特集 学びの質向上に向けたICT活用の取組み(その1)

主体的で深い学びに向けたGoogleフォームの活用

森  泰三(ノートルダム清心女子大学 文学部現代社会学科教授)

1.はじめに

 ICT教育に関して、今後の大学入学生は高等学校において1人1台端末と教室のWi-Fi環境のもとでICTを活用したアクティブラーニングの授業を受けています。勤務している本学では、2021年9月にすべての教室とラウンジでWi-Fi環境が整備され、2023年4月の段階でほとんどの学生がWindowsノートパソコンを持っている状況です。
 中央教育審議会の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」[1]では、多様で柔軟な教育プログラムに関して高等学校教育との接続、ICTを活用した教育の促進などが示されています。また、文部科学省の「高等教育におけるICT活用教育について」[2]では、アクティブラーニング型の授業やPBL型の授業の増加に関する回答率は高くなかったことが報告されています。このような状況の下で、高等学校からの学習方法の継続性という観点からも、授業の中でICTを活用してアウトプットの機会を増やして、主体的で深い学びの実践をする必要があると考えました。

2.Googleフォームを活用した授業改善

(1)Googleフォーム活用の方法

 本学では教育支援プラットフォームとして「manaba」を導入しており、学生への連絡、教材配布、学生からのレポート提出などに利用しています。さらに授業中の時間節約とスムーズな学生とのコミュニケーションのツールとして、Googleフォームの活用を考えました。具体的には、問いを設定してGoogleフォームのリンク先を二次元バーコードで示します。学生はスマートフォンでそれを読み込み、回答します(写真1)。これは、回答内容をその場で確認して、多様な実態や考え方を共有して、より深い思考を促すことをねらいとしています。また、特別な時間を必要とせず、出席状況の確認にも活用しています。

写真1 Googleフォームの入力

(2)問いの設定とアウトプット

 Googleフォームを活用した問いの設定としては、アンケート形式の実態把握、インターネット等を利用した簡単な調査、各自の意見などです。できる限り答えが一つでなく、多様性のある回答を導くようにしています。学生のアウトプットの機会を増やして、他者との意見を共有し、自分ごととして考えることにより主体的で深い学びにつなげるようにしています。
 地理学と教職の授業を担当しています。次に「総合的な学習の時間及び特別活動の指導法」と「人文地理学」の授業実践について報告します。

(3)授業実践例

①「総合的な学習の時間及び特別活動の指導法」

 総合的な学習の時間に関して、全体計画について講義、説明した後、各自で任意の都道府県ごとの教育委員会、教育センターのホームページから全体計画の事例を検索して、その内容を確認した上でGoogleフォームに感想や意見を入力します。その後、ペアで入力した内容を説明、確認します。さらに、各学生の入力内容を全体で共有して教員がコメントします(図1)。

図1 「総合的な学習の時間」意見共有

②「人文地理学」その1

 GISの理解を深めるために身の回りの事項を題材にしています。岡山市と倉敷市は中心部の距離は20km未満ですが、方言には違いがあります。学生が国土交通省の地理院地図を利用して、自宅の詳しい緯度経度を調べます。さらに、「〇〇しろ」と命令形で方言をしゃべる場合、「〇〇せられー」、「〇〇しねー」など選択し、これらをGoogleフォームに入力します。その内容を教員が、その場でスプレッドシートからCSV形式に出力し、地理院地図の作図・ファイル機能を利用して、ポイントデータの分布と方言を示した地図を作成して、学生と共有します(図2)。この作業により、GISのしくみについての深い理解や地図による可視化で地域の実態を把握することをねらっています。

図2 「人文地理学」その1 方言と位置情報のGISによる可視化

③「人文地理学」その2

 都市圏に関して、都心、市街地、市街地周辺、郊外、農村など地域区分について講義、説明します。その後、自分の居住地域がどれに該当するかを考えます。さらに、居住年数も考えてGoogleフォームに入力します。その内容をGoogleフォームでグラフに表します(図3)。これにより、都市の郊外化の時期、都心回帰の時期の入居がわかり、自分ごととして都市の発展を考えることをねらいとしています。

図3 「人文地理学」その2 都市域の居住地域と発展グラフ

3.授業実践の効果

 Googleフォームを活用することにより、アウトプットの機会とアウトプットするための思考の機会を増やすことができます。また、多様な回答や意見を共有することにより深い思考につなぐことができると考えます。その他、紙資料の配布・回収に比較して、時間節約となり出席状況の確認もできることから、多様な効果があります。特に履修者が多い授業での効果が期待できます。

4.課題と展望

 ICT活用面では、学生全員がスマートフォンを所持しているか、ICT活用が苦手な学生がいないか、その他の授業も含めてmanaba、Googleクラスルームなど多様なプラットフォームを学生が使いこなせているかなど配慮事項もたくさんあります。今回の授業実践では、プラットフォームを意識せず、できる限り単純にGoogleフォームだけを各自のスマートフォンで利用できるようにしました。さらなる問いの設定の充実により、多様な意見や考え方をまとめ、授業内容とつなげ、効果を高めることが可能だと考えます。

関連URL
[1] 中央教育審議会 2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)平成30年11月26日
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360.htm
(2023年5月8日閲覧)
[2] 文部科学省 高等教育におけるICT活用教育について 平成30年9月
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/09/10/1409011_5.pdf
(2023年5月8日閲覧)

【目次へ戻る】 【バックナンバー 一覧へ戻る】