私情協ニュース2

平成9年度事務システム基礎講習会報告



 事務システム基礎講習会は、大学の事務情報システムの目標・特徴・手法の基礎を修得し、もって私大職員の資質向上に寄与することを目的として企画・実施されており、今年は、平成9年7月15日(火)から17日(木)の2泊3日の日程で、99大学16短期大学合わせて280名の参加を得て、静岡県浜松市のグランドホテル浜松を会場に開催された。
 近年、各大学における新たな情報化の取り組みを反映する形で本研修会への参加者も増える傾向を示しており、本講習会の意義が認められ、定着化してきていると言える。
 この講習会は、担当運営委員がそれぞれのテーマを分担して講師となり、資料や事例を紹介しながらレジュメにしたがって講義を行う形式をとっている。それぞれの講義の内容は、社会一般的な内容に加えて、大学における考え方、位置づけも明確にしながら、とりわけ講師自身の所属大学の事例など紹介することによって理解を深める工夫をし、他の講習会に例を見ないユニークなものとなっている。
 また、各講師ともプレゼンテーションソフトやビデオなどを効果的に使い、さらには実際に回線接続したコンピュータのディスプレイを見せるなどの視覚的効果による講義進行は参加者にも好評であった。
 昨年との変更点として、今年度は事例紹介のテーマを時代に合わせて設定し、4事例から希望の2事例を選択できるようにし、今後の方向性についての論議のきっかけになるよう配慮した。さらに、開会式直後に、研修運営委員会委員長の小島孝治氏(工学院大学)より「これからの大学職員の役割と情報システムの活用」と題した全体講演を行い、今後の事務職員の役割と目指すべき方向性について参加者の意識を高め、研修中に参加者から質問用紙で提出された質問に、講師陣が最終日にまとめて回答・解説するなどの新たな形式を試みた。
 また、合宿方式の特色を活かした、夜の部ともいえる参加者の交流を促す場にも、大学相互の情報交換や、講師を交えての講義のフォローアップや経験談など、例年にも増して多くの参加者が遅くまで熱心にディスカッションをされており、ヒューマンネットワーク形成の機会として、有効な場との評価をいただいている。
 この講習会は、継続的に実施されることとなっているため、今後も関係各位の積極的な参加を期待したい。
 今年度の講習会の内容については次の通りである。


全体講演

「これからの大学職員の役割と情報システムの活用」

講師:小島 孝治氏(工学院大学)

 大学職員の担う業務は、量的に拡大し、しかも専門分化してきており、一人一人が大学人としての使命を自覚し、スキルアップしていくことが大切である。
 また、教員との関係は、上下の関係でもその他の関係でもなく、相互に認め合って共同して仕事をしていくことが求められる。
 今後は、大学の基幹業務によって蓄積されていく情報を、データベースによってしっかりと管理し、一人一人の職員が蓄積されたデータを利活用して、付加価値を付けたアウトプットを生み出せるよう、コンピュータリテラシーと情報リテラシーを身につけることが必要である。
 グループウェア等を利用して、人の情報や人の知恵を活かし、みんなが「100倍」できるスーパー職員を目指してほしい。


講義内容

1.事務システムの構築と運用

担当 :白鳥 仁氏(山梨学院大学)

 大学における事務システムの構築は、業務に精通する担当者と情報処理技術に詳しい担当者相互の理解と協力があってこそ良いシステムが構築できる。このために業務担当者は情報処理を、情報処理担当者は業務内容をお互いに理解し、それぞれの作業分担と責任を明確にすることが重要である、ということを前提に講義を進めた。
 内容としては、

  1. システム開発の基本的な考え方及びそのための手順と方法
  2. 業務分析の必要性と意義
  3. システム運用の業務内容と保守
  4. システム開発から保守
に至る、各過程のドキュメンテーション化の必要性と効果、を具体例を紹介しながら説明した。
 クライアント/サーバシステムなど、昨今のシステム環境の変化と共に開発方法、運用形態なども変化してはいるが、主にシステム構築における基本的な部分について、理解していただければ幸甚である。


2.事務システム構築のためのハード・ソフト

担当:山田 憲男氏(日本女子大学)

 コンピュータのハードウェア・ソフトウェアは加速度的にモデルチェンジが行われており、今後数年にわたりこれがベスト、というシステムを作ることは不可能に思える。メインフレームコンピュータ(汎用機)の大きさが事務処理量を左右していた時代はすでに終わりつつあると言って良いだろう。
 今回の講義では特に初心者を対象に、メインフレームコンピュータとパソコンを対比させながら、ハードウェアの特徴やその動き、ソフトウェアの利用方法、業務にあったハード・ソフトの選定について解説し、業界の都合に左右されないシステム作りの一助になるよう講義を行った。
 また、学園情報の戦略的有効活用を担う、ネットワークを利用した今後のシステムの方向についても触れた。


3.大学の業務プロセスとデータベース

担当:小島 孝治氏(工学院大学)

 大学の業務をトップダウン的に見た場合、どんな「業務プロセス」があれば大学が成り立つのかを、学校法人経営、教育事業、収益事業、アドミニストレーション(管理業務)の4つの視点から、それぞれの業務プロセスを解説した。
 また、業務を図で表現する手法として、「機能情報関連図」と「データフローダイアグラム」を説明し、データ中心の考え方を基に、データベースの概要について解説した。
 最後に、これからの情報環境での情報の利活用について触れ、情報に関する総合能力である「情報リテラシ」を身につけてほしいと結んだ。


4.ネットワークの仕組みとその活用

担当:杉町 宏氏(立命館大学)

 日常的に活用が広がっているネットワークシステムについて、学内LANとインターネットを中心に、その概念と大学における活用の意義を理解していただけることを主眼に講義を行った。
 今回の講習では、第一にネットワークの基本的なしくみを理解していただくために、ネットワークの種類、通信のしくみ、インターネットにおけるサービスの概要などを解説し、第二に利便性の高いネットワークに潜む罠としてのセキュリティ上の問題について解説した。そして、最後に大学の教育・研究・管理運営のそれぞれの分野でネットワークシステムの果たす役割とその意義、さらには、将来展望についても触れた。


5.情報倫理教育とプライバシー保護

担当:直村 裕二氏(産能大学)

 クレジットカードで買い物をすれば、その情報は銀行や店に残り、病院にかかれば病歴が病院に残る。大学で定期試験を受ければ教務部門に成績情報が残る。いわゆる、個人情報がいろいろな分野でコンピュータに記録され、やり取りされるのが現代社会の特徴である。
 これらの情報の山は、非常に崩れやすく個人情報の流出やプライバシーの危機が高まっている。個人情報の保護は、コンピュータシステムによる対策だけで保護できるものではなく、その情報を取り扱っている職員などの情報倫理が重要な課題となる。
 この講習会は、情報社会の特質の理解とともに、大学職員として、情報倫理とプライバシーの保護に係わる問題の理解、情報の取扱いに対する基本的な知識や態度を身につけることを目標として講習を行った。主な内容は、次のとおりである。

  1. 情報化の光と影(パソコンの大衆化、インターネットの成長、情報社会の危険性、ネットワークの脆弱性)
  2. 情報倫理問題(できることとしてはいけないこと、法的な問題、表現にかかわる問題)
  3. 大学で保護すべき情報(公開情報、非公開情報、機密情報)
  4. 大学としての対策(責任体制、規程の整備、情報倫理教育、セキュリティ対策、意識の醸成)


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