社団法人私立大学情報教育協会
平成15年度第1回化学教育IT活用研究委員会議事概要

 

Ⅰ.日時:平成15年6月18日(水)午後6時から8時まで

Ⅱ.場所:私情協事務局会議室

Ⅲ.出席者:竹内委員長、小中原、高野副委員長、堀合、伊藤、及川、庄野、武岡、木村委員、井端事務局長、木田

Ⅳ.検討事項

木村委員による授業事例紹介

木村委員は、主に物理化学を中心とした授業科目を担当しているが、化学コースに進学してきた学生の中には、物理が嫌いな学生や高校時に物理を履修しなかった学生がいるため、講義内容を理解できずに落ちこぼれてしまう可能性が高い。それを未然に防ぐための手段として、Webページを活用して講義の復習を行える環境を整備した。

学生一般の特徴として、講師がわかりやすく丁寧に講義を行うと、興味を抱いて話に耳を傾けるものの、講義後には内容を忘れてしまうことが多々ある。あるいは、講義中にノートを取り始めると、今度は講師の話を聞かなくなり、講義内容を理解できないということもある。そのような学生を対象として、3年前よりpdf化した講義資料をWebページに掲載したが、それだけでは物足りないとの声が挙がったため、昨年よりPowerPointと動画同期型のe-Learning教材を配信し始めた。

この教材は、Microsoft Producerなどを用いて作成したもので、閲覧するためにはIDとパスワードによる認証が必要となる。また、web上で講義内容に関するQ&Aも受け付けているが、ID、パスワードに関する質問が多いのが現状である。

学生のアクセス回数については、5回アクセスした学生数が約5割、10回アクセスした学生が約2割、一度もアクセスしたことのない学生が約3割であった。アクセスの多い時間帯は夜で、曜日としては土曜日が多い。なお、アクセス回数の多い学生は、講義の出席率も高く、成績・理解度も厳密ではないものの概ね比例している。

今後の問題としては、webやe-Learning を活用して、講義自体の出席率の低い学生に対してどのように動機付けを行うか、試験の不合格者をどのようにして合格させるか、また現在配信しているコンテンツは容量が大きいため、ネットワークの帯域によってはスムーズに再生できないこともあるので、容量の軽減化も求められている。

高野副委員長による授業事例紹介

高野委員は、2年生の工学基礎科目「流体力学」と3年生の選択科目「生体材料工学」を担当している。同志社大学では、e-Learningのプラットフォームとして、WebCTを導入しいおり、教員学生間の相互コミュニケーションも可能であるが、高野委員は現時点では、教材・資料の提示を中心に活用している。「流体力学」では、毎回の講義の中で小テストを課しており、講義中に終わらない学生に対しては、次回の講義までにmailで提出させている。また、「生体材料工学」では、期末レポート試験を課しているが、webからの盗用が多いため、今後は手書きによるレポートに限定して提出させることを検討している。

なお、同志社大学では8月に情報環境を一新することに伴い、e-LearningシステムもWebCTに変わるものを導入する予定であるため、現在既存の教材を更新している。

庄野委員による授業事例紹介

庄野委員は、「コンピュータ化学2および演習」「コンピュータ化学3および演習」を担当しており、情報技術を化学の補助教材として用いているというより、化学を題材として、計算機の利用方法を教えるために必然的に用いている。具体的には、データ処理や解析用ツール、情報処理のツール、理論計算のツールとして計算機の利用方法を教えている。

「コンピュータ化学2および演習」では、化学に関連したソフトウェアを用いて、構造式の描画や分子量を計算させたり、分子軌道法や分子力学法によって分子モデリングを行ったりしているほか、Wordや画像取り込みソフトの使用方法についても説明している。

問題点としては、講義の半分以上をソフトウェアの取り扱いに費やすことと、実施学年が2年前期であるため、有機化学や物理化学の基礎的な理論を学習していない学生が多く、計算機の導き出した結果を分析することができないことなどが挙げられる。今後は学生の理解を促進するために、学生実験と授業内容をリンクさせることも計画している。

 「コンピュータ化学3および演習」では、四則演算的な処理や数値計算法による計算を行うためのツールとしてのExcelを用いている。授業内容は、基礎編と応用編に分かれており、基礎編ではエクセルの基本操作、応用編は数値計算の方法を教えている。今後は学生実験との授業内容の連携や、Webベースによる学生とのコミュニケーションも導入したいと考えているが、そのための時間を確保できないのが現状である。

4.その他

事務局より、委員会改組と今後の方針について説明があった。要旨は下記の通りである。

「今までは、ITを活用した教育方法の研究を中心に活動してきたが、教育基本振興計画の在り方でも明文化されていたように、今後はITを活用した教育内容の豊富化・高度化への可能性について模索されたい。」

以上の方針に対して、委員より下記のような意見があった。

「化学教育においては、教育内容の高度化を図るよりも、基礎学力低下の問題の方がより深刻である。委員会としても、基礎学力低下をどのようにカバーしていくべきかを中心に活動を進めていくべきではないか。」

以上のような意見があったこと、また委員による授業事例の紹介も一巡したことに伴い、次回委員会では、今後の活動内容や方針について自由討議することとした。