事業活動報告 No.3

2020年度 大学職員情報化研究講習会
〜ICT活用コース〜 開催報告

 大学職員情報化研究講習のICT活用コースは、「コロナ禍のオンライン学生支援を考える」をメインテーマとして掲げ、2020年12月22日(火)、Zoom会議室によるオンラインで開催し、44大学、1賛助会員から86名の参加があった。冒頭に、木村増夫運営委員長(上智学院)から本講習会のイントロダクションとして、本協会の概要と文部科学省の方針を含めて講習会の趣旨が説明された。

【プログラム1】

「コロナ禍におけるオンライン学生支援の取組みと課題」

上智大学 学生局 局長 柳澤 広美 氏

 上智大学よりコロナ禍におけるオンラインによる学生支援(以下オンライン支援)についての報告があった。
 オンライン支援の準備として、早期に事務職員全員にZoomのアカウントを配付し、リモート作業環境を整備した事が効果的であったことが述べられ、コロナ禍で孤立感や不安感を持つ学生が多くみられた事を受けて、以下の支援を実施した。
 正課への支援は学部学科等を中心に行い、正課外への支援は、思い描いていた大学生活を余儀なく変更された新入生を視野にいれたイベントを学教職協働で企画した。まず、オンラインイベントの告知を集約したツイッターを立ち上げ、ピアサポート団体によるオンラインランチ会の開催や自身の所属以外の分野でも気軽に参加できる教員によるカフェ形式の講座、英語落語、禅、書道などの日本文化体験、心と体のメンテナンスを目的としたYouTube配信など様々な企画を実施した。
 また、キャリア支援としては、緊急事態宣言発出と同時に個人面談をオンラインに切替え、外出自粛や採用活動の中断・中止による不安を解消すべく、全ての情報をオンラインでとれるWeb化に対応した。ガイダンス以外にも、質問や感想をリアルに受付けるチャットを利用したキャリアカフェも定期的に開催し、多くの学生が参加した。
 メンタルケアとしては、対面に加えて電話、Zoomによる面談も実施し、緊急事態宣言中も学生対応を維持した。一方で障害のある学生や海外在住の学生に対してはフォローが困難さを改めて痛感したことが報告された。
 最後に、オンライン支援のメリットとデメリットをあげ、対面とのバランスをとる事の重要性が述べられた。また、実施においては対話が一方通行にならないよう留意し、より企画の意図や学生へ伝えたいメッセージを込める事が必要であると強調された。

【プログラム2】

「オープンキャンパス〜オンライン授業体験 環境構築と実施事例」

金沢工業大学 情報フロンティア学部長 教授 出原 立子 氏

 今年度、金沢工業大学では、コロナ感染拡大防止を優先し、オープンキャンパスとキャンパスツアーは、キャンパスで実施しないこととした。具体的にはオンライン相談会・説明会とオンライン学科紹介・授業体験はいずれもYouTubeライブとZoomを併用したライブ形式で実施し、学科紹介やキャンパス・施設紹介は動画でWebから情報発信する方法を採った。
 授業や研究の紹介ではリレー形式で自宅・研究室など異なる場所からライブ中継で行い、質問コーナーには学生が自宅から参加して、高校生からのZoomチャットでの質問にリアルタイムで対応した。
 学科紹介では映像合成を用い、チャットで高校生と対話を持った。
 オンラインキャンパス体験ではVR SNSを活用し、高校生がアバターを通して自分で歩いて回る方法を採った。
 このVR SNSは情報学科、ロボティクス、建築学科の学生がSlackやBOXなどのツールを使いながら共同でUnityのプラットフォーム上で実現した。高校生への紹介方法の制作であると共に学科を超えた学生たちの学びの場になった。
 相談会、説明会、学科紹介、授業体験はライブで質問にも対応し、キャンパス体験では自分で能動的に歩いて回ることにより、高校生自身が「オープンキャンパスに参加した」と実感を持つことを重視している点が特徴的だった。

【プログラム3】

「国際教育の提供〜オンラインによる海外連携型協働学習」

関西大学 グローバル教育イノベーション推進 機構副機構長 教授 池田 佳子 氏

 世界規模の問題の深刻化が企業等におけるSDGsの取組みを加速させている。そのような中、新しい時代を担う国際教育の在り方のひとつとして関西大学で実践されているCOIL(Collaborative Online International Learning)型学習モデルについて報告があった。
 COILは国際社会において地球的視野に立って主体的に行動するために必要と考えられる態度や能力の基礎を養成する実践型の学習モデルである。COILではICTを活用し接続された文化的背景の異なる多国籍・異文化集団グループにおける協働が必須となる。外国語を用いチームメンバーとの意思疎通や説得などの交渉を行いつつ、コンセンサスを得たり、期待される役割を演じたりする。COILで涵養できる特性やスキルは様々であり、これまでは複数の授業をもって対応していたものが総合的に鍛錬できる可能性がある。加えてCOILの実施プロセスでは教員の成長も期待できる。教員自身が、設定されたテーマを通し専門知識の理解と定着を図る努力を行う。また、協働学習が首尾よく展開するように学生に適宜アドバイスを行う。併せて時間管理や海外クラスの担当者とのコーディネート作業なども必要であることから、教員の国際化FDとしても有効と考えられる。これらから、COILはSociety5.0が求める国際性を持った人材の特性を効果的に培う教育実践の一つと言えると考えられる。
 現状では、COILを含めICTを用いた国際教育には課題も多い。例えば、オンライン教育は空間上の制約を減らすことや学習の進捗の自由を与えることなどを可能としたが、一方で受け手と話し手の相互で思う「共有された情報」の誤差が大きいこと(面白いと思って話しているが、受け手はそう思っていない)や、多次元・多側面(匂い・色・身体・温度等)を伴う演習や実践を伴う学びを仕上げるには無理がある。デジタルデバイド(情報格差)の問題もしかりである。今後、従来型の国際教育におけるソーシャルデバイド(社会格差、国際教育を望む者全員が留学できるわけではない)の問題も含め、オンライン教育が国際教育の打開策となるよう仕掛けていく必要性を感じるとのことであった。
 なお、関西大学では、大学の世界展開力強化事業として採択された他大学とともに日本COIL協議会を発足しており、この2021年3月からは大学単位だけではなく個人単位でも参加受け付けすることを検討されている。ご関心のある教員また大学はご連絡いただければとのことである。

【プログラム4】

「キャリアカウンセリング〜チャットボットによる就職支援」

聖心女子大学 キャリアセンター長 教授 大槻 奈巳 氏

 コロナ禍により、強みとしてきた対面でのキャリアカウンセリングやセミナーが実施できなくなったことに対し、オンラインによる種々のキャリア支援を補完するために導入されたチャットボットの活用について報告があった。
 聖心女子大学では、専門のキャリアカウンセラー15名を配し、年間3,000件のキャリアカウンセリングを実施するなど手厚いサポートを講じてきた。しかし、コロナ禍により対面でのサポートができなくなったため、基本的な質問については自動応答チャットボットが対応し、個別ケースについては有人対応を図るという体制が導入された。その結果、多様な質問や相談に対する24時間体制でのオンラインによる自動対応を通じて、均一な質のサポートや従来では接触できなかった新たな学生層へのアプローチ、学生の動向や相談内容の蓄積などができるようになった。学生からは、カウンセリングが受けられない時期でも相談できる、いつでも、些細なことでも気軽に質問できるなど好評を得ている。
 このチャットボットは、キャリアカウンセラーの派遣会社から提供されたもので、これまでに蓄積された相談傾向などをもとに、AIによる最適なアドバイスが可能なシステムである。今後は、精度の高い応答を実現するための利用促進や定期的なブラッシュアップ、相談情報を有効活用するためのIT人材の養成、現場とチャットボットのサポートとの整合性をチェックする体制の構築などに取組んでいくとのことである。

【プログラム5】

「オンライン入試〜テレビ会議方式による面接試験」

桜美林大学 入学部 部長 高原 幸治 氏

 各大学がコロナ禍において授業や入試のオンライン化を検討される中、桜美林大学においては授業、学生募集の広報活動のオンライン化の初動が非常に早かった。学生募集活動は2月中旬、授業については3月上旬に検討を進めていたことにより外部から高い評価を受けられた。
 対面とオンラインの併用は受験生の規模を考えてリスクがあると判断し、オンラインのみに絞ったとのことだが、結果、接続不良等で再試験になったケースは無く、外部からのクレームも無いとのことだった。オンライン面接と言っても実際に対面で行う面接試験と基本形は同じとのことで、受験生に事前にZoomのURLを連絡し、受験生は当日設定された時間にアクセスする。その後、共同開発された面接誘導システム「Aeos」で受験生を面接室に誘導することになる。「Aeos」ではデータを取り込むことにより、受験生の誘導と面接の評価が可能になっている。試験当日は、教職員間のパソコンスキルや、大学外から接続するとトラブルが危惧されたことから全員本部である町田キャンパスに集合し、本部と各部屋をSlackで繋ぎ、全ての情報を共有されたとのことであった。
 オンライン面接の円滑な運用のポイントは大学側のインフラと人材が揃っていること、事前の接続テストの実施にあった。受験生・教職員は1週間前の週末に時間指定して一連の流れを経験し、不安を取り除いている。

 オンライン面接によって様々な学内のパンドラの箱が開いたとの言葉どおり、さらに大学内のオンライン化が進むことを感じさせる講演であった。

【プログラム6】

「オンライン授業〜学生質問への自動回答」

近畿大学 理工学部情報学科 大谷 雅之 氏

 情報学科の授業「情報メディアプロジェクトⅡ」で行っているSlackを利用した学生質問への自動回答の取組みについて報告があった。
 授業は教員3名、TA6名、IT企業技術者が学生約100名を担当し、システム構築実習を通じて、AI・Web・通信等を駆使したシステム開発が行える技術者育成を目的としている。学生はオンデマンドのビデオ教材で基礎知識を修得し、質問は「バーチャルTA for Slack」で行う。学生がSlack Botに質問すると連動した対話型AIが返答する仕組みで、オンライン授業を支える自己進化型AIの実現を目指している。
 対話型AIはSCSK社が開発した「manaBrain」(IBM Watsonベース)を応用したもので、2018年9月からの運用で正解率約56%が確認された。Slackと連携した「バーチャルTA for Slack」は2020年9月からの運用だが、学生の質問は約1,000件増加した一方で、回答不能や悪評価も増加した。回答率も約33%に留まり、対面による難易度が高い質問が「バーチャルTA for Slack」に移行したためと推察される。今後の課題として ①高難易度の質問対応 ②回答収集の簡素化 ③スクリーンショットでの質問に対応する画像・映像分析技術との連携 などが認識された。

【プログラム7】

「新入生支援〜上級生・職員が参加したオンライン交流サイト」

関西大学 理事長付局長、教育後援会 幹事長 川畑 一成 氏

 関西大学では、コロナ禍において「友達ができない」という新入生の不安解消のため、7月1日に関西大学教育後援会が友達づくりを支援する交流サイト「触れずにフレンズ」を開設した。その経緯や運用について報告があった。
 関西大学では、2年前から新入生を対象とした交流会「新入生歓迎の集い」を開催しているが、コロナ禍で今年度の入学式やオリエンテーション、新入生歓迎の集いなどのイベントは見送りになった。また、キャンパスが封鎖され、キャンパスに来ることさえできない時期が続く中、全国の父母・保護者からは「慣れない土地で友達も作れずに一人で暮らしている子供の様子が気になる」という不安の声が寄せられていた。そこで、父母・保護者の組織である教育後援会が、新入生の不安を少しでも早く解消してあげたいとの思いで、オンラインによる友だちづくりを支援する電子掲示板「触れずにフレンズ」の構築を企画した。
 システムの構築には、新入生が安心し信頼して利用してもらうことを目指した。また、可能な限り早急に開始する必要があり、大学に理解と協力を求め、情報部門を司るITセンターの支援を受け、構想から運用開始まで約2カ月で立ち上げに至った。
 運用においては、上位年次生及び事務職員がコンシェルジュ的な立場でサイトに参加し、新入生の相談役としてアドバイスなどを行ってきた。運用開始後、利用者は順調に伸びてきていたが、残念ながら秋学期から対面授業が開始された後は、利用者が減少傾向にある。今後の展開も考えているが、教育後援会主導よりも大学が主体となり運用を担ってほしいと考えている。

−おわりに−

 今年度のICT活用コースは、Zoomによるオンラインでの開催となりました。7大学から、学生支援を中心にコロナ禍における様々な角度からの報告をいただきました。報告の内容は、多くの大学がすぐにでも取組んでいきたいものでした。
 一方、今回の実施方法については、開催後に寄せられたアンケートにおいて、情報提供のテーマについて多くのご要望が寄せられるとともに、参加者相互によるディスカッションの設定など運営上のご指摘もありました。いただきましたご要望、ご指摘は今後の開催の改善に活用させていただきます。
 なお、来年度の大学職員情報化研究講習会基礎コースは9月下旬、ICT活用コースは12月中旬にオンラインでの開催を計画しております。
 最後になりますが、今回のICT活用コースに寄せられましたアンケートの「声」(抜粋)を紹介し、報告書のまとめとさせていただきます。

文責:大学職員情報化研修講習会運営委員会

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