事業活動報告No.3

平成26年度 ICT利用による教育改善研究発表会
開催報告

 本発表会は、全国の国公私立大学・短期大学教員を対象に、教育改善のためのICT活用によるFD活動の振興普及を促進・奨励し、その成果の公表を通じて大学教育の質的向上をはかることを目的としている。今年度は平成26年8月8日(金)に東京理科大学(森戸記念館)において開催した。一般参加者は112名(65大学、7短大、賛助会員1社)で、発表会は第1次選考も兼ねて46件の研究発表が行われた。当日の発表内容は以下の通りである。
 その後、第2次選考を10月4日(土)に実施し、11月25日(火)の本協会の第11回臨時総会冒頭に表彰式を行った(詳細は次号に掲載)。

※以下の発表者名は発表代表者のみ掲載。

Aグループ

A-1 英語集中コースにおけるCriterion(自動採点・分析ソフト)の効果的な活用方法
甲南大学 津田 信男

 英語の集中学修を通じた留学するための語学力アップを目的として、「留学のための英語集中コース」を設置した。ライティングセクションのIndependent Essayでスコアが4程度になるように目標設定した。Criterionの活用による迅速な評価とコメントを行い、ビデオやスピーキングなどの方法も活用して学習者にインプットさせ、ライティング力の向上をはかり効果を上げている。

A-2 中国語文法をドラスティックにデザインするICT利用による体験型音楽語学教材の開発とその教育効果
長崎外国語大学 山田 留里子

 中国語教育を双方向的授業にすることを目指し、文法知識の理解を楽しみながら深めることによって、語学力・コミュニケーション力・人間力を高めることを目標とした。事前事後学修として音楽CDを配布してリズム感のある中国語の発音を五感でとらえる準備を行い、教室ではWeb黒板やPPTの利用によって、ライブ的学習環境で学びを体験することができるようにした。その結果、中級中国語を引き続き学ぶ学生や中国への留学を希望する学生が格段に増加傾向にある。

A-3 Moodleを用いた事後学修を伴うスペイン語初級授業について
東海大学 結城 健太郎

 第二外国語学習においては十分な事後学修を行わず、教育目標を達成することが困難であった。教員も授業外での学修状況を把握することが難しく改善にも障害があった。そのため、授業準拠のeラーニング教材を開発・使用して、学修時間の確保と学修状況と成績分析による指導改善を図った。教科書に準拠したスペイン語eラーニング教材を開発してMoodle上で事後学修での使用を指示し、教員は利用記録をもとに指導を行った。その結果、事後学修時間は増加し学修効果が得られている。

A-4  e-Learningシステムを利用した初修外国語教育(独・仏・中)の成果と展開
日本大学 柳 武司

 平成20年度にカリキュラム改訂が行われた際、外国語科目として英語科目のみが必修化され、初修外国語科目は選択科目となった。履修者数が激減して多様な異文化に接する手段や能力、興味も失われてしまうことが懸念された。語学教育の実質化を図るため各言語でe-Learningシステムを構築し、外部機関による認証を得てその実質化を示すこととした。その結果、基本的な語彙の定着とリスニング能力の向上が認められ、外部試験合格者も増加している。

A-5 Moodleを用いた反転型個別化日本語教育の試み
東京理科大学 平澤 洋一

 プレースメントテストにより多様なレベルの留学生が混在し、かつ受講目的に大差があることが判明したので、反転型個別化授業に変更して学習集団ごとの目標値の設定と教材補完を行った。1)聴解・発音面の基礎能力を養う集団、2)文法・語彙力のレベルアップをはかる集団、3)大学院進学希望者群に分け、それぞれ別のMoodle教材を用い、画像・映像・音声を多用して並行・個別化授業を実施した。漢字圏の中上級レベルの学生については当初目標を達成できた。

A-6 韓国語学修における相互交流講義の実践
別府大学 西村 靖史

 韓国文化や社会に対する興味を喚起することによって、韓国語学修の活性化を行った。授業内にインターネットビデオ会議システムを利用して、韓国の大学で日本語を学修する学生と相互にテキストの内容を利用する学修を行い、自己紹介や学生生活、地域の紹介などを相手の言語で行った。その後、研修旅行として韓国を訪問し、実際に同じ授業を経験した学生と直接会って韓国内でグループ活動を行った。その結果、ICTの利用による相互交流授業により、効果的な経験や関心を与えることができている。

A-7 e-mailとテレビ会議システムを利用した長期英語圏留学における生活及び学習支援授業の実践
同志社女子大学 飯田 毅

 ICTを利用して留学中の学生指導を行ったところ、海外の留学先で学修・生活する学生に対してきめ細かい指導ができるようになり、その結果、学生は安心して学業に専念できた。留学期間にテレビ会議システムを使って、中間発表を実施している。

A-8 LTD(話し合い学習)の活用と双方向授業の展開による読解力・解釈力向上の試み
創価大学 山中 正樹

 伝統的な文学教育の授業は、概ね教授者が一方的に作品の解説を行うものがほとんどであった。そこで、話し合い学習の活動を有効に機能させるために、事前学習の徹底と受講生自身の参加態度及び学びの「振り返り」においてICTを活用した。特に、学内ポータルサイトを利用して授業後に各グループでの討議の内容を共有化することによって、さらに発展的な学習が実践可能になっている。

A-9 音楽系大学通信教育におけるICTを活用した視点拡大型自己探究コロキウム導入による学習効果
大阪芸術大学 泉川 秀文

 自宅学習とスクーリングから成る授業において、ICTを活用した「音楽DBコロキウム」(討論・意見交換会)をスクーリングに導入した。これにより、従来の「一方向型講義、個人学修」から脱皮して「教員と全受講生全員参加型講義、協働学修」を実現している。

A-10 地域と連携したICTを導入した実習授業への展開
実践女子短期大学 白尾 美佳

 地域のNPOが運営するホームページのサイトで公開されている保育所、学校等の給食を教材として利用した。学生はサイトの情報から食品栄養学的特徴を理解し、自分の意見等を当該サイトに書き込む。これによって、学生は子どもの栄養や食事に関する知識を広げることができ、また献立作成能力も向上させることができている。

A-11 タブレット端末および電子ホワイトボードを活用した器械運動
東京学芸大学 水島 宏一

 体育実技学修にICTを導入・活用して、学生の主体的・積極的学修の促進を目指した。運動を覚える際には、視覚を介して運動の形、スピード、流れなど体を動かすために必要な情報を収集することが重要になる。学生の実技をICTによって情報化し、それを教材として使用することによって、学修効果が格段に上がっている。

A-12 発表辞退
A-13 ICT利用による授業時間外教育サポートの成果と今後の課題
立教大学 三田 知実

 「社会調査演習」と「応用調査実習」の授業において、対面のコミュニケーションを必要とする議論と解説に極力特化し、学生の課題提出、課題へのコメント、報告書・論文執筆の添削、論文の執筆技法などは大学の授業支援システムを用いて授業時間外に行うようにした結果、実践的な研究指導ができ、大きな成果が得られている。

A-14 発表辞退
A-15 学生のスマートフォン利用を前提とした双方向重視の講義の有効性に関する研究
東海大学 小泉 眞人

 大規模クラスによる双方向型講義実現を目指し、1)積極的に講義に参加させ、2)講義のライブ感覚を高め、3)講義中学生の理解度などをリアルタイムに把握するという三つの目標を達成するため、スマートフォン向けサービスを開発し「広報広告論」の授業で活用したところ、学生たちの集中力が伸び高い教育効果が得られている。

A-16 統計基礎学修のためのブレンディッドラーニングの取り組み
青山学院大学 小泉 大城

 ICTを援用した統計基礎学修の質向上を目指した取り組みとして、LMSでの予習と授業終了後の復習、教員によるスライドを用いた演習室での対面式講義、表計算ソフトによる実習を組み合わせたブレンディッドラーニングを行った結果、記述統計学と推測統計学の両方を体験的に学ぶことができ、学習意欲が相対的に高い様子がうかがえる。

Bグループ

B-1 Webアンケートシステムを用いた授業支援と効果測定について
日本大学 戸塚 英臣

 物理学科の1、2年生向け工学基礎数学の授業支援システムを携帯端末からも利用可能とし、定期的な小テストを受験させ、問題の正答率の向上への影響を検証した。小テスト受験者と非受験者の正答率の差を検定したが、問題の性質に依存する面があり、必ずしもこのシステムの利用が正答率の違いの要因として結論づけられないと思われる。

B-2 ICT利用の授業外学習と参加者間の相互作用を重視した文系向け物理学授業の試み
立教大学 栗田 和好

 文系学部学生向けの物理学入門を従来とは異なる取り組みにより活性化しようと試みた。知識伝達をWeb宿題で予習させ、授業中はプレゼン、フィードバックを90分間に3〜4回繰り返す方法とした。苦手意識を持っていた学生から物理学を楽しむことができたとのコメントがあり、試みが活性化の第一歩につながった感触を得られている。

B-3 全学統一のeラーニング環境による教育改善
静岡理工科大学 ジェンキンズ アダム

 学内に個別のeラーニングシステムが複数存在することの不便さを解消するために、Moodleベースの一元化システムを導入し、利用の抵抗感を少なくするためのヘルプデスクを設置し、全学生が利用するまでになった。教員は3分の1の90名が授業に利用しており、教育環境の改善の出発点となっている。

B-4 自発的能動学習を涵養するためのブレンディド・ラーニング
近畿大学 木村 隆良

 理学科化学コースにおいて、化学を物理数学的な論理視点で学ばせるために新たな自発的能動学習の手法を展開した。予習・復習を促すための学習管理システム(LMS)、復習用のビデオオンデマンド等のICT活用に加え、グループ学習を個別対応型とするためには、既習済みの上級生をファシリテータとして育成することの重要性を確認している。

B-5 医用工学における音と振動を利用した双方向授業の試み
埼玉医科大学 田邊 一郎

 講義では理解が難しいため試験の成績が悪く、学生の評価も良くなかった医療技術系学部の医用音響工学に、授業方法としてMITのLewinの手法、教材にムービークリップを導入し、興味深い事例の提示からその基礎的内容まで、能動学習に重点を置いて遡及させるアウトカムベースの学習法の導入を試み、学習効果を高めている。

B-6 薬学部におけるPBLを用いた症例提示による薬物治療の習得と医療従事者としての倫理観の醸成
日本大学 鈴木 孝

 薬学部における臨床実習前の科目「医薬品の開発と生産」及び「テーラーメイド薬物治療を目指して」にスモールグループディスカッションと、LMSを導入し、症例や関連資料の提示と討論中心の授業形態による事前の能動学修推進効果に加えて、LMSの特性を活かした学習成果の開示や振り返りを可能としている。

B-7 小児科講義におけるクリッカー(レスポンスカード)を利用したTBLの実際
近畿大学 杉本 圭相

 医学部4年生の臨床前教育(小児科講義)にTBLを導入し、レスポンスアナライザーを活用して能動学習にもとづいた授業を実践した。さらに、その成果にもとづいて「ディスカッションしやすい環境設定と雰囲気作り」、及び「年ごとに変化する学生のキャラクターや全体の雰囲気を考慮した講義形態の選択」の重要性を指摘している。

B-8 初年次におけるICTを用いた学生主体の学習体制への取り組み
日本大学 三澤 麻衣子

 歯学部第1学年後期の「医療史」に、学生が自主的に課題に取り組む意欲を向上させるための方略として、タブレット端末とWebサイトを活用した「学生が授業後すぐに学んだことを自主的に探求する姿勢を、即座に教員が評価できる環境」を構築し、復習・授業内容の振り返りの促進によって到達度を向上させている。

B-9 知識型学習内容(患者問題解決能力)におけるICTを活用したPBL,TBL形式教育の効果
近畿大学 小竹 武

 薬学部5学年の実務実習事前学習において臨床薬学学習用電子教材を用いたユビキタス学習環境及びPBL/TBLを組み合わせ、患者病態の理解及び適切な薬物療法の提案能力の獲得を図った。その結果、講義形式の授業であっても実習に類似した教育効果を期待できる可能性を示唆している。

B-10 成績不振学生の基礎知識を補強するための自己学習支援システムの構築とその活用
名城大学 飯田 耕太郎

 薬学部の5学年の実務実習期間における実習時間以外について、成績不振学生の多い傾向がある学術コースの学生に対してeラーニングを主体とした基礎領域の補強学習を11週間実施した。この試みによって、成績不振学生の学力の底上が実現したことを示す結果が得られている。

B-11 アクティブラーニングにおける学習効果の視覚化と教育改善への取り組み
北海道医療大学 二瓶 裕之

 薬学部5学年実務実習の振り返りシート記載のテキストマイニングによって、アクティブラーニングにおける学習効果の視覚化及び効果検証を試みた。この試みによって明確となった問題点に対してスマートフォンを活用した薬品の基本知識修得システムを開発・導入して改善を図り、好結果を得ている。

B-12 ICT利用によるプレゼンテーション報告会の取り組み 〜学習活動「協調学習、相互評価、VOD」の実践〜
山口東京理科大学 亀田 真澄

 物理・化学実験の学習後に、そのレポート報告を、3学科合同グループ・プレゼンテーションの場で実施してきた。これにより、プレゼンテーション能力の向上を視覚的に確認した。また、グループ・プレゼンテーションの評価を数段階のネット投票で行い、最優秀グループを選抜し、その模様をビデオオンデマンドで配信することで振り返り学習に有効であることを示している。

B-13 グループウェアによる実践的なプロジェクト管理を適用した組込み分野の教育プログラム
福岡工業大学 松原 裕之

 応用能力、デザイン能力、論理的な思考と記述能力、プレゼンテーション能力を身につけることを目的とした「情報処理工学実験」において、「メーカの開発プロセス」を適用した組込み分野の学生実験を実施し、開発プロセスマネジメントにグループウェア等のICTを活用したことによって教育効果が得られている。

B-14 学修成果の蓄積とパフォーマンス評価を実現した学修システム群の構築
大手前大学 芦原 直哉

 知識偏重教育から自律的な能力開発型教育への転換を目指し、3つの基盤能力と10のコンピテンシーによる能力体系を構築し、全学的なLMSとeポートフォリオを開発・導入した。これらの現状認識と成長を確認する4年間蓄積型の授業支援の仕組みと、学生・教員・外部の教育ボランティアによる評価モデルを確立している。

B-15 提出課題管理ソフトとコピペ判定ソフトの組み合わせによるレポート・卒業論文等の指導
近畿大学 浜田 太郎

 「国際法II」の授業において、提出されたレポート相互間のコピペ判定を行い、講義で講評を加えることで、他人のレポート・教科書の丸写しや丸暗記でなく、能動的に意味を考えながらレポートを作成することが法的分析能力の向上に不可欠な学修方法であるという認識を学生に持たせている。

B-16 データベース演習における演習支援システムの開発と適用
近畿大学 大木 優

 データベース演習において学生が自分の力で問題を解くような演習環境を構築するため、外部からコピーできないエディタと、キー入力の文字数評価により受講態度を推定するソフトウェアを開発し導入したところ、4年間の筆記試験の平均点が上がり、低い得点の学生が減っていることが確認できている。

B-17 発表辞退

Cグループ

C-1 知識移転型授業におけるスマートフォンを用いたソーシャルラーニング実験と考察
フェリス女学院大学 春木 良且

 基礎教養科目等の知識移転型授業では、大人数教育のためにアクティブラーニングが難しいことから、スマホを利用するラーニングツールを開発して学習実態と効果を調査した。進捗状況を視覚化することで、メンバー間で学習効果を高めようとする効果があったとしている。

C-2 コラボレーションサイトを活用した双方向的教育と協働学習の評価
東京工科大学 飯沼 瑞穂

 個人課題とグループ課題における協働学習を支援するためにグループウェアを使用したところ、表計算ソフトとプレゼンテーションソフトに関するPCスキルの向上とPC操作に対する自信が大きく改善されたことが判明したとしている。

C-3 ムービー教材による技能教育の効率化と学び合いによる情報倫理教育の強化
桜美林大学 笠見 直子

 ムービー教材を作成し、レポートや講習会資料の作成効率を上げて、情報倫理の理解を学生同士で互いに深めるように授業改善を行った。アンケート調査によれば、90%を超す学生が肯定的な回答を寄せたとしている。

C-4 ソフトウェア開発技術者のためのアンプラグドコンピュータサイエンスの活用
芝浦工業大学 松浦 佐江子

 プログラミングに関する知識のない学生に対して、アルゴリズムの概念を身につけさせるためにコンピュータを使わない教育を試みている。「戦艦ゲーム」を題材にして、探索問題のアルゴリズムを紙ベースとWebベースで3時間程度の実習を通して考えさせたところ、85%の学生から楽しみながら考えられたとのアンケートによる回答を得ている。

C-5 PBLにおけるICTを活用した形成的評価のデザイン
青山学院大学 湯浅 且敏

 学生がPBLに取り組む場合、グループでの情報共有を含む役割分担は教員が行う必要があり、そのためには随時学習状況を把握する形成的評価が必要となる。SAにLMS上で学生の活動を評価・支援させたところ、各グループの活動が活発になり、多くの振り返り活動が行われていることを確認している。

C-6 ライティング科目でのLMS活用を通じた教育改善の試み 〜ラーニング・コミュニティ形成の観点から〜
関西学院大学 内田 啓太郎

 問題解決能力の一つとしてライティング能力を育成するために、LMSを利用して教育改善を行った。教材コンテンツはHTML/CSSベースで作成し、学習者同士でピアレビューさせることでコミュニケーションを促進したところ、7割以上の学生が「仲間意識」を感じているとの回答を得ている。

C-7 導入教育におけるタブレット端末を活用した全学反転授業 〜事前ビデオ視聴とリアルタイム評価による効果〜
大阪女学院大学 小松 泰信

 従来授業内で行ってきたレクチャー部分をビデオ映像化し、授業前に学生に配布されたタブレット端末を用いて視聴してくること義務付けた反転授業の報告である。授業の構成は、確認テスト、テストの集計結果による弱点部分の補足説明、応用演習、振り返とそのポートフォリオへの登録などからなっている。学生アンケート結果報告に加えてビデオ視聴率、アクセス回数と成績分布の間に中程度の相関があることなどが示している。

C-8 自修時間を支援するユビキタスな学習環境 〜授業外でのプログラミング学習の支援と評価〜
名城大学 旭 健作

 教室外の学生のコンピュータに対して、大学と同じコンピュータ環境を提供することにより、授業外でのプログラミング学習を支援した授業の報告である。このシステム環境は、大学外での17時以降のシステム利用件数の増加から授業外学習に貢献していることが示された。さらに科目の成績とシステム利用時間数の分析から、利用時間が長いほど科目成績が向上する傾向であると結論している。

C-9 「教えない」という教育法を用いたプログラミング授業の試みと成果について
東海大学 田中 真

 C言語によるプログラミング授業において手取足取り方針を採った年度の授業と、「教えない」という方針を取った年度の授業の教育効果を比較した報告である。「教えない」方針の授業とは、LMSにより常時課題提出を可能とし、提出締め切りを厳守させる仕組みを導入する一方で印刷物の配布、電子教材の配信を止め、その代替として教員がプログラミングのゴールを学生に繰り返し伝える内容の授業である。その結果として成績の上位が増加し、単位の取れない学生の割合が減少したことが報告されている。

C-10 卒業・研究論文作成のための学生の内発的動機づけを引き出す工夫
跡見学園女子大学 花岡 照明

 多人数学生を対象とした卒業・研究論文作成に関する授業において、学生の内発的学習意欲の喚起及び学生個々に対する作成指導をICT利用により実現した報告である。従来、研究論文の作成指導法として提案した自己評価制約5段階評価法及び学生間相互評価法を実施し、その評価結果をネット上から提出させる授業である。学生の評価が回を重ねるたびに現実に近いものに変化し、集中度が増したと結論している。

C-11 ICT技術を活用した初年時数学教育の一取り組み
静岡理工科大学 松田 健

 初年次生が履修する線形代数の授業において、多様なレベルの学生が混在するクラスでそれぞれの学生に適切な指導を行うことを目的に実施した授業報告である。予習・復習用Webページの公開、オンラインでの質問や授業要望の受け付け、TA・チューターの導入を行い、その教育効果が分析されている。線形代数の各項目についてテスト結果と学生の理解度が示され、ベイズ推定による能動的学生のラベル付け結果が報告された。

C-12 情報リテラシー科目でのPBL法によるアカデミックスキル教育の評価
京都女子大学 水野 義之

 情報リテラシー教育をアカデミックスキル教育として位置づけ直し、PBL法の援用、e-Learning教材による復習の機会提供などを併用した授業の報告である。教育効果測定としてWeb上の共通試験を前後期に2回実施し、また他の二大学と試験成績を比較検討した分析結果が報告された。主な結論として成績下位層のWeb試験の伸び幅が大きいこと、平時の学習活動の違いがWeb試験の成績に関連していることが示された。

C-13 視覚障がい学生のための自習可能なCUIによるネットワーク管理作業環境の構築
岡山理科大学 須藤 清一

 視覚に障がいのある学生が、ネットワーク管理の授業を受講することになり、講義ノート参照のためのスクリーンリーダーがある「支援室」のPCから、実習用の閉じたネットワークにアクセスする必要が生じた。Linux上に音声読み上げシステムを構築し、NATルーターを経由してSPICEサーバーに接続する方式により、当面の問題は解決できた。

C-14 ICTを用いた協働自律学習プロセスの可視化がPBL成果のクオリティ向上に及ぼす効果
東京電機大学 木村 敦

 PBLの学習効果を向上させるには、個々のメンバーの自主学習を班全体の成果に統合するための集団マネジメントが必要であることから、ICTを利用してメンバーの学習状況を可視化し共有するシステムを導入した。その結果、システム導入前と比較して、PBLによる学習の効果や成果発表のクオリティにおいて有意な向上が見られた。

C-15 画像処理を用いた簡便な双方向システムの研究開発と一斉授業での実践
金沢工業大学 鎌田 洋

 一斉授業で学生の能動学習を実現するために、画像処理技術を用いた簡便な双方向システムを開発した。教員からの問いに対して学生が色カードを挙げて回答すると、高い検出率で即座に自動集計され、学生にフィードバックされる。対面性が保持できる点にも特色があり、学生からは「役立つ」という反応が多く得られた。

C-16 他大学とのコラボレーションによるネットワークスキル向上への取り組み
帝塚山大学 日置 慎治

 ルーターやスイッチによるネットワークの設計・構築・管理の知識や手法の習得において、学生の学習に対するモチベーションを維持し高めるために、他大学とのコラボレーションによるコンテストを実施している。他大学と競いながら学習成果を確認し、学生どうしの交流も促進するイベントは、学生主体で運営されることで教育効果をあげている。

文責:ICT利用教育改善発表会運営委員会


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