社団法人私立大学情報教育協会
平成18年度第1回栄養学教育IT活用研究委員会議事概要

Ⅰ.日時:平成18年5月23日(火)午後2時から午後4時まで

Ⅱ.場所:私情協事務局会議室

Ⅲ.出席者:武藤委員長、市丸、酒井、石崎、室伏各委員、井端事務局長、木田

Ⅳ.検討事項

 1.18年度発刊の報告書について

(1) 執筆分担の確定

 はじめに、報告書における授業モデル以外の執筆担当と各内容について協議した。

①コア・カリキュラムを意識した教育の到達目標
日本栄養改善学会が作成している「管理栄養士養成課程におけるモデルコアカリキュラム」に則り、学生の達成すべき目標を知識・技能・態度の側面から論ずる。ページ数は0.5ページ程度。

②教育現場における課題
①で掲げた目標を達成するにあたり、現在教育現場で直面している問題点を学生、教員、組織それぞれの側面から列挙する。

③教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性
  ②の課題解決に向けた教育方法の設計方針を具体的に提示する。ここではIT活用に限らず、例えば、臨床栄養教育充実に向けた病院等各機関との連携教育の重要性など論ずる。

 以上を踏まえ、①、②は酒井委員、③は室伏委員に担当いただくことになった。さらに、⑤IT活用に伴う課題については、武藤委員長に担当いただくことになった。

(2) ITを活用した授業モデルの事例について

 はじめに、市丸委員よりWebを活用した臨床栄養学の予習復習用コンテンツの活用事例について報告がなされた。ポイントは以下の通り。

  • Webサイトに、臨床栄養学自学自習用のコンテンツとして、テキスト、練習問題を掲載。さらに、臨床栄養指導を疑似体験するために、電子カルテを模したページを作成している。
  • 擬似電子カルテでは、学生が模擬患者となりパラメータに数値入力し、出力されたデータから疾患を推測する訓練を行う。
  • また、臨床栄養指導の場面を撮影した動画教材(身長・体重測定など)もアップロードしている。
  • 基礎学力を補充するために、過去の国試から出題された解剖学の問題等も掲載している。
  • その他に英語による栄養用語を習得するために、ネイティブスピーカーの協力を得て作成された、発音確認のための音声ファイルも掲載されている。
  • サイト内で使用した画像については、一部著作権的に問題のあるものもあるが、今後は自ら撮影した画像に差し替えることで対処する予定である。

 以上の報告について質疑応答・意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

  • このサイトを活用してどのような効果があったか。
    → 学生は予習をしないと授業に追いつかないし、また基礎的な知識無しには授業内容を理解できない。それ故、このサイトを用いて次回の授業内容を確認することによって充実した授業展開が可能となり、また学生も授業後の到達度を把握することも可能となる。さらに、Webサイトに掲載していることから、学生はいつでもどこでも自分のペースに合わせた自学自習が可能となる。
  • 疑似的な電子カルテを用いて変数入力させているが、もう少し発展して例えば投薬と栄養摂取の連関性を認識させるために食後の血中濃度をシミュレートできるようなコンテンツがあれば、より効果的ではないか。
    → 学生は薬理学と栄養学の論理的な関連性を把握していない。栄養学でも薬理学の基礎的知識は必要であるが、今の学生にはそれが欠落している。それ故に、ここでは基礎知識補充のためのコンテンツを掲載するに留めている。
  • 学習管理システムなどを活用すれば効率的にサイトを運営することができると思うが。
    → このサイトは個人的に運営しているものである。というのも、大学側のバックアップ体制が不十分であるため、まだ管理システム等導入がなされていない。大学側の支援を待っていると授業展開が追いつかないので、体裁が悪くとも個人的に作成することにした。

次に、小野坂委員より事前に提出いただいた公衆衛生学の授業モデルの草稿について意見交換した。主な意見は以下の通り。

  • 具体的にどのような授業シナリオの中で活用し、その結果学生からどのような反応が得られたかといった記述を加えていただきたい。今回の授業モデルでは、方法論ではなくある1コマの授業にスポットを当ててそこでのIT活用方法を紹介することにしている。
  • 単に授業録画コンテンツを活用するだけでなく、そこに強制的に予備学習させるような仕組みがあれば、より効果的だと思われる。
  •  その他に、報告書の全体的な方向性について自由討議したところ、以下のような意見があった。
  • 授業のオープン化
  • 教員は自らの専門に特化した授業を展開しがちであるが、管理栄養士を育成するために学生は各科目で学んだ知識を統合化する必要がある。そのためには、科目間で教員同士が連携する必要がある。例えば教員が相互に授業参観ないしはビデオ撮影した授業を相互に閲覧し、授業内容についてディスカッションすることが求められる。
  • ただしそれを教員評価に繋げてしまうと反発を招く恐れがあるので、まずは大学の組織的なFDの一環として実施しなければならない。
  • 報告書を発刊した後は、本委員会としても授業のオープン化や大学間でのFDなどに取り組んでいきたい。報告書の授業モデルもそのための題材として有効活用することができるのではないか。

(3) 岩間範子氏による授業事例の報告

 最後に、女子栄養大学短期大学部の岩間範子助教授より、授業の取組みについて報告いただいた。詳細は配布資料を参照されたい。