私情協ニュース2

短期大学部門FD/IT検討会議 開催報告



 本会議は、ファカルティ・ディベロップメントの在り方を研究するため、IT活用を含めた教育指導能力の向上策、教職員による学生個人指導の工夫、地域連携による人間力養成などの課題について討議することを目的とし、今年度より「短期大学部門検討会議」を改組し「短期大学部門FD/IT検討会議」として実施することになり、平成19年6月16日(土)に明治大学駿河台キャンパスを会場に、下記の通り3件の事例紹介を踏まえて全体討議を行った。

事例紹介1

「ファカルティ・ディベロップメントへの取り組み 〜全学的な取り組み〜」
宮崎女子短期大学 宗和 太郎氏(学長補佐)

 18歳人口の減少、若者の都会志向、4大志向、専門学校志向という中で、「生き残り」の解決策は、存在意義を追求し高揚を図っていくことであるとし、同短期大学は地域の若者が地域の人材として活躍していけるよう教育できる地域型短大を目指している。FDの目標を「日本一の地方短大」として、学生が卒業したときに満足度や充実感を得られるという教員共通の願いをFDの目標とし、数値目標も設定し達成度を測りながら取り組みを進め、2000年7月に2000年FD宣言を全教員で採択した。
 教員の意識、実践、習慣、学校全体の文化が変わらなければFDは実現できないとして、FD月目標の設定、全学FDミーティング、FD宣言(教員の自己点検評価)、機関紙FDニュースの配付、ガイダンス・アワー、教員相互授業参観、学生による授業評価、教育カンファレンス、授業研究会、『教育研究』誌の発行などを定期的に実践している。これらは各教員が教育改善のため考え努力してきたことを出力する場であり、同僚あるいは学生からフィードバックを受けることで、新しいことにも慣れ、意識も変わり、習慣も変わり、学校全体の文化も変えていくことができると考えた。
 9年間の活動の結果、入学満足度の数値は向上し、全学平均90%以上も達成できた一方、各教員が学生とのコミュニケーションや授業に熱心になり、より工夫するようになった。また、相互に授業を見合う、学生理解を話し合うという活動を通して、教員間に連帯感が生まれ、短大自体の活発化という大きな成果を得られた。


事例紹介2

「ファカルティ・ディベロップメントへの取り組み 〜授業研究の実施〜」
高松短期大学 松原 勝敏氏(保育学科長)

 授業展開において、学科の目的が変わっても授業内容に変更のないものが多数存在したことや、幼稚園教諭と保育士資格を得るための過密な時間割設定により学習内容の消化不良という問題があった。これらを解決するため、全教員が連携・協力体制の構築とカリキュラムの構造化が求められた。
 保育学科では多種多様な科目履修が求められることから、保育学科の全教員が定期的に研究授業・授業研究会を行い、教育力を高め、教育・学習方法の改善を図ることとした。
 研究授業は通常の授業時間で行うため、参観の教員は日常の授業のありのままの姿、水準を見学できる。授業中は授業参観記録(京都大学高等教育教授システム開発センター作成のものを利用)を付けており、また、授業を録画しDVD化して、それをもとに授業担当者が自己分析し、紀要に授業実践報告をまとめている。
 実践の結果、研究授業後の検討会では、授業の意図や授業の流れ、授業中の活動など多様な側面から、専門が異なる教員による意見交換が行われ、充実するようになった。また、学生指導に関する問題の共有化、学生の多様な姿の客観的観察、教員による実践知の蓄積が可能となった。
 授業研究は、秘書科や音楽科に拡大し、併設の高松大学発達科学部や経営学部でも実施されるようになり、全学的な取り組みとして位置づけられるに至った。今後の課題は、研究授業を継続的に実施するための具体策の早急な検討である。


事例紹介3

「人間力養成のためのキャリア教育への取り組み」
聖徳大学短期大学部  原田 義也氏(総合文化学科長)
 碁石 雅利氏(総合文化学科長補佐)
 高田  茂氏(キャリア支援室長)

 社会や教育現場から学生の学力と学習意欲の低下、自立性の未発達、仕事社会への無関心、社会認識の未熟などが指摘されている中で、社会に適応し自発的に貢献できる「人間力」を培うため、自己の判断でキャリアデザインを描き、主体的に活動できる自立した女性の育成を目標に、上記4課題すべてに対応するキャリア教育のプログラムを構築し、実施した。
 教育プログラムは上記の課題を解決するため「キャリア導入ユニット」、「自己探求ユニット」、「仕事探求ユニット」、「社会探求ユニット」というユニット別の教育課程を設け、学生も教員も常に目的意識を持って取り組む体制を確立した。特徴的な教育内容としては、ウェブ壁新聞「ビソシエBISOCIE」の制作、学園祭展示、発表大会を通して、コミュニケーション能力、創造力、行動力、表現力などを身に付け、主体性や自立性を育成し、親子で社会や就業への関心を高める機会が得られるようにしている。また、営業責任者セミナーでは、ケーススタディなど業界の実態や業務内容を理解できるようにしている。
 本取り組みでは教員とキャリア支援室との緊密な連携体制によって、正課授業とカウンセリングを始めとする正課外の諸活動の実施において、目的意識や情報を共有できるようにしており、多面的な支援でありながら、効率的に学生の自己実現を支えることが可能としている。


全体討議

「ファカルティ・ディベロップメントの現状と課題」

 教育の質保証が求められている中で、授業内容・方法の改善、教員の意識改革、学生へのきめ細かな個別指導などの課題について、教職一体となってどのように組織的に取り組んでいくべきか、前半の事例紹介を踏まえ、FDの現状や課題について参加者を交えた質疑応答と討議を行った。授業研究会など各校でのFDは早急に実現することは難しいが、どのように進めていくことが望ましいのか、事例紹介校の実践内容や意見交換を通じて具体的な課題を確認することができた。


文責: 短期大学会議FD/IT運営委員会

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