私情協ニュース3


第20回通常総会の開催概要



第20回総会は、平成11年3月30日(火)午後1時30分より、市ケ谷私学会館会議室にて開催。当日は、11年度事業計画と収支予算の決定の審議が中心であった。なお、開会に先立ち、文部省私学助成課安田課長補佐より情報関係補助金申請の留意事項について、概ね次のような説明があった。

  1. 一般的な留意事項としては、各補助金の補助要件等を熟知した上で行っていただきたい。特に補助対象外経費は、補助金関係の法令違反ということになるので注意いただきたい。

  2. 補助対象の事業は、当該年度内に完了し、かつ、当該年度内に対価の支出がなされること。

  3. 補助事業に係る契約・支出等については、各補助金の交付要綱、学校法人の会計処理規程等に従い適切に行うこと。

  4. 学内LANの整備立案には、補助制度上の財産処分制限期間が9年となっていることを考え、申請いただきたい。例えば、来年にキャンパスを建て替える場合は、今年の申請を来年以降にする方がよい。やむを得ない事情の場合には、文部大臣の承認を得た財産処分の例外があるが、できれば長期的な計画を勘案しながら申請いただきたい。

  5. ジョイント・サテライト事業は、装置等の整備後、衛星通信ネットワークを活用した教育研究が円滑に行われるよう、申請段階において教育研究内容を十分検討しておくこと。

  6. 情報処理関係設備は、財産処分期間が6年なので長期的な見通しを見た上で気をつけていただく。レンタルの方が当然そういった耐用年数などを考えた場合に有利。

  7. 経常費補助金特別補助は、大学、短大等の複数の部門において重用されるものは各部門ごとに申請。借入でリース契約を結ぶ場合、所有権の移転を伴うものについては借入とは言えない。

  8. ソフトウェアの申請が学術情報ネットワークの中で申請されていれば、二重申請となる。

  9. 平成10年度3次補正では、装置補助金と設備補助金を組み合わせている。本来、情報処理設備で申請すべきところを装置補助金に誤って混入するなどの例がある。例えば、パソコンでも本体の装置と一体の場合には入力装置として装置補助金の中に包含して申請することが可能。

  10. 11年度より開始の私立大学等教育学習方法高度情報化推進事業は18.3億円。マルチメディアを活用した教育学習方法の改善を図るための教育研究を総合的に支援。マルチメディア関係の装置、設備に対して一体的に補助を行う。ソフトの部分は、経常費補助金の中で教育学習方法改善支援経費として15億円予算化。

  11. 経常費補助金の特色ある教育研究の推進では、10年度よりノート型パソコンの貸与事業をはじめた。 ノート型パソコンは、特に重点的に配分。 特色ある教育研究は、昨年に比べ8億6,800万円増額して、総額44億2,800万円としている。

  12. 申請段階の設備を全く別の設備に変えた場合は問題となる。


  続いて、高等学校の新学習指導要項について、東京工業大学の清水康敬氏に説明を求め、概ね次のような説明があった。

  1. 高等学校の普通科に教科「情報」が新たに設けられることとなった。

  2. 情報教育の目標を情報活用の実践力と情報の科学的な理解、情報社会に参加する態度の三つを掲げた。情報ABCという選択必修という形で、ABCのうちどれか一つを必ず履修しなければいけない。三つの能力態度がどの科目の一つをとっても育成できるものに構成してある。

  3. 情報Aは、コンピュータや情報通信ネットワークなどを活用して情報を選択・処理・発信できる基礎的な技能の育成に重点をおいている。情報活用の実践力にやや目標をおいて、情報の科学的な理解あるいは競争社会に参画する態度を指導するというのがポイント。

  4. 情報Bは、情報の科学的な理解というところにポイントをおいている。その上でさらに情報活用の実践力を高める。プログラミングの言語を目標とした教育はこの中に入っていない。コンピュータとかシミュレーションに的を絞ってはいるが、情報活用の実践力というものも重要。

  5. 情報Cは、情報社会に参画する態度にポイントがあり、情報通信ネットワークが社会の中で果たしている役割や影響に対し、情報社会に参画する上での望ましい態度を育成することに重点をおく。また、コミュニケーションにも重点をおいている。

  6. 教員研修の問題が大きなポイントになる。現在、通信衛星を用いた教育学術ネットワークを構築中。正式には今年の7月からスタートする。 平成15年から情報が新しい教科としてできるので、それまでに免許を出す必要がある。

  7. 教員免許についても、理工系の情報関係の学科でも教科「情報」の免許は今後出せる方向になると思う。3年から教科「情報」を高等学校で履修してくるので、大学教育の中での情報教育あるいは情報処理が変わっていくということになるかと思う。



1.11年度事業計画について

 10年度からの事業の継続・充実を図るということを基本に考えた。なお、新しい課題への対応として新規事業を若干計画した。
 情報教育に関する事業では、16の学系別情報教育委員会において、教材の電子化、マルチメディアを使用した授業方法の事例集、モデルとなる教育方法の研究を始める予定。委員会のWebページを設け、教材、シラバス、授業の運営方法を格納。12年度には米国の大学とセミナーで情報交流を進め、モデル的な授業の研究に資する予定としている。
 基礎的情報教育の調査、研究は、新学習指導要領を踏まえながら、新しい発想に基づく大学での基礎的情報教育のあり方を提案していく。短期大学も同様で5月総会に試案を報告、11月の総会で上梓する予定。
 情報倫理教育の進め方に関する調査・研究は、「インターネットと情報倫理」というガイドラインを上梓する計画で、特に影の問題を教育現場でどのようにとらえ、授業の中でどのように進めるのが望ましいのか、ガイドラインとして11月の総会に報告する予定。
 環境に関する研究では、大学連携による授業支援環境として、ジョイント・サテライト事業の運営に関する問題、衛星通信を使用した共同授業の実現を支援する。地上回線での連携もできるよう郵政省次世代超高速ネットワークの実験も含めて動画を使用した遠隔授業の支援を予定。また、意思決定支援のための戦略情報システムのデータベース化の可能性について、特定の大学に研究を委託、可能性を模索する予定。
 新規事業として、大学の教材、素材データの電子化の促進を進めるためアクションプログラムの検討を行い、実現に向け努力する。
 ネットワークの研究では、日本の小・中・高・大学が教育研究に安定してネットワーク利用できるよう、新しい日本のネットワーク政策について政策提言する。学内LANの運用管理に関するガイドラインも報告の予定。学内LANの運用管理講習会の企画・実施も併せて進める。
 調査事業は、10年度に実施の専任教員5万2千人アンケートの集計、分析を行い、公表するとともに、教育の情報化の自己点検に活用できるような調査の実施を計画。
 新しくマルチメディアを活用した授業モデルの開発に取り組み、メディアをどのように組み合わせるとどのような効果的な授業が実現できるか、事例を集めながら研究開発する。関連して、教員向けの情報技術講習会を委員会で企画、立案、実施する。
 私情協ネットワークの整備は、Webページのコンテンツを充実、大学として希望する情報がオンラインで集められるようにする。新たにセキュリティに関する問題も技術面、運用面で紹介する予定。研究会、研修会の開催は、私情協大会、情報教育問題フォーラム、情報教育方法研究発表会、理事長・学長等会議、短期大学部門検討会議、事務部門管理者会議、情報センター等部門研修会、事務システム研修会、事務システム基礎講習会、学内LAN運用管理講習会の10の事業を継続事業とした。新規事業は、授業情報技術講習会を私情協大会の2日目と3日目にソフトの使用方法を中心とした講習を企画する予定。
 その他本法人の目的達成に必要な事業は、国庫助成対策として教材の電子化促進のための財政援助の研究、日米の大学マルチメディア教育セミナーの準備を進める計画。


2.教材・資料の電子化への取り組みについて

 コンピュータ、学内LAN、ネットワークなど機器の整備が進められているが、教育の情報化の次の課題は、教材・資料の電子化。教材コンテンツの作成は、一部では進められているが、ほとんどがこれからの問題であることに鑑み、組織的に教材・資料の電子化を進める必要がある。そこで11年度にプロジェクト会議を設け、大学における電子化促進のための行動計画のガイドラインを提起し、その実現に向けて努力していくことを考えている。
 第一に、電子化の範囲を大学の実情に即して、可能なところから実施することを申し合わせ、年次計画で進めることを教授会等で協議し、教員全員に呼び掛けるなどの行動を起こすプログラムが必要となる。
 第二に、電子化には、情報技術の支援が受けられるよう情報センターなどの組織的な支援体制が必要となる。外部の企業から専門家を派遣したり、外注委託なりの方法を考える必要がある。
 第三に、費用負担の問題で、できるだけ文部省の補助金を活用して対応できるようにする。
 第四に、著作権及び知的財産の帰属問題の明確化、許諾手続きを学内で議論する場を設けていく必要がある。教員が個人的な見解で著作権を理解するのではなく、学校法人全体で帰属問題を議論する組織が必要であることから、論点を整理し、大学の中で協議する時のガイドラインのような考え方をとりまとめることにしている。


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