私情協ニュース2

平成17年度 短期大学部門検討会議開催される



 短期大学部門検討会議は、平成17年6月11日(土)午後1時30分から、関西大学千里山校舎で開催された。今回は短期大学の窮状を改善するための取り組みについて教育、学生支援(サービス)等の面から、情報技術の活用を軸にした方策を事例紹介し、併せて討議・意見交換を行った。

事例紹介1

「キャリア教育における学生支援の組織的取り組み」
金城大学短期大学部ビジネス実務学科助教授 藤元 宏一氏


 ビジネス実務学科では、キャンパス内でのキャリア教育を学生の職業意識や社会性の向上、学生の自信を培う教育と捉え、資格取得支援、社会的スキル習得支援、キャリア・カウンセリングの3分野からなる「キャリア形成プログラム」を構築して、全教員が連携して取り組んできた。

(1)資格取得支援
 カリキュラム全体の中で、資格取得支援授業や特別講座を系統立てて「授業関連・対策講座計画表」を作成。通常授業、夏季集中講座、放課後・週末補習を組み合わせて実施した。資格取得に関する冊子(「キャリアアップ―資格取得サポート体制の案内」)を発行して学生に周知徹底させ、チームワーク学習やクラス対抗方式を採り入れた結果、検定試験の合格率は著しく向上した(合格者数=平成12年184名→15年434名)。

(2)社会的スキル習得支援
 就職活動に対応するスキルを授業に組み入れた。1年次必修科目(基礎教養、企業研究、就職活動支援講座など)や一般の授業で職業知識やマナー、自己表現を指導し習得させた。

(3)キャリア・カウンセリング
 学生相談・面談のための共通情報として設けた「学生カルテ」ファイルを発展させ、キャリアカルテ(学生カルテ)をデータベースとしてサーバ上に構築した。キャリアアップのための新講座の開講、教員向けのキャリア・カウンセラー養成講座の実施、卒業生・地域に対するキャリア・カウンセラー講座公開、金城キャリア・サポートセンター開設、等々の事業に取り組んでいる。また、学生の就職活動と就職統計をデータベース化している。



事例紹介2

「学生の質保証を目指した英語学習支援」
京都外国語短期大学英語科教授 柳田 博明氏


 京都外国語短大は夜間2年制で職業に直結する実践力養成をうたっているが、近年の入学者の質的変化に即応して「学びの環境づくり」をモットーとした体系的な学習支援に取り組んでいる。主な学習支援プログラムの概要を紹介する。
1) 適正で多元的な成績評価システム
定期試験を廃止して平常授業の中で学習達成度を測定する。特に専門の英語授業では習熟度別クラスを編成して傾斜的な評価基準を設けている。TOEIC等による客観的評価も採り入れている。
2) 学生の主体的な学習の支援
科目選択幅の確保、地域間大学との単位互換制度の活用、TOEIC用個人練習ソフトや自主学習用のデジタル教材の利用、資格検定試験の奨励などで自主学習を積極的に行わせている。
3) カルテ方式の個人学習記録システム
学生基本情報をデータベース化し、その中にカルテ方式の個人学習記録システムを構築。学期ごとの評価、成果を学生に情報提供して学習意欲の向上を図っている。
4) リメディアル教育と能力・質の向上
基礎学力が一定水準に達していない学生に対しては高大連携により基礎教育アップの授業を実施。一方では、より高度な英語運用能力を身につけさせるため外国人教員と日本人教員の連携により、実践的総合授業(Integrated Skills)を進めている。



事例紹介 3

「学習意欲を高めるための幼児教育におけるIT活用」
常盤会短期大学幼児教育科講師 新谷 公朗氏


 幼児教育の現場である幼稚園や保育所では以前はパソコンなどITに関する関心が低かったが、社会のIT化が急速に進んできたため最近では情報技術の利用が高まっている。このため幼児教育科として必要な情報基礎教育に加えて、幼稚園・保育所で役立てるためのIT利活用教育に積極的に取り組んでいる。
 幼児教育の現場ではさまざまな文書作成、プレゼンテーションとともに、幼児教材としての画像・映像づくりにITを活用することができる。そこで保育科目、情報技術科目と音楽・美術科目との連携による幼児教材づくりが必要になる。情報処理演習(基礎科目)の上位科目である情報処理演習(応用科目)では、保育と幼児美術造形との共同による幼児情報教材として「デジタル紙芝居」の制作、保育と幼児音楽や表現分野の共同による「音楽指導における幼児行動分析」、保育と教育実習分野との共同によるブログを用いた「実習日誌の作製支援ツール」等を実施してきた。
 デジタル紙芝居のノウハウを生かして取り組んだのが、IT活用による「オリジナルTシャツ」の作成である。課題はTシャツの作成そのものと、その制作レポート提出とした。学生はTシャツとレポートの作成過程で、イメージスキャナやデジタルカメラによる絵・写真の取り込み方法・画像処理ソフトの操作と知識・著作権・肖像権の知識・ワープロソフトの活用力と文章表現力、等を学習し、あわせて美術・デザイン・造形分野で学んだ知識も活用することになる。ITを活用したTシャツ作成は、総合的な情報利活用教育につながるものといえる。



事例紹介 4

「社会のニーズに対応したIT教育への取り組み」
育英短期大学現代コミュニケーション学科助教授 宮田 聡子氏


 2000年以来、教職員、全学生が利用できる全学ネットワーク環境を構築してきた。現在、教育分野では学生がいつでもどこでも学内LANを利用して、情報発信能力を高めるように教育環境の整備に力を入れている。2003年には学内LANに外部からアクセスを可能にするVPN環境を導入した。インターネットを利用した就職活動が一般化したことなどから、学生が自宅でも電子メール送受信したいという要望に対応したものである。また、学生は各自のユーザIDで学内ネットワークにログインすれば、自分のディスクスペースを使用でき自分のファイルにアクセスできる。
 これにより学生はいつでもどこでもメールの送受信ができ、Web教材や課題の閲覧・ダウンロード、予習・復習、課題提出などが可能になった。2004年からは、学生の情報発信能力向上のために学生用WWWサーバを導入した。各自が申請によりWebサーバに利用者登録をして、学生ホームページの作成・開設ができる。



全体討議

「魅力ある短期大学を目指した教育・学習支援」
パネリスト 藤元宏一氏(金城大学短期大学部)
柳田博明氏(京都外国語短期大学)
新谷公朗氏(常盤会短期大学)
宮田聡子氏(育英短期大学)
鈴木 隆氏(短期大学会議運営委員会委員・立教女学院短期大学)
荻野七重氏(同・白梅学園短期大学)
司会 和田茂穂氏(同委員会委員長・千葉経済大学短期大学部)

 意見交換や討議の中で事例報告者がまとめとして述べた主な事項は以下の通り。
1) キャリア教育により社会的スキルを習得した学生は、挨拶をはじめ基本マナーが身につき、授業態度や自宅学習が向上した。当然のことながら就職に対する意識が高まっている。
2) キャリア・カウンセリングでは教員も資格を取ってカウンセラーとなることにより、全学的に学生指導・支援の取り組みが進んでいる。またIT活用との関係では学生の「キャリアカルテ」データベースの充実などにコンピュータシステムが効果を発揮している。
3) 入口(入学)から出口(卒業)までの英語学習支援を充実させ、卒業時には個々の学生の質を向上させる。特に自学自習できるよう教材専用サーバ上にWeb自習教材(自立学習型CAL)を用意する。
4) 幼児教育でITを活用した教材づくりに取り組むことにより、学生はパソコンの持つさまざまな機能(たとえば描画、画像加工、動画編集など)を体得し、自分の思いを自在に表現できるツールだということを認識する。
5) 情報リテラシーは高校の「情報」必修科目で学ぶ時代、短大で必要なのは学生自らの情報発信能力や応用力を高めること。そのための情報環境の整備や教員の情報教育力のレベルアップが重要になっている。
6) 地域社会との関係では、幼児教育系の場合は近隣の幼稚園・保育所のホームページづくりに協力したり、学生が作った教材をもとに“出前公演”したりしている。短大内で地域向けにこども広場や親子公開講座を開くこともある。


文責: 短期大学会議運営委員会
委員長 和田 茂穂


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