特集 図書館による学習支援力

学習支援機能の基盤形成をめざして〜創価大学〜


 現代における“Heart of University”とは、学習支援サービスを統合的に展開していることが基本要件であると思います。その機能は、気の利いたいくつかの取り組みをすれば事足りるものではありません。図書館が総力をあげて学生が望む利用環境を整えることが不可欠です。その環境とは何か、集約すると次の3点になります。
 1)学習上必要な資料が揃っていること、2)インターネットを介していつでも、どこからでも資料を探すことができ、学外にある資料であっても入手の利便性が高いこと、3)パソコンや雑談空間など図書館施設の居心地がよいこと。
 創価大学図書館では、こうした環境の基盤形成こそが学習支援図書館がクリアしなければならない課題と捉え、この10年間約250のサービス改善に取り組み、ようやく機能的・体系的な学習支援図書館と呼んでも差し支えない様相を呈するようになりました。その結果、図書館の利用者は年々増加し、利用率はほぼ2倍(表参照)になりました。この3要件がほぼ整ったことに伴い、次なるステップとして授業連携に取り組むようになりました。
 2010年度に予定している授業連携の3例を紹介します。1)オンラインシラバスに表示されている参考図書が図書館蔵書と関連付けられ参照できるようになります。2)共通科目に対応した教員による推薦図書「創大ベーシック100(仮称)」が、共通科目運営センターとのやりとりの中で実現します。これは共通科目の担当教員が推薦文を付した複数の図書を図書館が提供する制度です。学生として身に付けるべき教養全般の良書を学生に紹介する取り組みです。3)授業科目の理解を高めるための実験的取り組みとして、経営学のテーマ毎に図書を指定し、各人が読破、書評の提出、グループディスカッションを複数回に亘って行う「リーディングス:経営」という科目が図書館を使って開講されます。これは、教育・学習活動支援センター(以下CETL)、経営学部、図書館が協働し、実現の運びとなります。この取り組みが功を奏せば、今後全学的な展開も十分予想されます。
 一方、図書館独自で推進している学習支援策の一つとして、全学読書運動「Soka Book Wave」があります。この運動は6年前にスタートしましたが、まず「読むこと」から始まり、次に「書くこと」へ、さらに最近では、指定した新書の「レビュー」や書評を書くことへと段階的に向上を図ってきました。この取り組みは、学部生の学習基礎力を培う効果があります。なお、提出された文章の添削作業を日々行っており、いわばライティングセンター的機能も果たしています。詳しくは、石山著「創価大学における読書運動の展開」(「大学図書館研究」No.84)をご一読下さい。
 今後、教員や学内の他の事務組織と協働した授業連携を展開していく必要性がさらに高まっていくと思います。大学図書館は、かつてのように単に資料を収集・保存・提供の役割を果たせばよいといった時代は去りました。学生の学力向上をサポートし、学士力を獲得した学生を輩出する役割を果たさなければ大学図書館の存在意義はないといっても過言ではありません。現在トピックな用語となっているラーニング・コモンズ、本学では数年先に開設する運びとなりますが、箱物ではなく、学習支援機能を十分に発揮できる体制を実現していきたいと願っています。

表 創価大学中央図書館利用統計
年度 入館者数 館外貸出冊数 館内閲覧冊数
2000年度 257,968人 79,949冊 18,123冊
2002年度 362,533人 104,930冊 21,276冊
2004年度 446,593人 126,119冊 27,311冊
2006年度 469,822人 133,435冊 28,262冊
2008年度 507,340人 157,509冊 30,122冊
文責: 創価大学
附属図書館主事 山口喜一郎

【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】