巻頭言

グローバル社会への実学教育

中山 峰男(崇城大学理事長・学長)

 本学は薬学部、工学部、情報学部、生物生命学部、芸術学部の5学部からなり、薬学部を除き、すべての学科に大学院博士課程を設置している。薬学部は、平成24年4月の6年課程の完成と同時に博士後期課程を開設する予定である。
 本学の創立は、熊本市が戦禍により焦土化した昭和24年に遡る。当時、故中山義崇前理事長が、疲弊した日本を復興するためには科学技術の振興が急務であると考え、その人材を育成するため、私塾を開設したことに始まる。その後、学校の充実拡大を図りながら、昭和42年に工学部単科の熊本工業大学を開学し、さらに、平成12年には芸術学部を設置し、校名を崇城大学に変更した。
 本学の基本的な教育方針は、この創立時から脈々と受け継がれてきた「実学教育」にある。したがって、実験実習や研究のための施設、設備の充実には最大限の努力を払ってきた。毎年多額の投資を行い、各分野に大型研究設備を配置し、学生の実験実習はもちろんのこと、博士課程の研究にも大きく寄与し、多くの学位論文が生まれている。
 また、本学の実学教育は、学生の就職の夢を実現する教育でもある。そのため、キャリア教育には特に力を注いでいる。1年次から就職ガイダンスを実施し、合わせて論文やSPI、自己PR書の書き方等キャリア実践教育を行っている。また、インターンシップも多くの企業に協力いただき、多くの学生が体験している。さらに、学科ごとにキャリアアドバイザーを置き、担任や卒業研究担当教員とともに一人ひとりの学生を手厚くサポートしている。昨年は、文部科学省の大学教育学生支援推進事業の学生支援推進プログラムの採択を受け、1・2年生を対象とした新たな早期キャリア教育「P&C」を発足させた。これは、学生達が選んだ企業に自ら訪問し、そこで得た学生目線の情報を学内に広く発信し、就職活動の相互作用による活性化に大きく貢献している。本学の昨年度の就職率は93.7%と九州の大学の中でトップクラスの高水準であった。特に、卒業生の90%強が就職先に「満足している」と回答している。
 ところで、理系の場合、研究の成果を上げるためには積極的に国際学会に参加する必要がある。本学では毎年大半の教員が学会に参加するため渡航している。その際、学会発表の学生を引率することがあるが、英語による発表に大変苦労しているようである。また、学生が社会に出た後も、年を追うごとに英語の必要性が増していると聞く。学生にとって、国際化は待ったなしの現実である。
 このようなことを背景に、本学では今年度、全学生を対象に「生きた英語教育」への大転換を目指し、英語教育に高い評価と実績を持つ神田外国語大学のノウハウを導入させていただくことにした。神田外国語大学の英語教育のメソッドが展開できるよう英語学習専用施設「SILC」(Sojo International Learning Center)を開設した。英語の教育はすべてこのSILCで行われ、SILC内では原則として、使用できる言語は英語のみである。授業は、言語学、教育学の修士号以上を持ったネイティブ教員によってすべて英語で行われる。従前、週1コマであったが、これを週2コマに増やし、1クラスの履修学生数は少人数化し、20〜30人を基準とした。教室は、机、椅子を可動式にし、グループワークや授業方法に応じて自由にアレンジできる。さらに、リスニング学習促進のため、学生用コンピュータとヘッドフォンを用意し、英語によるネット検索、文書作成等にも利用できる。授業はプレゼンテーションを軸に、パソコンを用いたり、チームティーチングなどで実施される。既に前期が終了したが、受講生の評価は大変良い。当初、戸惑いがあり、あまり発言しなかった学生も回を重ねるごとに積極的に発言するようになり、英語でのコミュニケーションが成立するようになった。本学に入学した時点で7割強の学生が英語に苦手意識を持っていたが、履修後の感想は、8割近い学生が「英語が楽しい」に変化した。さらに、SILCの施設内には様々な教材や設備を備えた自立学習支援センターがあり、学生は自分に最適な学習方法を見つけ、空いた時間に自ら学習することで、さらに英語力のステップアップを図ることができる。これらの英語教育を経て、近い将来、専門教科についても英語で授業できるようにしたいと考えている。
 また、英語教育と連繋して、学内における国際化も図りつつあり、外国の大学との交流を積極的に推進している。現在、外国からの留学生が多く、外国へ行く学生が少ない状況にあるが、今後SILCでの成果の一つとして、本学学生が積極的に外国へ留学するようにしていきたいものである。


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