事業活動報告No.2

平成25年度 教育改革ICT戦略大会 開催報告

 「大学教育の質的転換」なくして国・社会の発展は考えられないという危機意識の中で、国・社会と大学が一体となった人材教育の強化・改革への取り組みが要請され、個々の大学での教育改革への行動が問われている。このような状況を踏まえて今年度の大会は、教育の質的転換に踏み出すために理解しておくべき基本的な考え方を認識した上で、教学改革に着手している施策と課題について理解を深め、着実に改革行動に入れることを目指して講演、事例紹介、討議を実施した。
 平成25年9月3日から5日までの3日間、アルカディア市ヶ谷(東京、私学会館)で、「大学教育の質的転換への行動」を開催テーマとして実施。3日間の参加者総数は、321名(142大学、19短期大学、賛助会員16社)で、昨年度と同程度の参加者であった。初日の全体会では、向殿政男会長(明治大学)の開会挨拶の後、大学改革を支援する国の施策、産業界から見た大学教育の在り方に関する講演、教育改革のガバナンス強化、教員連携による学修の点検、学生の声を反映した教学改革、質保証のシステムの取り組み紹介、教育改善モデルの提案などを行い、大学教育の質的転換を図るための課題や具体的な手法について情報の共有化を図った。2日目は分科会形式でのテーマ別自由討議を実施し、初日のテーマをもとにした教育現場の個別の課題として「A:アクティブラーニングのためのPBL(課題探求型)学修」、「B:ピア・サポートを活用した新しい学修支援の仕組み」、「C:地域・社会と協働した実践型授業」、「D:教育・研究におけるセキュリティ対策」の4テーマを設定して参加者を交えた討議を行い、課題の共有とその解決策の模索を行った。また、分科会終了後に参加者のコミュニケーションの場として情報交流会も行った。3日目はA〜Eの五つの会場で、教育や支援環境へのICT活用について78件の公募による発表を同時進行で進めた。また、2日目の午後から3日目まで、大学・企業共同のICT導入・活用の紹介として、賛助会員の企業と導入大学によるポスターセッションを実施した。

第1日目(9月3日)

全体会

【大学改革を支援する国の施策】
学生の主体的学びの確立に向けた大学教育の質的転換 〜大学改革実行プランを踏まえて〜

文部科学省 高等教育局高等教育企画課
高等教育政策室室長 田中 聡明 氏

 社会の変革を担う人材育成、知的基盤の形成やイノベーション創出などが大学に求められている中で、大学改革を行動あるものとするため、教育の質的転換に向けた課題と国の支援策について、大学を取り巻く諸情勢、国としての人材育成充実に向けた動き、文部科学省としての教育改革支援の取り組みが紹介された。はじめに大学を取り巻く諸情勢として、進学率等の各種推移、学位取得数等の国際比較、教育機関種別卒業者の産業別就職者数、7年後の就業者予測数と高等教育修了者の割合および就業構造予測、高等教育への投資状況が紹介された。その中で就業構造の将来予測からすると医療介護・サービス分野への就業者数増加や社会人による学び直しの機会創出の必要性が見えてくるが、知識基盤社会の人材となる修士・博士の学位取得者は諸外国より少なく国の教育投資も横ばい。家計への教育費負担が大きいため、教育の受益者が社会全体となるよう広く社会全体で教育費を負担する方向に転換すべきことが説明された。
 次に国としての人材育成の方向性について、教育再生実行会議では、「これからの大学教育等の在り方について」(第三次提言)の中でこれからの大学教育の在り方として、「グローバル人材育成」「イノベーション創出の環境づくり」「学生を鍛え上げ社会に送り出す教育機能の強化」「社会人の学び直し機能の強化」「大学のガバナンス改革、経営基盤の強化」が紹介された。また、産業競争力会議では、グローバル人材強化のため社会人の学び直しとして、キャリア転換、ステップアップ、社会参画の三つの学習類型の確保が必要であること、自民党教育再生実行本部による「成長戦略に資するグローバル人材育成部会提言」(第一次提言)では、英語教育の改革、理数教育の刷新、国家戦略としてのICT教育の必要性が紹介され、最後に、文部科学省の取り組みについて、国としての大学政策の基本方針「大学ビジョン」を策定した「大学改革実行プラン」(平成24年6月5日)で、とりわけ大学機能の再構築と大学ガバナンスの充実・強化の必要性があげられ、実現に向け文部科学省として強力に支援していくことが報告された。また、中央教育審議会答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて(生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ)」(平成24年8月28日)では、大学で速やかに取り組むべき事項として組織的な質的転換への改革サイクル(体系的な教育課程、教員連携による組織的教育、アセスメント・テストや学修行動調査等による学修成果、教員の教育活動・課程に亘る評価、教育課程・方法等の更なる改善)の確立が急がれること。そして「大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会」では、今後の大学設置認可は見直しと併せて認可後の大学の質保証のトータルシステムの確立が課題となっている。以上のような提言や検討を国の政策として一貫して打ち出し政策の実現を担保するため、平成25年6月14日閣議で「第2期教育振興基本計画」を策定した。とりわけ、大学教育については、その成果目標として「答えのない問題」に最善解を導くことができる力を養う「課題探求能力の修得」があげられた。さらに関連して、中教審大学分科会では「求められる知識・技能の変化に対応した学修機会の充実」など8項目の審議を行っていく予定であることを紹介された。また、大学ポートレート(仮称)構想については、「大学ポートレート(仮称)センター」設置と国公私立大学共通のシステム構築により、大学情報の横断的検索が可能になるなど、多岐に亘る国としての対応が紹介された。

【産業界からみた教育改革】
日本再生に向けた教育イノベーション

株式会社ニチレイ相談役
中央教育審議会大学分科会委員 浦野 光人 氏

 日本再生に向けた教育イノベーションについて企業側からの視点として、主に次のような主張があった。
戦後、日本は広く教育を社会に浸透させるとともに欧米に追い付くことを追求し、第二次産業を中核に成長してきたが、この20年間GDPや賃金は低下、2008年のリーマン・ショック後はデフレが一層進行した。この間、企業は「売れると分かっているもの」の改善・改良とローコスト化を追求したが、世界が本当に欲しいものを提供できていない。つまり、これまでのプロセス・イノベーションから、プロダクト・イノベーションが今後重要になる。
 一方、若者は大学進学自体が目標となり、学ぶことへの自己認識が欠如している。プロダクト・イノベーションによる成長が必要な今、これを可能にするのは大学教育である。企業の社内教育が崩壊している現状を踏まえると、イノベーションを支える人材養成が必要で、大学はその牽引役としての使命がある。大切なのは、教養の力、アカデミックスキル、全体像の俯瞰である。最善解はあっても正解はないので、知識偏重に陥らないようにしつつ、知識を得る過程を身に付けさせる教育が必要。同時に、学長のリーダーシップも必要となる。体系的・組織的な教育が必要で、授業科目の役割、位置づけを明確にするなどのガバナンスが必要である。
 現状の大学教育の質保証は内部質保証の意味であり、外部評価は十分とは言えない。企業では最近はアナリストやマスコミ等の外部の視点を取り入れつつあるが、大学の情報公開の取り組みのテンポは遅いと言わざるを得ない。一方、企業側の採用基準が昔からのコミュニケーション能力の重視となっており、大学での学修成果を評価していないので、面接では大学で学んできたことを尊重すべきである。また、そのためにも大学も外部評価を受け入れ、教育の質保証に責任を持つべきである。
 震災以降、「つながる」ことに関心が集まるが、考えるという面では「つながらないこと」を求めたい。そうでなければ、自分で考える力は身につかないと思われる。
 以上、企業人の立場で大学教育を俯瞰するとともに、企業の在り方にも率直に言及され、会場から多くの賛同が得られた。

【教育改革のガバナンス強化】
学長主導のカリキュラム改革

中央学院大学学長 椎名 市郎 氏

 中央学院大学では授業科目数の調整を学長ガバナンスのもと3ヵ年計画を立て、系統別の科目整理・統廃合による学士力の質保証を目的に、科目数の系統別整理、グループティーチングによる科目数の統廃合、全体科目数の削減、他大学等との単位振替による調整、必要科目の新設を行い、一定の成果を得た。しかし、教授会の自治意識の強さやカリキュラム編成権、専任教員の意識改革への対応、非常勤講師への対応、事務職員の仕事量増大、保護者の意識やドロップアウト等の問題がある。そこで、理事長、財務・総務常務理事、学長からなる経営会議で、学内の財政安定化協議会を立ち上げ、「大学カリキュラム改編会議」を設置し、次世代を担う教職員によるワーキンググループを発足させて、授業科目数の調整に着手した。
 授業科目数調整が先にありきではなく、教育目標を明確にして何のために調整するのか、学内で共通認識を共有することと、学内でできる限りの情報公開が必要することが必要である。ガバナンス発揮に際しては、学部自治=大学自治というガバナンスの階層的組織分散の現状がある。一方、教育再生会議等が主張する「学長は最高意思決定機関の理事会で選任され、その学長が学部長を選任し、教授会を学長諮問機関と位置づける」とした場合、教員を研究・教育の世界に閉じ込め、行政から遠ざける際のモチベーション低下や組織力の減退、さらに大学行政管理職の育成が未成熟な日本で、権限集中型の運営が機能するかが危惧される。当面はルーチン業務は教授会の権限で行い、改革や新規事業の業務は学長手動という棲み分けも必要なのではないか。

【教員連携による学修の点検】
教養教育の質保証を目指した到達度測定の組織的取り組み

創価大学副学長
学士課程教育機構長 寺西 宏友 氏

 創価大学では学士課程の教育改善・充実のため、ワールドランゲージセンター、教育学習活動支援センター、共通科目運営センターを設けてきたが、2020年の創立50周年を目指したグランドデザインに基づき  2010年に三つのセンターを統合して学士課程教育機構とした。この目的は、「共通教養教育の充実」「学部専門教育との有機的連動」「教育改善サイクルの確立」にあり、最初の事業として共通教養教育を通じたラーニング・アウトカムズ(LOs)測定による質保証を目指した授業改善に取り組んでいる。
 2011年に共通科目ラーニング・アウトカムズ(LOs)を設定し、アセスメント・パイロット授業を実施。2012年はシラバスにLOsとの関係の記入とLOs細目(例示)と英訳を決定。2013年にシラバス「到達目標」設定レベルの明確化を行い、今後は成績評価の改善や全科目で到達度測定、成績評価の改善、カリキュラム改訂検討を計画している。
 「到達目標」適正化のポイントは、共通科目や専門科目のLOsとの関係を意識すること、シラバス「到達目標」の記述の改善(レベル設定の明記、学生が理解し目標としうる記述、学生の到達度を測定することを意識)である。
 教員間では「目標は、そのまま成績評価項目になる」、「適切な目標は学習者の自律的学習を促す」そして「現実的かつ、チャレンジングなレベルに設定する」が合言葉になっている。
 この事例では、科目のLOsと到達目標との関係性を重視し、授業改善に継続的・組織的に取り組みを重ねることの重要性が紹介された。

【学生の声を反映した教学改革】
学生の声を反映した学びのイノベーション

武庫川女子大学 法人室次長  瀧居  豊 氏

 教育から学生生活に至る学生の満足度向上を目指して大学全体で自己点検・評価を行うため、教育改革の組織として自己評価委員会や教育の改善・充実と質的向上を推進するための教育改革推進委員会を設置し、在学生満足度調査や卒業生アンケートを実施。
 在学生満足度調査は2002年から2012年まで3回実施。卒業生アンケート調査は2010年に実施した。調査後には毎回、詳細な分析結果報告書を教職員に配付・説明して共有し、改善・充実させるべき点を学部学科、教育支援部門、事務部門など担当ごとに検討した上で、今後の取り組み内容をホームページに掲載して外部へ公開している。改善充実方策等の実例として、例えば、共通教育科目の充実、シラバスの充実、PBL等の能動的学修法の推進など、多岐に亘っている。
 今後の課題は、内部質保証のためのPDCAサイクルの着実な履行、教職員の前向きな意識・意欲の保持・向上、調査結果の迅速なフィードバック、学生、卒業生、受験生、保護者、高校、就職先等を大切にする意識、調査のねらいの明確化、過去の調査結果との経年比較や改善・充実策の達成状況確認、様々な角度からの点検・評価である。

【質保証のシステム】
学修ポートフォリオを活用した教育の取り組み

帝塚山大学 学長 岩井  洋 氏
大阪府立大学 高等教育推進機構教授 星野 聡孝 氏

 はじめに帝塚山大学の岩井 洋氏からは、学修ポートフォリオシステム導入の意義と活用法、課題について実践事例を踏まえて紹介された。学修ポートフォリオは、学生自身が学修成果を継続的に収集・蓄積したもので、これをデジタル化したものをeポートフォリオと呼ぶ。学修ポートフォリオ導入の目的は、学生にとっては学びの目標設定と振り返り、教員にとっては授業効果の形成的な評価、そして大学にとっては教育プログラムにおける有効性の評価である。ポートフォリオはあくまでツールであって、質保証の万能薬ではない。
 帝塚山大学では、MoodleをベースとしたTIESが稼働しており、蓄積されたeポートフォリオの活用により、「学修の見える化」が普及している。
 学修ポートフォリオを学修到達目標と連動して導入することは教育改善に効果的であるが、導入の課題として、目的・必要性を明確化し、教職員、学生へのコンセンサスの徹底、普及促進の工夫、人的・財政的支援があげられる。
 次に、大阪府立大学の星野聡孝からは同大学における導入事例を中心に紹介された。
 これまで行ってきた学生による授業アンケートは、教育改善の手法として十分に役割を果たしていなかったため、教育改革の抜本的な見直しにより大学独自のeポートフォリオシステムを構築した。システムは教務、授業支援、出席管理の各システムを授業単位でつなぐ仕組みとし、学生にとっては、能動的、自律的学び(学習自己管理能力の育成)、教員にとっては教育についての気づきと自己改善、さらに、学生と教員、教員間の相互理解とコミュニケーション促進を実現することを目的とした。eポートフォリオは、エビデンスとしての成果(達成度)の公開よりも、プロセスの可視化による「ふり返り」と「気付き」の誘発に重点を置いて活用されており、学生個人あるいは抽出した任意集団の学びの現状を把握することで、教育における質保証の仕組みの一つとして機能している。

【教育改善モデルの提案】
未知の時代を切り拓く人材育成を考える

公益社団法人私立大学情報教育協会 事務局 井端 正臣 氏
本協会 経済学教育FD/ICT活用研究委員長
法政大学経営学部教授 林  直嗣 氏

 まず、教育改善モデル提案の趣旨と概要について、本協会の井端正臣事務局長より説明された。生涯にわたって未知の時代を切り拓いていく「気概」「考え抜く力」「思いやる力」という人材の育成を目指して、学生一人ひとりが自分の考えをもって地域・社会、地球的な市民社会の形成に自主的に関われるようにするため、5年先の教育改善モデルの在り方を31の学問分野を例に提示し、大学として組織的に取り組むべき改革課題について提言している。改善モデルで特に配慮した点は、高校の学力低下問題を背景に、問題発見・解決型学修への転換、学生主体の授業への転換、協働学修の導入、上級学年生による相談・助言システムの導入、科目の体系化・統合化、教員連携によるチーム・ティーチング、学修ポートフォリオによる不足能力の洗い出しと組織的な学修支援の仕組み、FDによる教育力向上の工夫と大学ガバナンスによる教学マネジメントの課題を整理することである。ICTを活用した教育改善モデルは多岐に亘るが、主なタイプとして基礎知識を定着・発展させるモデル、協働学修を通じた創造的知性を引き出すモデル、学修成果の外部評価モデルを掲げた。改善モデルに求められる教育力、FDについて、教員に期待される分野共通の専門性、分野共通に期待される教育力、教育力を高めるFD活動の視点から整理した。
 次に、教育改善モデルの例として経済学分野について、本協会経済学教育FD/ICT活用研究委員会の林直嗣委員長より紹介された。本分野では二つのモデルをとりまとめ、モデル1では、経済情勢を分析する能力を育成するため、学修支援システムでのグループ学修や成果の公表、社会からの評価による振り返りという発展的な学びを提案。モデル2では、4年間学んできた経済学や社会科学系の知識を活用して対面やネット上で問題解決方法を学ぶ統合学修として、専門家や有識者を交えたフォーラムやインターンシップなどの実践的学びを提案した。

第2日目(9月4日)

テーマ別自由討議

分科会A:アクティブラーニングのためのPBL(課題探求型)学修

<課題提起>

同志社大学 大久保 雅史 氏(理工学部教授)

大手前大学 芦原 直哉 氏(現代社会学部教授)

 本分科会では、アクティブラーニングのためのPBL(課題探求型)学修について二つの大学の事例を踏まえて考察した。
 はじめに、同志社大学における全学的な二つのPBLプログラムについて紹介された。一つは、2006年から正課として通年開講の全学共通教養教育科目としてのプロジェクト科目で、伝統文化の継承、地域経済の活性化などが中心で、工場巡りなど学生自ら行動する実践型、体験型の授業である。学生への支援は、事務局による人的支援に加えて学習環境提供のためのCNS(Web支援サイト)やラーニングコモンズなどのプロジェクト支援体制を充実させている。二つ目は、2003年にスタートした産官学連携の課外教育プログラムとしての同志社ローム記念館プロジェクトで、企業・団体、学生・教員・職員からテーマを募集している。スタジオZero が運営母体となり、学生組織が各プロジェクトの円滑な活動推進や発展を目指す推進役となっており、約10のプロジェクトに通年で200名ほどの学生が参加している。プロジェクト間の交流、学内行事と協賛したブース出展などでも成果を発表し、最終成果報告会で評価が下される。特によい成果を挙げたプロジェクトには大賞、優秀賞など表彰しているが、この2年間、大賞プロジェクトは該当がないため、PBL参加者の学習意欲向上に取り組むことが今後の課題となっている。
 次に、大手前大学における事例が紹介された。同大学ではアメリカのリベラルアーツカレッジの学修体系を取り入れ、知識偏重型の学びから、問題解決型学習(PBL)、自立型学習(SDL)を実践できるPBL+SDL型学修への変革に取り組むことになった。そこで、学生が卒業後に社会人として活躍できることを目指した能力の開発指標として10のコンピテンシーを定め、それをC-PLATSと定義し、全教員の共通な指導目標とした。また、「講義をやめよう」を合い言葉に課題解決型授業への変革に取り組み、必修コア科目にPBL+SDLを適用、学部横断のC-PLATS-Faculty を設置し、FD面からも改革にも取り組んだ。その他、PBLシラバスを体系化し、能力開発目標と評価を明確にするため能力別ルーブリック体系の整備、授業科目別ルーブリックの普及なども進めている。
 現在は、PBL学修の成果をeポートフォリオ化し、到達度の確認や外部評価などができるシステムの構築を進めており、2013年秋からは、教育ボランティア(職員、外部からのボランティア)の授業見学、見学後のフィードバック情報の共有で更なる授業の改善を目指している。学生の能力伸張度を総合的に評価することは今後の授業の改善にも繋がると考えているが、完全PBL型授業では、実際の授業内で学生同士の議論も活発になり、個人の学修力、能力伸張にも大きな進展があった。

分科会B:ピア・サポートを活用した新しい学修支援の仕組み

<課題提起>

法政大学  木原 章 氏(学習ステーション長)

立命館大学 沖 裕貴 氏(教育開発推進機構教授)

 大学の新しい学修支援システムとして、授業や授業以外の場で学生同士が教え合い・学び合う、ピア・サポートが重視されてきている。ピア・サポートは、教えられる側の学生だけではなく、教える側の学生の学びをも進化させることができると考えられていることから本分科会では、二つの大学の事例を通して、ピア・サポートの制度設計や課題、成果について考察した。
 法政大学のピア・サポートは、学生が第一に望む「友達づくり」を支援をする目的で、2007年に授業・サークルに次ぐ第3のコミュニティとして、ピア・サポート・コミュニティ(主に学生生活支援)からスタートした。その後、様々な部署で行われていた学生スタッフ制度をまとめ、2012年に「ピアネット」を組織化し、学部を越えた幅広い学びのきっかけ作り(学びの出会い)の場とすべく、学習ステーション(学修支援)を立ち上げた。
 学習ステーションでは、何を勉強してよいかわからない、学部カリキュラムにフィットしない、そもそも勉強の仕方がわからない、といった学生にピア・サポートを行っており、一番成果を上げているのは、新入生に対する履修相談前の時間割り作成サポートである。ピア・サポートの効果は、誰が成長したのか、友達の友達への波及効果、学生スタッフをどれだけ育てることができるかで検証されるものであり、人によって伸びる部分が違う。それを今後、eポートフォリオを使って管理したいと考えている。
 立命館大学の事例では最初にFDの定義の変遷について解説され、その中で、FDは教員と職員が協働で行うだけでなく、学生が参画することが重要であると示された。そのための学生参画の制度として、大学運営を対象とした学生FDスタッフと、学生を対象としたピア・サポータがあり、ピア・サポータは業務として行い、学生と対等的・同等的であると位置付け、専門的・指導的立場にあるTAと区別している。ピア・サポータのうち、授業内に業務を行うES(Educational Supporter)は、教育の一環として、ES自身の学びと成長に寄与することが前提とされ、学習支援、授業改善、ES自身の成長という三つの機能がある。ESの教育効果は、授業アンケートで受講生によるESへの感謝の言葉が教員以上にあることから確認できる。課題はいかに学生を信頼し任せるかであり、教育改革の新たな展開は、学生・教員・職員が三位一体となり、教職協働、学生参画で進められるべきものである。
 課題提起後の質疑応答では、一時的に教える側と教えられる側になってしまう学生同士の関係の現場での難しさ、予算面ではGP等の外部資金を利用すべきこと、職員の参加は不可欠であること、大学側の理解や職員の帰属意識が重要であることなどが確認された。

分科会C:地域・社会と協働した実践型授業

<課題提起>

広島修道大学 相馬 伸一 氏(副学長、人文学部教授)

摂南大学 浅野 英一 氏(外国語学部教授)

 広島修道大学からは、地域とつながるプロジェクトを通じて学部横断的な学びを実現し、地域の再生に関わることで、知識や就業力を高める協働型授業の事例が紹介された。地方の中規模な文科系大学として、地域の要請と「地球的視野を持つ人材の育成」、「個性的、自律的な人間の育成」という教育目標を展開するため、全学組織の学術交流センターが中心となって実施している。学生が主体的に地域社会の課題を見つけ、解決できるように活動の企画・実施や調査・研究を行うPBL型の取り組み、文部科学省との共催による熟議、キャリア形成のための授業について、大学生の就業力育成支援事業(2010年)「『修道力』を育てるための教育体系構築」の採択を機に開始している。
 摂南大学からは、問題発見型、プロジェクト体験型のPBLとして、地域の再生に関わるプロジェクトを学部横断的に実施することで、学生の知識や就業力を高める取り組みが紹介された。対課題基礎力(課題発見力、計画立案力、実践力)、対自己基礎力(感情制御力、自身創出力、行動持続力)、対人基礎力(親和力、協働力、統率力)などの指標に基づいて能力を測定し、すさみ町という特定地域と関わりながらPDCA体験していくことで、モチベーションと心のゆらぎ、自己アイデンティティの成長形成を自覚するという学生の変容が見られた。また、ゼミ単位での実施では、OBやOGの参加協力による継続が特徴である。
 以上の事例に対して、既にPBL型の活動に取り組んでいる参加者からは、学生の活動により地域に与える影響、プロジェクト担当教員の負担やサポート、教員評価とのかかわり、カリキュラムの位置づけ、学部等による参加のしやすさ、指導者数や参加人数、予算規模や苦労話などプロジェクトの詳細に関わる踏み込んだ質疑が寄せられ、参加者相互の知見が交流された。
 なお、プロジェクトを推進する教員に偏りがあること、教員養成、プロジェクトに参加しない学生への働きかけが課題であることが確認された。

分科会D:教育・研究におけるセキュリティ対策

<課題提起>

独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)金野 千里 氏(技術本部セキュリティセンター情報セキュリティ技術ラボラトリー長)

本協会 情報セキュリティ研究講習会

運営委員会委員長 浜  正樹 氏(文京学院短期大学准教授)

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)から、標的型サーバー攻撃の脅威と対策~情報共有の取り組みについて報告された。最近のサイバー攻撃の特徴としては、1)いたずらなど顕示欲の誇示から、金銭目的、独自の主義主張、諜報活動・情報破壊活動など、計画性の高い悪質なものに変化しつつあること、2)単独犯から、グループ犯、中には国家ぐるみの犯罪プロ集団など集団化していること、3)単なる不正侵入から、ウェブ、メールUSBなどを経由した標的型に変化していること、4)標的型攻撃の特徴として、巧妙さ、執拗生、組織的ダメージを被る可能性があることがあげられた。
 さらに、各々について事例に基づく詳細な解説があり、現行の技術ではこれらの対策には限界があることが指摘され、このような攻撃を防ぐためには定期的なWeb診断の実施に加え、四つの方策として、1)端末ブラウザの内部プロキシ設置、2)内部プロキシの上位に外部プロキシを設置、3)クライアントゾーンからの外部通信遮断、4)ネットワークを分離させることによるウィルス拡散の防止を認識しておくべきことが示された。
 次に、情報セキュリティ研究講習会運営委員会から標的型サイバー攻撃モデルに関する詳細な解説と、各大学の「サイバー攻撃に関する取組」に関するアンケート調査の報告があった。
 アンケート結果では、「取り組みの必要性は大いに感じている」との回答は多いものの、「具体的な取り組みを実施している」大学の割合は少ない。また、対策として「大学間での情報共有と共同連携が不可欠」であることを認識しながらも「そこまでの段階には至っていない。」という状況であることがわかった。
 本分科会には、情報センター業務に関連している方の参加割合が高く、質疑応答を中心に活発な議論が行われた。議論の中で、1)企業向けのセキュリティ対策の教材開発はあるが、大学等教育機関のFDを対象にした教材などはまだなく、開発が急がれる、2)ネットワークの利便性と危険性についての折り合いをつけることが必要、3)この種の問題の存在と危険度の高さを広く知らしめる必要がある、4)スマホや携帯端末なども標的になるため、具体的な対策やガイドラインの開発が必要、5) IPAや企業と情報の共有化を推進する大学間のセキュリティ対策の窓口が必要、6)大学には研究教育用のプライベートなデータの扱いの協調という問題があり、大学ごとにセキュリティ・ポリシーを明確化することが最重要、7)大学単独でのセキュリティ対策の徹底は非常に難しいため、セキュリティ対策の大学間の協力体制が必要などが強調された。

第3日目(9月5日)

大会発表

A-1 発表中止
A-2 学系共通の動機付けによる学習意欲の向上法の提案
北海道工業大学  大堀 隆文、秋山 敏晴、内田 尚志、木下 正博、竹澤 聡、中村香恵子

 学生の学習意欲向上のために各学系共通の動機付け法を抽出すると、学生目線からの良質な課題の発掘、課題提出後のフィードバック、学生と友好関係構築などが有効な方法であることが分かった。教員はそれらの三つの方法を組み合わせることで、知識だけではなく、人間力をも身につけさせる教育の成果が期待できる。

A-3 ゲーミフィケーションを用いた学内交流活性化による学生のモチベーションアップ
敬愛大学  森島 隆晴、和田 良子

 学内で学生の交流やコミュニティの形成を活性化するためにゲーミフィケーションを利用した。
 大学の理念「敬天愛人」実践に対して、学生間では「ありがとうカード」、教職員と学生間では「ないすカード」を発行する。取組の内容はマイスター制度として、総合ポイントで評価公開して学生の競争を促している。

A-4 学習者主体の学びの場を目指して〜主体的学びツールと国試対策サイトとのマッチング〜
九州女子大学  木村美奈子、二摩 修司

 管理栄養士国家資格合格を目指した学習支援サイトの開発では、従来のe-Learningシステムに加えて、「色付きメーカーでマーク」「メモを付記」「学習足跡をユーザ毎に保存」などの機能を加えた。その結果、教員の「教えたい情報」に対する学習者の「学ぶ情報」「考える情報」の学びログのデータベース化とその利用が今後の課題である。

A-5 アクティブラーニングとICT、SNSを用いた 学びの場づくり
十文字学園女子大学  松永 修一

 初年次の授業(80名ほどの受講生)では、iPad利用グループワーク中心のアクティブラーニング実践授業を展開している。学生は、学ぶ意識や授業への参画の楽しさも実感でき、各自の振り返りを授業後48時間以内にSNSにアップし情報を共有しコメントし合うなど、ICT援用も「学びの場」作りには効果的であった。

A-6 大規模授業における電子教科書の活用
武蔵大学  松島 桂樹

 大規模授業で、教科書購入費用の負担軽減と学習意欲向上を目的に電子教科書利用を試みた。編集ソフトSigilを利用しe-pubフォーマットに変換し作成し、配布には、iOS, Androidの両環境で閲覧可能なAmazon(kindle)を利用した。無料ダウンロードを利用した購入とLMS上に提示した毎授業でのクイズ提出をリンクさせ教科書の定着を確認できた。

A-7 フィードバックシートによる授業改善
福井工業大学  野村 康則

 70名のスポーツ系学生の授業参加意識向上のため、授業資料提示用のパワーポイントから重要な部分をブランクにした資料(サブノート)を配布し授業中の説明からブランクを埋める、授業の最後に教員からの質問事項も加えたフィードバックシートを書かせ提出する、という二つの工夫により授業参加の意識向上が確認された。

A-8 共働学習Colearningの促進−目的、ツール、運用
実践女子大学  犬塚 潤一郎

 企業社会で普及しているプロジェクト型組織の業務支援システムを、大学教育の恊働学習支援のためのツール、システムとして活用可能なのかを検討した。学生は、日常的にSNS などに親しんでいるはずだが、教室制度への依存性が高く、co-learningへの適応性は不十分であった。ここから、ネットワーク社会における主体性の涵養という教育課題が垣間見える。

A-9 Moodleやクラウドメディアを利用したグループ学習の向上
北海道工業大学  獅子原 学、藤田 勝康

 Moodleとクラウドメディアを活用する仕組みをマーケティングや組織行動のケースメソッドによる演習授業に適用した。Moodleによって教員と学生間の情報共有が可能となり、グループ内の情報共有やコミュニケーションをサポートするクラウドメディアが有効であった。

A-10 ICT利用による授業時間外教育サポート
立教大学  三田 知実

 ICT教育サポートシステムを演習授業に用いることで、調査実習科目のディスカッション促進を試みた。これまで、各授業回の最後にレポート用紙で提出していたが、ICTシステムによって時間的効率化と、調査、分析、報告書執筆のプロセスの把握に効果があった。

A-11 予習・復習に重点をおいた初級プログラミングの授業実践
東北学院大学  松本 章代、菅原 研、武田 敦志、松尾 行雄、星野 真樹、坂本 泰伸、乙藤 岳志、土橋 宏康、松澤 茂

 初等レベルのコンピュータプログラミングの講義・演習において、学習者が能動的に学習に臨む仕組み、および学習した内容が定着するような支援法を実践した。講義時間以外にも予習復習の機会を半ば強制的に設けることで、従来に比べ知識の定着が促進されることが期待できる。

A-12 発表中止
A-13 SNSを活用した参加型講義とフィールドワーク
横浜商科大学  小濱 哲

 地域振興のありかたを考えるフィールドワークにおいて、テーマに対する理解を深めるために、SNSおよびクラウドサービスを用いた情報交換を行った。自分の空き時間に友人らと自由に議論を進めることができ、リアルタイムに刻々と変わる状況に対し、考えや感想をまとめ、対象物を理解していくノウハウを習得できた。

A-14 レスポンスの速さを要求しない防災教育
横浜商科大学  小濱 哲

 地域防災において、生活地域にある危険に気づきや実情に応じた自主的な準備を促すために、多種多彩な受講者を想定して、ケータイ、スマホ、タブレット、ノートPCなど、多様な各種情報端末を活用する取り組みを行った。

A-15 複数大学に亘る電子会議室の利用による学び合い
桐蔭横浜大学  平岡 淳、笠原 毅彦

 同一の教育を行っている複数大学の学生にWebサイト上で講義資料を提供し、全員で電子会議室で議論を展開する。知識をもとにした電子会議室議論による問題点把握、講義での質疑応答と解説、さらなる議論の展開という反復教育による知識の定着と深化、学び合いによる自主性・主体性の進展が期待できる。

A-16 韓国語教育におけるインターネットビデオ会議システムを用いた相互交流講義の実践
別府大学  西村 靖史、孫 在奉、後藤 善友
大邱科学大学  朴 志恩、林 相倍

 学生の語学への関心を喚起するため、インターネットビデオ会議システムによるグループ対面式の相互交流講義を実施した。映像による対面授業は、学習した語学の実践的な活用の機会を学生に提供する。学生相互による発音などへの支援は、互いの学習を確認し、講義がより能動的な学びの場へ変化した。

B-1 英語学習者の自律性を高めるBlended Learningの試行
福岡大学  新田 よしみ、大津 敦史、林 幸代

 英語が得意ではない学生が再履修者の大半を占めるが、予習としてe-Learning課題を行うことによって、自主的に時間と場所を見つけて英語学習に取り組む姿勢を培うことができた。また、担当者より適宜与えられる補助タスクに参加することで、英語学習に対する積極性が養われる工夫がなされた。

B-2 ICTを活用した英語教育フレームワークの構築
流通科学大学  住 政二郎、トーマス シャロー、中川 典子、濱田 真由美、藤岡 千伊奈、山本 勝巳

 2013年4月より、入学時のプレイスメント・テストから2年後の到達度テストまで一貫した英語教育フレームを構築し、英語基礎力の養成を計ることにした。定点的に学生の英語基礎力の進捗を確認できる体制を整備したことから、英語基礎力の向上、教員間の情報交換、PDCAサイクルの展開ができた。

B-3 コンピュータを用いたTOEIC模擬試験の実施
弘前大学  内海 淳

 本学の「TOEIC模擬試験」と大学入試センター試験との間に高い相関関係があることが示されたので、平成22年度より、この「TOEIC模擬試験」の受験を新入生全員に義務化した。入学時点の受験率は99.9%であったが、1年終了時の受験率は70%と下がりだした。学生の正確な能力把握が次の課題である。

B-4 日本語教授法におけるICT教育
城西国際大学  尾本 康裕

 日本語教授法を受講した者が、大学の教材共有サイトを活用し、さらに作成した教材をシェアしていくことで、実際の教案作成に集中できると考える。テクノロジーやソフト依存ではなく、コンテンツを中心に考えることを学習者にどう教えるか考えた。同時に、共有サイトの持つ問題点をも考えた。

B-5 二言語同時学習:接尾辞による語彙強化ドリル(英−仏・伊・葡・西)開発
京都外国語大学  彌永 史郎、石川 保茂、ペドロ アイレス、村松 英理子

「接尾辞による語彙強化」は、英語を軸としてその他4言語(仏、伊、西、葡)が対応する自習教材である。CALL教室関係授業と自習用教材として2013年4月より公開した。2言語の互いの音韻的干渉を避けるため、模範発音を全語に付し、学習者の達成度を確認する自動採点機能も搭載した。

B-6 Web-Englishのフォーラムを利用した英語プレゼンテーションの指導
九州女子大学  中野 秀子

 大学院では英語による論文発表や学会発表のニーズは高い。実践英語では発信型の英語教育を行い、受講者はPPTで自分の研究の発表を行っている。各自がフォーラムに英文を提示してWeb上で解説を加えながら添削した。英語表現と添削を見ることでお互いのチェックも加わり、効果的な添削ができた。

B-7 教え手としての学びを通じた理解の達成−プレゼン実習による能動的学習の実現
北海学園大学  佐藤 大輔

 プレゼンテーションスキルを習得させる形をとりながら、教え手としての学びを経験させる。学習者は、このような取り組みを通じて理解の構造を学ぶことになり、さらにより深い理解のために、必要な科学的な思考法を知ることにもなる。本プログラムは学生から高い評価を得ている。

B-8 大型タブレット端末を利用したプレゼーテーション授業
東海大学  岡田 工、崔 一英、会田(日向寺)祥子

 大型タブレットでは、指を使った直感的な操作によってプレゼンテーションが可能であり、視聴者によりわかりやすいプレゼンテーションが可能となる。スマートフォンの活用では、多くの学生がリテラシーも必要なく発表を行っていた。画面を見ながら拡大や縮小、移動など、直感的な提示が実現できた。

B-9 ICTを活用した外国語学部入学前教育実践報告
大阪学院大学  村田 和久、中田 辰也、中嶌 康二

 外国語学部の入学前教育において、今年度入学生より課題をオンラインで閲覧・解答できるようにし、また約150語の英文を暗唱するよう求め、入学後に初年次ゼミで暗唱大会を行うと、英語の運用に自信を持ち、また刺激を受ける学生が多く出てきた。

B-10 一貫したテーマ設定による学習のつながりを意識した初年次情報教育の展開
兵庫大学  森下 博

 一貫したテーマ設定によるストーリーが見える展開の中で、学習のつながりを意識し、意欲の向上と学習の継続を目指した。また、実データをもとに、問題解決や考察のための処理手段の効果的な使い方や連携を習得し、状況に応じた取捨選択ができるよう工夫した。

B-11 初年次教育におけるプログラミング学習の活用
東海大学  坂田 圭司、高橋 隆男

 初年次の情報教育において、プログラミング学習を取り入れることで次の学習効果が期待される。一つは学生の所属学科・専門を問わない論理的思考力と問題解決力の向上である。もう一つは文法学習の前段階での、基礎知識やアルゴリズム等の基礎力の習得である。

B-12 短期大学の情報系学科におけるインターンシップの活用
湘北短期大学  小田井 圭

 短期大学の情報系学科において学生の就職意欲向上と専門科目学習の動機づけを目的としてインターンシップを利用することを試みた。技術系のインターンシップは春休み中の受入れ企業が少ない。1年次夏休みでは技術的に未熟すぎるという問題がある。

B-13 女子中高生の理系進路選択支援プログラムにおけるiPadの活用
東京女子医科大学  岡田みどり、中村 裕子、佐藤 梓、福井 由理子、木下 順二、浦瀬 香子、松本みどり、八木 淳二、松岡 雅人、加藤 秀人、蒋池 勇太、越野 一朗、高桑 雄一、辻野 賢治

 女子中高生対象の体験学習において、iPadを用いる実験結果発表会を企画した。iPad未経験者でもプレゼン資料が作成可能で、Apple TVとiPadのAirPlayミラーリング機能を用い、生徒の満足度の高い発表会を行うことができた。

B-14 情報リテラシー活動を中心としたキャリア教育及びキャリア支援の取り組み
芝浦工業大学  小里 千寿

 情報リテラシー活動を中心とした1年次科目「キャリアと就職」は、学生自らがキャリアに関心を持つ「きっかけ」や「気付き」に繋がる機会となっている。一方、キャリア教育 とキャリア支援(含む、学生相談等) をどのように連動させていくかが今後の課題となった。

B-15 LMSを利用した学科内卒論水準向上の取り組み
大阪国際大学  石川 高行、森友 令子、矢島 彰

 学科内の卒業論文の水準を底上げするためにMoodleをどのように役立てることができるか実践した。教員から学生への連絡忘れや連絡内容のばらつきを防ぎ、また学生の過去の発表内容がすべていつでも参照できることで、着実に卒論を進めさせることができた。

B-16 管理栄養士養成課程における国家試験対策サイトの構築について
九州女子大学  二摩 修司、木村 美奈子

 管理栄養士国家試験対策に関して模擬試験の結果を利用し、教員は学生の学力状況を、学生は自分の弱点をWeb上から認識できるシステムを構築し、国試の過去問題を利用したLMSによる自学自習システムと組み合わせて学習効果を上げることを試みた。

C-1 Moodleを利用した簿記教育について
中村学園大学  岸川 公紀

 Moodleを利用して小テスト231問を含む基礎簿記eラーニングシステムを構築したところ、約8割の学生がこのシステムを利用したこと、また、個人差はあるものの、復習時間が構築前に比べ明らかに増加したことがわかった。

C-2 被服教育における電子教材の開発−原型製図を中心に−
武庫川女子大学  末弘 由佳理、岡田 由紀子

 大学で作成した電子教材作成ツールMomaにより、動画を含む被服用製図教材を作成し、この教材の使用効果をアンケート調査により検証した結果、授業だけでは理解させることが難しかった内容が、電子教材を使うことで理解が容易になったことがわかった。

C-3 スマホ版電子単語帳を用いた有機化学学習の試み
帝京平成大学  齋藤 充生、石井 竹夫、古川 淳、林 譲

 スマホ用電子単語帳の収載内容を、化合物または化学反応名で検索可能な有機化合物の名称と反応に置き換えた有機化学学習ソフトを作成した。薬学部の有機化学の自習用教材として活用し、ソフトの改良点、薬学部意外の学部へ利用の可能性が確認できた。

C-4 セルオートマトンを利用した1次元波動現象のシミュレーション方法について
金沢工業大学  高 香滋

 物理教材である1次元波動伝達現象の理解を向上させるため、数値計算としてセルオートマトン手法を利用して計算し、動的な変化を視覚化する方法を検討した。2次元、3次元の場合へ拡張する手法については今後の課題である。

C-5 発想技法支援システムの改善とLAN環境下における構築
近畿大学  矢野 芳人

 発想技法を音声入力により支援するシステムを作成し、このシステムの実証実験を行った結果、紙ベースと比較して、入力されたアイデア数が多かった等の優位点があったが、グルーピング機能およびLAN環境に改善余地があった。

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C-6 発表中止
C-7 能力別クラスわけによる「情報リテラシ」教育の学習効果について
広島女学院大学  中田 美喜子

 高校で「情報」が必修であるが、入学してきた学生の「情報」の知識が、個々の学生により大きく異なるため、学生を能力別クラスに分けて教育したところ、学習効果が上がった。

C-8 基礎教養教育科目「情報リテラシー」の再構築に向けて〜「情報とは」〜
江戸川大学  波多野 和彦、中村 佐里

 高校で「情報」が必修になったが、文書処理、プレゼンテーション、表計算等の技能的な内容を中心に扱っており、情報の基礎・基本的な内容は十分に扱われていない。これらの状況を踏まえ、10年後を見越した大学における情報教育のあり方を検討した。

C-9 検定試験合格者の授業パフォーマンスから見る情報科目の検証
広島修道大学  記谷 康之、脇谷 直子、竹井 光子

 1年次履修の「情報処理入門」、その上位科目「情報処理基礎」でのアンケート・テスト結果に対して、学期前後、履修者群・検定試験合格者群を要因とする分散分析を適用。それより得られた知見を、学習内容の検討、検定試験推奨による技能向上の動機付け効果評価の資料とする。

C-10 iPadを用いたコンピュータリテラシー教育− iWorkとMS Officeの比較検討−
北海道工業大学  藤田 勝康、獅子原 学

 iPadとクラウドメディア利用によるコンピュータリテラシ教育を実施し、学生の習得状況を確認したところ、年々、学生のiPad操作法習得は早まりつつあり、iWorkやクラウドメディアの利用も難なくこなしている。iPad等を活かした教育内容と、そのための組織的な取り組みが今後の課題である。

C-11 PowerPointを用いた図解表現技法を習得する授業の実践
甲南女子大学  佐伯 勇

 論理思考とソフトウェアスキルの双方を向上させ、考えを効率的に伝達する能力を養う授業を実施している。授業前半では、与えられた文章の構造にマッチした図解を12の典型的なパターンから選び、手書きで描く作業を行う。後半では、PowerPointを駆使して文章構造を作図しながらスキルを養う。

C-12 グローバルビジネスゲームのあり方
大阪国際大学  韓 尚秀、田窪 美葉、市川 直樹

 実践的な経営学教育を目指して、これまでの経験に基づいて新学部に相応しいグローバルビジネスゲームの対策やあり方を検討し、軽量化、可搬化、高画質化、教材作成の改善を行った。将来はネットを介しての海外校間ゲームを目指す。

C-13 スマートフォンアプリ作成によるプロジェクトマネジメント学習
九州情報大学  岸川 洋、合田 和正、平田 毅

 スマートフォンアプリ作成を題材に、Webベースツールを活用したプロジェクトマネジメント学習を実施した。アカウント取得、言語環境、アプリ作成等、学習状況をチェックしながら改善策を講じたが、アプリの動作速度向上、進捗状況の視覚化、共同作業向きアプリ機能充実等が今後の課題である。

C-14 ウォーキングにおけるスマートフォンの活用とグループワークの実践
東海大学  崔 一英、岡田 工

 学生のプロジェクト活動に有用なスキル育成のため「プロジェクト入門」を開講し、スマートフォンを用いたウォーキングコースの調査、PowerPointによる発表、各グループによる評価結果の集計・グラフ化など報告書作成を行い、データ収集とPCによる編集能力の向上を目指している。

C-15 スタディスキル科目におけるICTを活用した教授法の研究開発
関西学院大学  内田啓太郎

 プレゼンテーションとライティング技法から成る「スタディスキルセミナー」をLMS、iPadを利用して実施している。LMSは資料掲載、同報連絡、コミュニケーションの場として、iPadはLMSやWeb閲覧のため活用している。ラーニングコミュニティの形成が最終目標だが、教育方法の学際的な開発が課題である。

C-16 実践・研究融合教育システムの構築
北陸先端科学技術大学院大学  中川 武夫、飯田 弘之、川西 俊吾、中川 あい

 実践・研究融合教育システムDisputationは、命題設定、命題検証、プレゼンテーション、評価と改善から成るPDCAサイクルシステムであり、教員・学生双方の総合的知力を継続的に精緻化する。本システムの普及が「曖昧な社会」を「明快な社会」へと変革するであろうと考えている。

D-1 10年間の運用実績に基づいたCCSの更新と学修支援サービス機能の強化
名古屋学院大学  橋之口幸一郎、児島 完二、高橋 公生

 2002年にキャンパス・コミュニケーション・システムを開発し、年間100万件のアクセスを得るに至った。就職支援に向けた卒業生の取り込みや、保証人・高校生など利用者の拡大、スマートフォンからの利用促進、eラーニングの利用など機能の充実などを更改版であるCSS2.0の開発で目指す。

D-2 なぜ、LMSを普及させることができたのか?
北海学園大学  福永 厚、中本 一康

 これまで繰返しLMSの導入を試みたが成果が得られなかったため、組織的なICT化、教育方法の改善、自学自習環境の提供を目的とする新たな全学統一LMSの導入を図り、教職員者向けの徹底した省力化、全教職員対象の個別ヒアリングによるニーズの反映によって成功を収めた。

D-3 Moodleを用いた理工系授業実践報告
東京理科大学  佐藤 喜一郎

 物理系の講義と実験におけるLMSをスキャナによる予習課題や小テスト、ノート提出などさせる仕組みと、従来の機能を併用することで実現し、成績不振クラスの合格確率が受講者数比率で4割弱から6割強に改善した。

D-4 平常時に利用する学習管理システム(LMS)を活用した学生の安否確認と危機管理対策
獨協医科大学  坂田 信裕、山下 真幸、上西 秀和

 携帯電話、スマートフォン、PCの各メールアドレスへのアンケート一斉送信および回答回収の機能をLMSに追加し、学生の安否を確認する仕組みを2011年度から実現している。LMSにより利用方法の習熟が図られ、2012年度の竜巻発生後の安否確認でも有効であった。

D-5 LMSの改良と授業評価結果の時系列変化
熊本学園大学  新村 太郎

 過去10年に亘るLMSの活用、改良が及ぼす効果と影響を5年分のサンプルから考察した。パスワード忘れやテスト実施時の不正の存在、年度初めの受講者登録の混乱等を改善したことなどで、2012年度にはLMS等を活用した授業を望む割合が95%を超えた。

D-6 学生の自学自習と教員からのアドバイジングの支援に向けたeポートフォリオの実践
千歳科学技術大学  山川 広人、岩城 和朗、立野 仁、小松川 浩

 SPI対策の評価、気づき、学びのサイクルの中で、学習を促すための教員によるアドバイジング支援としてICTを導入し、自動化・省力化を図ったところ、効果的なアドバイジングを行う可能性が確認できた。

D-7 初年次キャリア教育科目と連動させたeポートフォリオの3年目の運用
甲子園大学  梶木 克則、西川真理子、増田 将伸、前馬 優策

 ワークブックへ書き込みをeポートフォリオに蓄積することで、学生の振り返りと就職時の自己PRに向けた経験談の蓄積を課している。この活動では、学生の書き込みと教員によるフィードバックの双方に負荷がかかる。学生のモチベーション向上の一方で、負荷の調整が課題となっている。

D-8 eポートフォリオを活用した教員養成支援システムの開発に関する研究
九州女子大学  平山 静男、

 学校ボランティア制度を含む実習への派遣、資格や免許取得など多様化した学生の期待に応えるために、eポートフォリオの導入、活用を企図した。シンプルな構成、即時性・随時性を重視したデータ入力などを開発方針としながら今年度末の運用開始を目指し、開発を進めている。

D-9 Moodle用テキストマイニング・プラグインの試作
名古屋外国語大学  山本 恵
名古屋学芸大学  梅村 信夫

 効率的な授業改善に資するため、e-Learningシステム(Moodle)に、学習履歴に対するインスタント・テキストマイニングが可能なプラグインを試作・実装した。今後は簡単な操作で、学習履歴全般に渡りテキストデータを有効活用するためのツールとして発展させる予定である。

D-10 国家試験対策の模擬試験における成績管理システムの導入と運用の効果
城西国際大学  大内 善広、岩田 泉、山崎 香保里

 国家試験対策の模擬試験の結果を自己制御学習モデルに基づく成績管理システムを構築・活用することによって、教員の指導改善や学生の自己理解を促進し、成果を挙げようとする試みである。効果が確認されるが、データ数が少なく、今後の検証が必要とされる。

D-11 過去の学生の出欠データと成績データを用いた将来の学生の成績レベル予測
名古屋工業大学  伊藤 宏隆、伊藤 雄真、舟橋 健司、山本 大介、内匠 逸、松尾 啓志

 過去の出欠データから、ベイジアンネットワークを用いて、学生の成績を予測し、これを将来的に学生の修学指導のために活用しようとする試みである。変数の削減や置き換えによって、予測一致率は向上しており、将来的には現在の学生の出欠状況から修学指導に役立てることが期待される。

D-12 SNSにおける記述内容の分析結果のネットリテラシー育成教育への応用
自由が丘産能短期大学  豊田 雄彦、竹内 美香
大妻女子大学  市川 一博

 SNSにおけるトラブルを防ぐために、ネットリテラシー教育とネット利用に関する「適性検査」のようなものが必要とされている。そのためにテキストマイニング解析により、感情表現・喚起語を抽出・解析するツールを開発し、事前にリスクの高いユーザーを検出しようとする試みである。

D-13 コンピュータ操作技量の検討
日本女子大学  加々見 薫、吉井 彰

 コンピューター・ユーザーのマウス操作レベルをFittsの法則を利用し、操作技量の特徴を統計的に抽出することによって、ユーザーのコンピュータ操作の熟練度を自動的に判定し、練習画面やガイド機能など適切なインターフェースを自動的に提供するための実験的検討である。

D-14 情報リテラシーのためのWord,Excel自動採点システムの構築と運用
愛知大学  岩田 員典、松井 吉光、長谷部 勝也、池森 均、梅垣 敦紀、齋藤 毅、澤田 貴行、土橋 喜、中尾 浩、西本 寛、古川 邦之、毛利 元昭
名城大学  谷口 正明

 多数の学生を対象とする情報リテラシー教育においてWordやExcelの利用方法の効果的学修を可能とする自動採点・学習システムの開発を行った。問題の達成度やランキングを表示する機能をもたせることによって学生の学習意欲を高めるとともに、教員の負担軽減にも有効であることが検証された。

D-15 学生主導型総括的授業評価の提案:アンケ ート構成フレームワークの再構築
名古屋学芸大学  梅村 信夫
南山大学  河野 浩之

 教員と学生が協同して構築する「学生主導型授業評価モデル」(SITM)を、ICTをベースとして、より効果的にデザインしようとする試みである。SITMの情報系授業科目を中心とした実践結果から、多変量解析によって評価手法の特性・有用性を示した。

D-16 携帯電話を用いた授業評価とwebアンケート調査システムの構築
日本女子体育大学  石原 英樹、雨宮 由紀枝、影山 陽子、山口 祐也

 携帯端末を用いた授業評価システムの構築・改善の経験の上に、さらに、学生が携帯端末を活用して社会調査を行えるようなWebアンケート調査システムを導入し、データ処理の速度の向上を図った。

E-1 留学生教育におけるクリッカーを用いたアクティブ・ラーニングの試みと課題
関西大学  古川 智樹、村田 晶子、毛利 貴美、山本 敏幸

 携帯端末を活用した学生応答・理解度把握システムを留学生教育に活用することで、学生が積極的に授業参加するようになった。また、クリッカーによるサイド発話により学習者個人の問題が全体に共有され、気づきや理解の促進を促し、公的な流れにも寄与していることが明らかになった。

E-2 クリッカー(授業応答システム)の効果的な活用法を求めて
名城大学  武田 直仁

 演習科目と通常講義でクリッカー(授業応答システム)を利用し効果の比較を行った。学生にアンケート調査を行った結果、演習科目ではクリッカーの活用を評価しているが、通常講義では評価は低く、知識の集積に努めたいという学生の阻害要因になってしまった。

E-3 聴覚障害者を支援するインクルーシブなICT活用の試行
関西大学  山本 敏幸、田上 正範

 携帯端末を活用した学生応答・理解度把握システムにより、ピア・サポートによる聴覚障害者支援を行った。アクティブ・ラーニングやディスカッション形式の授業では、文字入力のスタッフが必要となるものの、ピア・サポート等によりほぼリアルタイムで議論に加わることができた。

E-4 レスポンス・アナライザを用いた授業改善の試み
福岡大学  永星 浩一、今野 孝

 3教室計700台の端末を備えたレスポンス・アナライザを導入し授業改善を試みた。学生・教員へのアンケート調査の結果、自らの意識や授業での態度に良い影響があったという学生が多く、理解度を確認しながらの授業進行が可能になった等、教員にも好評であった。

E-5 一般教室におけるタブレット型コンピュータの教育利用に関する研究
東海大学  広川 美津雄、宮地泰造、岡田 工

 タブレット端末とオンラインストレージを一般講義科目における学生発表の相互評価に利用した。このことにより、一般教室において一斉情報入力、統計処理結果の即時閲覧が可能となった。また、結果の即時閲覧によって、学習の動機づけとなることがアンケートの結果明らかになった。

E-6 数学講義におけるクラウド利用のレポート管理システムによる業務負荷の軽減と質の向上
神奈川工科大学  土谷 洋平、白井 暁彦、 藤森 雅巳、谷戸 光昭

 無料のクラウドサービスをレポート管理システムとして活用した。本システムの導入により、レポートの提出率および、記述内容の積極性や量の増加など教育改善効果が図られた。機能がシンプルであり、またそれ故に創意工夫に富んだ使い方ができることが本システムの特長である。

E-7 モバイルと連携したクラウド型eラーニングシステムの学習効果
サイバー大学  川原 洋

 クラウド型eラーニングシステムをモバイル向けアプリケーションとともに開発し、2012年度よりすべての授業においてその運用を開始した。その結果、出席認定基準を担保した上で受講が可能となり、個人差があるもののモバイル端末による学習時間の増加が確認できた。

E-8 クラウドサービス型オーサリングソフトの開発と運用実績
サイバー大学  遠藤 孝治、高橋 弘樹

 教員及び学生が単独でプレゼンテーション型のコンテンツ作成が可能な操作性が高いクラウドサービス型オーサリングソフトを開発した。その結果、利用方法についての難しい講習を行う必要がなくなり、授業設計の完了後は教員単独でも必要十分な質を担保した教材作成が可能となった。

E-9 WEB会議を利用した病理カンファランスの実践
岩手医科大学  松村 翼、澤井 高志

 顕微鏡操作とほぼ同様に扱えるバーチャルスライドとWeb会議システムを組み合わせ、遠隔病理カンファランスを行った。個人のPCとインターネット環境で行えるので、地方の病院で研修中の大学院生など様々な教育利用が可能である。今後は安定性改善やタブレット利用などが課題である。

E-10 実習を伴う情報基礎教育科目の同時多キャンパスでの遠隔授業化とその実践・体制
青山学院大学  三島 和宏、山下 祐一郎、加藤 暢恵、中鉢 直宏、宮川 裕之

 複数キャンパスでの同時授業実施として、教員が一つの教室で講義し、他方の教室とはテレビ会議・授業資料同期・授業支援システムを通して遠隔講義を行った。実習を伴うため両側にサポート教員を置いている。教員の在・不在で変わる要素をアンケート調査しており、それに基づいて改善を進める予定である。

E-11 ICTを活用した留学時の学習環境支援システムの構築と実践
東海大学  千葉 雅史、藤田 泰裕、加藤 大貴、久保田 美明

 海外研修航海の参加促進のため、安全・安心情報を保護者に提供するシステムを構築した。船からの通信はインマルサットを利用し、それをインターネットでブログ・Facebook・メーリングリストによって提供した。親世代のITスキルはばらつきがあるが、関心は年を追って強まる傾向にある。

E-12 習熟度別学習支援を目的とした講義ビデオの効果的活用
芝浦工業大学  角田 和巳

 習熟度別学習を目的とし、通常授業と、より基礎的な補習の講義ビデオを分割編集して配信した。補習ビデオの視聴件数が予想より少なく、自主的な学習では限界があることから、予習時に視聴すべきビデオを指定し、授業でビデオ視聴前提の試験を実施するという取り組みも行った。

E-13 多種多様なデジタルコンテンツの作成・保存・公開の仕組みについて
中央大学  渡邉 純一、斎藤 正武、佐藤 博文、河野 光雄、鈴木 寿、鳥居鉱太郎、新井 裕、堀内 恵、村井 剛、緑川 昌、平松 裕子

 教員・学生によって生み出される各種コンテンツの貯蔵と再活用を行うための基盤システムについて検討を行っている。当初は電子書籍やプリントオンデマンドに関する調査と実験を行ったが、現在はリッチメディアも含めたデジタルコンテナの機能について実験を行っている。

E-14 病理教育ツールとしてのFaceBook利用の1例
近畿大学  筑後 孝章、岩崎 拓也、岡田 満、平出 敦

 病理教育に必要な画像を利用しやすく、学生にも使いやすいツールとしてFacebookを利用した。スマートフォンから閲覧可能、質問やコメントを共有できる、設問形式にもできるなど利点が多く見られた。グループ参加者のみ閲覧可能だが、設定に関する注意喚起が必要と思われる。

E-15 キャンパス統合に伴う他学部共有型メディアライブラリーの構築事例
金沢星稜大学  二口 聡、井上 清一

 情報演習設備と図書館機能を持つメディアライブラリーを設計・構築した。これまで分散していた情報設備を大・中・小教室、デジタル作品制作室、講義用ノートコンピュータ等、それぞれ特色を持たせた設備に再編し、図書館と合わせて一箇所に集約したことで学生の利便性が向上した。

E-16 学外サービス利用による学生および教職員のICT環境改善の試み
崇城大学  川本 正道

 学生が使いやすいサービスを提供するため、認証情報の統一を行わず、低コストで外部メールサービスを導入した事例について報告する。学生のコミュニケーション形態がSNSなどに変化しているため運用状況を見ると従来よりメール利用が活発になったとは言えないが、学外サービスを利用することで時間差なく学生共通のICT基盤が提供できるようになった。

E-17 主体的学修者育成を目指す教育環境構築の取り組み
関西国際大学  山下 泰生、陳 那森、藤木 清、上村 和美、窪田 八洲洋

 通常の教室以外に、新しいICT機能を利用した数パターンの学修環境を整備した。グループワークの活動記録ではオープンスペースに設置したラーニングコモンズの利用が大半を占めた。また、学生アンケートからはPC操作の習熟度とは関係なくICT学修環境の有効性を感じていることがわかった。

文責:教育改革ICT戦略大会運営委員会


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