大学教職員の職能開発 No.3

平成22年度 教育改革ICT戦略大会 開催報告

 本大会は、教育改革を促進するため、教育改革推進の基本問題、ICT活用に伴う教育政策、教育効果を高めるICTの活用方法、最新の情報技術および情報環境などの専門的知識に関する講演や事例紹介、教育現場の課題解決の研究討議、大学・企業との連携によるICT導入・活用事例紹介(ポスターセッション)」を通じて、人材育成に効果的な教育手法等の戦略について実例をもとに理解を深めることにしている。今年度は9月1日から3日までの3日間、アルカディア市ヶ谷で、312名(139大学、12短大、賛助会員9社)の参加者の下で開催した。
 今年度は「大学の社会的責任について考える」という大会テーマを掲げ、以下の通り進めた。
 初日は向殿政男会長(明治大学教授)の開会挨拶の後、就業力向上のための国の取り組みの説明、就業力育成に向けたキャリア形成支援への先進事例の紹介、初年次教育の実態と課題に関するアンケート結果報告と提言、省令改正による情報の公表の義務化の説明があった。
 2日目は分科会形式でのテーマ別自由討議として、「A:学習管理システムによる教育・学習支援の取り組み」、「B:ICTを活用したジェネリックスキル(汎用的能力)育成の教育プログラム」、「C:質保証を補完するための支援システム」、「D:学士力を実現するための情報活用能力」、「E:クラウド利用による情報環境の在り方」の5テーマを設定し、議論を行った。分科会終了後には、参加者のコミュニケーションの場として、情報交流会も行った。
 3日目は教育や支援環境へのICT活用に関する75件の公募による発表を5会場(A、B、C、D、E)に分かれて行った。また、2日目の午後から3日目まで、大学・企業共同のICT導入・活用の紹介として、賛助会員の企業と導入大学が連携し、大学関連の製品やシステムに関するポスターセッションを行った。

第1日目(9月1日)

「就業力向上のための国の取り組み」

文部科学省高等教育局大学振興課専門官 喜久里 要氏

 大学生の就業力を強化するための国の取り組みとして、大学設置基準改正による社会的・職業的自立に向けた指導等の制度化、および大学生の就業力育成支援事業について、その趣旨を中心に以下の通り説明された。
 現在の厳しい雇用情勢において、学生の資質能力に対する社会からの要請や、学生の多様化に伴う卒業後の職業生活等への支援の必要性等が高まっていることを踏まえ、大学は、生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し、教育課程の内外を通じて社会的・職業的自立に関する指導等に取り組むことが必要であり、そのための体制を整えるものとして、平成22年2月に「大学設置基準」を改正した。これは、就業力向上という新しい取り組みを大学に求めていくもので、社会が学生に何を求めているのかを常に把握した上で、教育の実施や卒業認定・学位授与に関する方針(カリキュラム・ポリシーやディプロマ・ポリシー)を明確化し、教育課程の改善や「出口管理」の強化を図ることを目的としている。大学の取り組みを画一化することではなく、教育課程上の工夫や学内の連携体制の確保など、大学の多様な取り組みの推進を趣旨としている。また、就業力の育成は、キャリア教育に対応する部門を新たに設置するという意味ではなく、教職員が連携して役割分担し、教員一人ひとりが学士力の育成を意識した上で、各学部の目的に応じたキャリア教育を大学全体で取り組んでいくことと考えており、124単位すべてを通じて体系的に対応しているか検証していただき、何ができるか明らかにしていただきたい。
 大学の取り組みの例としては、「学士力を設定した上で学士課程教育全体を通したキャリア教育の推進」、「入学時から将来の進路について考えるカリキュラムの編成」、「全授業においてどの能力を伸ばすことを意図しているかをシラバスで明確化」、「地域と学生との学び合いによるキャリア意識の掲載」などがある。
 厳しい雇用情勢の中で、就職できない学生以外に進学も就職も考えていない学生が増えている。雇用対策以外に学生のキャリア意識の育成も重要となっており、企業等がどのようなことを行っているのか知るため、インターンシップの活用などキャリア意識の育成も必要である。
 就業力育成のための支援として、平成22年度に「大学生の就業力育成支援事業」を設け、5年間の財政支援としている。従来の教育に加え、4年間でどのような能力が育成されるのか、そのために適切な授業プログラムが設定されているかどうか、卒業後に役立つ社会的に必要な能力や実践的な能力を獲得できる大学全体の取り組みになっているのかを基準に選定している。
 この他、政府を中心に、日本版NVQ(National Qualifications Framework)と教育システムの連携に向けた取り組みを検討している。国民にとって、就業やキャリアアップにつながる知識・技能を的確に身につけられる教育システムが不可欠なため、職業能力と学校が提供する職業教育の内容を、分野・レベルごとに明らかにし、その質を保証する新しいシステムの構築を目指したもので、産業界や関係省庁等と連携し取り組みを始めており、来年度から試行的に行う予定である。
 以上のような国の動きの中で、就業力の育成を目指し各大学で取り組みを明確にし、ぜひ新たな提案をしていただきたい。

「就業力育成に向けたキャリア形成支援への取り組み事例」

「教育課程の全体を通じてキャリア志向の取組を進める」

東京女学館大学 国際教養学部教授、GP推進室長 加藤 千恵氏

 専任・非常勤を問わず、すべての授業で、開学からのリーダーシップ教育を踏まえて設定した「10の底力」(コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、ディスカッション能力、国際感覚・多文化理解能力、外国語運用能力、調査能力、IT能力、クリティカル思考、コンセプチュアルスキル、自己理解能力)から二つを対応させ、それらの達成状況を積み上げつつ、アドバイザ教員・キャリアカウンセラーらと振り返り、次の履修に活かすといったシンプルで持続可能な全学的取組が紹介された(このプログラムは、学生支援GPに選定された)。

『10の底力』マッピング表

「金沢工業大学の就業力育成の取り組み」

金沢工業大学 学生部長、基礎教育部教授 藤本 元啓氏

 入学時に、大学の行動規範や行動特性(KIT IDEALS)を明示し、4年後の卒業に向けた目標や流れを意識させるとともに、宿泊研修やキャリア支援を踏まえたポートフォリオの活用等を通して、社会に適応できる五つの力(自立と自律、リーダーシップ、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、コラボレーション能力)を柱とする人間力の育成を目指す事例が紹介された。ポートフォリオは、出欠席、学習、健康等の状況を中心に、個別的なフィードバックを活かした振り返りと計画策定、教員面談や保護者会における資料等としての活用がはかられ、文章力育成にも役立っている。
 なお、このポートフォリオシステムは平成18年度特色GPに選定された。

KITポートフォリオシステム

「『武蔵野BASIS』(全学基礎教育課程)について」

武蔵野大学教務部長、環境学部教授 久富 健氏

 武蔵野BASIS(心とからだ、学問のための基礎、外国語、自己理解・他者理解)という科目構成に基づき、自己基礎力、学士力(就業力)の育成をはかる仕組みのうち、全学科横断によるクラス編制で、七つの教養分野を中心とする「基礎セルフディベロップメント科目」の授業を中心に、めざめ、つながり、ひろがりというサイクルで、アカデミックスキルズの習得を目指し、自己表現力、知識・技術・コミュニケーション、社会・倫理・創造的思考を通して、各学部に繋げる事例が紹介された。

武蔵野BASISと学科科目の構成図

「目白大学のキャリア教育と就職支援」

目白大学学務部長、経営学部教授 安田 和紘氏

 大学のモットーは「育てて送り出す」であり、能力(社会人基礎力、基礎、専門知識)、就活技術(筆記や面接試験対策)意欲(自己理解、職業観、勤労観)を3本柱として、正課(キャリア形成科目群)と正課外科目(キャリアセンター主導)の科目として総合的にカリキュラムが構成されている。1年次から3年次までの必修科目「キャリアデザインI〜IV」を実施しており、そのためのテキストも作成された。「キャリア教育は人間形成の教育である」という認識の下に教職員が一体となった体制で、授業の質向上に向けて、PDCAサイクルを回している。

「静岡産業大学における就職支援への取り組み」

静岡産業大学経営学部 就職支援グループ長 鈴木 守氏
就職支援グループ主任 中村 直美氏

 企業の多い静岡地域を就職活動にうまく活かすために、各学部に就職支援室を設置している。社会実践講座(2単位)を開講しており、ここにポイント制のアイデアを採用している。キャリア・ウオッチング・ツアー(6P)、インターンシップ(6P)、公開講座(6P)のようにポイントで換算し、2単位=40ポイントと計算していることが報告された。インターンシップも大学が募集して、営業体験型、地方行政型等四つに分類しながら学生に対応している様子が紹介された。

「首都大学東京における低学年向けインターンシップについて」

首都大学東京 大学教育センター準教授 林 祐司氏

 「現場体験型インターンシップ」が全学共通科目(2単位)の選択科目として1年次に設定されている。事前学習、事後学習を含め、夏休み6〜10日間、現場体験のインターンシップに出かけ、宿題や成果のレポート提出をする。今年も1学年1,600人中617人が参加している。受け入れ先は東京都や、民間企業、法人等合計339事業所あり、受け入れ可能数は808人である。低学年からのインターンシップ取り組みでの中身は、自己や社会の課題認識を深める、主体性のある意識・責任感を向上させる、コミュニケーション能力を付ける、という3点が育成されるように構成されている。

自律・自立を促す初年次教育の実態と課題

学校法人河合塾 教育研究部教育研究部統括チーフ 谷口 哲也氏

 高校教員は進学指導の際、大学の教育内容・教育力を重視する。大学教育の特徴は「命題知の暗記でなく活用できる知の学び」にあり、特に受動的から自律・自立的学習への転換を促す初年次教育調査が重要であるため2,000の学部(長)に対しアンケート調査を実施した。回収された1,092学部をポイント評価し、評価値の高い32大学をさらに実施調査した。実施評価の視点は、(A)PBL(問題発見・解決型)とグループワークの実施、(B)自律・自立的学習への促進、(C)全学生に一定水準の教育保証であり、それらの教育効果測定も調査した。初年次ゼミで(A)が非常に進んでいる学部が約6割を占め、(B)は反対に約7割の大学が遅れている評価となり、PDCAによる振り返り手法や目標を言語化する必要性が強調された。(C)では、約4割が非常に進んでいる評価をしたが、共通テキスト等は有効面とマイナス面の双方あることも指摘された。先進的な取り組みをしている学部の事例紹介もされ、初年次教育が進んでいる大学でも一部教員の努力で支えられている事例が多いこと、遅れている大学は教員を学生に向かい合わせていないことなどが指摘された。

説明責任としての教育情報の公表(大学の教育情報の公表について)

文部科学省高等教育局大学振興課専門官 喜久里 要氏

 文部科学省はこの10年間、大学教育の可視化(見える化)を検討してきた。大学の情報公開は、1)Accountabilityとしての社会的報告責任遂行、2)情報公開を利用して大学の向上や改革に役立てる、の2点が重要である。特に、2)の立場から、情報公開を受け身ではなく、各大学が建学の精神や教育理念を再確認し、各大学の教育・研究を学生、保護者、高校生等に伝える意思や努力が大学の存立意義を高め、改革にもつながることが強調された。また、大学側の情報利用者に対する窓口の明確化も重要である。平成3年からの教育情報公開に関する文部科学省の主な取り組みの歴史的経緯と平成23年4月施行の「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令」の内容が参考となる大学ホームページの実例紹介と今後の認証評価との関連も含め説明された。フロアーからは、省令の努力目標の中に義務化すべき項目があること、大学ホームページが高校生にわかりづらいこと、さらに大学現場での過重負担の問題提起がなされた。教育情報の公開は教育制度のインフラでもあり、大学の主体的判断で時間をかけ議論し、大切に育てていくことが肝要との回答があった。

第2日目(9月2日)

テーマ別自由討議

分科会A 学習管理システムによる教育・学習支援の取り組み

<課題提起>

帝京大学 理工学部教授、ラーニング開発室
渡辺 博芳氏
桜美林大学 大学アドミニストレーション研究科教授
鈴木 克夫氏

 学生一人ひとりの学習成果を確かなものにするには、学生の理解度を把握し、適切な指導を継続していくことが重要になる。また、資格関連の教育においては、資格取得の前提となるエビデンスとして、詳細な学習履歴を記録することがこれまで以上に求められる方向にある。そのための教育環境として、教材の配信以外に、アンケート機能、指導・助言などのフィードバック・記録機能、コミュニケーション機能を備えた学習支援システム(LMS:Learning Management System)の果たす役割が期待される。本分科会では、代表的な商用LMSであるWebCT(現:Blackboard Learning System)とオープンソースのLMSであるMoodleを導入・運用している2大学から具体的取組事例として、帝京大学より「帝京大学における学習管理システムの導入と活用例」、桜美林大学より「桜美林大学におけるMoodleの導入と活用」が紹介された。
 帝京大学では1)2002年から始まった同大学におけるLMSの導入の経緯、2)支援体制、3)LMSの活用状況(自己学習型授業、課題へのフィードバック機能の活用、学生間ピアレビューなど)、4)LMS活用の学習効果などについて、LMSの効果的な活用と運用について示唆に富む内容が紹介された。
 桜美林大学では1)桜美林大学の概要(歴史、4学群・6研究科、学生数・教員数・職員数など)、2)18種の商用・オープンソースLMSから2006年度運用のMoodleに絞るまでの選定・導入プロセス、3)Moodle利用コース(授業科目)数と利用学生数の内訳と推移などの利用状況と活用事例、4)e-learning推進体制、5)今後の課題について詳細な紹介があった。
 後半の質疑では、Moodle導入に要する費用、システム運用の要員数とその構成、TAなど補助者の状況、LMSが利用されている科目の分野や内容、クラスの適正規模、レポートへのフィードバック対応や学生間のピアレビューの効果、通常の対面授業との関係、LMSへの教員と学生の登録方法、コンテンツの作成、LMSによる学習効果など質疑は多岐にわたった。会場は70人を越える参加者があり、また、会場からの質疑は運用に関するものが数多く寄せられ、予定時間を超過する状況であった。LMSを導入している大学で効果的な利用・活用に向けて模索している様子が伺われた。LMSの授業への導入は、教員にとっては機能を使い分けることにより、授業補助として効率化できる面と従来授業プラスアルファの労力で負担増となる両面があるが、学生には授業へ積極的な参加意識を持たせることができ、学習効果の向上が期待できるとの共通認識であった。

分科会B ICTを活用したジェネリックスキル(汎用的能力)育成の教育プログラム

<課題提起>

創価大学 教育・学習活動支援センター長
関田 一彦氏
東海大学 教育支援センター次長
山本 義郎氏

 ライティングスキルやコミュニケーションスキル等の汎用的能力の育成には、初年次教育をはじめ、4年間を通じた育成プログラムが必要であり、ICTは有用なツールとなる。本分科会ではICTを用いたジェネリックスキルの育成について、二つの大学から課題提起が行われた。最初に創価大学から、学習活動支援センターが関わるICTを活用した二つのスキル育成プログラムの事例が紹介された。一つは「CollabTest」と呼ばれ、学生が協調して問題を作成するWBT(web-based training)システムの開発、活用である。学生が作成した問題を学生相互に評価し、教師のレビューを経て、他の履修学生に公開され、学生が回答する。学生の積極的な学習への参加を促し、また作問過程で相互に協調し、時間を調整することから、コミュ二ケーション能力が育まれる。もう一つはWebを介したレポート診断の活用である。同大学では、学習時間の増大とライティングスキルの向上を目指してレポート作成が頻繁に課されている。学生が作成したレポートをサイトに送り、診断、アドバイスをもらうという学習支援システムである。
 続いて、東海大学より以下の通り紹介があった。学生の基礎学力を補い、大学での学びに対する動機づけを与えるために、2009年度に全学的にカリキュラムポリシーと身につけるべき力を定め、カリキュラムマップを作った。シラバスを授業改善および学修指導のツールと捉え、シラバスのフォーマットを変更して「授業で育成する力・スキル」を示し、授業アンケートに対する改善点・コメント等をシラバスにおいて参照可能とした。さらに2010年度から、初年次入門ゼミを必修化し、ICTを活用した学修支援システムが活用されている。この学生支援システムによって、学生基本情報を共有し、適切な学修指導に活用することが可能となっている。
 課題提起の後、創価大学に対しては、CollabTestのチームの人数、評価方法、問題形式、コピー&ペーストへの対処、参加しない学生への対応またレポート診断の診断数、科目数、スタッフの数等について質問が、また東海大学については入学前教育の「モチベーションe-ラーニング」の内容、基礎ゼミ等で養う「集い力」について質疑がなされた。この他、両大学の教育支援ICTのインフラ運用に携わる体制、外部委託の情況等、さらに教員のコンピューターリテラシーの改善策等、質疑は多岐にわたった。参加者の多くが、学生の汎用的技能の育成を実現する教育プログラムの構築とICTの活用について強い関心を持ち、模索していることが分かった。また同時に、これに取り組む教員の職能開発と意識改革が要請されていることが明らかとなった。

分科会C 質保証を補完するための支援システム

<課題提起>

千歳科学技術大学 総合光科学部教授
小松川 浩氏
広島女学院大学 生活科学部准教授
中田 美喜子氏

 本分科会では、学生の質保証を実現するためには、学生は常に自らの学びの到達度を把握・評価し、大学側は学生一人ひとりに不足している能力を補完する体制を備えていることが必要であり、これらをICTを活用し具現化する方法が、学習ポートフォリオと学生カルテであると考え、次の二つの事例紹介に基づき討議を行った。
 まず、千歳科学技術大学ではブレンディッドラーニングが行われており、同大学で教授すべき約3,300の知識ワードを4階層で全学的に定義し、個々の授業で教授する知識、授業の前提となる知識をもとに、知識間、科目間のつながりを体系化している。これにより、教員側は教えていない知識をなくすことができ、学生側は科目間のつながりをグラフィカルに見ることを可能にしている。本分科会のテーマである質保証という観点からは、教員は、授業中にeラーニングで行ったWebテストによるプレ試験と、優をとれなかった学生向けの本試験、さらには在宅学習の状況も表示される学生カルテを利用したポスト課題、の3段階で成績評価を今年度から行い、学生は、この成績評価とeラーニングで得られた個々の知識ワードの獲得状況をポートフォリオの星取表によっていつでも知ることができるようになっている。
 続いて、広島女学院大学から、課題提起者自らの試作システムから発展させた学生カルテシステムについて紹介があった。この学生カルテの特長は、同大学の学生として身につけるべき「社会性」と「学びの基礎」のそれぞれ7項目をチュータ(教員)と学生自らが、各項目ごとに1年から4学年まで継続して5段階で評価し、4年生終了時に最高点になるように指導していくものである。チュータの評価点と学生の評価点は、「社会性」「学びの基礎」の両方において、学年が上がるとともに評価点が上がる傾向にあるが、とりわけ「社会性」においては、1・2年生では一致していたチュータと学生の評価点が、3・4年生では学生自らの評価点が、チュータの評価点を下回る傾向があることが報告された。これは、厳しい就職活動での経験が原因であると考えられるが、学生が自らを過小評価している恐れがあり、学生に自信を持たせる指導が必要であることが明らかになった。
 これら2件の事例紹介の後、質疑応答および討議に入った。質問で多かったものは、今回の事例の実施対象となっている学生数、一人の教員が担当する学生数、サポート体制など、規模や組織に関するものであった。次に、学生カルテのデータに対するアクセス権、つまり、教員(ゼミ・授業の担当であるかどうか)、事務職員、非常勤講師等の誰が、学内・外のどこから、いつまで、データ入力・閲覧ができるのか、という質問が多かった。
 討議では、学生側からも教員の評価をし、相互に評価することで真の質保証が実現できるのではないか、また、保証する質について、クルマでいう燃費などのように、就職活動時に企業等が客観的に評価できるような尺度を定める必要があるのではないか、等の意見が出された。

分科会D 学士力を実現するための情報活用能力

<課題提起>

私立大学情報教育協会 情報教育研究委員会

武庫川女子大学 文学部心理・社会福祉学科准教授
前田美也子氏
東洋大学経済学部教授
渡辺美智子氏
甲南大学会計大学院長
照行氏
新潟国際情報大学 情報文化学部准教授
佐々木桐子氏
東海大学工学部教授
真下和彦氏
文教大学 健康栄養学部管理栄養学科教授
井上節子氏
関西医科大学 大学情報センター学術部准教授
渡辺 淳氏
江戸川大学メディアコミュニケーション学部 情報文化学科准教授
玉田和恵氏
私立大学情報教育協会
井端正臣事務局長

 「学士力を実現するための情報活用能力」では、100名を越える参加者があり、関心の高いテーマであることが確認できた。
 はじめに、井端事務局長から、本協会が取り組んでいる「学士力を実現するための情報活用能力」の策定について、その趣旨と概要についての説明を行った。
 本協会では、5年に1度、過去3回に亘り、「情報教育」について取りまとめを行い、これまでは、基礎的な「情報リテラシー」の習得に比重を置いてきた。今後、中央教育審議会大学分科会(制度・教育部会)の「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」平成20年3月25日により提言された「学士力」の育成が求められていることを踏まえ、本協会では、情報通信技術(ICT, Information and Communications Technology)を用いて、多様な情報を収集・分析して適正に判断し、モラルに従い、効果的に活用する能力(情報活用能力)を発揮できるよう、学生が学びの場に積極的に関わっていくために、各学問分野でこの情報活用能力をどのように取り入れていったら良いか、そのための仕組みをどうすべきか、といった検討の必要が生じている。そこで、英語教育、心理学教育、法律学教育、政治学教育、社会学教育、コミュニケーション関係学教育、国際関係学教育、経済学教育、経営学教育、会計学教育、社会福祉学教育、教育学教育、統計学教育、数学教育、生物学教育、物理学教育、化学教育、機械工学教育、建築学教育、土木工学教育、経営学教育、電気通信工学教育、栄養学教育、被服学教育、歯学教育、美術・デザイン学教育、看護学教育、医学教育、及び、情報倫理教育の29分野の各委員会において、到達目標、到達度、教育内容と方法、到達度確認の測定手段という枠組みで「情報教育のガイドライン」を取りまとめた(その後、体育分野を含めた30分野となった)。
 今回は、29領域のうち、社会福祉学、統計学、会計学、経営工学、建築学、栄養学、医学の8領域におけるガイドラインについて、各委員会委員から経緯や考え方等を紹介した。また、情報倫理については、領域横断的な扱いが必要なことから、ガイドラインの他、開発された「理解度点検リスト」についても紹介し、教え込むモラルではなく、考えさせるEthicsという考え方が強調した。
 会場からは、情報倫理の理解度点検リストにかかわる評価の目安や調査資料があるかといった質問、全体にICT活用の側面が強いという意見はあったものの、ガイドラインについての踏み込んだ意見交換が行われる段階には至らなかった。
 そこで、事務局から示された「情報活用能力の要素」

に沿って、再度、各領域の考え方を確認することで、全体として、剽窃、情報の信頼性、知識と情報の解析力、情報倫理などの教育の重要性や、FDとしての情報活用教育の重要性、教育課程での対応の必要性について認識を深めることとなった。

分科会E クラウド利用による情報環境の在り方

<課題提起>

静岡大学 情報基盤センター副センター長
井上春樹氏
東京工科大学 コンピュータサイエンス学部教授
田胡和哉氏

 クラウドコンピューティング技術を巡った2件の事例が紹介された。東京工科大学の「教育用クラウド技術の開発事例」では、コンピュータサイエンス学部は、1学部1学科7コース制で全学生がLinux/WindowsデュアルブートのノートPCを所有している。教室の全座席に情報コンセントが設置され、学生に対するITサービス環境を充実させている。学生と教員が容易にコミュニケーションでき、かつより容易にサービス提供ができるように、教育環境Lcloudを開発し、授業展開を試みた。
 学生は、Webブラウザからクラウドにログインすると、そのWebページそのものが仮想端末となり、そこで教材閲覧、ノートの作成、プログラミング(コーディングおよび実行)などが実施できる。一方、教員は、教材などをサーバ上での管理や、学生の進捗管理、質問の閲覧や回答などを一括して行える。情報系のプログラミングの半期の授業を行い、クラウドの教育への応用の可能性を探ったものである。今回はPHPによるWebアプリケーション開発を行ったが、このようなプログラミングなどは、その習得度合いの個人差が非常に大きいものである。クラウド上に実行環境を統一することで、きめの細かい指導につなげることができた。
 このような個人差が非常に大きい学習内容を講義する際には、現状把握が容易にできる学習支援体制とシステム支援が必要になり、Cloudの利用が組織改善に役立つような一面があるということが議論された。また、ユーザー教育の改善にも影響するのではないかというような意見も出された。
 クラウドコンピューティングには、同大学の事例のように、情報システムに新しい付加価値を与えるような面があるのと同時に、コスト削減のための強力な手段ともなりうる。
 このような観点から、次に静岡大学の「クラウドコンピューティングの全面適用とその効果」について事例が紹介された。
 事例の最も中心的趣旨は、「的確なクラウド適用を行えば、投資コストを80%低減、エネルギーを90%低減できる」と主張するもので、フロアからは、非常に大きな驚きと関心の声が上がった。最初に現在の経済状態こそ、情報機器、消費電力、保守経費を同時に削減できるクラウドの価値性を主張された。
 同大学では、キャンパス内に600〜700台近くあったサーバ・コンピュータのほとんどをクラウド化して、学外に移設した。電力と保守コストを大量消費するサーバ類を集中的に学外に出すことにより、大幅なコスト削減が可能になった。長年使用してきたサーバ類の使用を止めることに対して、ユーザの頑強な抵抗があったが、それを克服するために、あらゆるコストの側面から綿密な予測計算を行って説得した過程が詳細に説明され、フロアの大きな関心を呼んだ。

第3日目(9月3日)

大会発表

A−1 既成の英語e-learning教材を用いた授業と自習を連動させる試み
北海道医療大学 松本由起子

 学生が英語を自習する習慣を身につけるようにe-learningを導入した。二つの学科で実施した結果、得点が下位の学生の点数が伸びるという効果がある。学生へのアンケートでは、自習をすると努力したという感じが強まる。その一方で授業に出席すると努力せずに英語力が上がるという気になる。今後はe-learningと授業のバランスを探りたいとのことである。

A−2 自己自習を促す学力強化システムの確立
松本歯科大学 富田美穂子、音琴淳一、倉澤郁文、岡藤範正、古川洋和、増田裕次、瀬村江里子、吉澤英樹、長谷川博雅

 学生の学力向上を目指してe-Learningシステムを構築した。教材は、これまで毎週月曜日の1限目に実施してきたWeekly Testのためにストックされている問題(3万問)を活用した。この教材は学習型と試験型に分けることができる。現在のシステムは選択問題に限定されているので、今後は学生に文章を書かせる訓練を検討する予定である。

A−3 症候学演習eラーニングの活用事例
東京慈恵会医科大学 柵山年和、塩原憲治、小松一祐、橋本尚詞

 医学部医学科の3年次に実施している症候学演習でeラーニングを併用した。具体的には症例を動画、X線画像、CTなどを含めて提示して、学生の予習およびグループ学習に使用するようにした。学生へのアンケートの結果を見ると、予習および討論で使用する教材としてのeラーニングの活用は概ね好評である。今後はeラーニングの利点を生かして臨場感のある教材の作成が期待できる。

A−4 e-learningを活用した資格試験対策教材に関する研究
東京医療保健大学 西大明美、岩上優美

 医療事務の支援のため、Webアプリケーションを用いた学習システムとオフラインで利用できるアプリケーションソフトの2通りを設計した。現段階では診療報酬請求事務能力認定試験の学科試験に重点を置いており、今後は実技試験(診療報酬明細書作成)についてもシステム化する予定である。

A−5 自学自習型eラーニング教材「情報リテラシー@OGU」の新入生オリエンテーション利用
大阪学院大学 中嶌康二、金崎暁子、松尾 修、白川雄三

 新入生を対象にした学内ネットワーク(OGUNET)の利用に関するオリエンテーションで、ITセンターで開発したeラーニング教材「情報リテラシー@OGU」を活用した。LMSを活用することで、学生は自分以外の新入生の動きを見ることができ、相互刺激となった。

A−6 インマルサット衛星回線を用いた遠隔授業教材配信の試み
東海大学 千葉雅史 、田中滋樹、生方香代、藤田泰裕、佐藤 実

 初等中等教育における理科離れ対策と、高等教育における学士力育成の同時達成を目指して、大スケールの自然現象(皆既日食)を対象にネットワークを活用した遠隔授業配信を実現した。海洋調査研修船「望星丸」を皆既帯に派遣し、船との接続はインマルサット衛星回線を用いた。

A−7(発表中止)

A−8 模擬株主総会でのストリーミング配信およびチャットサービス利用の試み
大阪国際大学 田窪美葉、韓 尚秀、市川直樹

 模擬株主総会はマネジメントゲームの成果発表会で、海外の姉妹校からも参加できるようにストリーミング配信を行っている。今後は留学生の参加と本国からの閲覧を意識した外国語の表記や翻訳、効率的な運営方法、マネジメントゲームの初心者への解説などが課題である。

A−9 授業におけるリアルタイム型webサービス利用の可能性と課題
実践女子大学 犬塚潤一郎

 twitter, GoogleApps, prezi, ustreamなどを授業で利用した。このようなサービスは便利であるが、技術は単なる手段ではなく使う者の基本的なモデル形成を担うことを考慮しないと、本来の意味でのリテラシーを逆に下げてしまう危険性がある。

A−10 学習環境の理想像とe-learningによる学習支援の将来像
大阪国際大学 石川高行、矢島 彰

 これまでのe-learningの経験をもとに今後進むべき道について考察した。e-learning講義は教室講義よりもやる気の持続が難しい面があり、何らかの工夫が必要である。また、補講にe-learningを導入するためには、どのような要件を満たせば許されるのか検討しておくことが必要である。

A−11 ネットワークマルチバーシティ化による教育の総合的なIT化
京都情報大学院大学 長谷川亘、長谷川晶、太田 賢、小寺敦子、奥泉洋子、橋良子

 現代に即した大学のビジネスモデルとして、マルチバーシティの概念を拡張し、ITで繋がれた複数大学の連合形態を提案した。小規模校がネットワーク化して分社型経営を行うことにより、経営・運営の大幅な合理化が実現し、教育の質の向上も可能になる。

A−12 eラーニングにおける学習意欲向上方法の研究
十文字学園女子大学 小野裕次郎、牧村信之、新行内康慈、田倉 昭、栗原隆史

 小テストと期末準備テストの正解率を統計的に分析した結果、小テストの課題を全問正解まで繰り返して学習することが重要であり、小テストの最高点が低い者が期末準備テストの正解率を上げるには大変な努力を必要とすることが実証できた。この事実を学生に明示することにより、学習意欲を向上させることができると思われる。

A−13 プレゼンテーション教育における学習の動機付けと学習意欲向上の試み
関西学院大学 黒崎茂樹

 プレゼンテーション教育における学習意欲向上の試みについて報告した。前年度の受講生が提出したプレゼンテーションを「見本」として学生からアクセス可能にすることで、学習意欲が向上することが確認できた。これはプレゼンテーション以外の授業にも応用可能と思われる。

A−14 中国語学習における動機付け教材作成の試み
千葉大学 洪 清潔、藤本茂雄

 初級中国語の学習支援のためにMoodleの利用と動画教材の作成を行った。Moodleを利用した学習者はテストの平均点が高く、特にリスニングの反復練習ができることが有効であると言える。語学教育における動画教材は、文化を紹介することにより学習意欲を高めることができるが、初級者向けには難しくならないようにする必要がある。

A−15(発表中止)

A−16 学習意欲向上のためのMoodleの改良による問題と達成状況の一覧表示
福岡大学 前田佐嘉志、鶴田直之

 自学自習システムにおいて、複数の問題を全問正解できるようになるまで繰り返し学習するという状況を想定し、達成度や学習順序などの提示方法が学習意欲に及ぼす影響について調査した。従来法、SC法、情報表示法の比較実験を行い、制限時間内の正解数については情報表示法が最も高くなった。

B−1 映画字幕制作による教育と地域貢献の結合の試み
福岡大学 間ふさ子、甲斐勝二、熊木 勉、李 秀、張  、王 毓

 授業で中国・韓国映画のセリフを聞き取り、翻訳、字幕製作ソフトを使用して日本語字幕を付ける作業を行い、語学学習意欲を向上させつつ、映像を通して東アジアに対する理解をより深めて教育成果をあげる試みである。製作した映画を、映画祭において発表会を行い、市民による鑑賞に提供している。

B−2 ネットビジネス構築演習の実践と評価
摂南大学 松永公廣

 ネットワークを利用した経営手法を学ぶべく、ネットビジネス構築の実践演習として、5回の授業にネットショップの構築を取り入れた。学生個々がネットショップを構築し、作品について自己、他者、教員の評価を行った結果、学生が経営学の知識を具体的に学んだと評価している。

B−3 プロジェクトマネジメント学習のためのコミュニケーションツール
九州情報大学 岸川 洋、合田和正、平田 毅

 大学のゼミにおいてプロジェクトマネジメントへの理解を深めるために、プロジェクトが体験できる教材を学生に提供し、システム構築やマネジメントの理解を支援した。教員がマネージャー、学生がメンバーとしてプロジェクトを構成し、共有フォルダをコミュニケーションツールとして利用した。

B−4 ゲーム製作を題材にしたグループ学習についてのケーススタディ
大阪国際大学 下條善史

 ゲーム作りに興味がある3年次学生グループを対象として、ロールプレイングゲームの製作環境を与えて、企画立案、企画書作成、役割分担、スケジューリングなどの過程を経て、ゲーム1本を作品として作成した。グループによるゲーム製作体験、協調性、責任感を育成する機会をも供した。

B−5 コンピュータを利用した「集い力」教育について
東海大学 岡田 工、園田由紀子、崔 一

 自己・他者理解のために応用する力を身につける「集い力」の授業において、4〜5人のグループの自己紹介、紹介のスライド作成・発表を行った。後半は新たなグループにより、一つのビデオ作品を制作した。ルーブリック調査の結果、コミュニケーション能力および自己開示能力が向上したと評価された。

B−6 情報教育用学習システム開発におけるユニバーサルデザインの検討
日本女子大学 加々見薫、吉井 彰

 スキルの異なる不特定多数のユーザすべてが快適に操作し、理解できるように多くの情報を簡素化した形で盛り込んだ、情報教育用学習システム構築を試みた。キーボード入力とマウス操作から読み取った受講者のPC操作スキルのレベルとアンケートによるレベル分けとがほぼ一致した。

B−7 3D立体画像合成・表示技術による立体物提示の教育利用
東海大学 坂田圭司、高橋隆男

 実験装置や設備などの教材を大勢に同時に見せるには困難な場合が多く、平面で画像や映像を見せるにはスケール感と立体感を実感させることが効果的である。スケールとなる背景と撮影した対象物の3D画像を簡単に合成して3Dコンテンツとして簡単に作成するシステムを開発した。

B−8 低コストで構築可能な画面合成型講義自動録画システム
東京工科大学 飯沼瑞穂、板宮朋基、千代倉弘明

 廉価なRGBキャプチャーデバイスとビデオカメラを接続したPCに、講義用PCのRGB信号と講師映像をキャプチャーして、コメント文字を合成した一つのストリーミングファイルとして自動的に講義を録画システムを構築した。録画終了後直ちにストリーミングサーバにアップロードでき、YouTubeとしても配信される。

B−9 ネットワークを用いた画像及び動画ファイル検索閲覧システムの構築
熊本保健科学大学 山鹿敏臣

 臨床検査技師教育において最新の画像情報が求められるため、オープンソースシステム(Fedora Core)上にフリーのWebサーバとデータベースサーバを置き、スクリプト言語(PHP)を用いて画像ファイル検索システムを構築した。ユーザは直感的操作ができ、ネットワーク上にあるPCから容易に更新できる。

B−10 バーチャルスライドによる教育システムへの応用
岩手医科大学 澤井高志、松村 翼、斉藤健司、井上拓也、千葉 岳

 医学教育においては顕微鏡による組織画像は重要な位置を占めている。拡大しても鮮明さを失わない高画質のバーチャルスライドが普及しており、学生の試験問題、自己学習、専門医試験への活用を試みた。症例問題では組織画像を光学顕微鏡で観察するかのように移動・拡大が可能で、大変有効であった。

B−11 術者目線のオリジナル3Dムービー作成・供覧 システムの開発
東京医科歯科大学 須永昌代、小原由紀、大塚紘未、木下淳博

 歯学教育においては歯科医師が術中に遭遇する映像を経験することは大変重要であるという認識から、術者の目線で3D画像を撮影し、教材を作成している。作成された教材は場所を選ばず供覧できる。教材の録画・再生に必要な機材一式はラックに収納されており、場所を選ばずだれでも容易に操作できる。

B−12 DVDを利用してのドレーピング実習
武庫川女子大学 坂口建二郎、岡田由紀子

 ドレーピング実習という授業では立体裁断用ボディーが必須であり、視覚的理解が重要である。アイテム別の立体裁断の様子と平面への置き換え作業を収録し、説明資料としてのシナリオを素にDVDを作成した。多数の学生に同質の解説を提供でき、学生たちはDVD教材閲覧で自主的に課題に取り組んだ。

B−13 ネット世代に向けたクロスメディア教材の作成と配信
名古屋学院大学 児玉政和、児島完二、高橋公生

 自学自習システムに用意されたネット教材「経済学基礎知識1000題」の解説を補足するために、教員や大学院生が解説するシーンを撮影し1〜3分の動画クリップを作成した。これらの素材はワンソース・マルチユースとなっており、学習者の環境に応じた教材を配布・配信できる。

B−14 演習ガイダンスビデオの開発と演習選択の実施
大阪経済法科大学 朴 恵一、森澤理之、山路崇正、岡田 学

 教員が分担している演習を学生が選択する場合、シラバスだけの情報では不十分であり、演習担当教員が演習内容を紹介する演習ガイダンスビデオを開発し、Webで公開した。汎用のビデオカメラとMicrosoft Producerで作成し、非常に安価にできた。アンケートから有意に利用されたことを確認した。

B−15 外国語単語学習を助ける音声教材の活用とその効果
千葉工業大学 大久保政憲、橋本修一

 外国語学習の語彙学習の支援として、携帯音源端末を利用する教材を用いた。フランス語教科書の抜粋プリントについて語彙に関する事前テスト、ネイティブによる音声をpodcastに録音した音読学習後のテストを行った結果、音読後の単語テストの平均点が高く、語彙力の向上につながった。

B−16 音声合成技術を援用したWeb-baseの必修英語科目共通教材作成の試み
流通科学大学 東 淳一

 英語のNS(Native Speaker)教員によるリスニング教材不足に対応するために、TTS(Text-To-Speech)合成音をMoodle用音声教材に利用した。六つの音声について評価した結果、NSの発話でなく、Acapela-Groupの製品の品質が英語として自然とされ、TTS合成音声の英語教育への効果が期待できる。

C−1 就職支援データベースの自主開発
北海道工業大学 藤田勝康、片岡 隆

 従来から存在する就職支援データベースシステムは使い勝手が悪く利用が少なかった。そこで利用しやすさを改善するため、Web上に就職支援情報を手作りで掲載した。情報の種類の豊富さ、利用しやすさが向上した。現在も各種要望に応えて改良を重ねているが、学生・教員の関心の差が大きい。利用促進の努力を続けている。

C−2 三位一体型キャリア支援ウェブステーション「jwest」の開発へむけて
城西大学 栗田るみ子、草野素雄、新井浅浩、 柳下正和、木内正光

 就職活動を支援するため、ウェブサービスとして「jwest」を立ち上げた。携帯電話・PCから就活情報入力を可能とし、学生・教員・職員3者間のリアルタイムな情報共有ができるようになった。就職情報、学習カルテなどを統合している。アルバイトにより、情報入力を促進した。経営学部からスタートして、全学部に広げる予定である。

C−3 キャリア教育支援のための学生情報トータルシステムの構築
中村学園大学短期大学部 梶田鈴子、清水 誠、酒見康廣

 Webシステム化により学生の就活情報を含むキャリア情報を充実させ、かつ学生、教員、職員の共有化を行い、利用しやすさを向上させた。学生の自主性と意欲の涵養に役立ち、現在80%が自主的入力を行っている。利用促進のさらなる工夫を検討している。

C−4 新入生の基礎科目におけるリメディアル教育
産業医科大学 柴田弘子、柴田喜幸、佐藤亜紀、兒玉幸子、松本智晴、古川 博、中野正博

 看護学における学力の均質化を目指した入学前と入学後のeラーニングシステムを導入した。生物基礎1と2を学生に学んで貰い、前後での評点を比較したところ、学生の取り組みが予想以上であり、学習効果が認められた。特に未履修者の得点が学習後、既履修者と差がなくなったことは、学習補完効果のあることを示している。

C−5 携帯Javaアプリによる看護・理学療法・臨床工学を架橋する教材の開発と公開
帝京平成大学 小林郁夫、長尾邦彦、長尾嘉子、松村紀明、仲井克己

 看護・理学療法・臨床工学に関係する“漢字の読み”の導入学習のため、携帯Javaアプリを開発した。簡便に利用でき、ある程度好評であった。内容を漢字の読みだけでなく、語句説明、略語類や国試などにも広げ、また学生の教材作成への参加を募り、さらに充実を図る予定である。

C−6 学習意欲の向上を目指した初年次の情報教育方法とその展開
兵庫大学 森下 博

 情報教育分野の初年次教育で、数字マジックやカオスといったシミュレーションまで取り入れた表計算ソフトの各種機能の利用に学生が取り組むことで、基礎から学び、発展的活用を実感でき、学習への意欲向上が図られた。

C−7 IT技術を利用したオンデマンド初年次教育システムの開発
神戸海星女子学院大学 樋口勝一

 リメディアル教育を目指して、オリジナルでマニュアル化した言語分野、社会分野、数的分野の3分野のオンデマンドテキストを作成した。個々に弱点補強を行える本システムは、学力向上に有効であった。既存のe-ラーニング教材にはなく、今後本システムのICT化を図る。

C−8 入学準備教育に活用できるコンテンツ自動作成システムの評価
拓殖大学北海道短期大学
庄内慶一、杉本雅彦、小林秀高、藤田 守、小瀧 聰
小山工業高等専門学校
石原 学

 入学準備教育のためのeラーニング教材として、マルチメディアコンテンツをメディアサイトライブを用いて開発した。語彙力、文章の読み方、講義ノートの取り方と留学生向け日本語会話能力の四つを準備した。受講者から高い評価が得られたものの、出題方法の改善など課題も明らかになった。

C−9 大学での活動履歴を蓄積しフィードバックする学習支援システム開発の試み
日本福祉大学 野寺 綾、中村信次、佐藤慎一

 大学生活で培われた能力を把握し、自己を客観的に評価できる視覚的な学生支援システムを構築して、学生の自己像形成を促し、勉学も含めた大学での活動に積極的に取り組む動機づけの向上を目指した。学生に使用感を調査した結果、自己の全体像を把握しやすいという解答を得た。

C−10 デジタルポートフォリオ活用による医療・福祉領域連携演習サポート
吉備国際大学
今村俊介、横山奈緒枝、岡崎幸友
岡山大学
田中共子

 デジタルポートフォリオシステムを導入し、振り返りによる学習効果確認と指導連携のより効果的な改善を試みた。その結果、演習・実習を受ける学生全体が互いに配慮しつつ共に学び、自分と相手を生かす他者とのつながりを意識するようなり、志の共有と意欲向上につながった。

C−11 英語の学びを支援するeカルテ、eポートフォリオ、eラーニングシステムの構築
広島修道大学 竹井光子、大澤真也、岡田あずさ、土岸真由美、中西大輔、有田真理子

 個別指導の充実と自律的学習を目的として、eカルテ、eポートフォリオ、eラーニングの3システムを連携させる仕組みを構築し、レベル別目標設定型の英語カリキュラムとの融合を目指した。現在Moodleによる学習環境の整備を進めており、英語以外の科目への拡張も視野に入れている。

C−12 多様化する学習者に対応した学習カルテシステム
明治薬科大学 向日良夫、足立 茂、石井一行、石橋賢一、石橋芳雄、植沢芳広、高取和彦、高波利克、林 弘美、菱沼 滋、日野文男

 教員が個別に収集した学生の学習情報や学習者の多様性を共有する場として、学習カルテシステムを構築し、慎重な情報管理の下に特定のアドバイザーグループによって共有できるようにした。グループ内での連絡はコメントで行い、学習者への支援履歴として蓄積、活用されるようになった。

C−13 プロセス可視型ポートフォリオの作成について
西日本短期大学 大隣昭作、西川真水、金澤弓子、卜部仁美

 実習・演習中心のカリキュラムにおいて、プロセス可視化ポートフォリオを作成することで、学生が習得した技術や成果を視覚化した。これにより、現状の自己の技術や知識を客観的に把握でき、希望の進路へ近付くためのキャリアデザインに有効であるとともに、就職活動に活用可能である。

C−14 薬学生のふり返りを促す体験学習Webコンテンツの作成
慶應義塾大学 石川さと子、飯島史朗、岸本桂子、福島紀子

 薬学教育ではヒューマニティ教育の重要性が唱えられ、低学年での現場体験科目を開講し、強い印象と動機付けを与えた。しかし、高学年での病院・薬局実習までに記憶が薄れてしまい、早期体験の実を活かすため、いつでもふり返り、モチベーション維持を促すWebコンテンツを作成した。

C−15 同僚評価型学習におけるICT活用
富山大学 竹村 哲

 シナリオコンテストをテーマに取り上げ、認識化支援技術を用いてシナリオ化することで書くことの面白さを実感させ、さらに聞く、意見を述べる、全体で決めるなどを通じて、アカデミックスキルを培う。作者であり同時に審査員としても同僚評価をする仕組みとし、選考の合意形成を目指した。

C−16 PBL法を活用した情報リテラシー教育による社会人基礎力とアカデミックスキルの育成
京都女子大学
水野義之
京都大学
岡本雅子、山本景一

 ICT活用能力を含む社会人基礎力とアカデミックスキルの養成を目的とした大学初年次の情報リテラシー教育の意味と重要性と、これを実現するカリキュラムを提案した。PBL法を活用した2年間にわたる情報リテラシー教育の結果から、適切な課題設定が難しいという問題が浮かんできた。

D−1 携帯電話を利用した授業改善
浜松学院大学短期大学部 山本孝一

 携帯電話を利用して出席確認、ドリルや小テストの実施が可能なC-Learningを「情報処理基礎」の中で利用した。効率的に授業を進めることができ、従来では時間が足りなくてできなかったドリルや小テストに十分な時間を当てることができ、学生の知識の定着がより確実なものになった。

D−2(発表中止)

D−3 留学生が多数いる教室空間
千葉科学大学 船倉武夫、高橋道恵、中尾収正

 留学生のほとんどは携帯電話を所有しているが、通信コストのため通話のみに機能を限定している場合が多いなど、その特殊性を考慮すべきである。また、多様な出身国の留学生がいることにより共通語が日本語となり、ユニバーサルデザインの観点から日本語教育を捉えることは重要である。

D−4 PowerPointによる授業方法の検討と改善
佛教大学 大塚眞理子

 授業前と実際にPowerPointを利用した授業後に学生アンケートを実施した。その結果、学生は授業の中で板書との比較においてPowerPointを使うことを必ずしも支持していないという示唆が得られた。教員は学習者の学力や学習内容を考慮して最適な授業手段を探って行くべきである。

D−5 大規模情報リテラシー科目における授業改善の取り組み
中央大学 岡田大士

 100名収容の情報処理教室をリニューアルした。従来は教員画面はプロジェクターを用い70インチ程度に表示していたが、学生に取って十分に内容が確認できる視認性は確保されていなかった。200インチのスクリーン、中間ディスブレーを導入し視認性を高めた結果学生の操作に関する質問が大幅に減少した。

D−6 ASPサーバを利用したe-Learningの活用
名古屋文理大学 山住富也

 WebClass、LAMSの二種類のASPによるe-Learningを利用して授業を行った。コンテンツと授業に関するアンケートを実施したところ、コンテンツへの関心、理解度、デザイン、操作性などで学生の高評価を得た。

D−7 Moodleの機能強化のための、小テスト専用アプリの開発
西南学院大学
吉武春光、市東 亘、田原裕子
(株)ヌーラボ
田端辰輔、森脇誠智

 Moodleの小テスト機能の貧弱さ、操作性の悪さを補うべく、小テスト専用のアプリケーション(Teslla)を開発しMoodleと連携させた。その結果Moodleを利用しながらもBlackboardと同程度の機能と操作性を享受することが可能となった。

D−8 全学的な教員へのLMS普及と学生還元のための新たな利用法の模索について
関東学院大学 田中宏治、須藤園子、百瀬幸子

 全学的に導入したLMS(Blackboard)の利用促進を図るべく、説明会、講習会、マニュアル、サポート体制を整備し、それらを有機的に結びつけた結果、1年間で利用率が専任教員で38.6%から54.1%、非常勤講師で14.3%から25.9%に上昇した。

D−9 OSSを活用したe-Learningシステム
東海大学 田中 真

 オープンソースのソフトによるe-Learningを活用した教育効果と費用対効果を定量的に評価する取り組みである。ネットワークの授業で小テスト機能によるドリル形式の繰り返し学習を実施し、e-Learningを活用した場合のほうが活用しないよりも成績の向上が見られた。

D−10 ICT教育支援システムの連携による単位の実質化を見据えた授業支援型CMS
千歳科学技術大学 山川 広人、長谷川 理、小松川 浩、吉田 淳一

 単位の実質化を行うため、出席情報以外に、授業外の学習時間、宿題・課題の進捗や達成度に関するデータを一元的に取得できるシステムを構築し、機能の有効性を検証した結果、9割以上の学生から評価基準が明確になったと評価され、学習内容をもとに明確な成績を決定し公開できることがわかった。

D−11 教員の立場からみた大学のネットワークマルチバーシティ
京都情報大学院大学 江見 圭司、長谷川 亘

 学務運営のインフラの共通化と効率化を目指した教員の視点からの検討で、履修登録と成績管理は学務運営用のパッケージソフトを使い、LMSと連動すればeラーニングによる自習も可能となる。小規模大学の場合、授業管理へのLMS導入は複数大学と共有すれば管理の効率化が図れる。

D−12 大学院アクティブポータルサイトの開発
青山学院大学 佐久田博司、原田 実、Martin Durst、矢吹太朗

 実践的科学者・技術者の育成を目指して、大学院における理工系の教育研究活動を支援するポータルサイトを開発し、LMSや学術情報アーカイブの他、学外の企業や他大学とのコミュニケーションネットワーク、学外との交流のためのバーチャルリエゾンオフィスの機能を設けた。

D−13 Moodleを利用した各種学生アンケートの実施
川崎医療短期大学 重田崇之、名木田恵理子、沖田聖枝、岸本光代、辻 真美、入江慶太、大高正憲、谷本祐子、板谷道信

 多様化した学生の教育支援や学生生活支援に活用するため、各種の学生アンケートをMoodleによるオンラインで試験的に導入し、利点や問題点を検討した結果、記入時間の短縮化、自由記述が増加するなど運用がスムーズになり、支援にも有効に活用できることがわかった。

D−14 総合的な人間教育支援システムの(STAC)構築
東北工業大学 谷津 憲司、大芳賀義喜

 学生の成績、取得単位、出席状況、学生生活、就職活動などのデータを統合することで、学生個人の能力、生活状況を総合的に把握し、教育や支援をタイムリーに行うシステムを構築した。平成23年4月からはWeb化して本格運用する予定としている。

D−15 Moodleを活用した家族援助力養成教育プログラム開発の試み
三重中京大学短期大学部
新川泰弘
関西学院大学
芝野松次郎
名古屋経済大学
小林重雄、伊藤健次
大阪産業大学
中川 晶
福井県立大学
吉弘淳一

 子供と家庭への支援に携わっている社会人の受講生の学び合いを育成するための仕組みとして、Moodleを活用した教育支援環境を構築し、教員と受講生とのやりとりや受講生間の学び合いのツールとしてレポート提出、フォーラム投稿機能を設けた。

D−16 会計教育用eラーニング開発に関する一考察
桜美林大学 伊東俊彦

 会計教育の補完教材として開発したeラーニングのアンケートを実施し、コンテンツ作成を容易にするための作成ツールを開発した。アンケートでは補完的な活用としては評価が高く、他の講義でもeラーニングで学習したいという意見が60%であったが、画面の見やすさなど改善の必要性もわかった。

E−1 Windows 7のコンピュータを一斉に整備可能な簡易整備システムの構築
金沢星稜大学 井上清一、二口 聡

 ハードディスクのイメージファイルを一斉送信後、1本に集約した整備プログラムにより、PCや教室ごとに設定が異なるIPアドレス、プリンタ名等の設定を行い整備が完了する簡易整備システムを構築した。これにより、400台のPCを2名のスタッフで整備することが可能になった。

E−2 非PC室における携帯情報端末の活用
大阪国際大学 岡本容典、安達康生、矢島 彰、石川高行

 iPhoneやiPod touchを学生に持たせ、PC環境の整備されていない教室で、Peer to Peerの通信により、小テスト等を行うことが可能となった。このシステムは、大人数の学生から同時にデータを受け取るのには向いていないので、今後は大人数を対象としたシステムについても検討する。

E−3 MoodleとXOOPSを利用した「学びの振り返り」の支援
三重中京大学 岡田良明、新川泰弘

 Freewareを利用し、普段Webやe-learningにあまり馴染のない人を対象とした教育支援システムを構築した。この教育支援システムを利用する通信教育の受講生は、自宅、職場のPCからこのシステムにアクセスし、レポートの提出、教員への質問等が、何の障害もなくできるようになった。

E−4 千葉大学における「授業資料ナビ」の展開とRFIDを活用した資料利用状況の評価
千葉大学 野田英明、千葉明子、鈴木宏子、竹内比呂也

 図書に付けたICタグを、書架のアンテナで読み取り、図書館内での図書の利用状況を把握するシステムを構築した。書架上では隣の図書のICタグとの距離が近いため、読み取り漏れの誤差が生じやすい。これを軽減するため、40秒以上継続して書架に無い場合のみ利用中であるとした。

E−5 レポート評価の自動化の試み
玉川大学 和高慶夫

 レポートの添削は、レポート数が多いほど時間と手間が生じる。さらに、学生が提出するレポートは多種多様なため、PCを使っての自動評価は非常に難しい。そこで、レポートの分野を人文、社会系とし、レポートとしての書式が整っているのか否かを自動的に判別することを試みた。

E−6 ケータイとインターネットの使用歴からみる情報倫理と教育
立正大学 野呂一仁、宮崎智絵

 ITの使用歴と、情報倫理形成との間に相関が有るか否かの調査を約180名の学生を対象に行った。使用歴と情報倫理形成の間に相関はなかった。情報関連の講義を行う際には、学生の生活経験の中に情報倫理が暗黙裡に含まれていないことを認識しておくことが重要とした。

E−7 情報リテラシー科目におけるプレゼンテーション実習を通じた情報モラル教育
兵庫大学 河野 稔

 情報モラル教育を行う際に、学生にテレビCMのようなプレゼンテーションを作成させ、教育効果の向上を図った。八つのテーマを、学生に自由に選択させたが、過去3年間で、年により傾向は異なるものの、コンピュータウィルス、不正アクセスに対する興味は低い傾向にあった。

E−8 レポート作成における情報教育の試みと評価
戸板女子短期大学
佐久間貴士
立正大学
小堺光芳、山下倫範

 高校での「情報教育」の浸透により、大学入学時における日本語入力速度は上がった。しかし、大学入学前にレポートや論文作成に関する授業を受けた学生は20%弱であった。今後の情報教育では、文献や脚注の入れ方等レポートや論文の執筆に必要な機能の修得が必要不可欠である。

E−9 耳から覚えるタイピング
帝塚山大学 日置慎治

 大学入学時点で十分と言えないキーボードタイピング能力を高めるために、視覚に頼らない音声による練習を実践した。聴覚とキー位置だけに集中することで、タイピング弱者にタイピング能力向上が確認できた。今後、レベルに応じた練習速度調節などの機能向上を検討している。

E−10 インタラクティブメディア制作による論理的思考能力育成の実践
稲置学園
二口 聡、井上清一、森 俊也
金沢星稜大学
岡部昌樹

 論理的思考能力の向上を目的に、文系学生でも取り組める簡易なゲーム開発ソフトを用いてゲーム開発実習を取り入れ、ロジックパターン、アルゴリズムの設計、検証、考察を行った。ゲーム作品制作という課題が学生の興味を引き出し、モチベーションを向上させる効果が期待できる。

E−11 Webブラウザを用いたC言語学習支援システム
いわき明星大学 中尾 剛、境 僚太、遠藤貴大

 インターネットを用いてブラウザのみでC言語が学習できるシステムを構築した。プログラム実行途中で数値などを入力できなかった既存システムの問題点を改善し、実技テストの際に本システムを用いた。アンケートの結果、既存のシステムより使いやすいなど、概ね良好な結果を得た。

E−12 実行情報の自由な視覚化が可能なExcelベースの開発環境の構築
東京工科大学
板宮朋基
慶應義塾大学
中野亜希人

 作成されたプログラムを視覚化させ、プログラム動作の理解を助けることを目的に、C/C++プログラムの開発環境とプログラムの実行情報をExcelのセルに読み書きできるライブラリを開発した。セル上の値を読み込むこともでき、実行情報を視覚化できるのでプログラム開発学習に活かすことができる。

E−13 HTML5を利用したプログラミング教育支援システムの試作
いわき明星大学 高山文雄、大表良一

 HTML5を利用したWeb上でのプログラミング教育システムの提案である。このシステムでCGやアニメーションが容易に実現でき、学生が興味を持つ教材作成が可能。実行はすべてWeb上で行われるので、複雑なインストールなど必要とせず利用でき、理解度の把握が容易という効果が期待できる。

E−14 ウェブアップリ教育用のウェブアップリ
早稲田大学 ザニケエフ マラット

 経験のない学生がプログラミングを学ぶことを目的に、ウェブアプリを学ぶためのオンラインクラスを提案する。特別なソフトを必要とせず直接ブラウザでプログラミングを経験することができること、ウェブアプリをウェブ上で開発することでより深い理解を期待できる利点がある。


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