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学習院大学におけるマルチメディア機器利用の実態


市川 収、大谷 健一、松岡 東香(学習院コンピュータシステム支援組織)


1.はじめに

 本報告は、学習院コンピュータシステム支援組織(以下支援組織)の設立目的の一つである「マルチメディア教室での授業時におけるトラブル解決および、各設備を安定稼動させるための対応」に関し、これまでのトラブル内容や対応、また今後のあり方を、実際のマルチメディア機器の利用調査の結果とともに述べるものである。なお、ここでいうマルチメディア機器とは、ビデオデッキ・DVDプレーヤー・PC等(以下それらを総称してMM機器)であり、それらを備えた教室をマルチメディア教室(以下MM教室)と呼ぶこととする。


2.機器利用調査の概要

(1)調査方法および調査期間
 客観的なMM機器の利用率を知るため、機器の利用には「マルチメディア操作卓」の鍵が必要なことを利用し、その鍵の有無により利用/非利用の判断をした。調査は5月29日から6月10日までの2週間を対象とした。

(2)調査対象教室およびMM機器の利用率
 MM教室は30人規模の小さな教室から500人ほどが入れる大教室まで多くの種類がある。ここでは便宜的に収容人数が50人未満、50〜100人、100人以上、PC教室という区分を設け、それらの教室数と1週間の開講授業数および、調査から得られたMM機器を利用している授業数(調査期間中の2週間分)を表1に示す。

表1 教室規模別のMM教室数と1週間の開講授業数およびMM機器利用授業数
教室規模 50人未満 50〜100人 100人以上 PC教室
教室数 37 8 17 5
開講授業数 698 68 250 65
MM機器利用
授業数(2週間)
654/765
(利用/非利用)
65/95
(利用/非利用)
262/210
(利用/非利用)
96/30
(利用/非利用)
MM機器利用率 46.1% 40.6% 55.5% 76.2%

 実測調査から、MM機器利用率の平均は55%程度であり、教室の規模に関わらずMM機器が利用されていると判断できる。今後、さらに詳しく授業内容・形態による利用機器の違いを明らかにしていくことで、これからのMM教室に導入されるべき機器の選定にも役立つことが期待される。


3.トラブルと依頼件数

(1)マルチメディアLABに寄せられるトラブル
 マルチメディア機器利用時のトラブルはすべて「マルチメディアLAB」に常駐する支援組織助手(1名)と1〜2名のアルバイトスタッフにより即時対応・解決する体制をとっている。依頼件数は年を追うごとに増加し(図)、平成18年度の依頼件数は1,000件に達し、授業関連だけでも600件ほどの依頼が寄せられた。

図 マルチメディアLABへの依頼件数と
マルチメディア教室数

(2)トラブル内容とそれに対する対応
 本章では特に授業関連の依頼について、その依頼の種類と対応について述べる。なお、依頼件数と依頼内容を月ごとに分類したものを表2に示す。

表2 平成18年度の授業関連の依頼件数と依頼内容
  4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
操作説明 60 34 21 9 0 10 23 16 7 5 0 0
問い合わせ 26 26 9 5 0 1 9 7 5 9 2 0
トラブル
(操作ミス)
37 33 25 7 0 8 28 16 15 19 0 0
トラブル
(事後報告)
7 9 9 0 0 1 10 9 4 0 0 0
機器トラブル 15 8 5 10 0 2 7 5 2 3 0 0
機器故障 7 6 5 1 0 1 5 0 1 1 0 0
教室変更 1 0 1 0 0 1 1 1 0 0 0 0
合計 153 116 75 32 0 24 83 54 34 37 2 0

1)操作説明依頼について
 操作説明依頼は多くの場合、事前に教務課・講師控え室スタッフといった第三者を介し連絡が入るが、「利用機器の種類・内容・説明時の言語」といったことをあらかじめ確認できるためスムーズな対応が可能である。しかし、ごくまれに、教室の機器では対応できない外国製のビデオやDVDであったり、PCを使うためのユーザアカウントがないといった突発的な問題が発生することがある。
2)問い合わせについて
 教室機器に関するものから、授業登録・アカウントの申請、教室変更など多岐に渡るが、教員が直接連絡してくることが多いため内容が把握しやすく対応は容易である。また、そこから操作説明の依頼に転じるものも多い。
3)操作ミスによるトラブルについて
 授業開始後に(第三者を通じての)電話やマルチメディアLABへの本人の来訪によって連絡が入る。その間は授業が中断していることもあり、依頼者から詳しく話を聞くことができないので、すぐにスタッフが教室に向かい現状把握をするとともに解決にあたる。多くの場合はプロジェクタの電源の入れ忘れやコンソールスイッチの選択ミス、各種ケーブル(LANケーブルやVGAケーブル等)の接続ミスであり数分で依頼解決に至る。ただし、同じ操作ミスが多発するケースについては、操作卓の改修やマニュアルの作成・改訂などによる対応も行っている。
4)事後報告のトラブルについて
 授業終了後「○○がおかしかったので、次の時間までに使えるようにしておいてほしい」という依頼である。多くの場合、教務課や講師控え室スタッフを通じて連絡が入るため、詳しい状況が伝わってこない。例を挙げると

といった依頼である。授業終了後にスタッフが検証を行うが、依頼内容が再現できない場合も多く、結果として次回の授業時に確認・説明することになる。原因の多くは操作ミスや個々のメディアの問題であり、このような時間のロスを避けるためにも、直接連絡をもらえるよう働きかけている。
5)機器トラブルについて
 機器障害も授業開始後に連絡が来るので、報告が入ると同時にスタッフが教室に向かい即時対応している。例としては、

といったものがある。この種のトラブルは授業に与える影響も大きいため、即時対応が不可能だと判断した障害については、教室変更も含め教員と相談し、助手の判断で教室変更を行い教務課には事後報告という形をとっている。18年度は機器のトラブルにより4件の教室変更を行った。その時のトラブルの原因は、

などであったが、どのトラブルもその時間に原因を突き止め対応できたため、後の授業に影響はでなかった。
6)機器故障について
 18年度は大別すると以下の四つの機器・システムにトラブルがあった。

 L3Stageに関しては、初期設定の問題やハウリングの問題など、我々では対応不可能なトラブルであり、対応を業者に委託した。
 電子白版制御用PCおよび周辺機器のトラブルは、業者による対応が手探り状態のため、1ヶ月間は我々が授業前に起動を確認することによって、授業に支障を来たさないよう対応した。
 他の機器故障では、即時交換可能なものは交換し、可能な場合は代替機を手配し、間に合わない場合には教室変更にて対応した(18年度は1件)。


4.支援組織で行う機器メンテナンス

 機器を安定稼動させるため、3月と9月にすべてのMM機器の動作チェック、また学祭の前後には簡単な動作チェックを行っている。特に3月と9月のチェックでは、プロジェクタの投影時間もチェックし、メーカー公表のランプ寿命時間の6割を超えたものは、ランプ切れの予防と照度確保のため即時交換をしている。また、日々のチェックとして授業終了後にすべてのMM教室をチェックし、鍵のチェックや扉の破損を確認し、修理可能なものは、その場での対応を行っている。


5.まとめとこれからのサポート体制

 今回の結果から、依頼内容の多くが、「機器トラブル」というよりはむしろ「使い方」に起因するものであることを考慮すると、

といった働きかけが一層必要になってくるであろう。特に事前の操作説明依頼が多いことを考慮すると、より利用者が参加しやすい形態・時間を考える必要があり、講習会ではありがちな「すべての教室の説明」に終始するのではなく、「それぞれの教員が利用する教室」で講習できるよう、また、実際の授業を想定し、個々人が機器操作できるような時間的余裕を持たせた説明会の開催が望ましいと思われる。それにより、操作ミスによるトラブルの軽減に繋がることが期待される。


謝辞

 支援組織発足から現在まで支援組織の方向性を模索しこれまでの組織へと発展させてくれた代々の助手(松本喜以子氏、小倉統氏、水上悦雄博士、因幡哲男氏、黒崎茂樹氏、佐藤祐子氏)に深く感謝いたします。また、計算機センターの入澤寿美教授、横山悦郎教授には終始あたたかい励ましのお言葉を賜りました。ここに感謝申し上げます。最後に、今回のMM機器の実測調査に協力していただいた、越智玲子氏、桑江友博氏、小西真奈美氏、佐藤優希氏、徳富政樹氏、中野康宏氏、長谷川武志氏、谷澤晃氏に感謝いたします。


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