社団法人私立大学情報教育協会
平成15年度第4回文学教育IT活用研究委員会議事概要

 

T.日時:平成15年12月26日(金)午前10時から正午まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:竹本委員長、安田、西澤、板坂、金子、原、宇都宮委員

      井端事務局長、木田

W.検討事項

1. 来年度委員会の活動方針について

 昨年度より企画した檀国大学との遠隔授業を見送ったことに伴い(専修大学と檀国大学間の遠隔授業は継続実施されている)、これまで委員校間での遠隔授業実施を検討してきたが、大学によって情報環境の格差があることから、今回は委員各位より、自大学の情報環境及びIT活用の現状を報告いただくこととした。

○宇都宮委員

 大谷女子大学のネットワーク環境では、他大学との遠隔授業を実施することも可能であり、現在も実際に付属高校との間で実施している。IT活用では、動画+スライド同期型の教材システムや聴覚障害者のためのPowerPointを用いたノートテーカーシステムを利用している。

○竹本委員長

 早稲田大学では、3年前よりオンデマンド授業コンテンツを学内または複数の大学に対して配信している。また、エクステンションセンターが主体となり、生涯教育の一環として衛星通信を用いたオープンカレッジ講座を開講しており、各拠点にリアルタイムで配信している。その他には、韓国等諸外国との遠隔講義を、主に語学教育を中心に実施している。教員個人では、HPを開設して授業で活用している者もいるが、全学的に取り組んでいるわけではなく、自主運営されている。

 オンデマンド授業は、語学では学生も集中して受講する様子が伺えるが、教養科目では途中で脱落する者も多い。また、オンデマンド授業用に講義をすると、対面と比較して内容が易しくなる帰来がある。

○板坂委員

 大学では全学的にオンデマンド授業等に取り組んでいるが、板坂委員自身は檀国大学との遠隔授業を実施のため、PCS(テレビ会議システム)を用いている。このシステムによって、教室間の風景、プレゼンテーション画面、電子ボードの画面を共有することが可能となる。専修大学では2台導入したので、付属高校との遠隔授業でも用いている。さらに、インターネット会議システム(IPS)の導入も予定しており、それを用いてベネツィア大学とも遠隔授業を実施する予定である。

 その他、板坂委員個人の取り組みとしては、CGIを用いた俳句提出を実施しており、また動画+スライド同期型の授業コンテンツの作成を計画している。

○金子委員

 日本大学では、現在文理学部、芸術学部、工学部、法学部間で衛星通信を用いた遠隔授業が実施されており、単位取得も認可されている。授業は、一般教養的な内容で、オムニバス形式で運営されている。授業形態は、配信校を決めて、そこから複数キャンパスに対して授業を配信するが、特に相互性を持たせている訳ではない。

 また、文理学部では、学術フロンティア推進事業として、日本語貴重資料をデータベース化することとなり、現在その提示方法を検討しているところである。個人的には、メーリングリストによる学生間の意見交換や、Webに講義資料を掲載しているが、いずれも外部のプロバイダを用いて運営している。

 各委員の説明を踏まえ、質疑応答や意見交換したところ、下記の旨の意見なされた。

  • 遠隔授業の講義内容は、一般教養的な科目、あるいはスキル教育的な科目が多数を占め、専門科目ではあまり実施されていない。
  • 早稲田大学では、インターネット講義の実施を大学側に申請すれば、予算を付けてもらえるが、準備等手間が掛かるため、対面授業だけを選ぶ教員が多い。
  • 専修大学でも遠隔授業実施にあたり、環境整備にかなりの労力を要したが、他学部の教員や職員による協力体制も確立され、また学内の教員から参加したいという声も挙がってきた。しかしながら、遠隔授業の実を結ぶためには、情報環境の整備だけでなく、TAの充実が不可欠であることも実感した。
  • 遠隔授業を行うと、学生は最初のうちは物珍しさで興味を示すが、授業が進行するに連れてボンヤリしだすものも多くなる。
  • 各大学の現状を鑑みると、ネットワーク環境の問題はクリアされているように思われるが、特定の機器が必要とされると、実験ならともかく実用化されることは難しいように思われる。
  • 17年度から大学評価が義務付けられることから、授業の品質保証という問題が新たに生じる。日本国内の大学の状況に鑑みると、まず学生のモチベーションを向上するような授業内容を検討する必要がある。そして、モチベーションが向上した後に、学生個々の質を高める手法を考える必要がある。本委員会でも、そのような課題を克服するためのITの活用方法に関するガイドラインなどを取りまとめる必要があるのではないか。また、遠隔授業を実施するにしても単に授業を配信するだけではなく、大学間で同一の試験問題を行い、その結果を競わせるとか、あるいは学習管理システムを活用して学生一人ひとりの理解度や進捗状況を把握するなどの工夫が必要なのではないか。

 以上の意見を踏まえ、次回委員会では、授業内容の質保証を踏まえ、委員各位よりITを活用した教育効果や利点、あるいは理想とする授業運営方法などを紹介いただくこととした。