私情協ニュース4

第19回臨時総会の開催概要



 第19回総会は、平成10年11月24(火)午後1時半より、東京市ケ谷の私学会館会議室にて開催された。当日は、議事に入るに先立ち文部省専門教育課の岩本 渉課長から来賓の挨拶があり、引き続き第6回情報教育方法研究発表会の受賞者の表彰が行われた。次いで、平成11年度文部省の情報関係予算の概算要求および10年度補正予算について私学助成課の村田課長より説明があり、続いて、大学審議会への意見、ノートパソコン貸与事業、マルチメディアシラバスの完成等について報告があった。以下に主な内容を報告する。


1.平成11年度概算要求、10年度補正予算、ノートパソコン貸与事業について

1)11年度要求では、大学審議会での答申を受けてマルチメディア機器の活用による授業方法および学習方法の改善を図るため、新たに私立大学等教育・学習方法高度情報化推進事業として、装置施設、設備、運営経費について三つの補助金で総合的に支援することを要求した。装置施設補助で11億7千万円、情報設備補助で6億6千万円、特別補助で17億4千万円を予定している。

2)10年度補正予算の1次補正予算では、102億円が成立し、既に200件を超える申請があり、年内を目途に内定通知を予定。その後、景気対策緊急特別枠の一環として、マルチメディア関連の補助についても、1次に追加して3次補正予算で37億9千万円が予定されている。補助の名称は私立大学等教育・学習方法高度情報化推進事業として、1次補正と同じ内容で国会審議の動向を踏まえつつ、平成11年の1月中に募集を行う予定。11年度にも当初予算を要求しているが、ゆとりという点からは、10年度中に着工可能なものについては、積極的に補正予算で対応いただきたい。
 申請の面で留意いただきたい点として、情報機器が机と一体になっていて、敷設工事を伴うものは、装置施設で申請いただきたい。マルチメディア機器として一体で構成され、かつ工事を伴う場合には、パソコン・サーバーという形ではなく○○装置として申請いただきたい。
 単体で使用するパソコン、サーバーは、平成9年度より装置ではなく設備として申請することになっている。ノートパソコンも設備で申請すること。ソフトウエアは、機器と区分できない一体型のものは装置又は設備として申請できるが、区分できるものは含めず、別途、特別補助の方で申請されたい。

3)ノートパソコンの貸与事業について、特別補助の特色ある教育研究の中で対応している。1事業あたり補助金の上限額を2千万円としてきたが、大蔵省との協議でパソコン貸与事業の増大を考慮し、10年度より上限額を5千万円に拡大することにした。したがって事業費も1億円となった。申請・配分は私立学校振興共済事業団で行っており、細部については連絡があると思う。採択件数についても大学の規模で枠が定められているが、この枠を1万人以上の大学は5件から7件、千人以上1万人未満の大学は4件から6件、千人未満の大学は3件から5件に改正した。申請に際しては、補助の趣旨に照らして、単純にノートパソコンを貸与して機械に慣れさせるというのではなく、ノートパソコンを貸与してどのように授業、または学習に活用させて、改善を図ろうとしているのか、というような点から、各大学の工夫が見える申請をお願いしたい。


2.大学審議会への意見について

 具体策が欠如していることから、以下の点について意見を申し入れた。

1)教室外での準備学習・復習の徹底を大学当局の責任で実施することについては、高く評価されるとしながらも、実施されていないという状況を重く受け止め、オフィスアワーの確保が教育・研究活動、教務活動、課外活動に時間をさかれている私学の教員に困難なことが多い。そのような中でオフィスアワーを実効あるものとするには、バーチャルな世界で考える方が得策と思われる。ネットワークを活用して学生が個人指導を受けられるようにするバーチャルオフィスアワーを一つの方策として例示してはどうか。なお、実施に際しては、教員の情報技術に対する理解の普及、電子媒体による教材の開発・作成の促進、メールを受け取る教員に新たな労働負荷の軽減・処遇、学内LANの管理運用体制に対する大学当局の強いリーダシップなどいくつかの課題がある。

2)教育内容・授業方法の改善にシラバスが必要であることに共感しつつも、現行のシラバスでは、授業への指導が一方通行で学生に学習意欲を起こせることは難しい。シラバスを見て、すぐに学習を始められるような仕組みを考える必要がある。教材、資料をホームページの上で閲覧させ、その場で学習ができるようにするとか、自分で簡単に自己診断できるようなテストなど、授業支援のためのシステムが組み込まれたシラバスが求められてくる。なお、それには教材・資料の整備充実が必要で、大学の外にある現場情報、体験情報が、ネットワークや電子媒体などで入手し、授業に使用できるよう、大学間での相互協力はもとより、マスコミ、政府、地方公共団体、公的な関係機関からの情報の提供が欠かせない。広く教育研究に利用できるよう、社会資産として情報を位置付け、教育研究機関への協力が円滑に実現するような、教育研究への社会的な支援体制を構築していくことを提言。

3)多元的な評価システムの確立の中で、ファカルティ・デベロップメントを推奨していることに異論はないが、率先して教育業績を重視するよう配慮されたい。マルチメディア機器を活用した新しい教育方法展開への努力に対しても、教育業績としての評価が反映されるよう、教育業績の評価基準の例示を検討されるよう要請。
 以上提言の結果、大学審議会のマルチメディア教育部会において議論され、答申では、理念を書くだけだけではなく、なぜ大学教育にマルチメディアが必要なのかということを、各大学で考えなければならないことを記述する必要があるのではないか、など、肯定・否定的な意見交換があり、今後、マルチメディア部会だけではなく、大学教育部会にも関連する事項でもあることから、その意見も踏まえながら検討していきたい、ということになった。


3.補助金活用によるノートパソコン貸与事業

 大学側として留意点すべき点をとりまとめ、参考に資するようにした。主な点は、次の通り。

1)ノートパソコンの導入は借り入れによることを強調。買い取りは6年度間に亘り、授業での使用が義務付けられること、機能的には4年もたない。

2)貸与は、教育効果が期待できる授業を対象とし、全員への貸与期間を限定し、授業での使用に応じてその都度貸与する方法や1年次は教室内に設置のコンピュータで教育を行い、2年次の授業から必要に応じて貸与するなどの方法が考えられる。期間は、授業との関連および機器管理の面から1授業を単位とし、最長1年間とすることが望ましい。授業の運営形態および大学の事情によっては、短期の場合も考えられる。

3)貸与する機器の管理範囲は、貸出し、回収、障害対応とし、大学のしかるべき部門、例えば、情報処理センター、図書館、学部事務室などが望まれる。貸出しへの対応は、履修者名簿と学生証により貸与学生を判別し、学生に借用証等(「誓約書」)を提出させる。その際、機器の紛失や破損の事情により大学が弁償を求めることも含めて、借用証等に貸出しに伴う機器等の自己管理責任について徹底する。故障・破損・盗難などの障害対応は、レンタル会社と契約上、明確にしておく。機器の回収は、最終的には学生が登校している期間中の2月末が適当。

4)サポートの範囲は、機器の設定および周辺機器の接続、メールおよびインターネットの接続などの相談・助言およびソフトウエアの相談・助言など。組織としては、教員の授業計画にもとづき、常時、情報教育センターなどの関係職員、学生補助員による集団的な支援組織が必要。また、ソフトのインストールおよびサーバー等学内LAN環境の技術的支援については、専門的な技術者による外部委託も考える必要がある。その他に、事前に講習会の実施、対面および電話、メールでの相談・助言、質問への対処事例をQ&Aとして作成し、ホームページに掲載することが必要。

5)授業用機器としての使用目的の徹底を図る。
 授業とは関係のない使用とならないよう、使用上の心得を初期画面に表示するなど周知徹底する。学内LAN経由でのインターネット接続の段階で法令に反する情報、公序良俗に反する情報などへの接続の遮断、不適切な使用を発見した場合は、教員の立場から学生に直接注意し、使用を中止するなど適切な措置がとれるようにしておく。特に、又貸し(転貸し)の防止対策として、何等かの方法で定期的に授業で確認する必要がある。


4.マルチメディアシラバスの完成

 現行のシラバスでは、教員からの情報が学生へ直接伝わらないとか、授業の進展に即して授業運営の方法を変更できないなどの問題があることから、印刷物では実現できない授業支援能をマルチメディアを取り入れて開発することになり、平成8年度より知的資源開発促進委員会にて、賛助会員(丸善株式会社、日本電子計算株式会社)の参加も得て、モデル開発を進めた。
 教室外における準備学習を改善充実するとともに、教員のバーチャルなオフィスアワーを実現するための一つの授業支援システムとして、マルチメディアシラバスを開発。授業の運営計画を通して、学生に授業を履修することの重要性や動機付を喚起し、準備学習での教員から学生への課題提示、文献提示、学生からの質問への対応などの個人指導を可能にするとともに、学生の理解度に応じた復習、グループによる学習を可能にすることを目指した。それを実現するため、四つの機能を持たせた。
 一つは、「学生に直接語りかけるような機能をもたせる」ことで、印刷物によるシラバスを単に電子化するのではなく、教員からのメッセージを映像や音声などマルチメディアを通して伝えることにより、学生に教員の思いが印象強くなるよう配慮した。
 二つは、「準備学習・復習が可能となるような機能をもたせる」ことで、教員からの課題提示、事前に読むべき文献提示など、指示するだけの一方通行的な情報だけでは、必ずしも学生の自主的な学習を保証することにはならない。シラバスの中で直接学習ができるように、シラバスとWebページを連動して教材・資料・講義録などが閲覧できるようにするとか、インターネットを介して関連情報を入手したり、自己診断可能な小テストで理解度を把握できるようにしたり、レポート提出などが、シラバスの中で直接できるように考えた。
 三つ目は、「教員と学生とのコミュニケーション機能をもたせる」ことで、電子メールの機能を組み込むことにより、教員と学生がバーチャルな世界で個人指導が受けられるようにした。
 四つ目は、「シラバス、教材等コンテンツの更新が容易に行える機能をもたせる」ことで、補助金を活用して外注委託で構築した後は、教員が情報技術を持っていなくとも更新できる支援機能を付加した。


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