情報教育と環境

千葉工業大学の情報教育システムとその環境



1.はじめに

 千葉工業大学は1942年(昭和17年)5月、当時の社会的要請に沿って東京都町田市に「興亜工業大学」の名称で設立された。創立時は、3学科定員160名の実に小さな大学であった。現存する私立の工業単科大学では、日本で一番古い大学である。
 1946年(昭和21年)に校舎を千葉県君津市に移転し、名称も「千葉工業大学」と改称した。現在の習志野市に移転したのは、新制千葉工業大学に移行した1950年(昭和25年)のことである。
 現在では、工学部13学科、大学院工学研究科博士課程10専攻、修士課程2専攻という日本でも有数の工業大学としての規模を誇り、約1万名の学生が学んでいる。
 今後も千葉工業大学は創立当初からの建学の精神である「開拓者としての気概をもった優秀な工業技術者の育成」を堅持しつつ、21世紀という新しい時代が求める技術者を育てていく。新しい時代が求める技術者とは、本学の教育スローガン「ひとのための技術・環境をまもる工学」を実践できる技術者のことである。新しい時代の千葉工業大学の歴史が、ここから始まる。
 また、千葉工業大学は、早くからコンピュータ教育にも力を入れ、以下に情報教育システムの変遷と学内LANシステムおよび教育システムの概要を紹介する。


2.情報教育システムの変遷

 千葉工業大学では、1968年に電子計算センターを設立、教育用コンピュータとして“Burroughs B-220”を導入しコンピュータの言語教育を開講、情報教育が開始された。
 以下に、情報教育システムの移り変わりを示す。
1968年 電子計算センター設立、Burroughs B-220導入、コンピュータ教育開始
1974年 FACOM 230-45Sに更新、汎用コンピュータを利用した教育の開始
1986年 ACOS-S850に更新、芝園キャンパスと津田沼キャンパスに演習室を開設
両キャンパス間を無線接続し、パソコンをTSS端末とした汎用コンピュータの利用教育及びパソコンのスタンドアロン教育開始
1987年 大学間ネットワーク(N1ネットワーク)に加入、学外利用開始
1993年 研究支援システム(SUNワークステーション)導入、研究用アプリケーションソフトウェアを整備
1994年 芝園キャンパスに情報基礎教育システム導入
パソコン(PC9821)162台及びワークステーション(EWS4800)8台でLAN構築津田沼キャンパスに情報応用教育システム導入
ワークステーション(SUN SPARC Station)81台をLAN構築両キャンパス間を専用回線で接続
1996年 津田沼キャンパス内をLAN構築、情報コンセント設置
1997年 芝園キャンパス内をLAN構築、情報コンセント設置
1998年 芝園キャンパス情報基礎教育システム更新パソコン(PC9821NX)210台導入、情報リテラシ教育開始(全学科)
1999年 津田沼キャンパスに多目的演習室開設、ワークステーション(SUNUltra)150台導入
 このように、本学では1968年に始まった汎用コンピュータを用いたコンピュータ言語教育から、ワークステーションを使用したコンピュータ利用教育やパソコンを使用した情報リテラシー教育へとコンピュータのハードウェアの更新に伴い教育内容も変わってきた。


3.学内LANシステムと教育システムの概要

 本学の基幹LAN構築の基本方針を次のように立て設計した。
  1. 学内のどこからでも情報の送受信ができること
  2. IPアドレスの管理が簡便で、マシン移設にもスムーズに対応できること
  3. デジタル画像等を含むマルチメディアの情報交換に対応できること
 この基本方針に沿った学内LANシステムとして、ATM(Asynchronouse Transfer Mode)ネットワークを採用した。大学全体のネットワークシステムとしてATMネットワークを導入したのは、本学が日本で最も早いと思われる。
 本学基幹LANの特色は、主な建物にATM Switchを設置し、そこから各建物のフロア毎にSwitching HUB(LAN Switch)を配置したことである。  また、ATMネットワークシステムの特徴の一つである、物理的な接続構成にとらわれずに論理構成を自由に変更できるバーチャルLAN(仮想LAN)機能を最大限活用することにより、研究室の移動やマシンの移動に伴うIPアドレスの変更等がなく、ユーザーにとってもネットワーク管理者にとっても労力の軽減につながっている。
 本学では、この基幹LANを中心に情報教育システムとして三つのシステムが構築されている。
 一つ目は、芝園キャンパスにある情報基礎教育システムである。
 このシステムは、1・2年生を対象とした情報を扱うための基礎的な教育、特に情報リテラシー教育を中心に行うことを目的として構築したシステムである。
 ハードウェアは、パソコンを210台設置し1人1台専有使用による教育を行っている。
 二つ目は、津田沼キャンパスにあるワークステーション75台を設置した情報応用教育システムで、機械系や建築系のCADを中心とした教育を行っている。
 三つ目は、津田沼キャンパスにあるワークステーション150台を設置したシステムで、コンピュータの言語教育やデータベース、マルチメディア、ネットワーク等コンピュータの応用利用に関する教育を行っている。


4.情報基礎教育システム

 現在の情報基礎教育システムは、1998年に更新したシステムで、図のような構成になっている。
 このシステムの特徴は、150台のパソコンがLAN構成していることは当然であるが、一斉授業が可能であることと、75台ずつ2教室に完全分割し、まったく別の授業が行えることにある。移動式の防音壁で遮断し、システムも完全に二つのLAN構成となるため、演習室の有効利用になっている。
 また、別の建物にある第2演習室とも基幹LANを介して情報基礎教育システムとしてパソコン210台のクローズのシステムとして構築してある。
 情報基礎教育の基本的な教育方針は、日本語ワープロ、表計算ソフトウェア及びネットワークの利活用によるリテラシー教育にあり、全学科必須となっている。これを本学では、現代版「読み、書き、そろばん」教育とよんでいる。
 本学は、工学系の大学であるため、実験レポートや卒業論文の作成などにパソコンの各ツールを駆使することが多く、その基礎的な教育を司っているため、これらの教育が十分に行えるシステム構成となっている。
 当然このシステムは、授業時以外は開放しているため、学生個人の自学自習や学外との情報交換にも利用されている。
 また、芝園キャンパスには、情報コンセントが300個所以上設置しており、学生個人のノートパソコンで自由に学内外との情報交換が行える環境にある。


図 情報基礎教育システム図


5.次世代型 多目的演習室(巻頭カラーぺージ参照)

 昨年末の新校舎完成に伴い、基幹LANを再構築した。また、この新校舎には多目的演習室を設置し、次世代の超高速ネットワークのギガビットイーサネットを導入、大規模システムでのATMとギガビットネットワークの融合を果たした。
 この演習室にギガビットネットワークを導入したのは、インターネット・イントラネット及び、VODを利用したマルチメディア授業に耐えうる超高速ネットワークが必要になったためである。同演習室は定員150名の大教室にワークステーション150台を揃え、120インチスクリーン2面を前方に、教室内中間付近には電動スクリーン4面を備えた。プロジェクターは合計6台整えられ、大教室ながら、すべての学生がどこからでも同じ情報を共有できる学習環境が構築されている。ワークステーションには、すべて薄型の18インチ液晶ディスプレイと省スペース型キーボードを採用している。
 また、ワークステーションの配置は、島のような円形レイアウトを数カ所に採用し、一斉授業からグループ学習、個別学習に至るまで多様な学習形態への対応を可能としている。
 さらに新校舎を中心に多数の情報コンセントを増設し、いつでもインターネットや電子メールを使用できる環境に整備した。

文責: 千葉工業大学
電子計算センター助教授
  竹本 篤郎


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