事業活動報告 No.3

2021年度 FDのための情報技術研究講習会
開催報告

1.はじめに

私立大学情報教育協会が主催する本講習会は、大学教員の教育技術力向上を目的とした学外FD活動事業の一つとして位置づけられ、多くの参加者を集めて毎年開催されている。今年度も新型コロナ感染拡大防止の観点からオンラインでの開催として、2月25日(金)の1日のみの設定とした。
 大学教員の多くは、2年に亘りオンライン授業を体験され、授業価値の最大化に向けた教育方法について、改めて見直す機会を持たれたのではないかと思われる。更に、コロナ禍を転機に対面授業に加えて教育のデジタル変革(DX)が進みつつある中で、文部科学省においてもオンライン授業を導入して、学生一人ひとりの可能性を最大限に伸長する学修者本位の教育への転換や、対面授業とオンライン授業を効果的に組み合わせた新しい学びの創出を大学に働きかけており、後戻りしないとしている。
 このような急速に変化する教育界の現状に直面し、実際にどのように自分の授業の中で展開していけば良いのか、不安や戸惑いを感じる教員も少なくないはずである。
 そこで、本研究講習会では、オンライン授業の進め方、不正防止対策、ツールの紹介、LMSの使用方法、著作権、フォーラム型授業などについて、基礎的な理解を深め実践できるようにするため、「全体会」と「ワークショップ」を設定し、その上で「全体討議」として参加者が希望するテーマなどについて情報交流する場を企画した。
 「全体会」の内容は、オンライン授業に関する2つのテーマと、著作権に関する講演の計3件で構成し、4年前から踏襲しているアラカルト方式の「ワークショップ」は、1日のみの開催のため、テーマを6つに絞ることとした。
 参加者数は96名・61大学4短期大学(前年度86名・49大学1短期大学)であった。参加された先生方はどなたも参加意欲が高く、オンラインながら活発な討論が繰り広げられた。

2.講習内容と結果

全体会

(1)ハイブリッド授業の進め方―ブレンド型授業・ハイフレックス型授業

森田 裕介 氏(早稲田大学大学総合研究センター副所長、人間科学学術院教授)

 前半は、早稲田大学でこれまで取り組まれてきた授業のオンライン化を参考に、大学授業のオンライン化とハイブリッド授業への移行に関する講演であった。早稲田大学では、オンライン授業支援のセンターが中心となって授業のオンライン化を進めてきたが、コロナ禍で進展が一気にすすんだ。学生アンケートからは、コロナ後もハイブリッド型授業は残すべきとの声があり、一過性のものではないとの認識が一般的になっている。
 後半は、効果的なハイブリット授業のデザインについての講演を行った。技術的な課題として、音響関係のトラブルは影響が重大であること、受講者人数に応じた教室環境の整備が必要であること、またTAによる技術支援が有効であることについての解説があつた。次に、オンラインでの教育方法に関して、知識伝承から学修効率、学修支援と変遷してきた教育観をふまえた、授業の効果的なデザインが大学授業のデジタル改革では必要となるとの解説があった。
 講演全体を通して、ポストコロナ禍を見据えた、これまでの課題認識と今後の改善事項についての整理・提言がなされた講演となっていた。

(2)オンラインでの不正防止対策の取組みと今後の在り方」

巳波 弘佳 氏(関西学院大学副学長、情報化推進機構長)

 まず、学生を教室に集めて筆記試験ができない状況で、オンラインで生ずる問題とその具体的な対策が紹介された。なりすましの不正には本人認証で多段階認証やAIによる顔認証が、解答共有や閲覧禁止情報の参照には不正行動の検出としてモニタリングや録画などが示された。他にランダム出題での防止、解答時間の制限設定といった方法も例示された。これらの対策に加えて、ネットやPCの不具合の場合、不正か否か、どこまで許容するかという実際の運用での課題が指摘された。あわせて、不正防止のガイドラインを用意するといった組織的対応の必要性が述べられた。
 次に、関西学院大学のAI活用人材プロジェクトでのバーチャルラーニングが紹介された。ここでのログイン時の顔認証が取り上げられ、実際に認証ができなかった事例など、成績評価の実例として様々なケースが披露された。
 最後に、オンラインで筆記テストの公正性を保つことは困難であると指摘された。そこで、成績評価をする場合、レポートやMinute Paper・振り返りは、オンラインでも対面でも同じなので、これらを用いた方がよいこと、併せて、筆記テストは思考力を問うような設問とする工夫についての提案があった。学問的誠実性や研究倫理を受講生に教育することが重要であるという結論であった。

(3)ICTを活用した著作権処理のポイントと補償金の対応

中村 壽宏 氏(神奈川大学教育支援センター副所長、法学部教授)

 著作権に関する問題については、ここ数年必ず全体会で説明を行ってきた。特に、平成30年著作権法改正により導入された補償金制度については、コロナウィルス感染症対策としての遠隔授業における他人著作物の利用の増加にともない、関心が高まっている事項であった。
 もっとも、昨年度あたりからは、補償金制度の導入により、教員が授業で他人著作物を利用すること自体はかなり自由になった、という理解は定着してきたように思われる。むしろ、自由になったという認識により、同一性保持権や目的外利用などの、実は改正後であっても許諾されていない他人著作物の利用方法に対する注意事項について、大学教員の関心が薄れてきつつあるようでもある。事実、今回の全体会説明においても、許諾されていない利用方法に関して、参加者からの質問が集中していた。
 これを受けて、次年度からは、むしろこのポイントに軸足を置いた説明をすべきであろうと考えている。

ワークショップ

(1)ワークショップ1

オンライン授業による試験方法と学修評価の仕方

山田 剛史 氏(関西大学教育推進部教授)

 「1.評価をどう考えるか?」では、オンラインでの客観テストは困難であるとの指摘があった。「2.評価をどう実施するか?」では、多様な評価方法で評価課題を分散することが紹介された。「3.評価ツールをどう活用するか?」では、LMSとオンライン会議ツールの投票機能・チャット機能・レコーディング機能の活用、さらに振り返りなどの意見収集にフィードバックとルーブリックの活用が重要との説明があった。「4.トラブルにどう対応するか?」では、通信トラブルへの備えと不正行為対応についての解説があった。「5.評価に際して学生に伝えること」では、評価の方法・基準を伝えること、学問的誠実性(Academic Integrity)の重要性を伝えること、学問的誠実性を意識させる仕組み作りの3点があげられた。

 ワークショップ討議では、参加者に、文系、理工系、医歯薬系単位で5つのブレイクアウトルームに分かれて取組みや困っていることなどを話し合った。この討議を受けて質疑応答で山田氏に回答いただき、参加者同士の情報共有が積極的に図られた。

(2)ワークショップ2

仮想患者システム(VP)、e-ラーニングで疑似体験する臨床教育・地域連携授業

片岡 竜太 氏(昭和大学歯学部歯科医学教育推進室長、主任教授)

 はじめにシミュレーション教育についての概説があり、失敗が許容される、経験しがたいことを経験できるなどの利点を有する反面、教育の負担が大きいなど、課題を有することが述べられた。引き続き、3大学の歯学部と歯科医師会が密に連携して作成した教材をもとに、仮想患者システムを活用して臨床を疑似体験するアクティブラーニングの試みが紹介された。まず、仮装患者の動画と診療記録を備えた仮想患者システムについてスクリーンショットを交えた要点の説明が行われ、このシステムを臨床で必要となる基礎知識の修得、コミュニケーション、臨床推論能力養成、患者担当直前のシミュレーションなどに活用した試みの紹介があった。学生アンケートでは8割以上が授業の内容を理解しやすく興味が持てたと答えたこと、加えて平均正答率の向上および学生の質問率の著増を認めたことなど、同システムが学生の主体的な学びを支援することの証左が提示された。また、また「ICTを活用した地域連携歯科医療実習」と「ネットを活用した3大学の学生交流」について触れ、前者については、学生から学修内容が実際にどう役立つかを学べた、仕事を明確にイメージできて具体的な目標を考えることができたなどの感想を得たこと、後者については、将来の歯科医師としてあるべき自分を明確に思い描くことができた、学修のモチベーションが高まった、などの感想を得たことが紹介された。

 討議には医療系の教員8名がリアルタイムで参加した。講演で紹介された試みは歯学だけでなく医療系全分野で参考となるものであり、講演後には、大学を跨いだ教員組織の構築方法、意識合わせの重要性、地域医療の現場との連携方法などについて質疑応答が行われた。グループ討論は2つのブレイクアウトルームに分かれ、グループ1には講師が、グループ2には運営委員1名が加わり、大学間連携、臨床現場との連携などに加えて、参加者相互によるコロナ禍におけるシミュレータ活用事例の紹介とそれらについての質疑・助言などが行われ、ワークショップ全体討議においてそれらについての情報共有が図られた。

(3)ワークショップ3

オンライン授業で使うツールの活用

二瓶 裕之 氏(北海道医療大学情報センター長、薬学部教授)

ハイフレックス授業で利用したツールの紹介

及川 義道 氏(東海大学教育開発研究センター所長補佐、理系教育センター教授)

 Covid-19の蔓延に伴い、大学では様々なオンライン授業が展開されることとなり、このことが大学におけるオンライン授業活用の一つの契機になったとも言える。本ワークショップでは、オンライン授業での各種ツールの紹介や活用例について北海道医療大学の二瓶裕之氏、東海大学の及川義道氏に、実践を踏まえて講演をいただいた。
 初めに「オンライン授業で使うツールの活用」と題して、二瓶氏により講演が行われた。本講演では、まず、オンライン授業でもできる限り講義に集中させる、オンライン受講する学生の学びの孤立を防ぐために行ったgoogleドキュメントやフォーム、スプレッドシートを用いた授業の方法およびフィードバックのための学生成果物の分析方法についいて紹介された。また、これらのツールを利用したグループ学修の方法についても具体例を示しながら説明された。その後、学修支援システムの掲示板を用いた学生への学修教材の一括提示方法、学修管理・ポートフォリオ機能を用いた教学情報の教員間での共有方法、リテラシーレベルのチェック方法などが紹介された。
 続いて「ハイフレックス授業で利用したツールの紹介」と題して及川氏による機器やソフトウェの紹介があった。本公演では、設備機器を中心に各種ツールが紹介された。初めに講義をライブ配信するためのカメラに関して、高機能な一眼レフカメラや自動追尾カメラを用いた講義のライブ配信について、機材の紹介と実演が行われた。次に、オンライン授業を実施する際に教室内の学生とオンライン参加している学生との相互の音声を明瞭に伝えるための音響システム、タブレットを用いた板書と画面共有の方法などについて、実演を交えた説明があった。最後に、各種Web会議システムを用いたライブ配信、学修支援システムを用いた資料の提供やレポートの回収方法、資料共有や共同作業、インタラクションに関して、実際の授業で利用したソフトウェアが紹介された。

 ワークショップ3の受講者数は18名であった。事後アンケートに対しては4名の回答が得られた。オンラインでのアンケート調査であったため、回答数が少なく明確な評価はできないが、参加者全員が自身の課題の解決に対して「見通しがたった」と回答しており、ワークショップの講演内容が参加者にとって適当と思われる結果が得られた。内容の難易度についてはやや高かったと感じている参加者が多いようであった。
 オンラインを利用した学修は、単にCovid-19への対処としてではなく、今後も大学において様々な活用が行われていくことと思われる。その過程において、教員には単に授業支援システムを利用するだけではなく、様々な情報技術を活用した授業展開が望まれるようになるだろう。今後も、本ワークショップのような情報技術の活用方法に関する情報提供は重要である。

(4)ワークショップ4

LMSの効果的な利用例

・自己学習型授業とハイフレックス授業(ビデオ講演)

渡辺 博芳 氏(帝京大学ラーニングテクノロジー開発室所長、理工学部教授)

・オンデマンド型による講義と実習の実践

及川 義道 氏(東海大学教育開発研究センター所長補佐、理系教育センター教授)

 Covid-19への対応から、大学におけるLMS(Learning Management System)を利用する教員は確実に増加した。また、教室参加する学生とオンライン参加する学生に対して同時に授業を提供する必要が生じたことからも、LMSを利用する事例が増えている。本ワークショップでは、このLMSを授業の補助ツールとしての活用ではなく、授業を実施する環境としての活用方法について、実際の事例を含め、帝京大学の渡辺氏、東海大学の及川氏の2名に講演いただいた。
 まず、初めに渡辺氏により「LMSの効果的な利用例〜自己学習型授業とハイフレックス授業」と題して講演が行われた。本講演は渡辺氏の業務の都合上、録画映像の視聴となった。まず、インストラクショナルデザインを意識した授業設計に関する紹介があった。次いで授業中自らのペースでLMS上のコンテンツ等を活用しながら学修を進める「自己学修型授業」の例、教室・オンライン両方の参加方法を認める「ハイフレックス型授業」の例について、それぞれ説明された。いずれの例も、実際に用いたLMSの画面等を提示するなど、実際の授業をイメージしやすい形で授業の紹介・説明がされ、LMSを活用することで、これらの授業を比較的容易に実現できることが紹介された。
 次いで及川氏により「オンデマンド型による講義と実習の実践」と題して、LMSを利用したオンデマンド型の講義や実験実習について、その実践例が紹介された。本講演では、オンデマンド教材作り、ノート課題、小テストの実施、学生の孤立化の抑制方法、実験実習をオンラインで行うための工夫などが説明された。

 21名の参加者があった。事後アンケートには18名の参加者から回答があり、講演内容の自身の課題の解決への影響に関する設問では、15名の参加者が「見通しがたった」と回答され、参加者にとって有用な内容であったと思われる。ただ、2名の参加者が「達成できなかった(期待はずれだった)」と回答しており、活用が進んでいる参加者にとっては物足りない内容であったようである。このようなミスマッチを防ぐためにも、ワークショップの事前情報の公開については検討の必要があると思われる。

(5)ワークショップ5

オンラインも対面も、TeamsとLMSで実現する反転授業

児島 完二 氏(名古屋学院大学経済学部教授)

 講演は、パソコンを利用した経済学部の専門科目での実例を元に行われた。パンデミックで2020年度春学期にTeamsでオンライン授業を実施するも大きな失敗、これを契機に反転授業へ挑戦した話題からスタートした。デジタル教材を単元ごとにまとめ、①10分以内の解説動画、②PDFテキスト(練習問題付き)、③実習用Excelシート(基礎1枚・応用2枚)、④15問の選択式クイズ、の4種類を予習から授業時間で活用する。受講生の学修データはLMSに集約し、毎回、提出状況を見ながら授業を進めるという説明があった。反転授業は予習が前提なので、授業時間が有効に使えるという特長が述べられた。そこで、予習でミスが多い点や不明な点を解説し、授業内容の理解を確実にする。また、授業時間で演習問題を課し、でき抜け制や受講生同士での教え合いを推奨する。そして、LMSに蓄積された学修データを成績評価につなげるといった運営方法が紹介された。反転授業の効果については、コロナ前の対面授業の定期試験と授業評価アンケートを比較した結果が紹介された。最後に、Teamsを含むMS365でデジタル教材の融合や発展が見込め、反転授業での支援につながる可能性が示された。

 ワークショップでは、分野が近い参加者ごとにブレイクアウトルームに分かれ、自身のオンライン授業での経験を話し合ってもらった。反転授業に適する学系はあるのか、予習教材をどのように作ればよいか、などが話題にあがった。それらに対して、まず簡単に作成できるデジタル教材を予習と授業で併用することからスタートしてみてはどうかと提案された。また、受講生の学修データをLMSに蓄積すると、いろいろと見えてくることもあると回答された。

(6)ワークショップ6

法政策等フォーラム型授業

中村 壽宏 氏(神奈川大学教育支援センター副所長、法学部教授)

多職種連携型PBL授業

片岡 竜太 氏(昭和大学歯学部歯科医学教育推進室長、主任教授)

 「法政策等フォーラム型授業」をワークショップで取り上げるのは、昨年度に引き続いて2回目である。もっとも、Zoomミーティングによるワークショップであったことと、時間がかなり限られていたことから、実験的に行っている法政策等フォーラム型授業の紹介に止まった。
 参加者からは、この実験授業の手法についてこれを懐疑的に扱う声はなかったものの、積極的に自分たちもこれを実行してみるという前提での質問等もなかった。ようするに、なにか高度な実験的手法を用いて効果的な教育を行っているらしいという理解は得られたが、これを実行すること自体はそれほど困難なことではないという認識には至らなかったようである。
 この種の実験的授業の手法は、やはり参加者が同一の教室に集まって、ネットワーク上でフォーラムを疑似体験しつつ、随時、対面的対話によって手法や効果についての意見交換をすることが必要なのだろうと思う。コロナウィルス感染症が収束し、教室内に集合して対面での意見交換が行えるようになれば、さらに意義のあるワークショップの実施が期待できる。
 続いて「多職種連携型PBL授業」の講演が行われた。医療系学部では多職種連携PBLがおもに対面授業ではじまりつつあるが、オンラインでの実施を余儀なくされる状況下でその歩みが一時的に停滞している傾向がある。加えて、対面ではカリキュラムの時間的整合がネックとなり、外部有識者の参加にも制約が生じる場合が少なくない。この講演では、オンラインでの多職種連携PBL授業においても対面学修と同様に、他職種の専門性を理解して自分の専門性を客観視できるとともに他の職種をリスペクトできること、チームの中で自分の役割と専門性を位置づけられることなどを達成でき、患者のためのチーム構成に資することが示された。また、非医療系の学生とも連携することで、学生の理解がより深化・発展することが示された。さらに、対面では異なった大学・学部のカリキュラムの整合がネックとなるが、オンラインの特性を活かしてこの課題を解決していることが示された。

 リアルタイムでの討論参加者が4名(すべて医療系大学所属教員)だったため、講演後、そのままワークショップ全体討論に移った。多職種連携PBLについては、対面方式の場合と同様に組織を跨いだ連携体制の構築が実施の前提が必要なことに加え、複数大学で共用可能な学修プラットフォームの重要性が参加者に認識された。法政策等フォーラム型授業については、授業のプラットフォームにクラウドサービスを活用することで有識者の自由参加を容易としたことや、フリーライダーのような振舞いを示していた学生が独創的な視点からユニークな解決策を提示したエピソード等に関して活発な意見交換が行われた。

全体討議

 「オンライン授業の運営・方法」のブレイクアウトルームでは、講習会全体を振り返った後、自身が抱えている疑問などについて自由に発言を求めた。まず、受講生に顔出しを要請してよいものか、という質問が出た。そこで、顔出しさせる方に挙手をしてもらった。少数であったが、挙手をした参加者から意見を伺うことができた。また、オンラインで学生同士のフォローアップはどうしたらよいかという質問もあった。これに対して、他の参加者自身の経験を紹介してもらうことで参考になったと思われる。
 「PBL・アクティブラーニング」のブレイクアウトルームでは、参加者が投げかけたオンライン授業実施にあたって直面している問題点・疑問等に対して、別の参加者が解決策を提案したり、ワークショップ討論の成果に基づいた助言を行ったり、あるいは自分が行って成功した事例(例えば、このようなオンライン授業にTBLを導入してみたらうまく行った、など)が紹介されるというプロセスが制限時間いっぱいまで繰り返され、参加者相互による積極的なディスカッションを通じて現状認識、課題、解決策の共有が図られた。

3.おわりに

 参加された先生方の講習会全体の感想として、「オンライン授業が2年目に入り、緊急対応から平常時の対応になり、いくつかの問題点を知ることができて非常に参考になった」、「ハイブリッド授業や評価の難しさなど利点と課題が明確化できた」、「講習時間を短めに設定し、午後にはグループディスカッションを取り入れるなど、リモート授業を意識した構成だと思った」などの意見が寄せられた。
 これら、本講習会に対する参加者の内、アンケート回答者30名の集計によれば、参加者個人が抱えている課題の達成について、「見通しがたった」との回答がほとんどであることから、本講習会の目的は達成されていると見られる(表1参照)。

表1 アンケート集計

 参加者にはリピーターも多く、参加者各々の声を聞くと、本講習会の開催がいかに有意義であるかをうかがい知ることができる。また、本報告の冒頭でも触れたように、新型コロナウィルス感染拡大の影響でほとんどすべての大学はオンライン授業が平常の教育形態の一部となり、その現状に照らせば、試験の方法・成績評価の問題など本講習会が提供したテーマ全てが、まさに今、各大学のニーズに応える内容であったと言えよう。
 今後も、様々な場面でのICT支援教育をテーマとした先導的取組みである本事業を、これまで私情協が永年実践し積み上げてきたノウハウと、教育界の趨勢・最新のニーズを見極めつつ、立案・推進していかなければならない。次年度も、今回の実績を精査し、より実りある研究講習会を開催したい。

文責:FD情報技術講習会運営委員会


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