私情協ニュース2

平成18年度 大学教育・情報戦略大会開催される


 通算で20回目を迎えるこの大会は、文部科学省の後援を受け開催している。「大学の教育・研究、管理運営の基盤環境としてのITの戦略的活用について共通理解を深める」という本大会の主旨をより重視するため、名称を昨年度までの「大学情報化全国大会」から「大学教育・情報戦略大会」に改称するとともに、プログラムはそれに適った内容を企画し実施することとした。
 今年度は9月5日から7日までの3日間、アルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)で開催した。参加者数は、421名(168大学、23短期大学、賛助会員16社)の参加となった。賛助会員43社による展示会では、2日目の午後から教育の情報化関連の多くの展示が行われた。
 初日の午前中は本協会の戸高敏之会長の開会挨拶の後、「問われる大学教育の質」と題して大南正瑛氏(学校法人立命館理事)より基調講演いただいた。また、教員の教育力や職員の教育支援能力を高めるための取り組み事例として、職員の能力開発について篠田道夫氏(日本福祉大学常任理事)より、教育能力開発について阿部和厚氏(北海道医療大学FD委員長、心理科学部長)と高木 功氏(創価大学教育・学習活動支援センター運営委員、経済学部教授)より紹介いただいた。
 午後の前半には「学内情報の管理とセキュリティ対策」と題して、向殿政男氏(情報セキュリティ研究講習会運営委員会担当理事、教育・情報戦略大会運営委員長)より導入解説をいただき、藤村裕一氏(鳴門教育大学総合学習開発講座助教授)より情報管理の現状や問題点、セキュリティ対策の重要性などについて解説いただいた。その後、黒瀬友行氏(日本福祉大学情報ネットワーク課)よりセキュリティポリシーの実現や徹底、学内研修・指導、技術的対策など、学内での取り組みについて事例紹介いただいた。
 午後の後半では、「知的財産の教育利用と著作権〜報道機関の知的財産の教育利用〜」と題して、放送や新聞業界のコンテンツの教育利用への対応や海外の現状について、日本放送協会、読売新聞社、毎日新聞社より紹介いただいた。その後のパネルディスカッションでは会場を交えた質疑応答や意見交換を踏まえて、教育利用に関する今後の課題を確認した。
 2日目はA、B、C、D、E、Fと並列に六つの会場に分かれて大会発表を実施し、教育や支援環境へのIT活用について104件の発表があり、例年同様に盛況であった。また最後には懇親会が催された。
 3日目の午前は「教育支援への取り組みと学内体制」をテーマに、帝京大学、関西国際大学、東海大学より教員への教育支援と学生への学習支援について具体的な取り組み事例について紹介いただいた。
 午後の前半は「個人認証の技術動向と導入事例」と題して、(株)日立製作所より個人認証の技術動向について紹介いただき、千葉工業大学より「てのひら静脈認証」、日本女子大学より「顔認証」の導入事例を紹介いただいた。
 午後の後半は「学生サービスのためのICカード導入」と題して、神奈川工科大学と芝浦工業大学よりICカードや携帯電話を活用した学生サービスの展開について紹介いただいた。
 次に、各セッションの内容について報告する。


第1日目(9月5日)

基調講演
「問われる大学教育の質」
学校法人立命館理事 大南 正瑛氏

 大学に求められる教育の質保証と、それを実現するための教職員の資質開発をどのように取り組んでいくべきか、これからの大学改革の在り方について提案いただいた。
 雇用環境や学卒者数と職業需要のギャップを背景に、日本の教育システムでは、多くの青少年が能力(学歴)に見合った就職の安心感が得られず、過大な期待をあきらめ、階層上昇の機能を失い、将来不安ややる気を消失する状況が起きている。このような現状の中で、大学が教育の理念や目標を明確化し、大学を構成する学生、教職員、設置者が、教育・研究事業への高い達成能力・達成感、すなわちコア・コンピテンスを共有することは、大学が社会と世界の期待に応えることのできる質の高い世界標準の大学として再生できる道であり、質とブランド力の共有が重要であると述べられた。また教員や先達は、生涯を通して学習の動機付けと、自分の苦楽の人生体験を通して働くことの夢を語り継ぎ、青少年に新しい仕事の動機付けを与えることに尽きるとされた。
 日本の大学改革については、第一に公正で明朗な競争を行うこと、第二に世界に窓を開くこと、第三に自己決定することと示された。最後に、大学には公正かつ開かれた教育研究環境が不可欠であり、開かれたアカデミズムの視点から基礎研究と応用研究の相互連携に高い潜在力を持ち、ヒューマニズムと倫理性を持ってあらゆる生態系の生命力活性化のため、各分野で貢献する人材を輩出できるという大学の普遍的原理を信じることが大切であると述べられた。


事例紹介
「教育力向上を目指したファカルティ・ディベロップメントの取り組み」

「教育力向上を目指したファカルティ・ディベロップメントの取り組み」
北海道医療大学FD委員長、心理科学部長 阿部 和厚氏

 FD指導の先駆者としての阿部氏の体験から、講演会型や講演・討論会併用型などいくつかのFDの方法の中で、全員参加型で協同作業の体験ができるワークショップ型が重要であると強調される。この観点から、北海道大学や北海道医療大学でのFD実施状況や改善の実例報告がなされた。まずFDが効果的に運営されるためには、学長や学部長の意識と教員参加を促すリーダーシップが欠くことができない成功要件であることを挙げた。それに加えて、現在はFDに学生や市民にも参加をして効果を挙げている取り組みも紹介された。学生による医学史の演劇型授業開発や学生が作るeラーニング、FDの中でコアカリキュラムを完成させた例なども報告された。FDを通しての大学人の意識改革なくして大学改革は動かないことと、大学力は学生に力点をおいた教育力・授業力にあり、それは大学の知的財産を集結した団体力の強化に他ならないことを講演で強調された。


「学生中心の大学のための教育・学習支援〜教育・学習活動支援センターの取り組み〜」
創価大学教育・学習活動支援センター運営委員 経済学部教授 高木  功氏

 FDを単なるFDで終わらせないで教育支援も含めた包括的なアプローチが必要であり、個々の教員レベルではなく全学上げて取り組む姿勢が重要であるという理念をまず示された。しかも、FDの最終目標はカリキュラム改革に連動する必要があるという認識が強調された。価値創造を目指す人間教育としての創価大学では、この視点に立ち「教育・学習活動支援センター(CETL)」を2000年に開設し現在に至る活動が報告された。
 CETLでは、教育支援と学習支援が一体となり、学習意欲の向上や、授業改善、カリキュラム改革反映、そして、広報活動や調査活動などに取り組んできた。学生が利用しやすいようにキャンパスの入り口にセンターを開設し、コーヒーなど用意してサロン風に工夫した。また、近年CETLを分離し教務・学生・国際・キャリア課が一緒になった学生支援センターが発足、学生の要望がワン・ストップで可能となる学生サービスが展開されている。2004年には文部科学省「特色ある大学教育支援プログラム」選定も受けた。


「学内情報の管理とセキュリティ対策」

 学内情報の管理とセキュリティ対策はまさに大学の情報戦略として重要なキーポイントの一つである。大学内には大量の個人情報があり、大学の社会的な責任から、それらの管理についてはきちんとした手順と方法が必要であるが、その問題点や対策などについて解説していただくという、向殿政男大会運営委員長(情報セキュリティ研究講習会運営委員会担当理事、明治大学理工学部長)の導入解説の後、2名の講師に解説と事例紹介をいただいた。いずれの講演も多数の質疑があり、この問題の重要性と各大学における関心の深さが示されたと言えよう。


解説
「学内情報の管理とセキュリティ対策〜実効性の確保を目指して〜」
鳴門教育大学総合学習開発講座助教授 藤村 裕一氏

 情報セキュリティに関する豊富な経験に基づき講演が行われた。詳細なチェックリストが提示されたが、聴衆に対して5項目からなる簡易質疑が講演者から行われた結果、大部分の大学において相当の甘さがあることがその場で明らかになった。例えば、フラッシュメモリを教員が持ち歩いているか、その内容が暗号化されているか、といった点である。情報セキュリティではCIA即ち情報の機密性(C)と情報の完全性(I)そして可用性(A)が重要であることが述べられ、各種のトラブル事例が紹介された。結局、セキュリティが破れるのは最も弱い箇所であり、それは得てして人であることが多い。大学におけるセキュリティ意識を徹底するためには単にハンドブックを配布するだけでは不十分で、トップダウンによる徹底した危機に対する意識改革と現場に即した取り組み(巻き込み方の問題意識の共有)が肝要であることが強調された。


事例紹介
「日本福祉大学における情報管理とセキュリティ対策 〜情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)構築の取組み〜」
日本福祉大学情報ネットワーク課 黒瀬 友行氏

  日本福祉大学の簡単な紹介に続いて、そこでの情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)が具体的な事例として紹介された。学園構成員だけではなく、外部のコンサルタントも導入して、ISMSの戦略が策定された。情報セキュリティ委員会自体は学長を委員長とし大学の危機管理上不可欠なものと位置づけ、推進・基本ポリシーの整備を行っている。この動きは2003年度より開始され、PDCAサイクルの中で毎年改善してきている。ISMSの時系列に沿った詳細な運用フロー図などは具体的には始めて目にする聴衆も多く、具体的に導入し成果をあげている事例として興味深いものであった。


「知的財産の教育利用と著作権 〜報道機関の知的財産の教育利用〜」
日本放送協会ライツ・アーカイブスセンター副部長 梶原  均氏
読売新聞グループ本社社長室知的財産担当 川内 友明氏
毎日新聞社法務室知的財産管理センター委員 中田 彰生氏

 IT技術の普及に伴い、大学においても、e-Learning等を活用した教授法が取り入れられつつある。このような現状を踏まえ、講義や自主学習において、放送番組や新聞記事等の学外の知的財産を使用するときに、許諾を得る必要があるのはどの様な場合か?許諾申請があった場合、報道機関はどのように対応しているかが紹介された。
 日本放送協会の梶原氏からは、少人数の教室(おおむね50名以下)で著作物を教育目的で使用する場合には、使用許諾を得る必要はない。しかし、電子著作物をサーバなどに蓄積し、オンデマンドで配信する行為は、著作権者のみが公衆送信権を有するため、著作権法に抵触するとの説明があった。また、著作物の使用許諾申請をしたとしても、放送番組においては制作者のみならず、出演者、バックグランドミュージックの演奏者等、番組制作に関わった人や団体すべてに著作権があるため、これらすべての権利者から許諾を得なければならないことが障害となっていると紹介された。
 読売新聞の川内氏からは、著作権法35条についての説明があった。特に条文の後ろにある、ただし書きの後の部分の解釈が重要であるとの指摘があった。つまり、授業に関連しない参考資料の使用、校内LANサーバに蓄積する行為、ニュース番組等を定期的に複製し、ライブラリー化する行為、講義のたび学校ホームページへの掲載等は、授業または授業の過程には当たらないとの説明があった。
 最後に毎日新聞社の中田氏から、欧州諸国での教育利用について、現状が紹介された。欧州では、教育機関であっても基本的に著作権料を支払うのが原則であるが、教育現場でデジタルコンテンツを利用する場合、特に公衆送信権に関わる部分の許諾手続きが、欧州諸国と比べ非常に煩雑であるとの説明があった。今後のe-Learningの普及に伴い、煩雑な許諾手続きが、著作物を利用する立場と著作権を主張する立場の間の大きな足枷となってしまうことは間違いない。そこで、電子著作物の利用許諾手続きを簡素化し、両者に利益を生むような仕掛け作りが急務であり、これには、欧州で行われている方法が参考になるかもしれないとの意見が述べられた。
 紹介の後、3名の講師に加えて本協会の井端正臣事務局長と司会者である田宮 徹氏(大会運営委員、上智大学総合メディアセンター長)が壇上に上がり、パネルディスカッションを行った。会場から、オープンキャンパス等の模擬授業で著作物を利用する場合、授業の過程に入るのかとの質問があった。この場合、その内容が、大学の広報的なものであれば授業の過程には入らないが、純然たる模擬授業の場合は許諾の必要がないとの見解が述べられた。電子著作物の利用許諾手続きを簡素化し、両者に利益を生むような仕掛け作りが急務であるとの毎日新聞社の中田氏の意見を受けて、井端事務局長より、当協会で立ちあげている著作物利用許諾システム「電子著作物権利処理事業」について説明があり、この仕掛け作りに、本システムが貢献できる可能性が述べられた。最後に、著作物の利用者側も、それが教育利用目的であっても、多少の使用料を払うのは当たり前であると考えを改める必要があるとの見解が司会者より述べられた。今後両者が歩み寄り、電子著作物を利用しやすいように法律を変えていく必要があるとの結論に至った。


第2日目(9月6日)

大会発表(104件)*敬称、副題略

A-1   文系私立大学における情報活用形態を意識した情報システムの構築事例
金沢星稜大学 井上清一、二口 聡、福田俊成、岡部昌樹

 金沢星稜大学において、平成18年度に構築された情報システムの概要と活用方法について述べられた。システム構築に当たっては、システムを利用する学生像や講義を基に、情報活用形態を意識し、物的・人的資源が限られた中でどの様に効果的に行うかが問題になった。


A-2   ストリーミング配信を活用した授業公開・評価の研究
常葉学園大学 小田切 真

 専門分野の研究には力を注いでも、FDに関する全体研修には興味を示さないのが大学教員の悪しき習性である。そこで、教員の意識改革を図る目的で、模範となる提案授業録画し、ストリーミング配信した。その結果、かなりの教員が提案授業を見ていることがログから明らかになった。


A-3   教室における座席行動からみた学生による授業評価結果の比較分析
産業能率大学 松村有二

 教室における学生の座席行動を、学生がその授業に対して意識的あるいは無意識的に送るメッセージとして捉え、学生の授業評価、成績とどのような関係にあるのかを調べた。着座パターンが後方の学生の評価は他の前方・中央の学生と比較して、教員に対して厳しい評価傾向を示していた。また、定期試験の成績は前方、中央、後方の順であった。


A-4   情報教育における学習効果の調査
立正大学  

小堺光芳

 大学入学前の情報教育が学生の記憶としてどの程度残っているのかについて調査を行った。高校の授業でワープロソフトの学習経験を持つと回答した割合は約7割で、表計算ソフトの学習経験を持つと回答した割合は約6割であった。表計算ソフトを学習したと回答した学生のほぼ全員がワープロソフトを学習したと回答した学生であることから、学生間のパソコンに対する習熟度は大きく二極化していると推察された。


A-5   e-Learningに関わるセキュリティの調査研究
関西学院大学 八木昭宏、成田健一、奥野卓司、高田茂樹、武田俊之

 専任教員のセキュリティに関する知識・不安・自信などのセキュリティ意識および、コンピュータの利用の現状、各種の被害の概要などについて調査を行った。あくまでもセキュリティ問題に関心の高い層の回答であることを念頭に置く必要がある。セキュリティ問題について関心の無い層こそ、この問題に注目する必要がある。セキュリティ問題への意識は平均的には十分に高かった。しかし、セキュリティに関する不安が、情報セキュリティに関する具体的な知識や、知識に基づく行動につながっているわけではなかった。


A-6   大学での情報基礎教育とは
追手門学院大学 今堀洋子

 2006年度より、高等学校で、情報教育を受けた学生が入学してきている。大学入学時のパソコン操作経験の現状を把握するためにアンケート調査を行った。その結果、高校で情報教育が始まったからといって、大学の情報基礎教育が直ちに必要なくなる、あるいはレベルアップを図れる訳ではないことがわかった。


A-7   ものづくりとことづくりのためのイノベーションと創造的システム設計
大阪工業大学 能勢豊一、皆川健多郎、中島健一、椎原正次

 新しいものづくりのための仕組みとして、IT等のデジタル技術の支援によりこれまでに蓄積した多くのものづくりに関するアナログ技術の形式知化を提案した。


A-8   ICTを活用したビジネス教育戦略に関する研究
大阪キリスト教短期大学  

林 雄太郎

 ICTを活用することによって、明確な使命感をもって有機的自律的社会システムの中で21世紀のビジネス業務と経営が効果的に遂行できる責任行動型のビジネス人材を育成できることを提案した。


A-9   Power Pointと16分割プロジェクターを活用した学生参画型授業改善実践
三重中京大学 清水 亮、岡田良明

 Power Pointと16分割可能なプロジェクターを活用することにより、少人数授業あるいはゼミにおいて発表者だけでなく受講者全体を毎回主役としなが参加させることにより、学生を3無(無気力、無関心、無学力)から抜け出させることができた。


A-10   ビジュアルを通じたバイリンガルによる専門科目教育
立命館アジア太平洋大学 汪 正仁

 国際色富む学生に対し、ビジュアルを重視した授業を実施した。そのポイントは興味を引く教科書作りと日頃からの素材(デジタルカメラによる撮影等)収集であった。また教室における照明の調整や見やすい質の良いプロジェクターとスクリーンなどのIT関連設備の充実が重要である。


A-11   EMアルゴリズムを用いた試験得点分析
京都創成大学 神谷達夫

 ユニバーサルアクセス化した大学において試験得点は複数のグループの分布の和としてとらえるのが実情にあっている。EMアルゴリズムを用いて試験得点を混合正規分布に推定することにより学生の学力の特徴を正確に把握することが可能となった。


A-12   エクセル(表計算ソフト)使用を前提とした数学教育のあり方
東海大学 渡辺 信
筑波学院大学   垣花京子

 表計算ソフトを用いることで、従来演繹的な教育手段しかもたなかった数学教育に実験を導入することが可能になった。実験によって概念理解を助けることにより、より数学の抽象世界の理解の深まりに資することとなる。


A-13   情報処理資格試験対策講座へのホスピタリティ教育導入と企業の評価
東海大学 白澤秀剛、上村龍太郎、丸山有紀子、谷口唯成、日向寺祥子、田中 真

 国家試験対策講座において社会的スキル教育を導入することは非常に効果的である。その社会的スキルの具体例としてホスピタリティを取り上げ、ホスピタリティ教育が社会的スキルの育成に寄与することを明らかにした。


A-14   CPLDを搭載したディジタル回路教育のための演習基板開発
湘北短期大学 小田井 圭、小松恵一

 デジタル回路教育のための演習基板を開発した。この演習基板を用いることで講義のみのデジタル回路ではなく実際にソフトウエアでON/OFFしたりすることでLEDが点灯/消灯するため、論理回路を実感できる。


A-15   大学教育におけるナレッジマネジメント
立命館アジア太平洋大学  

中田行彦

 「組織的知識創造」の理論を教育に適用する考えにたち、教育におけるナレッジマネジメントを検討し、「知識スパイラル教育法」を提案実践した。この「知識スパイラル教育法」により小グループでの「組織的知識創造」が増幅され。個人の知識と創造性が促進され、教育効果が上がった。


A-16   授業支援型e-Learningシステムを利用した 理工系ESP教育の試み
関西大学 山本英一、岡本清美、冬木正彦、壇 寛成

 e-Learningを活用したESP(English for Specific Purpose)教育をプログラミング教育の中で実践した。学期終了後に寄せられた学習者からのコメントでは「専門との関連で英語に対する関心が高まった」という趣旨の肯定的な感想が多く寄せられた。


A-17   理数系少人数教育のためのe-Learningシステムの開発
東京理科大学 本田宏隆、野澤 肇、佐藤喜一郎、竹内 謙、村上 学

 理数系少人数教育のためのe-Learningシステムを用いることにより、事前学習による教育効果だけでなく、事後学習における学生の相互研鑽による教育効果向上が見られた。また、本システムを用いた一連の学習は、理工学の基礎知識・技能の習得に加えて、人間性・社会性に富む学生を養成することにつながる。


B-1   アイシーキューブ(略称IC3)を活用した専門学校との連携による服つくり
名古屋学芸大学   加藤素子
神戸服装専門学校   五十嵐かつ代

 Web会議システム「アイシーキューブ」(略称IC3)を使用して名古屋学芸大学短期大学部現代総合学科(19年度開講)と神戸服装専門学校の授業で連携し、学生が服のデザインと製作をした。遠隔地同士が互いのPC上のアプリケーション(主にアパレルCAD)を見ながら会話・操作を行うことで、短時間で間違いのない作品作りができる。そして、正しい縫製指示書がPCで書けるようになる。さらに、縫製以外、服のデザイン工夫、テキスタイルデザイン、パターン製作等をPCで自在に行えるようになることを意図した。


B-2   日米間大学院のプロジェクト型演習の実施環境
青山学院大学 佐久田博司、John R. Williams

 青山学院大学大学院理工学専攻のクラスを3から5名のチームに分割し、テーマをそれぞれ決めたプロジェクトを行う。その過程で、他大学(マサチューセッツ工科大学)からの評価や意見を取り入れてプロジェクトの改善に努める。その動画像および音声、発表資料をコンテンツ化して保存し、他大学に公開し、コミュニケーションの場とするプロジェクト型円周を実施した。特徴としては、動画音声とPower Pointのスライドショウが同期し、説明内容の詳細が十分理解できるようにしたことである。また、コンテンツにはコメント書き込みのツールを作成し、コミュニケーションの補助手段とした。


B-3   eラーニングによるビジネス教育システムを活用した教育連携
横浜商科大学 柳田義継
関東学院大学   荒川峰彦
横浜商科大学   立川丈夫
株式会社テクニカル・ユニオン   戸倉貴史、戸倉正貴
横浜市立大学   野々山隆幸

 eラーニングによるビジネス教育システムである「ビジネスセンター」をもとに、複数の教育機関が連携しながら学習を進められるシステム構築を目指した。学習者はこのビジネスセンターを利用して受発注や在庫管理、請求業務などといった一連の業務処理を行うことで、ビジネス実務に即した業務処理を初学者でも容易に理解することが可能である。


B-4   キャリアアップ講座―産官学連携によるeラーニング学習コンテンツ作成の事例報告
岐阜経済大学 竹内治彦
武蔵大学   松島桂樹

 岐阜県における雇用確保を目的として、eラーニングによるキャリアアップ教材を制作した。成果として、1)一般的な教材ではなく岐阜県という特定地域に即したキャリア教育が推進できたこと、2)産官学の高いレベルでの協力関係が築かれたこと、3)教材作成の実行を主に学生が担ったことが挙げられる。


B-5   インターネット利用・緊急地震速報を用いた学内地震減災システムの実証実験
湘北短期大学 澤口 隆

 迅速な避難行動をとり、被害を最小限にとどめられるよう、大学内に設置した端末で気象庁が発信する「緊急地震速報」を受信し学内に伝える受信システムを構築した。モニタ上に全国の地震情報を常時表示しておくことによって、学生・教職員の防災意識を高め、教育現場での安全性の向上に貢献できる。


B-6   Wikiを用いた学部サイトの運営
九州産業大学 佐野 彰

 Webサイト運営を一人の担当者が行うと、情報が貧弱になり、偏りが生じたり、更新する者が限定されたりなどの問題があるが、Wikiを用いてこれらの問題を解決している実践例が報告された。Wiki とはWebサーバ上で動作するシステムであり、インターネット・ブラウザからWebページを編集・作成することができる。HTMLの知識は必要なく、極めて簡単な文法を理解することで、素早くWebの編集ができる。このシステムの利点をいかし、所属学部のWeb サイトを低コストで構築し、複数の教員で共同運営している状況が報告された。


B-7   発表中止


B-8   明薬サイバーキャンパス・優良な薬剤師教育支援システム
明治薬科大学 日野文男、向日良夫、高取和彦、梶原正宏

 薬学教育における実習先病院と大学とを結ぶWeb会議システムを開発した。インターネットを介して、現在二つの医療機関との間で実務指導者(医師、薬剤師、看護師等)と大学教官とのコミュニケーションをとっている。本システムの有する特徴は、1台のPCで4名までの対面(音声のみでは10数名)がPC画面上で可能であり、Wordその他の情報に相互に加筆が可能であり、また交換した情報全てが圧縮保存できることにある。これにより会話に時間的な制限のある医療機関とのコミュニケ-ションを、保存しておいた情報をもとに、後に改めて議論しコミュニケーションを深めている。


B-9   学内LANによる画像教材の配信と病理診断学における学習効果の検証
日本歯科大学 佐藤かおり、柬理頼亮、青葉孝昭

 病理診断学で活用される画像教材など大容量のコンテンツを迅速に配信するため、Web教材を統括管理し、学内LANで配信する講座サーバを設置して教材配信ネットワークを構築した事例である。画像データベースや問題解答の機能も充実させた結果、テスト成績の向上が見られた。


B-10   既存の一般用ビデオ機器を活用した薬学化学系実習IT化の実践
北海道医療大学 林 英幸、二瓶裕之、森本敦司

 薬学化学系実習の効率化、学生自身の事前学習、実習効果の向上、達成化を目指して、教員個人レベルでのDVDのビデオ教材の活用事例である。実習初日から学生は教員の意図通りに実習を行い、個別指導をほとんど必要とせずに効率良い実習指導が可能となった。


B-11   医療薬学実習におけるIT活用
武庫川女子大学 西方真弓、秋好健志、鳴戸郁江、北野明美、冨山直樹、松山賢治

 薬剤師業務に関する医療薬学実習用の教育支援教材を開発し、インターネット上に公開した。学生はビジュアル的に操作を確認して実習に取り組み、自由な時間に予習、復習できるようになった。実務経験の少ない教員も標準化された教育支援教材を活用することにより、実習指導の実現が可能となった。


B-12   歯科大学におけるIT化への全学的取り組み
松本歯科大学 黒岩 昭弘、金銅 英二

 学生の成績向上を目的として、講義支援はて試験の出題をオンラインで行えるようにするとともに、マークシート形式によるウィークリーテストなどを導入し、成績(平均点)、正答率を掲載するなどしている。インタラクティブスタディと定期試験の相関など具体的に統計分析し、e-Learningの効果がどこまであるかを客観的に検証する必要もある。


B-13   医療系大学学生に対する情報セキュリティ対策の試み
東京医療保健大学 津村 宏、駒崎俊剛、岩上優美、佐久間雄一、二ノ宮和夫

 医療系大学においては、臨地実習として病院や施設で、患者さんの情報を取り扱うことになりになり、個人情報が第三者へ漏れない厳格な対策が必要であり、情報セキュリティ対策を行っている。情報セキュリティの重要性に関する講義、個人情報保護法に基づく情報セキュリティ講習会などの対応の他、実習科目では、事前学習としてレポート記述方法や情報の取り扱い方法によって情報セキュリティを確保する講義が実施されている。


B-14   某看護実習施設における看護・介護職種別自己価値観の概念と適応の関連
松本短期大学 島田久代

 療養型中心の病院では、利用者中心の看護・介護を目指すほど看護・介護の連携が重要度を帯びるので、この研究の目的である看護・介護職種別自己価値観と適応の関連を深める必要性がある。そこで、この病院で働く看護・介護職員の意識、取り組み姿勢における適応のあり方についえアンケート調査を行い、それらを自己価値観の概念との関連で捉えて分析した。


B-15   シミュレーション型実習教材を活用した社会福祉実践教育の進め方
淑徳大学 松山恵美子、戸塚 法子

 本システムは、社会福祉士を目指す学生達がWeb上の仮想福祉施設で、様々な出来事を疑似体験していく過程で、問題点を発見し、さらに課題を設定する能力やコミュニケーション能力を養うことを目的としている。仮想福祉施設で生活する子ども達の起床から就寝までの1日の流れに基づき、ストーリー性を持たせた32教材から構成されている。


B-16   非常勤講師からみた大学間e-Learning格差
上智大学 峰内暁世、恩田正雄

 専任と非常勤など、教員の雇用形態の違いからくる「時間と空間の制約」をe-Learningによって克服ないし緩和できる可能性を、上智大学における実践、また非常勤先における実践を通して検討したものである。その結果、非常勤先という「学生との接触時間が限られている」状況であっても、e-Learningプラットフォームを授業に活用することで、同等の教育内容を提供できている。しかし、教師・学生双方におけるICT能力の獲得が不十分な状況であり、この面の改善が望まれる。


B-17   講義支援システムGOALSの利活用状況とその効果
北海学園大学 佐藤大輔、福永 厚、天笠道裕、浅村亮彦、浦野 研

 2003年度にGOALS(Gakuen Open Advanced Learning System)と呼ばれる講義支援システムを導入し、講義概要やシラバスの提示、配布資料のアップ・ダウンロード、オンラインテスト、リポート提出、成績管理などの機能を持っている。学内のみならず自宅等の学外からもインターネット経由でアクセスできるので、対面授業での教育効果の向上だけでなく、事前及び事後の学習によって、教育効果の向上を期待することができる。


C-1   携帯電話を用いた授業支援システムの授業評価
摂南大学 雨宮 孝、杉本篤信、佐藤正志、川相典雄、紙 博文、有馬善一、勝原 健、松永公廣

 携帯電話を授業準備、授業実施、評価に活用するシステムを、利用の実際の状況も提示しながら、研究発表が行われた。また学生のシステムに対するアンケート評価の分析も提示された。一部ではあるが携帯をこの試みに対して使用しない学生もおり、別途対応の必要な箇所もある。


C-2   携帯電話や携帯ゲーム端末を利用したビデオキャスティングによる教材提示の試み
九州共立大学   守 啓祐

 SONYのPSPや携帯電話PDAなどを使い、授業関連ビデオの視聴に活用するというユニークな試みの研究である。いつ、どこでもビデオの視聴ができるが、ネックは機器の価格や、ダウンロードのための時間やコストである。学生の反応ではPSP程度以上の画面サイズと解像度が望ましい。


C-3   携帯電話を併用した遠隔教育システムの提案
甲子園大学 竹本賢太郎
大阪工業大学   下左近多喜男

 ホームページ上で資格試験対策(中小企業診断士等)の学習のための質問と採点を自動的に行うシステム・問題作成支援システムを構築している。これを携帯電話で利用できるように拡張を行ったが、画面サイズの制約などから、今後の検討も必要となっている。


C-4   携帯電話mラーニングによる学生参加型授業の実践
秋草学園短期大学 斎藤奈保子

 携帯電話を活用した「mラーニング」を業者の開発したシステム上で運用し、ミニテストや復習に活用している。アンケート結果では学生にも好評のようである。ただし、その成果を過年度と比較したが、選択式による携帯上の学習だけでは記述式の試験について効果を出せないようである。


C-5   ケータイを利用したeラーニングシステムの有効性
名古屋文理大学 長谷川 旭、小橋一秀、長谷川 聡

 携帯電話利用による学習が具体的状況の提示も含めて解説された。初級シスアド試験について携帯電話とPC端末利用の比較では前者の方が有意に時間がかかり、これは携帯電話の画面や操作の関係のようである。学生の多数は手軽さ便利さを認めており発展が期待される。


C-6   携帯電話を用いた体育大生の授業・課外活動支援システム
日本女子体育大学 石原英樹、山口祐也

 携帯電話を活用して体育系学生の毎食ごとの栄養摂取の評価と記録を行うシステムの状況が紹介されたがパケット料金の学生負担が一つの問題となっている。また、課外活動支援システムとして地元の烏山商店会のICカード化されたポイントシステムと連携する興味深いアイディアが紹介された。


C-7   携帯電話ホームページによる学生支援システムの制作とその実践
浅井学園大学 山本正八

 携帯電話ホームページを学生生活で多面的に展開している事例が紹介された。履修登録や出席管理、成績確認、単位取得状況など各種の機能を利用することができる。教員側でも多大の時間を消費した出席簿の管理を短時間で行うことができるなどメリットが大きく、今後の展開が期待される。


C-8   携帯電話を利用した授業支援システムの開発と運用
創価大学 岡田 勇

 携帯電話を活用した授業支援システムを自作して活用している事例である。個人データの登録、アンケート・小テストなど各種の機能を持つが、特徴的な出席管理システムについて具体的な紹介があった。授業中にキーナンバーマトリクスを短時間提示し不正を防止できる方式である。


C-9   出席管理にも有効なマークシート方式小テスト
鹿児島国際大学 伊藤明彦、重村ひとみ

 学生指導・支援のためハンディスキャナーと無線LANで「出欠記録システム」を導入し、新学生情報システムにこれを集中して利用できることにした実例報告。ただし、遅刻・早退・代返・防止にはこのシステムは限界があり、これを克服するために授業中にマークシート方式小テストを実施し、平常点管理に効果を挙げている経済学授業が紹介された。


C-10   ICカードを利用した双方向型対話授業の試み
産業能率大学   小柴達美

 学生に配布したICカード(Edy)をリーダー上に置くだけで着席情報が制御PCに表示され、大教室でも双方向型授業が実現できる実例報告。この着席管理システムは4種類の回答ボタンで学生にリアルタイムで質問でき、理解度を把握し授業を進められる。学生には画面を通して教室で展開されるシステムの趣旨を開示し理解を得られる努力もしている。


C-11   PDAを用いたオンライン電子教務手帳の開発
いわき明星大学 中尾 剛

 携帯端末PDAを利用して学生証で出席確認を行い、Apacheを介して無線LANでデータを登録し、出席・リポート提出状況など管理し、学生もPDA・PC画面上でその結果を確認できるシステムの運用を二つのクラスで実証した報告。学生の口頭試問での理解力や途中退席・遅刻の防止にも役立つ。今後は全学的に利用し学生システムへの連携が課題。


C-12   RFIDを活用した図書館総合システム
女子栄養大学 池内和恵、小川禮子

 図書館の利用者サービス向上、二つのキャンパス図書館統合システム構築のためにRFIDを導入した報告。導入作業には図書館業務の分析、所蔵調査、利用分析、除却検討後、FRIDの機種選択・貼付、ゲイト設置し、一元管理を可能にした。CCTV導入により、図書館無人化管理や防犯防止を実現、司書は本来のリファレンス業務に専念できる環境を整えた。


C-13   小規模大学における情報化推進の取り組み
九州ルーテル学院大学 松岡英里奈、赤坂 亮

 予算、人員に限りのある小規模大学で学内情報化推進3年間の歩みの報告。LAN、教職員へのPC講座や情報の共有方法、ウイルス対策、Web解析ツール、携帯掲示板、USBメモリーの購入促進、リポートの電子化や共通プリンター、経費削減対策や職員の作業負担軽減等、システム構築に限られた人員で対応したご苦労とその智恵の実例報告。


C-14   デジタルノートテイクによる障害学生への情報保障の取り組み
吉備国際大学 佐藤 匡、今村俊介、塚田健二

 聴覚障害学生への教育支援、情報保障のために学生ボランティアセンターを立ち上げ、PCと専用フリーソフトにLANを利用しデジタルノートテイカー育成のカリキュラムや動機付け等、学内支援体制が報告された。当日は3名の学生諸君が実技を披露して会場で理解を深めることができた。今後は弱視学生など対象を拡げてバリアフリーの大学を目指す。


C-15   コース管理システムを活用した教育の支援と普及
帝京大学 渡辺博芳、及川芳恵、古川文人、高井久美子、武井惠雄

 教育の情報化をはかり、効果的な教育活動を実施するためにコース管理システムを活用し、学習者中心の教育観の確立を目指す報告。この中心となるラーニングテクノロジー開発室の活動(コンサルテーション、教材開発支援、授業の支援、ヘルプデスク、TA養成、PR)が紹介された。ラーニングテクノロジーはすべての学習形態に利用できる考えを強調。


C-16   NetbootによるセキュアなPC演習室の構築と、Win,Mac,UnixのマルチOS環境の実現
東京経営短期大学 藤井 寛

 OSに対する様々なニーズに対応するため、マルチOS環境を実現し、設置スペースやコスト削減を計る。クライアント機はBSD UNIXをベースにNetbootが標準装備されているMac OS Xを使用。ログイン画面では選択可能なWindows、Macintosh、UNIXが表示され、簡単に利用できる。キーボード環境も工夫し、PCを自由に操作できる人間教育を目指す。


C-17   ハイパー・デジタル・インターフェース(hydi)のコンセプトとシステムデザイン
慶應義塾大学 境 一三、佐藤 望、倉舘健一、森  薫、佐々木明美

 現代科学の細分化・分断化が進む知のあり方を見直し、超領域的に統合するメタモデルを構築し、地の生産・継承のためのキャンパス作りに生かそうとするhidi開発の試みの報告。文章や映像、音響を共有交換で一つのシステムに収めてコミュニケーション空間を作る。表象を超領域的デジタル化するhidiの公共財として可能性も視野に入れての研究報告。


C-18   学生実験における各種学生情報の効率的収集・管理・開示システムの構築
日本大学 遠藤 拓、杉浦義人、上田 剛、池田正則

 実験系科目におけるレポートの評価は重要な位置を占めるが効率化は難しいと思われてきた。この難問に対し慎重な業務分析を行い、キオスクボックスによるバーコードつきレポート表紙の発行、PDA端末による採点などを組み合わせ、迅速な判定や再提出指示などを可能とした。


D-1   大分県における情報教育の進展とその推進を目的とした教員の活動
大分県立芸術文化短期大学 凍田和美、井上知延
ハイパーネットワーク社会研究所   渡辺律子

 大分県において、教員が中心になり、教育の情報化を推進する活動を紹介した。コンピュータに自信が無い教員に対する研修会や、由布市の小中学校の情報教育環境改善などを行った。その結果として、各種ソフトの使用頻度が高くなるという傾向が見られた。


D-2   教科「情報」の修得内容に関する実態調査
愛知淑徳大学 小林久恵、西荒井 学、三和義秀

 高校における情報教育の受講実態を把握するために調査を行った。その結果、基礎的な内容の習熟度は低く、コンピュータ操作に不安を感じている傾向も高いことが明らかになった。また、高校での「情報」の履修による理解度の差はあるかという質問に対しては、正確な分析ではないが、キーボード操作以外には差がなさそうだという回答であった。


D-3   操作速度によるコンピュータ演習科目クラス編成
大阪国際大学   矢島 彰、安達康生、石川高行

 高校の授業でコンピュータ操作を扱うことにより、従来より習熟度の格差が広がると予想される。自己申告や知識問題による習熟度別クラスは問題が多いため、操作速度によるクラス分けを試みた。その結果、タイピング速度によるクラス分けは有効であるという結論を得られた。


D-4   コンピュータリテラシー教育における文字入力方法の検討(2)
日本工業大学 吉岡 亨、飯倉道雄、樺澤康夫

 タイピング練習システムを試作し、コンピュータにおける携帯電話型文字入力装置の利用の可能性を検討した。その結果、最初の状態ではフルキーボードと打鍵速度にあまり差がないことが分かった。また、会場から仮名漢字変換の候補をマウスで選ぶのは速いのではないかというコメントがあった。


D-5   理工学系コンピュータリテラシーにおける試み
日本大学 伴 周一、大久保尚紀、中原明生、田中玲子、眞岩久恵、羽島宏史

 個人情報と個人ツールをUSBメモリに入れて持ち歩くことにより、実習室と自宅のコンピュータ環境の差を低減し、コンピュータリテラシーの実践例として活用する。メールソフトを持ち歩くだけでも好評であったが、化学系の専門ソフトも持ち歩くことにするとさらに評価が上がった。


D-6   全学的なノート型パソコンの貸与と学習支援
兵庫大学 河野 稔

 全学的にノート型パソコンを貸与するという状況において、個人のスキルに依存した負担を減らすための e-learning 環境を導入した。Moodle を利用し、コンテンツの多くを Flash 化した。これにより、学生からは学習がやりやすかった、教員からは授業管理がしやすかったという感想が得られた。


D-7   デモ化ソフトを用いた教材の活用
九州情報大学 岸川 洋、岡 久登、福田耕治、合田和正

 一般市民向けの公開講座において、操作手順を初心者に分かりやすくするため、教材作成にデモ化ソフトのMacromedia Captivateを活用した。これにより、全体の流れを自分のペースで確認できるため不安が少なくなるなどの効果があった。


D-8   医療系大学における情報リテラシー教育のあり方について
国際医療福祉大学 大塚敬義、長谷川高志、外山比南子

 新入生の情報リテラシーの習熟度に関するアンケート調査を行い、大学における教育のあり方を検討した。その結果、ワープロは使用経験と成績に相関があったが、表計算ではなかった。これは、表計算では数学の知識の影響が大きいためであると推測される。


D-9   CEASを利用した情報リテラシー教育の実践
産業技術短期大学   久次米利彦、廣田正行、金子豊久、佐藤清次、大杉茂樹

 情報リテラシー教育で授業支援型e-LearningシステムCEAS(Web-Based Coordinated Education Activation System)を利用した場合の効果について報告された。科目単位での課題提示および回収が同じ画面でできるようになった等便利になった部分も多かったが、同一内容で二つのクラスを運営するような場合、別のコースとして取り扱われてしまうなどの問題点もあった。


D-10   Linuxとe-Learningを用いた情報基礎教育の試み
熊本学園大学 新村 太郎

 コストがかからず、セキュリティ上比較的安全であることにも着目されているLinaxをクライアントマシンのOSとして使用し、e-Learningを行った結果が示された。受講生の登録の自動化システムを構築した。小テストは自動採点・自動集計されるため、省力化できたが、それ以上に授業準備に時間がかかることが分かった。したがって、e-Learningを浸透させるためには、支援体制の整備が必要不可欠である。


D-11   理工系学部における人文社会系少人数クラスのe-Learning的展開
東京理科大学   村上 学、本田宏隆、野沢 肇、佐藤喜一郎、竹内 謙

 理工系学部では少人数のゼミクラスで討論形式のグループ学習を行い、コミュニケーション能力を育成することが必要であるが、高校までに議論・討論に関して訓練を受けてきていない学生がほとんどのため、事前の準備(予習)ができないだけでなく、授業内でも問題点の共有、論点の整理に手間取り、自分の意見の表明や評価と反省を適切の行うことが難しい。これらの問題点を克服するべく導入された、e-Learningシステムの特徴を活かしたBlended Learningの例が紹介された。


D-12   数式表現図形を用いた芸術系領域のプログラミング教育
大阪芸術大学   武村泰宏
新潟青陵大学   南雲秀雄

 芸術系領域でもコンピュータの効果的で応用的な活用が重要であるが、プログラミング学習の「動機付け」に関する知見が少なく体系化されていないのが現状である。数式表現図形を使うことにより、表現された図形の美しさから芸術系学生のプログラミングへの興味を持たせることに成功した例が紹介された。


D-13   ロボットシミュレーションによるオブジェクト指向プログラミング学習教材の開発
いわき明星大学 高山文雄、大表良一

 オブジェクト指向の概念をプログラミング初級者に理解させるのは難しい。オブジェクト指向プログラミングの有効性を体得するために開発したグラフィックスとアニメーションを使った入門教材を使用し、その学習効果と反省点が紹介された。


D-14   XMLを活用したフローチャート学習教材の開発
大阪国際大学 中井哲夫、岡本容典、下條善史

 文化系に属する学生は、数理的思考能力に対する訓練が不足している。この様な学生にプログラミングを理解させる目的で開発したアルゴリズム学習教材ソフト(Dynamic Flow Chart)にXMLを活用しいくつかの機能を追加した最新版を使用したときの学習効果が紹介された。


D-15   日本語プログラミング言語「なでしこ」を用いたプログラミング教育の実践
比治山大学 山田耕太郎、宗尻修司

 プログラミング言語を教育する場合、Visual Basic, C++, VBA, Java Script等があるが、いずれも英語ペースの言語という点に関しては違いがなく、プログラミングの考え方を身に付ける前の障害となっていた。この問題を解決するために、日本語プログラミング言語「なでしこ」を用いた結果、英語に煩わされずに、プログラミングが体験でき、英語の言語を用いた場合に比べ、学習効果が上がったことが紹介された。


D-16   Javaプログラミング演習におけるLMS利用の効果と今後の課題
神奈川工科大学 山本富士男、鈴木孝幸

 Java言語を用いたプログラミング演習にLMSを利用することで、課題に対する学生の反応がリアルタイムに把握でき、課題の難易度と出題量を適切に調整できるようになったとの報告があった。しかし、課題の提出を演習時間内に行おうとして、演習の前の時間に行っている、講義を聴かずに課題に取り組む学生が増えてしまった等、LMSを用いたことによる弊害もいくつか見られた。


D-17   プログラムレポートの採点を補助するシステムの試作
日本大学 栗野俊一

 プログラミング教育を行う場合の問題点として、プログラム作成課題を与えたとき、そのプログラムを評価するには、プログラムを実際に走らせる必要があり。この操作にはかなりの時間とリスクが伴う。一方プログラムの品質保証を目的とし、様々なテストの自動化法が提案されている。これを利用し、半自動的なプログラム評価システムが紹介された。


D-18   情報教育における学習環境の影響と学生の意識
立正大学 友永昌治、宮崎智絵、近藤武明、武井順介

 学生の学習環境と、学習に対する意識や実際の学力差との関連を、Excelの場合について調べた。この結果、学力は階層意識や父親の学歴との関連性は低く、母親の学歴との関連性は高いことが分かった。また、個人情報保護についての質問には、無記名なので問題ないという回答であった。


D-19   情報教育環境の向上を目指した習熟度クラス編成と学習環境
中京女子大学短期大学部 前野 博

 学生が高校で「情報」を履修することにより、大学の情報教育がどう変わるべきかを検討した。入学時にPC操作スキルに関する習熟度テストを行い、その結果によって習熟度別クラスに分けた。高校での履修内容には大きな格差があるが、日本語入力のスキルは向上していることが分かった。


E-1   インターネットを利用した国際遠隔授業
法政大学 柳沼 寿、小林尚登、曽村充利、廣瀬克哉、徳安 彰、福田好朗、林 公美、日野好幸

 日本にいながら米国大学院のMBA課程を受講できるようにした国際遠隔講義の5年間の活動が報告された。字幕の表示方法の改善など毎年改良を重ねているので、ハード面ばかりでなくスタッフを含めたソフト面での完成度も高いシステムであるとの印象を受けた。国際遠隔授業の代表的なモデルといえるであろう。


E-2   リモートラボによる実践的ネットワーク技術者教育
千葉工業大学 須田宇宙、中川泰宏、中村直人、三井田惇郎

 ネットワーク機器をインターネット経由で遠隔操作させる環境を利用し、実践的なネットワーク学習の試みについての報告がされた。実機を使ってネットワーク機器の操作方法を学ばせる環境を用意するのは困難であるので、有効な方法であると考えられる。トラブルを想定したケーススタディを体験できるのも魅力的である。


E-3   遠隔教育におけるバーチャルリアリティを用いた空間構築
立正大学 櫻井広幸、後藤真太郎、山下倫範、酒井聡一、東川昌之、石松明長、藤村 哲、川田雅広、田中典子
富士通   福瀧敏典、安倍和宏
FJB   室本秀行
FFC   菅野智文
ソリッドレイ研究所   神部勝之、鮫島正大

 バーチャルリアリティ空間を用いた遠隔教育についての報告がなされた。立体視用ヘッドマウントディスプレイやサイバーグローブを用いた本格的なものであり、遠隔教育システムとバーチャルリアリティシステムとの接続形態について検討している。具体的な教科に対応してこのシステムをどのように活用するのか、今後の展開が期待される。


E-4   模擬株主総会ストリーミング配信の試み
大阪国際大学 韓 尚秀、市川直樹、田窪美葉

 従来から韓国や中国の大学と協力してマルチポイントPC会議システムを用いた模擬株主総会の実験を重ねてきているが、会場外からは参観できなかった。この問題を解決するために、模擬株主総会の風景を、ブロードキャスト配信機能を用いてのライブストリ−ミング配信による模擬株主総会の実験についての報告がされた。


E-5   遠隔教育システムを用いたGIS教育システムの構築
立正大学 酒井聡一、後藤真太郎、山下倫範、櫻井広幸

 GIS講習のための二つのキャンパス間での遠隔教育システムの実施結果について報告がされた。そして、第1回講習会後、対面授業と遠隔授業との比較を行うためのアンケートを実施したところ、学生のマイクによる質問と教員の板書による説明に難点があることがわかったという。質問しやすい環境の検討が今後望まれる。


E-6   デジタルコンテンツ制作におけるフリーウェアの活用
慶應義塾大学 大久保 成、森  薫

 デジタルコンテンツの製作環境をより安価に整備したいという問題意識のもと、市販ソフトとフリーソフトウェアとの機能比較について報告がされた。そして、ツール間のファイル形式の互換性などの問題は残るが、フリーソフトウェアでも、大学教育におけるコンテンツ制作という目的のためには、その活用研究を考えてもよいと結論づけている。


E-7   数学の学習を支援するマルチメディア教材の開発
北海道工業大学 佐藤宏一

 数学のリメディアル教育の中で、図形の性質を理解させるための対話型マルチメディア教材の開発について報告がされた。KSEGという対話型幾何学ソフトウェアを利用して、三角関数や円などの教材を作成し、特に点や軌跡の描画により、図形の意味を理解させるよう工夫している。興味の持てる教材であるという印象を受けた。


E-8   映像編集実践課題としての4分動画の利用
湘北短期大学 岩崎敏之

 4分間の映像作品の製作を体験させることにより、映像の編集テクニックに留まらず、ものを見る目やグループワーク、知的財産権など幅広い教育効果をもたらしたことが報告された。そして、制作した作品を地域のコンテストに発信することが、学生の制作意欲を高め、社会参画の態度を醸成させるという。大変参考になる実施例であった。


E-9   大学の数学教育におけるマルチメディア教材の活用法
日本大学 山本修一

 三角関数と波動の密接な関係を視覚的に理解させるために、Mathmaticaを用いてマルチメディア教材を開発したことについて報告がされた。具体的には、sin関数とcos関数の和や積のグラフ、加法定理と波動の関係、のこぎり波の生成、フーリエ級数の説明を視覚的にアニメーションで表現しており、大変興味が持てた報告であった。


E-10   バーチャル創造館:プロジェクトマネジメントの能力を高めるための新情報教育
東海大学 丸山有紀子、日向寺祥子、田中 真、谷口唯成、前田陽二、上村龍太郎

 「バーチャル創造館」という名前の情報発信ポータルサイトを用いた授業の実践例が紹介された。この授業では、グループごとにWebコンテンツの企画設計を行い、作成した企画を発表して締めくくる。よい企画は「創造館」に採用するという目的を持たせたが、今回は採用には至らなかったようである。今後の展開を待ちたい。


E-11   マルチメディア教育を支援する情報設備・環境
安田女子大学短期大学 日比野政彦

 映像処理や音声処理を伴う高度なマルチメディア教育に対応した情報設備と教育内容について報告がされた。ミュージックラボラトリー教室では多数のピアノと天井カメラを連動させ、一斉授業の形態をとりながら個人指導を可能としている。また、スタジオや編集室を利用して、市場性のある音楽CD作成と販売等のビジネス授業に活用している。


E-12   PC練習帳つきサンスクリット語入門
種智院大学 橋本哲夫

 外国語習得の際に必要な文法規則や語彙を、学内や自宅でゲーム感覚で学生に覚えさせるための教材を開発した。Wordによる「基本テキスト」からExcelによる「単語練習帳」、「曲用練習帳」「活用練習帳」、「連声練習帳」にリンクさせ、得点表示、褒美画面などのゲーム的要素は、VBAによるマクロで作成した。


E-13   インターネットを用いた英語学習方法
太成学院大学 松浦宏之
高野山大学   高倉正行

 インターネット世界にある英語そのものを一つの現代英語コーパスと捉え、検索エンジン、ネット上の辞書、リンク集を活用して正誤の判断を行う。動画や音声ファイルも含め、「読む」「聴く」「書く」の分野に分けてこれまで無料では閲覧や活用できなかった学習方法について紹介した。


E-14   大学英語授業でのグループ活動による自律的相互学習の効果検証を目指して
早稲田大学 原田康也、楠元範明、前野譲二、鈴木正紀、鈴木陽一郎

 相互学習やグループ作業を中心とした授業において、学生相互のインタラクションを音声収録して学生の理解度を把握し、英語学習者の学習履歴と運用技能の関係を明らかにすることが可能な学習者コーパスの構築について紹介した。


E-15   英会話能力の一測定法
文京学院大学 加藤佐和子、ベン・オーラ

 ペーパー試験で測定できない英会話能力を主観的にまた量的に評価するため、実験授業でTimed Paired Pracitce(TPP)というソフトを利用した事例である。授業アンケートでは、会話力が向上した、他の英会話の授業より会話力の向上が見られたとの回答を得られた。


E-16   WEBを活用した多読と英作文の指導
同志社大学 北尾謙治

 図書館にあるグレイディドリーダーズ(GR)のリストをWebで提示し、学生に1冊選択させて読ませて図書の紹介文を英語で書かせる。Webを使用して紹介文をクラスメート同士で読み合い、訂正しあって、よりよい紹介文を英語で書く練習をする。また、自分の読んでいない図書にも興味を湧かせ、さらに読ませることを試みた。


E-17   コンピュータとネットワーク利用授業
山陽学園大学 川端淑子

 eラーニング用の市販の教材「英語的発想トレーニングひらめきイングリッシュ」を使用した英語学習の実践事例で、システムのインストールが不要で経費のかからず、自宅でも学習可能なことが特徴である。英語期末テスト、および過去の日商検定結果などで効果があった。


F-1   ダンス教育におけるe-Learningの活用
武庫川女子大学 徳家雅子、岡田由紀子

 ダンス教育にe-Learningを導入しグループA(予習としてe-Learning教材を活用)とグループB(復習としてe-Learning教材を活用)の2グループの授業を実施した。グループAでは対面での課題の理解度が高まり、グループBでは学習内容の定着が顕著であった。


F-2   専用サーバを用いた音楽教育支援システムの開発
武蔵野学院大学 荻原 尚、木川 裕
立正大学   山下倫範

 Webベースの音楽教材を作成し、「音程」に関する理解度テストの結果を、Web教材を使用したグループと未使用のグループで比較したところ使用したグループの方が結果がよく本教材システムの有効性が確認された。


F-3   全人教育におけるCompetency Management導入の試み
東京理科大学 竹内 謙、本田宏隆、野澤 肇、佐藤喜一郎、村上 学

 1年生のみが全寮制で教育を受け、2年生以降は別キャンパスに移るという特殊な環境で、同時期学生間、学生・チューター間、先輩・後輩間のコミュニケーションツールとしての側面をもつe-Learningシステムを活用することにより、様々な知の共有がなされている。


F-4   小規模短期大学におけるe-Learningへの取り組み
東京文化短期大学 清水憲二

 手作りの授業記録セットを活用することにより、1教室当たりハードウェア、ソフトウェア込みで30万円のコストでe-Learningコンテンツ制作環境を整えることができたとともに、手作りでシステムを構築していくことで教員各自の意識が改革でき、ITリテラシーの向上に寄与した。


F-5   ストリーミング配信を利用したUNIX教育の実践
産業技術短期大学 佐藤清次、金子豊久

 ライブストリーミングとCD-ROMによるe-Learningを活用してUNIX教育を実施した。前者は一過性があるためにあえて学生を拘束したい場合に使用し、後者は講義の復習に使用するのが良いということが明らかになった。


F-6   講義科目における講義コンテンツの活用とペーパーレス試験
京都創成大学 中井秀樹

 講義コンテンツの活用として、講義内容の整理、板書内容の視認性の確保、理解度の向上に資することができた。また、クローズなLAN環境を構築し、そのLAN内にWebサーバを設置しペーパーレス試験を実施する計画を立てている。


F-7   eラーニングを活用した授業の教材作成とその運営について
園田学園女子大学 雑喉隆宏

 eラーニングの教育を充実するためには教材作成や授業運営の上で教員の負担が大きな障害になっているが、学生スタッフを育成することで多くの教材の作製と効果的な運用を実現した。また、学生スタッフと教員とのコミュニケーションが密になり、学生自身の学習向上に効果を上げている。


F-8   物理e-learningのための教材開発モジュールの設計
大阪電気通信大学 高見友幸、平井史郎、加藤常員

 物理的な概念習得用のアニメーション教材を誰でも用意に作成するために、Webサイトのアニメーション制御ツールであるFlashに付属するプログラミング言語、Actionscriptを利用した教材開発モジュールを作成した。一つのモジュールで多様な物理現象を精密はアニメーションで表現できる。


F-9   工学基礎教育における分かり易く親しみ易いウェブ教材の開発
金沢工業大学 福田一郎、松岡史和、石井 晃、高香 滋、中村 晃、青木克比古、西  誠、大林博一、小山陽一、福島國雄

 近年、高等学校での履修科目が不統一であり、大学の入学試験が多様なための大学新入生の工学基礎知識や理解度に大きな差がある。このため工学基礎教育センターを設置し、多様な教材作成支援と学生の学習サポートをしている。Web教材として教室講義の補助又は代用、独立教材が準備されている。


F-10   建築設計基礎教育における透視図描画法習得のための自習用Web教材の開発
武蔵工業大学 山口勝巳
テイ・エス・テック(株)   松本匡史

 建築設計における透視図描画法は3次元空間を2次元の図面に表現する基本的な技能である。マウスによる操作とアニメーションを利用したWeb教材を作成し、試用したところ従来型の2次元教材の分り難さを軽減できた。また、繰り返し参照できるので復習教材として有効であることが確かめられた。


F-11   基礎数理のためのWeb教材の開発と利用について
金沢工業大学 松岡史和、大林博一、石井 晃、小山陽一、福田一郎、青木克比古

 昭和53年度からCAI教育教材を開発し、活用による資産を元に平成12年に開設された工学基礎教育センターは「ネット版基礎教育センター-への展開」で昨年度の現代GPに採択された。そのプロジェクトの一つ「数理教材のコースウェアの開発」の中で開発されたWebCT版コースウェアがアンケート調査を元に評価された。


F-12   対面授業を重視した人文系単科大学における授業支援システムの開発
京都文教大学 杉原秀明
キステム株式会社   片岡 肇

 大学教育の基本は対面授業にあることを前提に授業支援システムを開発した。授業用の資料を学生に配布する機能、レポート提出機能、教員と学生とのコミュニケーション機能、履修や時間割など教務情報との連携機能を重視した上、教員・学生が直感的に使えるほど簡素なシステムになっている。


F-13   マルチメディアシラバスと連動した授業ポータルサイトの構築と運用
東京成徳大学 川合治男、福山裕宣、半田勝久、岩瀬弘和

 授業用Webページに加え、小テストやアンケートの作成を支援するマルチメディアシステムを構築したのに続けて、教育活動を体系化して学生に提示するために授業ポータルサイトを開設した。学生の履修促進、教員の負担軽減、学生の授業への積極参加、授業評価視点の明確化が期待される。


F-14   ITによる栄養士実習教育支援の取り組み
東京文化短期大学 中島美雪、中ノ瀬千尋、清水憲二

 実習が必要な実務教育では、始めにマニュアルを提示するが、実習の本質を理解するためには学習者自身の実習動作を見ることが大変有効である。厨房内での実習の様子を四つのカメラでパーソナルコンピュータに収録し、コンピュータのソフトで同一画面に提示して動作を分析させ、教育効果を上げている。


F-15   AjaxによるGIS導入教育Webアプリケーションについて
東和大学 大隣昭作、若菜啓孝、吉住和翁、古賀理册

 環境デザイン工学科は位置情報に関心を持つことが重要である。地理情報システムとしてGoogleマップを利用し、地図の表示、GPSによる位置情報の表示、写真情報のリンクなど環境調査から得られる情報を容易に扱えるシステムをAjax(非同期なJavascriptおよびXML)を利用して開発した。


F-16   人数制限を設けた科目のwebによる履修登録方法について
新島学園短期大学 細谷 聡

 人数制限のある選択科目を多く設定しているカリキュラムでは履修希望者数のバラツキは避けられない。Web履修登録に2段階抽選機能を導入した。第二段階では定員未満の科目が分るようにして学生自ら希望調整できるようにし、事務手続きの省力化と希望科目回復効果を実現している。


F-17   参加型オンラインデータベースの構築と幼児教育への応用
作新学院大学女子短期大学部 青木章彦

 環境教育では身近な環境を観察する態度と分析能力が求められる。時間や場所に直接対応した環境資料は教員養成のために大変有効であり、学生や教員が何処からでも、携帯からでも画像やコメントを登録できる参加型オンラインデータベースをWeb版環境カレンダーとして構築している。


第3日目(9月7日)

事例紹介
「教育支援への取り組みと学内体制」

「ラーニングテクノロジー開発室が支援する帝京大学のeラーニング授業」
帝京大学ラーニングテクノロジー開発室室長 武井 惠雄氏

 当初は数人の有志の教員グループの取り組みで、「学生には、多様な学習モードを提供したい」努力する教員には、教育活動を技術的に支援したい」「『確実に授業がわかる大学』『どの授業もよくわかる大学』を短期間に実現したい」「『努力する新世代の大学』でありたい」という願いのプロジェクトが、その数年後の2003年10月に大学の組織としてラーニングテクノロジー(LT)開発室となって全学的な取り組みとなった。
 LT開発室では「LTコンサルテーション」「教材開発支援」「授業支援」「LTヘルプデスク」などを業務として行っており、取り組みの効果としては、教員サイドでは「教育の情報化に努める教員の増加」「授業改善の議論が活発化」「教育に手応えを感じる教員の増加」、学生サイドでは「『学び』に対して積極的な姿勢をもつ学生の増加」「学習支援効果に満足する学生が増加」が実感として上がられるそうである。


「教育支援への取り組みと学内体制〜大学のユニバーサル化と学習支援の組織的な取り組み〜」
関西国際大学副学長 山下 泰生氏

 高等教育のユニバーサル化により多様な学生への学生支援が必要になりそのために全学的な学習支援に対する組織体制が構築された。その中核となる学習支援センターではPlan Do Check Actionの所謂PDCAサイクルを用いて学習についての個別相談を基に学習プログラムを作成し学習者支援をするとともに、完成度の高い学習プログラムをショートプログラム(「日本語作文上達法」、「卒業研究の書き方」等)や特別課題(「フィールド調査」、「インタビュー体験」等)さらには正規の授業へと発展させている。また、教育プログラムの他、授業開始1ヶ月後の欠席率に基づくアドバイザーからの指導や保護者への連絡等きめ細やかな学習指導を行っているほか、キャンパスマイレージ(学業成果や大学の建学の精神・教育方針に沿った活動成果に対する評価制度)などユニークな取り組みを実施し学生の学習動機付けを図っている。


「東海大学教育支援センターの教育支援体制」
東海大学教育支援センター教育支援課課長 中津川 平伍氏

 1991年に遡る大学設置基準の大綱化に伴い、各大学の個性の尊重と責任の確率が求められてきた。東海大学ではこの大綱化(規制緩和)を利用して建学の精神の実現を目指すこととなった。その後、自己点検評価、改革施策立案、FD推進機関の設立を経てカリキュラムを改革するとともに、教育支援センターを2001年に設置し他部署と連携しつつも一元で教育支援のための業務(「教育に関する相談受付と支援措置の手配」「授業支援および教授法の開発」「教育関連情報の収集・分析・提供」「教育情報交換の場の設定」「教育施策の企画・立案・提案・実施」「学部・学科等が企画するFD活動の相談受付・支援」「教育の仕組みに関する問題点の相談受付・解決の手配」を執り行っている。

 今回紹介いただいた3大学とも発端は異なるが、その根源にあるのは、大学設置基準の大綱化に伴い、いち早く全学的な取り組みとして高等教育のユニバーサルアクセス化を図ったことにあると思われる。その特長は、様々な資質をもつ学生へのきめ細かい対応と、それを可能にするためのファカルティ・ディベロップメントを全学的に組織的に実施しているということだと思う。さらにユニバーサルアクセス化が進行する高等教育機関にとって、この三つの大学の取り組みは大変参考になるものである。


「個人認証の技術動向と導入事例」
紹介

「個人認証の技術動向」
株式会社日立製作所コンシューマ事業統括本部ユビキタスシステム事業部部長代理 村上 秀一氏

 個人認証に関する技術動向として、現在の認証方式や情報漏洩に対する同社の取り組みについて紹介された。情報漏洩の現状と対策の必要性、本人認証の原理とモデル、なりすましなどの脅威などについて述べられた後、バイオメトリクス認証方式での様々な生体情報による認証方法を比較し、指静脈認証技術について紹介された。最後に同社での情報漏洩対策やセキュリティPCについても紹介された。

事例紹介

「千葉工業大学における静脈認証IC学生証の活用と今後について」
千葉工業大学教務課課長 小川 靖夫氏

 個人認証等の既存システムとの融合、学生証として多目的かつ汎用的に利用可能、セキュリティ強化、個人情報保護の開示請求への対応などを基本構想として、静脈認証IC学生証の導入を実施した。セキュリティの強化と紛失、盗難、破損といったICカードの問題を考え、非接触型の手のひらの静脈認証を採用した。個人情報とは何か、誰が保護するのか、活用による生活の変化、流通の促進、自己適任の確立、パスワードの脆弱生と生体認証の必要性、ICカードの紛失、盗難、破損、セキュリティへの考え方など、教育機関としての取り組み方、考え方についても述べられ、今後の学内でのさらなる活用方法についても紹介された。

事例紹介

「遠隔講義出席管理のための携帯電話顔認証システム」
日本女子大学理学部教授 小舘香椎子氏
日本女子大学非常勤講師 渡邉恵理子氏

 光の高速・空間並列処理とデジタル処理の双方のメリット生かしたハイブリットな顔認証システムの構築を行った。顔認証エンジンをサーバとし、カメラ付携帯電話を顔画像撮影端末としたネットワーク型の携帯電話顔認証システムを提案し、構築したシステムを用いた実証実験結果について報告された。特に遠隔講義出席管理に向けた携帯電話顔認証システムについて述べられ、セキュリティ機能や利用者負担なども考慮して設計した遠隔講義出席管理システムの構成を示された。

事例紹介

「学生サービスのためのICカード導入」

 ICカードを活用した学生サービスに関して、神奈川工科大学と芝浦工業大学の事例を紹介していただいた。両大学とも、学生証をICカード化することにより、セキュリティシステムの認証や、出欠管理を効率化している。また、FeliCa 仕様のICカードを採用し、汎用電子マネーシステム(EdyあるいはSuica)の機能も持たせている。汎用電子マネーは、証明書自動発行機や食堂などの学内キャッシュレス化だけでなく、学外でも利用できるため、学生にとってもメリットが見えやすい。

「モバイル学生証が創るスタイリッシュなキャンパスライフ」
神奈川工科大学総務部事務システム課長 貝瀬  亙氏

 FeliCa 内蔵の携帯電話機を学生証とするシステム(モバイル学生証)を導入した。偽造対策として、ICカードの場合は表面に顔写真が印刷され、有効期限シールを毎年配布してカードに貼付しているが、モバイル学生証は電子データであるため、別の手段が必要である。まず、表示される学生証は単なる静止画データではなく、アプリケーションによる動的表示とした。このアプリケーションは、一定期間ごとにサーバと通信して認証を行う。したがって、通信圏外の場所でも学生証を表示することはできるが、一定期間内に通信して認証を行なわないと、表示できなくなる。

「ICカードを利用したサービスの展開」
芝浦工業大学理事、学事部長 石井 博文氏

 PCセキュリティシステムに指紋認証を用いるため、メモリ容量の大きい接触型が必要であるが、入退出管理や電子マネーには非接触型の方が望ましい。そのため、両方のチップを内蔵したハイブリッドカードを採用した。また、学生証だけでなく職員証もICカード化している。業務用PCとしてシンクライアントを配備し、職員証でログオンするシステムを導入していて、これにより情報漏洩対策や管理運用工数の削減を図っている。


文責: 教育・情報戦略大会運営委員会


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