特集 データサイエンス教育を知る

立教大学における
「データサイエンス副専攻」

山口 和範(立教大学 経営学部長)

1.はじめに

 本学では、2016年度からグローバル教養副専攻制度がスタートしました。この制度は、各学部での専門の学びに加え、他学部や種々の組織が提供するプログラムを学生が自由に選択して履修する制度です。一つの専門にとらわれることなく、多様な視点を持ち、複数のディシプリンの学びの方法を身につけることを目的の一つとしています。
 一方、本学の「データサイエンス副専攻」は、2018年度からスタートします。このプログラムの提供の母体は、立教大学社会情報教育研究センターで、このセンターは全学の統計や社会調査の教育と研究をサポートするために2010年3月に設立されました。社会情報教育研究センターについては、[1]で紹介していますので、ご参照ください。
 本学には10の学部がありますが、すべての学生がグローバル教養副専攻制度の対象で、データサイエンス副専攻も全学生を対象としたプログラムです。

2.データサイエンス副専攻の目的

 データサイエンス副専攻では、「グローバル人材に求められるデータ活用力を身につける」をサブタイトルとし、2013年6月に閣議決定された『日本再興戦略-JAPAN is BACK-』の「4.世界最高水準のIT 社会の実現、⑥産業競争力の源泉となるハイレベルなIT 人材の育成・確保」で述べられている“IT やデータを活用して新たなイノベーションを生み出すことのできるハイレベルなIT 人材”として必要な、データ活用力やIT技術を身につけることを目指して構想してきたプログラムです。
 各学部で学ぶ専門性をよりグローバルに活用できるためのスキルを涵養する副専攻としての位置づけであり、新たなイノベーションの担い手としての専門性を重視しながら、証拠に基づく意思決定や判断を行うことができるデータ活用力を身につけることを重視しています。
 具体的には、単なるツールとしての分析手法を身につけることを主目的とするのではなく、考え方の基礎としての統計的思考力やエビデンスに基づくコミュニケーション力の涵養を強く意識した科目内容になっています。統計的な学びについては、アメリカ統計協会が提示しているGuidelines for Assessment and Instruction in Statistics Education (GAISE)レポートに準拠する形で内容を構成しています。
 さらに、社会情報教育研究センターには政府統計部会が設けられていることもあり、公的統計の活用を学ぶ内容もこのプログラムの中には含まれています。信頼できる情報がどこにあり、どう活用できるのかを知ることはとても大切であると考えています。

3.データサイエンス副専攻の構成

 データサイエンス副専攻は、社会情報教育研究センターが科目提供している全学共通科目およびデータサイエンスに関わる各学部の専門科目で構成されます。なお、全学共通科目だけでも修了可能ですが、多くの学部の学生が専門科目を含めた形で修了可能な科目構成となっています。
 この副専攻は、日本における調査の仕組みや日本の公的統計の利活用を学ぶ科目群、日本語で展開される統計学や調査理論、多変量解析、データ分析実習系科目からなる科目群、さらに英語で展開される科目群で構成され、それぞれの科目群は基礎系科目と先端系科目に分類され修了に必要な単位数が設けられています。

4.データサイエンス副専攻の特徴

 今回のデータサイエンス副専攻では、「グローバル人材に求められるデータ活用力を身につける」ことを主として、専門性をより活かすためにデータ活用力を高めるプログラムとなっています。グローバル化の進展で多様性への対応が求められ、そこではエビデンスに基づくコミュニケーション力が必要とされます。さらに、資源としての情報の活用力も領域問わず求められます。このような要請に応えられることを目指し、単なる講義のみの学びだけでなく、実社会での活用の場を知り学ぶ機会である本学の産官学連携の取り組みをさらに進めていく予定です。また、英語での学びの機会を増やすことも副専攻化する際に意図しています。英語科目の展開については、本学が提携している海外大学の教員の協力のもとオンデマンド科目として実施しており、今後増加させる計画です。

5.今後の課題

 データサイエンス副専攻は2018年度以降に入学した学生を対象とした副専攻プログラムであるため、登録は次年度以降の実施となります。学生には、この副専攻の目的であるとか、将来にわたるキャリアパスとしての意味などをきちんと伝える必要があり、現在、学生向けの広報ツールを種々作成しているところです。学びの内容の充実は当然ですが、学部の専門に合わせて副専攻として学ぶモチベーションを高めるための広報についての重要性を強く意識しています。

参考文献
[1] 『大学教育と情報』、Vol.19, No1, 2010

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