特集 授業の価値を最大化する教育のICT革新

ICTを活用し海外の学生と行う国際連携型の
協働学習「COIL」の教育効果と課題

池田 佳子(関西大学 国際部教授)

1.はじめに

 2020年の春頃から急激に拡大し、人々を苦しめているコロナ禍。「人災」と呼ばれ、そして海外では「人命危機(Health Crisis)」と呼ばれています。被害が長期化している中、もはやコロナ禍は人々の健康だけではなく、米国の本年度GDP-32%といった想像を超えた経済危機も広がりつつあります。このコロナ禍は、人々の流動性を凍結させました。本稿が取扱うのは、教育の中でも「国際教育」で、一般的には「海外派遣留学」や「外国人留学生受入」を主体的に取扱う分野です。留学や教職員間の研究交流など、移動を伴う実践のことを「モビリティ」と呼びます。コロナ禍はこのモビリティの一切を封じました。海外ではまだ第1波の収束が見えない地域もあります。国内も、7月〜8月の第2波の台頭もあり、国境間移動の緩和が今後徐々になされたとしても、対象とされる国・地域は限定的です。20代〜30代といった若い世代の感染が広がる中、大学生層が従前のように海外へ、そして日本へと、ひっきりなしに飛び立つ状況が戻ってくることは当面想像できません。
 この最中、国内外の国際教育関係者の対コロナ禍のアクションが始まりました。試行錯誤が続いているわけですが、モビリティに特化しすぎていた視点を転換し、「国内における国際化(Internationalization at Home/IaH)」に目が向くようになりました。IaHの取組みとしては、例えば地元コミュニティーにすでに存在する多文化を再考し、それを生かした国際交流を国内に居ながら展開する、海外へ移動はできないが、他の手段でつながることで国際的な知見や感覚を培い、グローバル人材教育を行うといったことが考えられます。これに対し、海外へのモビリティを前提とする国際教育は、「国外における国際化(Internationalization Abroad/IA)」と言います。本稿が焦点をあてる「COIL(Collaborative Online International Learning)」は、オンライン(ウェブ)ツールを活用し、海外の大学との協業をもって、国内の科目(クラスルーム)と海外のクラスルームをマッチングさせ、協働学習(Collaborative Learning)を行うという教育実践(ペダゴジー)です。このCOILは、ここで上げた国際教育の類型でいえばIaHに該当します。
 先述のコロナ禍下の国際教育事情として、世界中そして国内の教育者の注目がCOILをはじめ、ICTを活用して海外とつながり、留学体験で培うべき学びを得ることができる教育実践に向かいはじめました。この背景には、まず緊急自体宣言を受け、感染防止対策として講じられた、教育機関における遠隔教育への全面転換が大きな後押しとなっています。急遽始まったオンライン教育に、多くの教育者は戸惑いました。様々な尽力の末、ICTインフラの環境整備が進み、教育者のデジタルリテラシーレベルも底上げされたことで、オンラインで海外とつながり学ぶことへの抵抗感は一気に薄れたと言っていいでしょう。本稿では、COILという教育実践を紹介し、その事例や、現在の国内外の広がりを解説します。現在進行形で広がりを見せる新しいかたちの国際教育、この行く末についても、私個人の所見に一部とどめつつも、共有したいと思います。

2.COILという教育実践

 COILは、日本語名称として「オンライン海外大学連携型協働学習」と呼んでいます。コロナ禍の中で急に取り上げられるようになってから、「オンライン留学」といった言い方をされることもあります。しかし、筆者自身は後者の呼び名は誤解を招きやすいので、あまり評価していません。というのは、COILの最も重要な要素である「協働学習」の認識が薄れてしまい、例えば「語学学習」といった、一般的な「留学」に世間が期待する効果だけを狙った実践のように捉えられてしまう危険性があるからです。
 COILの[C]は、協働学習(Collaborative Learning)を意味しています。海外の大学の科目(クラスルーム)と、国内の科目(クラスルーム)がペアを組み、それぞれのクラスの履修学生が混合したバーチャルの国際的な小グループを形成し、彼らの主体的な行動を前提としたプロジェクト型の学習活動を行います。海外と遠隔でつながってこの「バーチャルチーム」は形成されるので、必然的にICTツールを用いることになります。つながる国外の大学の場所によって、つながる方法は多様化します。時差が大きい場合、同期型でClassroom-to-Classroomでつなぐことは難しいので、非同期型のツールを用いたコミュニケーションが主体となります。例えば本学のCOILパートナーにはニューヨーク州やサウスカロライナ州といった東部標準時間(EDT)の大学が多いですが、この場合13-14時間の差があります。その場合、本学ではFlipgridやPadletのような、動画ストリームやメッセージの共有ができる非同期型コミュニケーションに適性のあるツールを学生が駆使してプロジェクトを進めています。また、後述しますが、本学でCOIL型教育にカスタマイズしたLMS(Learning Management System)「ImmerseU」を本学と米国のスタートアップIT企業と共同開発しましたので、このLMSをフル活用しています。
 協働学習は、国内の能動的学習の手法として積極的に取り込まれている実践ですので、本稿であえて深堀りする必要はないでしょう。1点のみ、この学習が、国際教育としてなぜ効果的なのかという点を言及しておきたいと思います。協働学習の理論では、「肯定的他者間依存(positive interdependence/PI)」という概念が基礎的な要素の一つとしてとりあげられられます。Johnson, Johnson & Holubec (1998: 4)は、以下のように定義を付けています[1]
“Positive interdependence is linking students together so one cannot succeed unless all group members succeed. Group members have to know that they sink or swim together.”
(肯定的他者間依存は、チーム構成員全員が成功しなければ、個人も成功しないよう、学生をつなげることである。構成員となる学生達は、一蓮托生であることを認識しなければならない)筆者邦訳

 自分以外の他者を信頼し、全員で参加し最終目的を遂行する。このプロセスにおける学びは、社会人基礎能力の中の「チームワーク力」「交渉力」といったコンピテンシーとして高く評価できるものです。COILでは、この「他者」に、言語・文化・国籍の異なる人物が選択・志向の余地なく該当します。いったんチームとして成立したら、考え方の異なりも、文化摩擦も、乗り越えて最終アウトプットを出さなければなりません。この最中で、学生達は自分自身の異文化に対する感覚の自覚、コミュニケーションスタイルの違いなどにぶち当たり、それに対峙する自分の変化や葛藤など、多くを体験します。このプロセス自体が生み出す多様な特性は様々ですが、次世代の社会人、グローバル人材に必須とされる異文化対応能力や異文化間コミュニケーション能力が特に成長します。協働学習が必要とする、他者間依存と、そこから生まれる他者との「摩耗(abrasion)」が、国際教育が本来提供したい学びの核心に近づく上で貴重なのです。
 COILは、ICT技術を用いるので、よくソフトウェアだと間違われたり、固定されたシラバスがあるかのように理解されてしまうのですが、他の教育手法同様、個々の科目の活動内容や学習達成目標への適性によって応用する「教授法」です。分野の専門性は問われません。次節で解説しますが、人文系の科目だけではなく、理工系の科目においてCOILを導入した事例も多くあります。さらに、COILは少なくとも2科目(海外と国内)がマッチングされるものなので、その科目同士が同分野の場合や、異なる専門である場合もあります。後者は、「学際的COIL(interdisciplinary COIL)」と言い、より新しい学びや挑戦を学生に提供したい時(例えばゼミ科目など)に非常に良い効果をもたらします。関西大学で行っているCOIL実践は、その活動を既存の科目の中に取り込んでいるため、正規の単位付与をしています。一部、海外と連携を行うことが前提となっている新規設置科目も設けており、学生達は履修の際にCOILを行う科目なのかどうか、シラバスや登録情報をみるとわかるようになっています。
 COILを導入する担当講師は、「COIL教員(COIL Teacher)」、COIL実践の実働を支援する関係者を包括的に「COIL実践者/COILers」と呼んでいます。このCOIL教員にとっても、海外の科目をより理解し、互いの目的を共有し、歩み寄り、双方が納得できるような協働学習プロジェクトを共同で考案する過程で、自身の国際性の向上が可能となります。海外の大学のクラスを知ることは、非常に大きな学びをもたらします。シラバス1つとっても、国内の大学機関で一般的とされる形式やコンテンツが、海外のそれと比較すると大きく異なりがあることに気が付きます。週に何時間の講義があり、履修学生にどのような学習活動とそれに見合う学習活動(正課外学習時間)を期待するのかといった点や、科目としての総合成績評価で使う基準などにも違いがあることがわかるでしょう。国際教育において本分はもちろん学生の国際化ですが、学生が自身のロールモデルとして参考とするのは、目の前にいる担当教員です。その教員自身が国際化することは、「大学教育の国際化」の必須前提条件と言えるかもしれません。
 COIL実践を大学で導入する動きが、コロナ禍の中、国内外で広がっています。大学機関として取り込むということは、担当するCOIL教員やCOIL実践者を体系的に組織組みし、そしてその維持のためにマネジメント努力を投じるということです。ICTについても、大学のカリキュラムとして使用する上で、学内で公式に認知され、個人情報の取り扱いや著作権などの注意点についてルール決めをするといった必要性も生じます。海外との連携で成立する実践であることからも、従来の教育開発系列の部署だけで取組むのではなく、国際部等の部署の「参戦」は不可欠です。COILの導入はすなわち、各関係部署横断型で実現させる、大学教育の国際化事業なのです。

3.国内におけるCOILの展開(沿革から現在まで)

 本学では、コロナ禍以前、6年前からCOILを大学の取組みとして継続してきています。現在は、IIGE(グローバル教育イノベーション推進機構)という、COILをはじめとした多様なオンライン教育を融合した国際教育実践を推進するセンターにまで成長しました。筆者は、6年前の開始当初からこの取組みに関与してきました。導入当初は、「海外留学」にやる気を起こそうと躍起になっているのに、留学するなとは何事だといった、COIL等の取組みへの反発や疑念を示す意見を国際教育関係者からよくいただきました。これらの「抵抗感」は、実はとんでもない誤解の上に生まれています。COILのような教育実践は、学生の「外向き志向」、つまりは海外をより身近な対象と捉え、海外留学へと一歩踏み出すきっかけや、実際の留学前に必要な準備(レディネス)の涵養に貢献します。留学を阻害するどころか、促進する取組みだと言っていいでしょう。従来存在しない取組みであったことから、国際教育界では「現状バイアス」が心理として働き、概念を紹介しても反応は鈍く、2018年頃まではCOILを取り込もうという大学機関は国内では本学以外には、ほんの数校(国際教養大学等)でした。
 国内で状況が転じたのは、実はコロナ禍以前です。2018年に始まった、文部科学省の大学の世界展開力強化事業が、日米の関係構築を主旨として「COIL型教育を活用した米国等との大学間交流形成支援」をテーマとして設置し、合計11の大学が補助金対象として採択されました。この公募を皮切りとしてCOILという教育実践が広く知られることとなり、従来から取組んでいた本学は「プラットフォーム校」として、これからCOILに取組む大学等への普及や支援を行う役割を担うことになりました。日本国内では「スーパーショート型留学」と言われる短期海外派遣留学や受入留学プログラムに対する学生奨学金支援や、トビタテ!プロジェクトの開始など、物理的に海を渡り留学させる取組みが加速化しつつある最中でのCOIL実践の推奨でしたが、モビリティを促進するために活用するのだという理解が、ようやく定着し始めたのです。
 現在、この世界展開力強化事業において採択された大学に加え、補助金等の支援を頼ることなくCOIL実践を展開しようとする国内の大学が加盟できる「JPN-COIL協議会」が発足しています。現在21大学が加盟しており、本学の筆者の属する部署(IIGE)が事務局を担っています。本協議会では、運営委員会以外にも、オンライン・オンサイト研修の提供や、COIL実践のノウハウや世界の状況を発信する季刊誌(i-Paper)の発行等を定期的に行っています。国内の加盟大学の海外のパートナー大学も、この協議会の活動の恩恵を得ることができます。本学独自でも「IIGE 海外ネットワーク」の拡充を進めており、近年ではUMAP(アジア太平洋モビリティ機構)という600近い世界中の大学のコンソーシアムと連携でCOIL実施大学の拡充に尽力しています。

4.COILの事例

 COIL実践のパターンは様々ですが、本学においては、ここで紹介する2つの型に大別することができます。まずは、海外の大学の1つのクラスルームとつながり行うCOIL、これを「Classroom-to-Classroomタイプ」とここでは称します。時差などの問題が少ない場合は、実際の授業時間内に海外の大学とオンラインでつなぎ、議論を行ったり、小グループ別の活動を行ったりします(写真1参照)。タイミングが合わない場合は、ウェブツールなどを用いて非同期での活動や、授業時間外で学生達だけでオンラインで集まり、協働学習の形式でプロジェクトを進行します。教師はつないでいる時間の中で司会役を務め、学生が主体的にコミュニケーションをとる支援を行います。

写真1 マレーシアとのCOILの様子
写真1 マレーシアとのCOILの様子

 もう1つの型は、「Multilateral タイプ」とここで称します。複数の海外大学と国内の大学がカリキュラム設計を協働で設計し、複数の国・地域出身の学生達の混合グループでプロジェクトを行います。Multilateral タイプは、今一つ発展型もあります。
 写真2にあるような、多数の海外の大学の学生達(と国内の学生)が参加し、1つの大学が設計するカリキュラムに沿ってCOILを行うものです。2019年から本学で始めたUMAP-COILプログラムがそれに該当します。

写真2 UMAP-COIL2020の教育場面の様子
写真2 UMAP-COIL2020の教育場面の様子

 COILはペダゴジーだと、冒頭でも記載したように、その時点における状況、学生層のニーズなどを鑑み、実りのあるCOIL活動を設計することが肝要です。ここにあげた2つの型を逸脱するとCOILではない、ということでは決してありません。

5.新たなCOILのためのツールImmerseU

 ここで紹介したCOIL科目事例には、複数のウェブアプリ・ツールが用いられています。本学においてこれらの科目を実践している教師は、十分なデジタルリテラシーを持ち、学生へのツール使用の手ほどきや、トラブルシューティングなどもしっかりとできるよう、研修を経ている者ばかりです。それでも、複数のこのようなオープンツールを用いると、学生のアウトプットの集計や、グループ活動の過程をモニタリングする際に、いくつものアカウントを駆使しなければならず、学生も教師もその工程が煩雑だと感じることもしばしばありました。そこで、先述したようなCOILで必要な学習活動が一挙に集約されたLMSの開発に乗り替えました。ImmerseUというクラウド型LMSで、各学生の端末に負荷はありません。写真3にそのダッシュボード画面を示しています。ビデオチャット、テキストチャット、活動レッスンの作成と提出管理、オンライン講義の設定、課題の締め切りリマインダー等、COIL実践で最も頻繁に使われるツールの機能がすべてImmerseUの中で完結します。

写真3 ImmerseUのダッシュボード画面事例
写真3 ImmerseUのダッシュボード画面事例

 オープンLMSで最も教師にとって煩雑なのは、履修学生をサイトに紐づける登録の過程です。大学が取り込んでいるLMSの場合、学生情報がすでに紐づけられているので、この過程は必要ありません。教師の負荷としての登録作業を最大限単純化するため、ImmerseUではメールと登録コードを活用した手法で学生自身が科目ページに連携される仕組みとなっています。登録が完了した学生達は、教師によってグループ作成を行い、COIL実践中にグループと連絡をとったり、ビデオ会話を行ったりということができるようになります。同期型コミュニケーションとしてZoomやSkypeを用いることもできますが、ImmerseUにもAmazon Chimeをベースとしたビデオ会議ツールが備わっており、別アカウントを必要としません。現在、COIL活動に参加した学生の異文化対応能力・理解能力を測定するツール(BEVI/Belief, Events, and Value Inventory)をImmerseUに付帯する作業も進んでおり、近年中にはCOIL科目の評価についてもワンストップ化することができるようになります。本学では、本プラットフォームを、従来の大学規定のLMSと併用していますが、ログイン・登録のステップはシンプルなので、特に学生からの苦情等はありません。逆に言えば、この1つの手間で従来の複数のアプリのアカウント作成作業や、個人情報の扱い等の問題を解決できていると言えるでしょう。

6.COILの教育効果

 COILに取組む上で、最初に関心が向くのが、この実践がもたらす教育効果はどのようなものなのか、という点ではないでしょうか。各大学、教育機関はそれぞれの個性があります。同じ結果をどの機関においても望んでいるわけではないでしょうし、履修する学生達の志向によっても、その成果は多様なものとなります。以下に共有するのは、本学において実感しているプラス効果です。あくまでも参考として読み進めていただきたいと思います。
 まず、本学において重要視しているのは、国際教育の特性として、海外留学体験を全員に提供しグローバル人材の育成を行うという目標を掲げるのではなく、様々なニーズと事情を持つ多様な学生層に、より幅広く、可能な限り全員に、一定の質が保証できる国際的な学びの体験を提供するということです。海外派遣留学ももちろんその一環ですが、経済的理由、語学的な準備不足、専修の学部カリキュラムが多忙すぎて留学できない、部活やアルバイトがある、そして就活の縛りなどといった多くの要因で断念する層はやはり多く存在します。COIL実践は、これらの問題が支障になりません。日本にいながら、異文化間コミュニケーション、多文化共生の知見の涵養、語学運用能力の向上を行うことが可能となります。本学では、COIL科目を履修する前と後において、異文化対応能力等を測定できるツール(BEVI)や英語による口頭コミュニケーション能力を検証できるテストを活用し、T1/T2検証を進めています。この中で、同期・非同期型のいずれのCOIL体験においても、コミュニケーション能力がぐんと伸びることが試行的にわかっています[4]。BEVIというツールの結果を見ても、異文化を背景に持つ者との活動を経て、一定の対応能力・受容能力を得たと自信を持つ学生を多く輩出しています[5]
 次に、COILの教育実践は、「協働学習」を根幹とするため、その活動を通して様々な涵養すべきスキルとコンピテンスが一度に鍛錬できるという効果も実感しています。オンラインで実施するので、デジタルリテラシーの向上は自然についてきます。Googleをブラウザーとしてしか用いてこなかった者が、将来ビジネスでも活用できるレベルまでツールを駆使できるようになる。中国や中東のようにファイヤーウォールがブロックしないアプリやウェブツールを把握し、それでもバーチャルチームで活動できるようになる。このようなスキルが、体験を通して培われます。さらに、1つのプロジェクトをメンバー間の交渉を経て達成していく上で、社会人として必要な精神面での成長も期待できます。語学力やITスキルを向上させながら、こういった精神面も涵養することができるので、能率も非常に高いと言えます。

7.おわりに(課題と今後の展望)

 ここまでCOILのような教育実践が持つポテンシャルについて解説をしました。本稿の読者にとって、少しでも新しい知見が得られ、関心をもっていただけたら幸いです。大学規模で取組む流れが各所で生まれつつありますが、最初の一歩は、やはり1科目、1教室からです。本学も、最初は1人の教員と3つの科目からの、ほそぼそとしたスタートでした。そこから段階的に大学教育の国際化戦略の1つの柱としての成長が始まったのです。
 オンライン教育を融合した国際教育は、まだまだ課題も残されています。例えば、COIL実践の歴史はまだ浅く、効果検証の事例が個々のケースや、語学能力面等の伸長に限定されていることは、喫緊に改善されるべき側面です。特に、異文化対応能力の伸長を定量的にも可視化できるようにすること、そしてその他の特性の成長が、参加した学生のエンプロイアビリティ(就職力・就職可能性)の向上にどのように関係付けられるのかといった点の解明が急がれます。国外で指摘されている課題としては、遠隔で世界中どことでもつなぐことができ、通常では想定できない国や地域の学生達とのCOILが奨励されているのにも関わらず、先進国と発展途上国、北と南といった社会的・政治的な区分の阻害を避け切れていないことや、一部の国におけるICTインフラがパートナー機関とインバランスを起こし、だれでも公平に参加できる活動として機能しないことがある(Digital Divide)といった点があげられています。これらの問題を解決するには、国境や大学機関・組織を越境した視座が必要です。COILの醍醐味は、海を隔てた世界のパートナーと協働することです。このパートナーを救うことは、すなわち自らを救うことになります。グローバルシティズンシップ(地球市民)の観点からこれらの課題を解決していく意識改革が目下必要ではないでしょうか。  コロナ禍以前と比べて、今現在の状況の変化は、上記以外の課題の新たな洗い出しの必要性を生み出しています。コロナ禍は、長期化していますが、いつかどこかの時点で収束の目途が立つことでしょう。この「インターバル」の期間に、COILのようなオンラインにおける教育実践を定着させる努力が求められます。また、収束後、例えばモビリティが復活した場合、今度はCOILのような教育実践はお蔵入りするのか、それとも定着化した後なので、今度はモビリティとの融合・混合型の新しい国際教育の在り方が「ニューノーマル」となるのか、環境の変化が極めて流動的な中、直近でどのような進歩を目指すべきなのか、そしてどのように次世代を創造するのか、本学IIGEとしても、本取組みを推進する人間としても、日々検討し、模索しながらもアクションを起こしてまいりたいと思います。

謝辞

 本学におけるCOILの取組みは、大学執行部および国際部の継続的な支援なくして実現しませんでした。多大な尽力をいただいた前田裕国際部長をはじめ、国際部事務局スタッフの皆さまに御礼申し上げます。また、科目担当および事業推進に、いつも惜しまぬ貢献をしてくれるIIGEチームメンバー(Don BYSOUTH, Elvita WIASIH, Sajjad POUROMID, Jiunyan WU, Michele FUJII, Izumi WADA)にも感謝します。

参考文献および関連URL
[1] Johnson, D.W., Johnson, R.T., & Holubec, E. J. (1998). Cooperation in the classroom (pp. 4-7). Boston, MA, USA: Allyn and Bacon Publishing.
[2] IIGE/関西大学ホームページ(Last accessed: 2020.08.07)http://www.kansai-u.ac.jp/Kokusai/IIGE/
[3] 文部科学省大学の世界展開力強化事業ホームページ(Last accessed : (2020.08.05) https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/sekaitenkai/1408256.htm
[4] 池田佳子(2016).「バーチャル型国際教育は有効かー日本でCOILを遂行した場合―」『国際交流』 vol. 67, 1-11.
[5] バイサウスドン・池田佳子(2020). 「国際教育実践の学習効果測定の手法の一考察―COIL PlusプログラムにおけるBEVIの活用―」『関西大学高等教育研究』11号, 131-136.

【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】