巻頭言

大学教育におけるICTの活用

古田 善伯(中部学院大学・学長)

 わが国においてICT戦略としての施策が推進されてきている中で、大学教育におけるICTの活用は既にどの大学でも取り入れられるようになり、大学教育におけるICTの役割は重要な位置を占めていると言えよう。ICTの活用については、各大学の特性に適用するシステムが導入されていることから、ICTの活用内容は各大学間で相違している。本学でもICTの活用を重視して、これまでにいくつか取り組んできているので言及してみたい。

 本学はキリスト教主義の大学であり、四つの学部(人間福祉学部、リハビリテーション学部、子ども学部、経営学部)、短期大学部、通信教育部で構成されており、キャンパスが岐阜県関市と各務原市に分かれている。そこで、両キャンパス間の人の移動に伴う時間的ロスを最小限にとどめるため、学内LAN(光ケーブルによる高速ネットワーク)に接続したテレビ会議システムを導入して両キャンパスのコミュニケーションを図っている。最近のテレビ会議システムは画像、音声とも明瞭であり、違和感なく会議などを行うことができる。このシステムを使って一部の教員が授業を行っているが、教育方法についてはまだ改善と工夫が必要であると考えている。

 大学教育において、学生が入学してから卒業するまでの生活や学生の成長過程を把握できるシステムの存在が重要となってきている。本学では、2009年度から「大学教育・学生支援推進事業」の採択を受けて、本学に適用できる学生支援システムを導入した。このシステムは学生の学務上の情報(出欠状況、成績等)、就職活動の情報、学内の活動(課外活動等)、担当教員のコメント等を一元管理して学生支援を行っていくものである。全教員がこれらの情報を共有して、何らかの指導を必要とする学生が発見され場合は、組織的に素早く対応できるようになっている。現在は、このシステムに教員が書き込む容量が少ないので、これを増す作業を進めている。

 本学の実習(社会福祉実習、精神保健福祉実習、理学療法実習、介護実習、保育実習、教育実習等)は多岐に亘り、実習先も約400の機関や施設、病院と契約を結んで実施している。そのため、学生を実習先へ配属させるための作業に困難をきたす時期があったが、現在は実習システムを導入して、通学課程及び通信教育課程の両実習を一元管理して円滑に遂行できるようにしている。このシステムでは、学生、教職員、実習先の基本情報を関係者が共有し、学生の提出物管理、学生の実習準備状況、実習履歴、実習先の受入履歴、実習生や実習先からのクレーム、要望、事故等を記録して、実習担当者間で共有できるようにしている。また、この中の配属アシスト機能を活用して、実習生と実習先の住所を地図上に示すことにより、地理的に最適な実習先の配属を可能にしている。さらに、実習先の受入可能人数、学生の通勤方法・要望等の情報を可能な限りマッチングさせて配属作業を進めている。

 本学の通信教育部(人間福祉学部人間福祉学科)には、現在1,012名の学生が学んでいる。この通信教育を進めるために通信教育システム(通信事務システムと学生支援システムChu-Navi:チューナビ)を導入して、学修の一元管理、学生の提出物管理等の教育支援を行っている。この内、Chu-NaviはWebサイトであり、社会人女性が使いやすいよう手帳をイメージしたデザインになっている。機能は五つあり、1)学生への個別連絡機能、2)学習進捗状況の確認、3)履修計画作成、4)学生と教職員のコミュニティーサイト、5)資料・教材のストックといった機能を活用して学生支援を行っている。今後生涯学習を展開する上で、通信教育の充実・拡大を考えている。

 短期大学部では2009年度「大学教育・学生支援推進事業」の採択を受けてeポートフォリオを導入し、学生の学習状況を把握して学習効果を高める取り組みを遂行している。

 以上、本学のICT活用の一端を示したが、今後はさらに発展的にICT活用を進めていくつもりである。


【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】