事業活動報告 No.4

平成27年度 産学連携事業 実施報告
大学教員の企業現場研修/産学連携人材ニーズ交流会/社会スタディ

大学教員の企業現場研修

 教員の教育力向上を目指した「大学教員の企業現場研修」は、今年度は賛助会員企業4社の協力を得て、2月に1回、3月に3回実施した。以下に実施結果を報告する。

第1回 株式会社内田洋行/平成28年2月23日

 「情報の価値化と知の協創を目指す人材育成の取組を学ぶ研修」をテーマとして、29名が参加し、アクティブ・ラーニングスペースの事例紹介、最新のデザイン、コンテンツによるフューチャークラスルームを体験した。実施結果として、「本研修を他の教員にも紹介したい」が82%、「授業に役立つ」が96%の評価であった。特徴的な感想としては、「PBLを実現するシステムを知る機会になった」「企業実務でのプレゼンテーションを重要視されているということで大変刺激があり、授業改善に活かせるヒントをいろいろ思いついた」などであった。

第2回 日本電気株式会社/平成28年3月1日

 「技術開発から社会での活用までを担うICT企業の現場研修」をテーマとして、21名が参加し、ビッグデータ、映像ソリューション、イノベーションの取り組みが紹介された。実施結果としては、参加者全員が本研修を「他の教員にも紹介したい」と回答し、この研修は「授業に役立つ」との回答が82%の評価であった。特徴的な感想としては、「教員が企業の現場を見ることが重要であることを改めて感じた」「若手社員との意見交換で、理論だけではなく、事例や実例を活用した解説を行う授業が役に立ったと聞き、改めて授業改善に取り組んでいきたいと思った」「日本企業の課題であるグローバル化、イノベーションの創出などが理解できた。大学教育をどう改革すればよいか、アクティブ・ラーニングの取り組みも含めて考えたい」などであった。

第3回 株式会社日立製作所/平成28年3月8日

 「次世代の社会システムと最先端ICT活用事例の現場研修」をテーマとして、25名が参加し、ICTを活用したイノベーション事業としてヘルスケア、行動分析、まち・インフラサービス、人工知能が紹介された。実施結果としては、「本研修を他の教員にも紹介したい」が96%、「授業に役立つ」が78%の評価であった。特徴的な感想としては、「企業は価値創造、行動型の社員を求めている、そのための教育改善が必要なことが理解できた」「若手社員の意見いずれからも参加型、課題解決型の授業が望まれていることがよく分かる」などであった。

第4回 富士通株式会社/平成28年3月10日

 「イノベーションの核となる先端的ICT事例の現場研修」をテーマとして、25名が参加し、ビッグデータ、IoT、AI(人工知能)が紹介された。実施結果として、「本研修を他の教員にも紹介したい」が90%、「授業に役立つ」が90%の評価であった。特徴的な感想としては、「社会の最新の動向を教員自身が理解し、教えることの重要性を改めて実感した。学びの重要性に気づきを与える授業改善を授業に取り入れていきたい」「若手社員からの大学での学び、大学への要望・意見を踏まえて、授業等に反映できるようにしたい」などであった。

産学連携人材ニーズ交流会

 平成27年度の産学連携人材ニーズ交流会は、常識にとらわれることなく、様々な領域から多様な情報や考えを組み合わせ、新しい視点を提案し行動できる実践的な人材力の育成が急がれている。このような情報革命の時代に対応できる大学教育の転換を目指し、産学連携による分野横断型の教育改善を考える場として、平成28年3月4日にベルサール西新宿で実施した。参加者は66大学96名、企業22社38名の合計134名であった。開催趣旨は、社会を変革するエンジンになる情報通信分野の人材教育の在り方についてグローバルな視点から理解を深め、私立大学としてどのように情報通信分野の教育改善に活用できるかを考える場とした。以下に概要を報告する。

1.話題提供

(1)IoT(インターネット・オブ・シングス)の世界の潮流について

 事業開発室の光井室長附から、あらゆるモノがネットワークにつながり、リアルタイムでデータ化されるIoTの時代を迎え、「ビッグデータの活用」が世界の潮流となっており、膨大なデジタルデータを生成・流通・蓄積し活用して新たな価値の創造や社会的課題の解決につなげる取組が活発化している。このようなIoTやビッグデータの活用で製造会社がシステム故障予知から運用管理マーケティングや経営管理に進出するなど業界や領域が大きく変化しつつある。今後ますます膨大化するデータの処理にはネットワークに限界があり、デバイスやエッジでリアルタイムの最適化処理が重要になることから、組込みによるエッジコンピューティングが重要になる。イノベーションを生み出す技術者に求められるのは、情報の専門知識だけでなくデータの全体像を捉えて発想し問題解決が構想できる幅広い学びが望まれることが強調された。

(2)新たな価値を創出するビッグデータの活用

 IoT等によるビッグデータ活用の進化はめざましく、新たなビジネスの創出や、食・農業、交通、健康・医療など地域や分野を超えたイノベーションの創出など本格的な活用フェーズに入ってきている。その上でビッグデータを活用して新たな社会課題を解決し、イノベーションに取組んでいる事例が紹介された。ビッグデータを活用するには、ビジネスの知見、分析力、ITスキルを持って、課題解決につなげる人材が求められることから、大学教育では、課題を洞察する力、分析する力、数理的な力、技術ツールを活用する力の育成が急がれることが強調された。

2.課題提起「大学教育での構想力の育成について」

 これからの情報系人材には、イノベーションに関与できる基本的な能力として、技術力よりも構想力が求められている。このためには、「社会のニーズを知り、多面的視点でより良い社会を構想し、その構想をICT技術で実現していく構想力とそれを実践する取り組みが必要になる。具体的には、観察・気付き、発想・問題発見、構想(問題解決)、実践・見直しの観点にもとづいた教育モデルを初年次教育から産業界と連携して構築していく必要があることを課題提起し、このような人材育成に向けて本協会の情報専門教育分科会が取り組んでいる産学連携をベースとした教育モデルについて、情報通信系とデザイン・コンテンツ系のイメージを提案し、意見交換を行った。

3.ICT活用人材の教育についての意見交換

 話題提供、課題提起をもとに産学連携による分野横断型の情報系人材の育成について討議を行った。以下に主な意見を掲載する。
 分野横断型の教育について、「一つの領域を極める専門性」と「広く横断的な学び」のどちらが企業で求められるのかとの意見には、どちらも重要であるが「広く横断的な学び」による視野の広さや発想力がイノベーションの源泉になる。ただし、開発部門では専門性を深く追求するため、「一つの領域を極める専門性」が必要である。
 イノベーションに向けた実践的な構想力の育成モデルが提案されたが、企業が求める人材イメージはどうかとの意見に対して、企業から「専門知識だけでなくスピード感を持って自分から問題発見・解決に取組める構想力を持った人材が求められる」ことが紹介され提案内容とのマッチングが確認された。
 イノベーションに取り組むための人材育成に企業としてどのように取り組んでいるのかとの質問に対して、企業でも具体的な研修は確立されていないが「やる気があり、自主的で具体的な発想」については積極的に意見を聞き、取り上げる取り組みを進めていることが紹介された。
 分野横断型の教育体系、構想力の育成などを考えたいが学内の理解・調整ができず実現が難しいとの意見に対して、現状では授業科目が独立していて、科目間の連携がとれていないことが問題である。この解決には教員同士が主体的に知識を組み合わせる工夫が必要で、1科目からでも連携して最良の教育を提供できるよう行動する努力が求められることが話し合われた。
 文系の学部での情報系人材の育成をどのように考えるかとの質問に対して、情報通信系企業では多くの文系学部の卒業生が活躍しており、企画や構想の場面で力を発揮している。そのためにはICT活用力に加え、統計学や自然科学、社会と連携した現場情報の教育などの教育が重要である。

4.産学連携事業「大学教員の企業現場研修」、「社会スタディ」の取り組み報告

 本年度の「大学教員の企業現場研修」及び「社会スタディ」の実施状況を報告し、参加者からの高い評価を受けていることから、今後も継続・充実・拡大していくことが報告された。

社会スタディ

 未来を切り拓いていくためにどのような学びをするべきか、早い段階から学生がICTの重要性に興味・関心を抱き、学びに入れまるよう「気づき」と「目的意識」を支援することを目的に全国の大学生に参加を呼びかけたところ、64名の応募があり、56名小論文で選考したが最終参加者は50名となった。参加学生の内訳は、1年生26%、2年生が74%と大半が2年生であった。大学は、国立2校、私立23校の25校であった。
 社会スタディの進め方は、東京大学大学の須藤教授から「イノベーションに求められる学び」、富士通株式会社知的財産本部の西川シニアエキスパートから「利用者視点での新たな価値創造とICT」、株式会社NTTドコモの栄藤執行役員から「夢を追求し、イノベーションを創出するデザイン思考と分野横断学修」、株式会社ドワンゴ取締役で慶応義塾大学の夏野教授から「ICT革命による日本再生」の順で、それぞれ20分の情報提供と30分の質疑応答が行われた。以下に、情報提供の概要を掲載する。
 ICTの進展により、今までの常識では考えられないような新しい研究やビジネスが展開されてきている。このような社会で活躍するには、常識にとらわれない発想力を持ち、自分の基幹となる学問だけでなく他分野の動向にも興味を持ち、関連付けて考えることが大切である。グローバルな社会の潮流に関心を持ち、ICTを用いてビッグデータなどを活用することでイノベーションに挑戦してほしい。
 ICTの発展で世界の潮流は「モノ」から「コト」へ大きく変化しているが、この取り組みに日本は乗り遅れている。ICTを活用して「気づく、想像する、構想する、実行する」をという軸を持ち、「考えない、判断しない、夢は持たない、上司の言いなりに徹する」社蓄サラリーマンにならないよう、自分で考える習慣を身につけてほしい。ICTと英語はこれからの社会では必須になるので得意にならなくてもいいが、苦手意識だけは持たずに学びを続けてほしい。
 アイディアを組合せ、共感を得て新しい価値を創造することがイノベーションである。それには社会の動きに対する興味・関心を持ち洞察する力と技術と社会を関連付けて課題解決を自分でデザインできることが必要になる。学生時代にコードが書ける程度のICT知識と将来に向けて情熱が持てる目標を身に付けてほしい。
 ICTは業務・検索・ソーシャルの3革命をもたらし、社会が大きく変化している。
 これからの時代は、組織の中で通用する人材ではなく社会で通用する人材がもとめられる。それには情報の解釈・活用ができること、議論と協調が使い分けられること、想像力と創造力を駆使して新しい付加価値を創り出せることが求められる。大学で多面的に学び、多くのことに興味を持ち、新しいことに挑戦してほしい。摩擦や失敗を恐れずに積極的に挑戦してほしい。
 質疑応答後の気づきの整理と発展では、3名でグループを構成してICT活用して未来に向けてどのように関わっていくかなど、意見交流を行った。どのグループも熱心に意見交流しており、学生一人ひとりに未来に立ち向かって行く意欲が感じとれた。なお、3月末に参加者の学びの成果報告書を委員会で審査し、43名に修了証を発行するとともに特に優秀と認められた2名には「優秀証」を発行し所属大学長に報告した。


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