教育支援環境とIT

京都女子大学・京都女子大学短期大学部における「授業・教育支援システム」


1.はじめに

 京都女子大学・京都女子大学短期大学部は、明治43年(1910年)に創設された京都高等女学校を前身とし、親鸞聖人の体せられた仏教精神に基づく心の教育を目指し、教養知識の向上と社会に活動する女性の育成に努めてきました。京都市の東山の麓に所在し、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、短期大学部、大学、大学院を擁し、交通の利便に恵まれた場所にあります。
 本学の学部・学科構成は、大学院4研究科(文学研究科、発達教育学研究科、家政学研究科、現代社会研究科)、大学4学部(文学部、発達教育学部、家政学部、現代社会学部)9学科、さらに併設して短期大学部3学科(文学科、初等教育学科、生活造形学科)をもっており、学生数6,429名、専任教職員342名です。


2.本学のIT環境の整備

 本学における情報システムならびに教育支援システムについて紹介します。
(1)学内ネットワークシステム
 平成12年度より学内のほぼすべての建物をカバーした総合情報ネットワークシステム Kyoto Women’s university Information Network System(略称:KWIINS[クイーンズ])を運用しています。
 KWIINSは基幹1Gbps、末端100Mbpsのネットワークで数台のL3スイッチと100台弱のL2スイッチから構成されています。これらのスイッチは年次ごとに数台ずつ更新され、平成19年度にL2スイッチ全体を含む大きな更新が行われました。
 この更新ではユーザ認証機能を持つL2スイッチを導入し、学内に持ち込まれるノートPCだけでなくデスクトップPCでもネットワーク接続時にユーザ認証を行うことで、ネットワーク全体の安全性を高めました。
 学外はSINETに100Mbpsで接続していますが、平成18年度より商用回線にも100Mbpsで接続し、バックアップ用の回線としています。
 KWIINSの中心となるサーバ群は、Solarisサーバを多用し、そこにWindowsやFreeBSDなどが混在するものを平成12年度から運用していましたが、これらは平成18年度にすべて更新されました。
 この更新では、オープンソース技術による成果物を積極的に導入することやGUIを多用したサーバ管理方式の導入などを重視しました。そのため、更新されたサーバ群はほぼすべてがMac OS X Serverの稼働するXserve G5となりました(写真1)。

写真1 Xserve G5によるサーバ群

 Mac OS X ServerはBSD系UNIXを核として洗練されたユーザインタフェースや開発環境をもつOSで、サーバOSとしては安価に導入・保守できます。また、サーバ群のハードウェアとOSを統一することで冗長性を確保することができました。
 このサーバ更新時にSSL-VPNサーバを導入し、学外からも手軽かつ安全に学内へ接続できるようにしています。
 学内に設置されているパソコンは約1,200台です。パソコン教室は8教室あり、Windows XPの稼働するパソコンが60台設置された教室が7教室、Power Mac G5(Mac OS X)が60台設置された教室が1教室あります。
 また、Windows XPの稼働するパソコンが56台設置されたCALL教室が2教室あり、これらすべての教室で情報処理の授業や外国語の授業、専門科目の授業など幅広く利用されています(写真2、3)。 これらすべてのパソコン教室おいて授業が行われていない時間帯は学生の自主学習用に開放されています。

写真2 パソコン教室(WindowsXP)
写真3 パソコン教室(Mac OS X)

 ネットワークシステムKWIINSとパソコン教室を含む情報施設の管理運営は、KWIINS管理責任者と運用責任者の教員2名、専任事務職員2名、パートタイマー2名、委託常駐SE4名という体制で行われています。

(2)授業支援システム KWIINS CLASS
 本学では、平成17年度より授業支援システムとしてBlackboard等のような本格的なポータルシステムを導入する前に試行的に簡易ポータルシステム(KWIINS CLASS)を導入しました(図1)。

図1 KWIINS CLASS ログインページ

 簡易ポータルシステムを選択するにあたっては、教員および学生が利用するときに操作が容易であり、授業で利用するために最小必要な機能を備えたものであること、そして導入および運用経費が安価なものという条件で導入を決定しました。
 機能としては、授業で利用頻度が高いと思われる「教材提示」・「レポート提出」・「掲示板」機能に絞りました(図2〜4)。KWIINS CLASSは、すべてWWWブラウザ上で操作できるシステムです。学生は単位登録が固定するまでの期間(前期の4月上旬から5月上旬と後期の9月下旬から10月中旬)は、KWIINS CLASS上で受講希望科目を選択登録し、講義名にチェックをすると、その科目のみの機能が利用できるようになっています。前期の5月中旬以降および後期の10月中旬以降は、時間割データベースと連携した単位登録を完了した科目のみが表示され、すべての機能を利用することができます。

図2 KWIINS CLASS教材提示ページ
図3 KWIINS CLASSレポート提出ページ
図4 KWIINS CLASS掲示板ページ

(3)KWIINS CLASSの運用状況
 全学生に対してKWIINS CLASSの操作説明時間を特に設けておりませんが、学生は1回生の必修科目となっている「情報リテラシー」の授業で操作方法を習得させています。授業における教員の利用者数ついては、年々微増していて現在のところ20%程度の教員が常時利用しています。
 KWIINS CLASSにおけるその他の機能としては、教材の項目、レポート題目と締切日、掲示板機能について携帯電話からもパソコンと同様の使い方ができます(図5)。

図5  KWIINS CLASS携帯電話ページ

 また一部の授業で授業録画が公開されており、KWIINS CLASSのトップ画面に視聴できるボタンがあり、授業録画を視聴しやすくしています。
 さらに、授業時間割を管轄する部署である教学課からの休講情報や各事務室からの学生の呼出しなどを行う機能も備えています。


3.今後の課題

 KWIINS CLASSについては、CMS(Course Management System)あるいはLMS(Learning Management System)という機能が不足しているため、これを補うためアンケート作成・e-Learningソフトが使用できるWebClassという学習支援システムを導入しています。今後は、学生にとって必要な情報である履修登録・休講情報・呼出情報・補講情報・時間割・e-Learning等の基本情報を一括して見ることができるポータルシステムを現状の簡易的なものからより高機能なものに移行する時期の目安として、何%以上の教員(非常勤も含む)が常時KWIINS CLASSを利用すれば移行すべきなのか考慮中です。その他として残された課題は、各校舎に学生への連絡事項が表示される電子掲示板の設置、授業の出席管理が簡単にできるように学生証の磁気カードからICカードへの移行、語学学習ソフトなどe-Learning教材導入が年々増加してきており、それを学生が自宅から利用させるには本学のネットワーク負荷の増大やハード・OS等のシステム管理、セキュリティ管理および経費の負担増大が予想されるため業者運営による学外へのデータセンターにどの程度移行していくか課題として残されています。

文責: 京都女子大学
KWIINS管理責任者、教授
            水野 義之
KWIINS運用責任者、准教授
            宮下 健輔
KWIINSシステムセンター課長
            清水 和信



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