特集 大学のマルチメディア環境

計算機教育におけるマルチメディアの活用


会津大学



1.会津大学の特徴

 会津大学は1993年に開学しこの春ようやく最初の卒業生を送りだした新しい大学である。「会津大学」という正式名称から私立大学と誤解されることも多いが、れっきとした福島県立の大学である。地方の一公立大学なのだが、既成の大学にはない特徴をたくさん備えている。それは一言で言えば「国際化」と「情報化」というキーワードに集約され、現在の大学改革のキャッチフレーズそのままなのであるが、他の大学に見られないほどに徹底的に国際化とコンピュータに焦点を絞っている。国際化と言う点については本稿のテーマではないのでここでは触れない。
 会津大学はコンピュータ理工学部のみの単科大学でコンピュータソフトウェア学科とコンピュータハードウェア学科の二学科から構成され、一学年の定員は240名である。編集部から「計算機教育におけるマルチメディアの活用」という題をいただいたが、本学の教育はほとんどが計算機教育であり、マルチメディアを活用している。字数の関係もあるので、本学のコンピュータ環境を説明することで任を果たしたい。


2.施設の概要

 全学でも千人弱しかいない学生に用意されている施設は、他に例を見ないほど充実したものである。

1)講義室

 大講義室1(250人用)、中講義室10(80人〜100人用)、小講義室8(30人用)。講義室のスクリーンにはテレビ、ビデオ、コンピュータの画面を提示することができる。またOHPがすべての講義室に設置されている。

2)コンピュータ室

 40〜50台のコンピュータが設置されている演習室が用途に応じて7種類、計14室配置されている。各部屋ごとにハードウェア、ソフトウェアの構成が若干異なるが、すべてSunOSが動く高機能のユニックス・ワークステーションである。

3)研究用のコンピュータ

 この他教員には最低一台のワークステーションが配置されており、各講座の研究室ごとに多数のワークステーションや端末、パソコンが導入されて小さなネットワークを構成している。(なおこの他に事務系統のネットワークシステムが存在するが本稿での説明は省略。)
 すなわち、全学で約1,200台のワークステーション、パソコン等の端末も含めれば2,000台以上のコンピュータが会津大学情報ネットワークシステム(AINS=The University of Aizu Information Network System)に接続されて常時稼働しているのである。
 その他に、教員・学生は自宅のパソコンをAINSに接続して利用することができるので、その数も含めれば膨大な数のコンピュータがネットワークにつながっていることになる。


3.学生一人一台のワークステーション

 本学のコンピュータ環境は「高性能のワークステーションを24時間一人一台」というキャッチフレーズに集約される。
 学内のネットワークは24時間稼働しており、学生は建物と教室に入るためのIDカード、ワークステーションにログインするためのアドレスとパスワードを入学式の翌日に配布され、いつでも利用することができる。「一人一台」というのは、学生各自に専用のパソコンを貸与しているという意味ではない。学生はもよりの部屋のワークステーションにログインすればたちどころに自分の環境を画面に呼びだすことができる。そして授業中も放課後も学生の数に見合うだけのワークステーションが学内に設置されており、いつでも自由に使えるということなのである。大部分の学生は大学の近辺に住んでいるので、深夜でも自転車でやってきてコンピュータにログインする。
 これらのコンピュータは当然のことながら音声やカラー動画を再生・作成できるマルチメディア対応となっている。CD-ROMが接続されているのはもちろんのこと、スキャナ、カメラ、マイク、プリンタなどの機器が接続されており、学生は自由にしかも特別の使用料金を払うことなく使うことができる。


4.コンピュータの授業

 本学の授業は、コンピュータ理工学部という名称のとおり、ほとんどの科目がコンピュータを学ぶ科目であり(卒業要件128単位のうち82単位)、英語や物理などの教養基礎科目も大部分がコンピュータを利用して進められている。
 入学するとまず学生が受講するのは「コンピュータ・リテラシー」であり、この授業でユニックスの基本操作、e-mailやNewsの受信・発信、WWWのホームページ作成などを学ぶ。学内の連絡事項はe-mailとNewsが基本なので、その読み書きができないと暮らせない。その後「プログラミングI、II、III」(主としてC、C++)、「アルゴリズムI、II」などの科目を経て「アーキテクチャ」「オペレーティングシステム」「コンピュータグラフィックス」「VLSI」などの専門科目に進むことになる。
 これらのコンピュータ関連科目は原則として講義と演習の組み合わせで成り立っている。講義室での授業では教員は自らhandoutを作成して配付し、OHPやコンピュータ上のシミュレーションを活用して講義を行う。本学は外国人教員が多いので、視覚映像を多用した講義は不可欠である。講義の後はコンピュータ室において学生による演習が行われる。教員が提示用に作成したプログラムのほとんどは学内ネットワークの指定のディレクトリに置かれており、学生がいつでも参照できるようになっている。学生が課題を仕上げる場合も教員指定のディレクトリに送付するように指示される場合がほとんどであり、紙やフロッピーディスクを媒介するよりもはるかに便利である。
 最近では講義の概要などをhtmlで記述して提示する教員が急速に増えてきた。まさにマルチメディアによる情報提示という点で、また学外にも公開できるという点で、htmlはたいそう便利である。
 以下、そのような事例のいくつかは、http://www.u-aizu.ac.jp/students/classes.htmlをご覧いただきたい。また、学生・教員が公開しているホームページは http://www.u-aizu.ac.jp/homepages/HomePageList.htmlで見ることができる。



文責: 会津大学学生部長 太田 光一

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