の需要が極めて大きいこともあり、概算要求通りの対前年度58%増の23億1,400万円を確保できた。情報通信装置(学内LAN装置)は、以前と比べ大規模な整備事業が減少していることから、大学、短大、高専、専修学校含め、対前年度4億3,450万円減の合わせて11億3,500万円となった。また、情報処理関係設備は、対前年度5%減の24億1,788万円となった。16年度は採択率が5割という厳しい状況にあったが、17年度予算においても厳しい状況になることが予想される。ただ、執行には、需要に応じて柔軟にすることにしており、できるだけ多くの大学に行き渡るような配慮をしていきたい。
4) 補助金募集の留意点として、補助対象外となる経費を除くこと、教育研究に使用するものかどうか、実施目的が明確か、教育の研究計画等の関連で適切な整備計画になっており事業経費として適正かどうか、あるいは他のシステムと整合性がとれているかどうか、審査で指摘されているので注意いただきたい。
5) 教育研究高度化推進特別補助は、採択制、傾斜配分とで計画書の提出期限等が異なるので注意をいただきたい。採択制は、計画書の提出依頼を5月頃とし、提出の締切りを6月上旬としている。傾斜配分は、5月に提出依頼行い、計画書の提出を7月に締切ることを予定している。採択制は、7月から8月にかけて私立大学教育 研究高度化推進専門委員会において審査いただき、その結果を10月の教育研究高度化推進専門委員会を開催して最終的に内定通知を行う。高度化推進専門委員会による審査の内容は、審査方法等検討しており、審査方法等を含め連絡する。事業の募集は、ホームページにも掲載していきたい。


1.17年度の事業計画

 文部科学省中央審議会での動向、事業の進捗状況を踏まえ、継続事業の改善・積極化を図るとともに、新規事業も計画。
 「情報教育に関する研究事業」では、学系別教育IT活用研究委員会を組織して、1)文学から医学に亘る18分野のIT活用モデルの報告書上梓に向け、コア・カリキュラムを視野に入れたIT活用モデルの研究を計画。2)新規事業としての世界水準を目指した情報専門系教育の研究は、情報システム、人工知能、ネットワーク・ソフトウェア設計、マネージメント、デザイン・アートなど専門的な情報分野の人材育成に向け、日本のIT研究者、IT産業の関係者による委員会を設置し、教育の在り方を提言する。3)情報倫理教育のeラーニング教材の改訂版を4月中に大学に配信。効果的な教材の活用方法、授業運営方法などを検討する。
 「情報環境に関する研究事業」では、1)eラーニングの可能性と限界、e−ラーニングを取り入れた授業事例、大学の能力に応じた授業モデルの提示、導入に伴う点検項目、教材作成・運用の共通方式などをガイドラインとして紹介する。2)教育に情報技術を効果的に取り入れるための判断基準について取りまとめ、自己点検、自己評価の指標に活用する。
 「情報教育・情報環境の調査事業」では、教育改善調査の最終報告と大学の情報環境白書の調査を計画。個人情報の保護対策として、教員向けの個人情報保護対策の調査も実施する。
 「ネットワークによる教育連携の事業」では、17年度より抜本的に活動や運営を見直し、教育改善のための議論をネットワークを介して交流できるようにする。その上でコア・カリキュラムの問題、ITの活用を含めた教育方法、支援体制など議論の基盤作りを優先するため、授業改善に必要な情報をメールマガジンとして配信する。また約35の分野で優れた授業モデルをアーカイブ化し、ファカルティ・ディベロップメントの研究に資するようサイバー上で授業の一部を紹介する。さらに、電子ジャーナル・データベースの共同購入機構を強化し、経費の軽減化と購入条件の改善に努めていく。
 「電子著作物の権利処理事業」では、コンテンツの登録を最優先するようにシステムの改善・運用の見直しを行い、稼働できる状態にする。
 「産学官連携による教育支援システムの研究・実験の事業」では、文部科学省の協力を得て事業化すべく、構想の策定を急ぐ。卒業生の4割前後が無業者、フリーター化となっており、大学の人材育成の信頼性が取り沙汰されていることから、教育に社会の現場感覚、体験を導入して人間力を養成する仕組み作りを考える。
 「研究会、研修会関係の事業」では、文部科学省の後援事業を継続し、国立大学法人をはじめとする非加盟校にも呼びかけ、参加の拡大を図る。特に、全国大学IT活用教育方法研究発表会は、あらゆる分野からレフリー付きの評価組織に参加が可能となるよう、従来の情報教育方法研究発表会から名称を改め、「IT活用教育方法研究発表会」と改称した。情報技術講習会では、教員の授業運営能力が十分でないことから、ITを活用した運営能力の講習をeラーニングおよび対面で実施するため、教材および講習内容の充実を図る。職員の研修会では、教育支援、人材育成支援に職員が取り組めるようにコーディネート、マネージメント能力の育成を図る。
 「会誌の発行」は変更ないが、Webサイトの改善を行う。
 「情報環境の整備促進」では、補助金採択の仕組み、審査の仕組みについて、文部科学省と打ち合せる。相談・助言、内外諸機関との連携は、前年度と変更なく、補助金の活用、教育の情報化戦略など個別的に対応する。


2.情報倫理eラ−ニング教材の改訂

 昨年9月6日の情報倫理教育研究集会を受けて、教材の構成および内容を変更。情報倫理の基礎、被害防止・被害回復、加害防止の3項目で再構成した。著作権関係、セキュリティの通信の暗号化やデジタル証明は、専門性が高いことから資料編として掲載した。
 教材内容で改訂した部分は、世界中を網羅するネットワークでありながら、利用規則がなく、管理者もいないなど非常に未成熟な仕組みであることを強調。インターネット上でのコミュニケーションの特質を表現するために、個人と個人、個人と世界の視点で注意すべき心構えを紹介。見破られにくいようなパスワードの例も掲げた。不正アクセスなどによる情報の漏洩、改ざんなどの被害防止、ウィルス汚染つきのメール送信による加害防止の視点を加えるとともに、「被害回復」を新しく設け、被害への対処法として、警察や関係省庁などの相談を受けることを解説。資料編に肖像権についても新たに追加した。

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