社団法人私立大学情報教育協会
平成17年度第6回歯学教育IT活用研究委員会議事概要

機テ時:平成18年3月2日(木)午後4時から午後7時まで

供ゾ貊蝓Щ箴雍┿務局会議室

掘ソ仞兵圈Э生彊儖長、松久保、那須、小菅、岡本、上村各委員、森實アドバイザー
   槇宏太郎教授、片岡竜太講師(昭和大学)、住友伸一郎助教授(朝日大学)
   井畑事務局長、木田
検サ鳥進行
1.18年度発刊予定の報告書の授業モデルについて
(1) 槇宏太郎氏による授業事例の報告

 槇宏太郎氏より、歯科矯正学におけるIT活用事例について報告いただいた。要旨は下記の通り。

<臨床・研究・教育>
  臨床・研究・教育のうち、いずれかに力点を置くといずれかがおろそかになりがちである。片手落ちにならぬよう、三位一体でなければならない。

<不正咬合>
講義内容としては、成長発育、診断法、分析と診断、治療計画の立案、手技の解説、実習を行うが、歯科矯正学が日本に導入されて以来、教育内容に変化が無いことに大きな問題がある。

<歯科矯正教育の問題点>
・ 矯正科は卒後教育に頼るところが大きいが、果たして卒後も大学に残りトレーニングを受ける医師が優秀であるとは必ずしも言えない。
・ 講義内容や教育方法が古典的である。
・ 生物学的基準が曖昧であり、学問的基盤が確立していない。
・ 成長機構が未解明
・ 機能評価が困難
・ 審美性に乏しい
・ 非効率的な術式
・ 排他的専門性

<問題点の解決法>
・ 生体情報の総合的診断
・ 生体力学による診断法(生体力学的な科目が歯科教育には導入されていない)
・ 新しい治療システムの開発・導入
・ 科学的教育法の開発

※上記解決法を実現するには、歯学部の力だけでは困難であることから、他の学問領域とのコラボレーション、産学協同研究が必要である。

<マルチメディアの導入>
・ 三次元の応用
レントゲン写真ではわかりにくい現象の理解に努める。具体的には、オペ法、インプラントの3D、咀嚼を力学的に分析するための動画を用いている。
・ tele-medicineの応用
患者の許可を得て、実際の手術現場の様子を撮影し講堂にリアルタイムで配信する。手術後は、患者にも授業に参加してもらい、手術の感想等述べていただく。
・ ロボット工学の歯科領域への導入
昨今学生が抜歯や切削を実習することが困難となりつつあるが、スキルの向上のためには実技を体験し、特にそれを通じて失敗を経験することが必要である。そこで、手術を疑似体験することを目的とした患者ロボットを製作。このロボットは、単に手技だけではなく、コミュニケーション能力の向上も目的としている。そのため、実際の人間のようにロボットはまぶたの開閉、唇、舌、口の運動、嚥下運動、腕払いのけ、首振り運動を行う。さらに、患者から見た術者の動きを認識するため、眼球にカメラを埋め込んでいる。なお、患者ロボットを用いた実験を行ったところ、治療未経験の学生からは全く人間と似ていないという感想が多かったが、その一方で治療景観のある臨床研修医からはとてもリアルであるとの感想が得られた。

<今後の展望>
・ 新しい領域の開拓の必要性
・ オーラルケアの一環としての矯正の普及
・ 教育研修
・ ロボット診断、AI、情報工学の導入
(2) 片岡竜太氏による授業事例の報告
  次に、片岡竜太氏より、「昭和大学におけるPBLテュートリアルとIT活用」について報告がなされた。要旨は下記の通り。

<昭和大学歯学部教育における問題点>
・ 基礎歯学教育と臨床歯学教育の乖離
・ 臨床実習において学生に配当する患者数の激減
・ コミュニケーション教育の不足

<PBLの目標>
・ 学生が主体的に学習する習慣とその方法を体得する
・ 具体的な事例をもとにして、臨床推論・問題解決能力を身に付ける
・ グループでの協働を通じて、コミュニケーション能力やチーム医療における基本的な態度をみにつける

<PBLテュートリアル教育導入の際の問題点>
・ 物的資源(教室の不足)
・ カリキュラム
講座別ではうまくいかないので、様々な分野と有機的に結びつける必要がある。
・ シナリオ
臨床経験の無い2〜3年にテキストベースのシナリオを出しても想像ができないことから、ビデオや画像を活用する必要がある。
・ ファシリデータ
PBLではチュータによる支援が必要だが、基礎講座と臨床講座のキャンパスが離れているので、ネットワーク上で助言や支援を求めるためのシステムが必要
・ リソース
   参考文献など、図書館の蔵書だけでは数が足りないので、電子化する必要がある。

<昭和大学におけるPBLの進行>
・ ステップ1:シナリオを読→資料(ビデオ)のサマリー作成
・ ステップ2:問題を明確にする
・ ステップ3:重要な事柄についての説明をする
・ ステップ4:問題を説明する
・ ステップ5:説明を確かなものにするために必要な学習項目を明らかにする
・ ステップ6:自習する→学習成果のサマリー作成、事前提出、グループ内に配布
・ ステップ7:グループ学習をする

<資料(ビデオ)のサマリーの目的>
・ 平成16年度の3年前期に行った「顎口腔発生・構造・機能」でシナリオにビデオを導入
・ このビデオは患者の協力を得て制作
・ ビデオの導入は学生に好評であったが、一部グループでビデオの内容の見落としがあり、そのまま討論が進んでしまった
・ 見落としを回避するために、ビデオの内容を文章化し、グループ内でビデオの内容に対する共通認識を得る。
・ 診察結果のカルテへの記入

<学習成果のサマリー>
・ A4用紙2枚以内に自分の言葉でまとめる→自己主導型学習の充実
・ グループ学習前日にファシリデータに提出→フィードバックの充実
・ グループ学習時にサマリーを他の学生に配布→グループ学習の充実

<PBL支援サイト>
・ 先述した通り、基礎講座と臨床講座ではキャンパスが離れているため、学生・教員間で連絡するため、以前はe-mailを主に用いていた。しかし、学生の中にはe-mailの操作に不慣れな者がいること、学習成果の提出時にemailが殺到し教員の業務に支障が出ること、歯科病院では連絡事項の確認や問い合わせが難しいことから、学生・教員間の連絡やコミュニケーション、課題提出と指導を統合するための専用サイトを構築。
・ サーバーは大学内に設置し、学生は学外からのアクセスも可能。
・ セキュリティ対策としては、ユーザー1人ごとにアクセス権限を与えるためのパスワードを配布。なお、教員と学生のアクセス範囲は明確に分かれており、また学生は所属グループ以外のグループディスカッションは閲覧できない。
・ レポート提出は、Web上で一括して行う。学生は提出状態や内容を確認することも可能であり、教員はブラウザ上でコメントを返すことができ、効率化を図ることができる。

<リソースについての試み>
・ リソースの検索方法と評価基準に関して講義を行う。
・ 図書館の蔵書だけでは学生分の資料の数が足りないので、PDF化して配布する。学内のみ閲覧可能であるが、著作権法上問題があるので、今後改善の余地がある。

<将来的な対策>
・ 現在、図書館にPBLに必要な図書を複数冊置くよう交渉している。
・ 著作権を考慮せずに用いることが可能な昭和大学独自の統合型講義用図書の構想

 以上の報告について、下記の旨の意見があった。

○ 配布資料の時間割を見ると、4月には毎週月曜日にPBLの時間が設けられているが、これは何回繰り返されるのか。
→ 4回繰り返される。PBLは、2年生の12月に初めて実施し、その次に3年生の4月に実施する。本年度からは、1年生と4年生でも実施することにした。ある程度回数を増やさない限り学生もPBLに慣れず、効果も上がらない。

○ 学生は慣れてくると、教員が何を考えてどのような答えを求めているのか見抜いてしまい、答えを決め撃ちで探すようになり、それに至るまでの思考プロセスを省略してしまう恐れがある。このように、結果的に最終的に教員側の意図と学生側の思惑が乖離してしまうことはないか。
→ チュータにはガイドを配布して、教員の意図や段階ごとの指導方法を指示しているが、学生にやることを強制してしまうとPBLにはならなくなるので、学生の自主性を尊重しつつ、外れた方向に進んでしまった場合には軌道修正するようチュータに忠告してもらっている。また、PBLの一番の目的は、基礎科目が将来臨床の場面でいかに役立っているのかを2〜3年生に理解させることにあると考える。それ故、臨床の場面に即したシナリオを作成するよう心掛けている。

○ チュータから研究の時間、診療の時間が削減されるとの不満の声は挙がっていないのか。
→ チュータは必ずしも助手以上である必要はないと考える。PBLを過去に経験した上級生にチュータを任せると、彼らにとっては過去の復習にもなり、教員よりも上手に指導することも期待できる。最初の2〜3回は教員が指導した方が良いが、シナリオが蓄積すればそのように省力化を図ることができる。

○ 最終的にはどのように評価を行うのか。またPBLを通じて学生がどのように変わったのか、何を基準にして判断するのか。
→ 教育効果を厳密に評価することは難しい。昨年はペーパー試験を行った。内容としては、PBLのシナリオを出題し、問題点や学習項目を抽出させ、最終的にシナリオの主人公の立場に立ってどのような解決方法をとるべきか回答させるものだった。平均点は70点程度で、満点の学生もいれば、全く回答できない学生もいた。

(3) 住友伸一郎氏による授業事例の報告
次に、住友伸一郎氏より授業事例を報告いただいた。要旨は下記の通り。

<Webの活用>
・ 講義ノートや演習問題をWebに掲載。アクセスは学内LANからのみ可能。ファイル形式はPDF。
・ 臨床実習の際の試験問題として、過去の国家試験問題から出題しているが、問題は5000問プールしている。学生は問題数に圧倒されてしまうが、1つの問題につき5〜7問類似内容の問題が出題されていることを説明する。なお、国家試験問題はPDFだけでなく、excelでも配布している。Excelでは、学生が好きな問題を選択して回答できる仕組みを組んである。なお、この問題を年に2回程度提出するよう呼びかけているが、回収率はあまり高くない。

<PBL>
・ Web上のテキストベースのデータだけでは、症例に対する考え方を深めることができない。そこで、症例の概要とシナリオ、設問を記載したシートをCD−ROMで配布し、配布した当日中に提出させている。翌朝に学生の回答に対してコメントを加え返却する。なお、これは5年生の臨床実習時に、2グループに分けて別々の症例を対象として実施している。
・ Webの作成も含めて、教材は住友助教授が1人で作成している。

上記の報告について下記の旨の意見があった。

○ PBL時の課題を当日提出させることには何か理由があるのか。
→ 大抵の学生は期限日より遅れて課題を提出してくることに鑑みているが、その他にもコンピュータを用いてグループ学習させるための時間を当日中にしか設定できないという事情もある。

○ 教材は1人で作成されているが、この取組みが全学的に広まる気配はあるか。
→ 国家試験の過去問を用いる教員はいるが、あとは各科が個々に取り組んでいる。