私情協ニュース3

平成11年度事務システム基礎講習会報告



 事務システム基礎講習会は、比較的経験の浅い私立大学職員を対象に、大学の事務情報システムの目的、あり方、構築手法ならびに最新情報技術の基礎を習得し、その資質向上に寄与することを目的として企画・実施されている。
 今年度は、7月13日(火)から15日(木)までの2泊3日の日程で、静岡県浜松市のグランドホテル浜松を会場として、100大学10短期大学合わせて276名の参加者を得て開催された。
 大学を取り巻く状況がますます厳しさを呈するなかで、全国の大学において大学改革に向けた取り組みが始まっている。大学改革は取りも直さず社会の要請に応える教育・研究の充実・高度化に他ならないが、業務改革と表裏一体のものとして進められなければならない。
 従来の大学における事務システムは単にデータ処理による省力化・合理化が主眼となっていたが、最近ではインターネット技術を背景とした情報サービス、情報共有、協調業務の領域へと拡大し、日常業務の基盤としての位置付けが鮮明になってきたと言えよう。
 そこで、今年度は「21世紀の大学創造と業務改革」を基調テーマとし、講習会のプログラム内容、講義手法などに一貫性をもたせるように工夫した。
 講義に先立ち、基調テーマを演題として、孫福 弘氏(慶應義塾大学理事・塾監局長)による基調講演を行った。大学改革をリードしておられる孫福氏の講演は、非常に示唆に富んだ内容であり、「既成概念を廃し、知識社会としての21世紀における大学の役割を充分に果たせる職員としての資質を身に付け、全体的視野と政策的視点を持って大学改革をリードする職員になろう」と熱のこもったお話を伺うことができ、参加者に深い感銘を与えるとともに、意識を高めることができた。
 この基調講演を受けた形で事務システムに関わる五つのテーマで担当の研修運営委員による講義が行われ、参加者はタイトなスケジュールのなかにも熱心に受講していた。
 また、講義以外のプログラムとして、事例発表とデモンストレーションが行われた。今年度のテーマは「インターネット技術を活用した情報サービス」とし、青山学院大学と早稲田大学のWebによる学生向けの情報提供システムが紹介され、両大学の先進的な取り組みに参加者から多くの質問が寄せられていた。
 さらに、合宿研修の特徴を生かして、例年同様夕食後にフリーディスカッションの場を設定したが、会場が満席となる程多くの参加者があり、大学相互の情報交換や基調講演に触発された論議、そして講師を交えての講義のフォローアップなどが活発に行われるとともに、講習会以降の情報交換に向けたヒューマンネットワーク形成の場としても有効な場となった。
 全体を通して、参加者には非常に熱心に受講していただき、意識改革につながったと好評を得ることができた。また、講演者、講師の方々には、今年度の基調テーマに沿って、様々な工夫をしていただき、感謝したい。なお、今回の講習会の結果を踏まえ、研修運営委員を中心として今後さらにこの講習会の内容を充実させたいと考えているが、今後とも関係各位の積極的な参加と成果を高めるための提言を期待して報告を終える。


講 義 概 要

(1)「大学の業務プロセスとデータベース」
担当:金子勝信氏(大東文化大学) 

 慶應義塾大学の孫福氏の基調講演を受けて、大学における業務プロセスの整理の方法とデータベースの考え方及び作り方を、オブジェクト指向のひとつであるDOA(Data Oriented Approach:データ中心型アプローチ)をもとに、DFD(Data FlowDiagram:データ・フロー・ダイアグラム)、ER(Entity Relationship)図、データの正規化(DataNormalization)の3点について具体例を交えて解説した。特に、DFDについては、各部署での業務が整理され、業務改革および部署の統廃合が可能になるため、重点をおいた。


(2)「プロジェクト管理の進め方」(業務システムの構築と運用)

担当:千葉幸喜氏(東北福祉大学)

 各大学で様々な業務システムが構築・運用されているが、近年、業務システムには大学を取り巻く環境の変化に対応する多様性が求められている。講義では、これらを踏まえた上で、多様化したニーズに対応できるシステムの計画から設計、開発、運用、保守までの基本的な技法と、それらの行程を掌握するプロジェクト管理の方法と留意点について解説した。


(3)「事務システム構築のためのハード・ソフト」

担当:山田憲男(日本女子大学)

 今回の講義では特に初心者を対象に、これからの事務処理用コンピュータの動向、ソフトウェアの利用方法、業務にあったハード・ソフトの選定基準について解説した。
 また、学園情報の戦略的有効活用を担う、ネットワークを利用した今後のシステムの方向と職員の情報利活用についても触れた。最後に情報技術を業務革新につなげるスキル向上を今後の課題として提示した。


(4)「ネットワークのしくみとその活用」

担当:杉町 宏氏(立命館大学)

 全国の大学で学内LANの整備が進み、ネットワークを活用した業務スタイルが定着しつつある。普段何気なく使っている電子メール、WWWなどの仕組みについて基礎的な内容を解説するとともに、今後における大学の教育・研究・事務の各分野でネットワークシステムの果たす役割とその意義、将来展望について解説を行い、ネットワークシステムを基盤とした情報提供、情報共有、協調業務のあり方についても触れた。


(5)「情報倫理とプライバシー保護」

担当:直村裕二氏(産能大学)

 最近の大学の情報化は、高度な教育実現のための情報化と事務の効率化と学生生活支援のための情報化という二つの大きな動きがある。前者は、遠隔教育や在宅学習、シラバス情報システムなどであり、後者は、休講情報や講義内容などの学務情報や就職情報、入試情報等のWWW上への公開などであるが、いずれもキーワードは、インターネットとネットワークである。今回の講習会では、大学での活用事例や利用上の諸問題の事例を取り上げながら、深刻な問題を呈しているウィルスや著作権法違反、利用マナー問題の現状と大学の知的財産や個人情報の保護対策等について基礎的な講義を行った。



(文責:立命館大学 杉町 宏)

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