特集

ノートパソコン利用を考える(事例4)


近畿大学商経学部経営学科
経営会計情報コース



1. はじめに

 経営会計情報コース(以下経営Bコースと略す)は、会計と情報に関するスペシャリストの養成と少人数による密度の濃い学習環境の提供を目的に、1990年に近畿大学商経学部経営学科の中に新設された。
 このコースに所属する学生には、入学時からノートパソコンを1人1台、無償で貸し出されるとともに、専用の教室や談話スペースなども用意されている。
 本稿では、大学でのノートパソコンの利用について経営Bコースでの事例をもとに報告する。


2. 経営Bコースの所有設備

 このコースに所属する学生数は、1学年120名弱と少人数であるが、新設時より多くの設備機器がコースに所属する学生用として用意されている(図を参照)。
 管理室は、TA(ティーチングアシスタント)2名が常駐する部屋で、彼らは貸出用ノートパソコンの保守・管理や、コース学生からの学習相談、質問等を気軽に受け付けている。ネットワークに接続されたクライアントパソコン6台とレーザプリンタ1台が設置されているので、学生は授業の合間などに、ネットサーフィン、メールの確認、レポートの出力などに利用している。
 P1、P2教室は、コース学生専用の教室で、ここでは少人数にクラス編成された学生に対して授業が行われる。両教室には、52インチ大型モニタが用意されているので、教員は自分のノートパソコンをこの大型モニタに接続して授業をしたり、管理室に備え付けのビデオ装置を接続できる。たとえば、PCプロジェクタ(管理室で貸出)でブラウザやMS-PowerPointを表示させながら、大型モニタでパソコンの操作方法を例示するといった授業が可能である。
 さらに、P1ルームには赤外線LANを設置しているので、学生は教室内であればどこに着席しても、自分のノートパソコンを大学ネットワークに接続することができる。赤外線LANを採用したのは、ビジネスゲームのような授業で、教室内の机を移動させる必要があるため、情報コンセントの設置は困難と考えられたためである。なお、P2教室は机の移動の必要がないため、フリーアクセスを利用して100BASE-Tケーブルを敷設している。

図1 経営会計情報コースの所有設備・機器

 ロッカー室は、ノートパソコン保管用としてコース学生全員にロッカーが用意されている部屋である。
 この部屋の一角には談話スペースが用意され、学生は談話室としても利用している。


3. ノートパソコンの利用方法

 授業は、コース以外の学生と一緒に受講する共通授業とコース学生のみを対象とした特有授業の二つに大別される。特有授業のほとんどにおいて、ノートパソコンを利用した実習が取り入れられている。
 特に、1年生を対象とした授業では、情報リテラシー教育に力を入れ、入学して初めてパソコンをさわった学生がパソコンの基本的な操作能力を身につけられるよう配慮されている。120名の学生を3クラス編成(1クラス約40名)で、ワープロと表計算が利用できるようになるまで、1人の落ちこぼれもないよう徹底した指導が行われる。
 そのため、2年生以上の特有授業では、表計算等を利用した実習が比較的容易に始められる。
 当然、レポートなどの提出物はすべてワープロやメールを利用する。学生がノートパソコンを自宅に持ち帰って、授業の復習、課題などに使うことも自由である。


4. ノートパソコンの管理

 ノートパソコンの貸出期間は、4月から翌年の1月までである。1年近くパソコンを貸し出すと、ハードディスク内に不要なファイルがたまったり、学生の操作誤りによる必要なファイルの削除、デスクトップ環境の変更等のトラブルが生じているものである。コンピュータの故障、必要なファイル削除などについては、常駐のTAが、その都度、個別に対応しているが、それにも限界がある。
 デスクトップ上のアイコンの位置が移動しただけでも授業で一斉に指導するには支障がある。
 さらに、学年ごとに利用するアプリケーションが違い、それをすべての学年のパソコンに用意するのも無駄である。たとえば、ある統計パッケージを3年次で利用するにもかかわらず、1・2年用パソコンに用意したところで利用されない。
 そこで、ノートパソコンのOSとアプリケーションは、学年ごとに固定している。1月の回収後、3ヶ月間に回収したすべてのノートパソコンをメンテナンスし直している。具体的には、故障個所のチェック、ハードディスクのフォーマットと、システムとアプリケーションのリストアである。


5. おわりに

 ノートパソコンの貸し出しは、学生には概ね好評で、ほとんどパソコンに縁のない入学生が、立派にパソコンを使いこなして卒業していく姿を見るのは、教員としてもこの上ない喜びを感じる。
 しかしながら、問題もいくつか存在する。

  1. 5年リースのため、1年生用パソコン(5年経過)などはMS-DOSのバージョンが古くなる。また、修理不能パソコンが増加し、交換用の予備(在庫)パソコンが少なくなってしまっている。

  2. TAは4年生のアルバイト学生であるため、毎年、MS-DOS、Windows3.1、Windows95といった異なるOSやハードウェアに熟知した者が見つかるとは限らない。

  3. 毎年、パソコンを回収し、リストアによって初期状態に戻しているが、アプリケーションのバージョンアップに従い、容量が肥大化し、リストアに多大な時間を要する。

 また今後の課題では、
  1. 学生が、自宅からBコースのネットワークへの電話接続を可能にし、メールや課題の確認などを可能にする。

  2. ノートパソコンのリース期間の短縮化により、できる限り新しいOS、すべてのパソコンに共通のOSを導入する。

  3. ネットワークを利用した一斉リストアまたはハードディスクを2台内蔵し、一方には初期状態を残すことなどによるメンテナンスの簡素化をはかる。

  4. パソコンの管理や学生の学習相談だけでなく、学生を集めて簡単なセミナーを開催できるようなTAを養成する。などを考えている。



文責: 近畿大学商経学部
  助教授 羽藤 憲一

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