巻頭言

新しい教育方法の実践


國 岡 昭 夫(青山学院大学学長)


 社会環境において発生する諸問題を解決に導く学問的アプローチは、個々の事象をモデル化し、特定の手法を用いて最適解を導き出す方法を発見することである。また、ますます複雑化する環境の変化は、それぞれの学問分野の細分化・高度化を進行させてきた。さらに、現実の社会では、多数の学問分野にまたがる問題や、どの学問領域でも扱っていない、より複合的な問題が発生しており、これらを解決するには、人文・社会・経済・理工等の学問分野を含む、広範で学際的な情報教育を充実することが必要である。そのためには発生する諸問題を体系的に整理し、すべての学問分野を情報という視点から見直すことができる専門家の育成が求められ、まずはその教育方法の開拓が不可欠となる。これに応えるには、関係する学問分野の専門家からなるチームを構成し、自らの学問分野の専門家としての知識能力を発揮するとともに、異なる学問分野の専門家と協調して、問題解決への方法を共同で開拓することが必要である。

 現代の情報化社会における、マルチメディアならびにインターネットの情報技術の急速な発展は、間違いなく教育・研究のあり方に大きな変革をもたらすであろう。本学のMedia Labでは、この影響を真摯に受けとめ、近年のインターネット、スペースコラボレーションに代表されるデジタルネットワークの急速な発展に伴い、職務遂行能力とともに、異なった学問領域だけでなく、異質なカルチャーを持つ人々と協調できる能力と、最新の情報技術の実務への適用能力を学生に習得させるため、教育方法の開発と実験・検証を推進しようとしている。この計画では、現実に近い状況で課題を解決するためのプロジェクトに、学生を自分の専攻する学問分野の専門家の立場で参画させ、プロジェクトの一員として他の人々と協調して、課題に対応させようとするものである。

 学生は、プロジェクトの一員としての体験を通じて、自分の専攻した学問領域の専門知識・技術の応用、異なる学問領域の専門家・関係者との協調、社会での実務遂行、最新の情報処理技術の実務への適用等、それぞれの能力を総合的に習得する。
 一方、専門科目の講義においても、情報リテラシー教育の成果として、インターネットを通じ、学内のデータベースおよび学外のデータベースを活用する機会が増えてくる。このため学内の学術データベースの整備、専門講義科目の講義内容、教材資料、Q&A等デジタルコンテンツの充実をはかることで、ネットワークを用いて学内・自宅のコンピュータから予習・復習を支援することができるシステムの構築が本学の当面の課題となっている。


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