第7分科会  大学を取り巻く環境の変化に対応した情報システム部門の役割

討議概要

 本分科会は、大学を取り巻く環境の変化を背景に大学の将来像を描き、情報システム部門の役割について考え、将来のシステム構築に有効と思われる技術やサービス、運営等について討議し、費用対効果、リスク等の観点から多面的な評価を行うことを目的とした。

 研修に必要となる基礎知識や情報の修得の一助として、大学を取り巻く環境変化、大学の将来像、情報部門の役割についての事前レポートを課し、また、参考事例として、フリーメール、遠隔授業システム、サーバ仮想化、電子購買システム等の紹介を行い、それらを踏まえてグループ討議を行った。

 グループ討議は参加者の担当業務により教育研究、業務、総合に分かれて行い、教育研究グループは、「5年後の大学夢プランを提案する」ことを目標に、魅力ある大学をITで実現する提案をまとめた。業務グループは、部門が抱える課題としてコスト、新技術への対応、要員の育成と確保、ベンダコントロール等について解決策を模索した。総合グループは、新技術の活用を中心に、システムの構築・リプレースの際のコスト面や教育コンテンツの管理面等で、大学共通の基盤作りと、関連団体や業者、教員との密接な連携の重要性に着目して解決策の討議を行った。

 本分科会には多様な雇用形態、前歴、業務経験を持った方々が参加されていた。そこで、「大学の将来像を描く」という状況設定を行い、相互の違いを超えて共通のテーマに取り組むことで議論の深化を促した。しかしながら、これが必ずしも十分に機能しなかった部分があり、今後の課題として、事前レポートの締め切りを早めて事前学習の段階でグループ分けを行う、講習会前にメール等によるディスカッションの場を提供する、討議の進行において早めのアドバイスを行う等、さらなる検討が必要なことを認識した。

報告書

 

報告書全文

討議まとめ

(1)分科会のねらいに対する結論

 教育研究、業務、総合の3グループに分けて討議を行ったが、討議内容に示されているように、グループごとの切り口で大学、および、情報システムやサービスの将来像を描き、今後の情報システム部門が担うべき役割についての議論が交わされた。

ミニ事例紹介、グループ討議の中で各校の取り組みを出し合うことにより、最新技術や、事例の提供、ならびに、それらを利用実態の情報交換が行われた。

参加者のアンケート結果からは満足度、達成度の差異はあるものの、分科会が狙いとした、将来プランを描き、そこに向けての討議を通して自部門/自己の担うべき役割についての認識を深め、職場に戻って応用できる考え方や参考となる情報を持ち帰っていただくという目的は達成できたと考える。

加えて、研修会終了後もメーリングリストを活用しての情報交換が行われており、参加者から要望の多かった、他大学の情報収集の場も提供できている。

(2)討議テーマに対する結論

教育研究グループ

以下のサービスを提供することで魅力ある大学をITを活用して実現することが可能となる。そのために情報部門が今後果たすべき役割について討議しまとめた。

【教育効果】

IT を用いて下記のカテゴリー毎に求められる教育効果の向上に取り組む。

(1)受験生

e-learningコンテンツを充実するなどして、基礎学力を向上させる。

(2)在学生

大学特有の電子コンテンツの蓄積や事前事後学習支援システム、効果的なフォローアップシステムを構築することで探求心を満たすような環境を作る。

(3)社会人学生

時間と場所を選ばない学習環境、情報交換の為のSNSを提供するなどして多忙な社会人が受講しやすい環境を作る。   

【情報提供】

学内で情報を共有するとともに学外へ情報を発信する。

(1)学内での情報共有

教職員・学生・保護者が互いに情報を共有する。また、興味を持たれるコンテンツをポータルサイトに集約する。現状では、各システムの連携ができていないという問題があるのでシステム間で連携を図るとともにポータルサイトとも相互に連携する。

(2)学外への情報発信

大学から地域社会へ情報を発信する。

 【遊び心】

 学生の興味をひくような環境作りを行う。

業務グループ

  • 業務システムにおいては、経営への貢献の観点から「コスト削減」を、またユーザサービスの観点から「サービスの安定供給」を常に念頭に置くことが必要である。
  • 業務系システムの形態として、自主開発・自主運営、パッケージ/サービスの利用、外部委託等のパターンが考えられるが、大学の規模とサービスの内容により最適解は異なるので、自学の状況を鑑み、費用対効果の検討を十分に行うことが必要である。
  • ASP、SaaS等の導入にあたっては、導入前にBPR(業務単純化・スリム化等)を行い、でカスタマイズ部分を減らし、コストや機能実現におけるリスク回避が必要である。
  • 外部委託は人件費削減につながるように見えるが、情報システムのブラックボックス化の危険性を孕むので、その点の精査を行うことと、システムのボトルネックを離さない配慮が必要である。
  • 逆に、内製化は作成した作業者依存の部分が多くなり、ブラックボックス化につながることもあるので、ドキュメントや複数担当による業務引継ぎ体制を整えることも必要である。
  • システムの導入や入れ替えは初期投資が大きくリスクも高いので、部分的、段階的導入によりリスクの低減を図る必要がある。
  • 情報システムが把握しておくべき事として、現場とシステムの橋渡し役、経営層とシステムの橋渡し役、現場へのシステムの押し付けをしない、これらを認識して業務に取り組む必要がある。

総合グループ

 討議テーマそれぞれについての結論は出なかったが、課題解決や将来像を検討する中で討議を行った。

 大学の将来像と、情報サービスやその運営のモデルプランについては、まず現在実施しているサービスの課題の解決に重点を置き、大学間の連携やシステム運営を支援する外部機関の必要性、並びに教員との協働体制の見直しによる組織運営の円滑化が求められた。

 IT 関係の投資と費用対効果の評価については、現在各大学が取り組んでいるe-Learningについてはまだ十分に活用されておらず、本来の機能が発揮されていない状況にあるため、支援体制整備等の活用のための施策が必要である。また、事務システムも部門毎にパッケージが導入されており、運用負担や保守費用が増加している状況にある。

 注目されるサービスや技術の導入による効果、想定されるリスクとその回避については、e-LearningとICカードを中心に討議し、リメディアル教育等への適用等活用方法の十分な検討がなされないと教育支援や学生サービスに結びつかないとの懸念が示された。また著作権処理や個人情報等への組織的対応も必要とされた。負担の増加している事務システムについては、部門毎のデータベースを統合し、SOAによる最大公約数的なパッケージを開発し、アウトソーシングし易いシステム構築が望ましいとされた。  

 情報システム部門における人材の確保及び育成は如何に行うかについては、小規模の大学では少数の職員と教員、協力会社が連携して運営している状況にあり、グランドデザインの共有化と組織的な役割の見直しも必要とされた。

資料/成果物

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