社団法人私立大学情報教育協会
平成17年度2回社会福祉学教育IT活用研究委員会議事概要

Ⅰ.日時:平成18年3月6日(月)午後2時から午後4時まで

Ⅱ.場所:私情協事務局

Ⅲ.出席者:安西委員長、井村、錦織各委員、井端事務局長、木田

Ⅳ.議事進行

1.18年度発刊の報告書について

(1)報告書の執筆方針について
事務局より18年度発刊の報告書の執筆方針について説明がなされた。要旨は以下の通り。

 「大学教育への提言 ~ファカルティ・デベロップメントとしてのIT活用」

Ⅱ.編集方針
  ファカルティ・デベロップメントとの視点から教育改善のための課題を整理し、解決に向けた方策を大学のガバナンス、教育政策、教員の意識改革、IT戦略など「総論」として網羅的に報告する。その上で、学系別教育におけるコア・カリキュラムを意識して、教育成果として求める能力を整理し、能力達成に必要な授業設計の在り方を概括する中で、ITを活用した授業の事例を「各論」で紹介する。

Ⅲ.目次構成

<総論>「人材育成のためのIT活用」(20ページ)・・・事務局担当

1.大学教育における人材育成の課題
2.教育改革のための大学戦略
3.大学教員に求められる教育力(教育の業績評価制度の導入、望まれる教育力)
4.ファカルティ・デベロップメント改善のIT活用(教育での多様なIT活用を紹介)
5.教育の支援体制と今後の課題
※総論は大学の執行部を対象とした内容とする。

<各論>「FDとしてのIT活用授業モデル」・・・委員会担当

Ⅳ.FDとしてのIT活用授業モデル(1委員会:15ページ)
1.コア・カリキュラムを意識した教育の到達目標
(学部教育を中心とするが、必要に応じて大学院教育も対象とする)
2.教育現場での課題
3.教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性
4.ITを活用した授業モデルの事例紹介(4モデル×3ページ程度)
5.IT活用に伴う課題

Ⅴ.資料
  コア・カリキュラムの他、授業内容、コンテンツの一部をCD-ROMで添付。

Ⅵ.原稿締め切り
  18年8月末を目途とする。(9月~10月は編集期間)

Ⅶ.出版日程
  18年11月臨時総会にて報告。

 

<総論の内容について>
1.大学教育における人材育成の課題(主に学生の問題点を指摘)
昨今の学生は、人間力、基礎学力、社会の要請する問題発見・解析能力などが欠落しているため、社会のニーズにマッチした人材育成がなかなか難しい。医学・歯学のように教育内容が国家試験と直接的に結びつく学問分野では、大学間での教育内容がある程度平準化されており、また資格取得が学生の能力を測定するための基準としても機能していることから、卒後の学生の資質は保証されていると考えてよい。しかし国家試験の無い分野においては、教育内容が大学間においてバラツキがあり、また学生の能力を測定するための社会的基準も無いために、いかにして卒後の学生の質を保証すべきかが課題となる。そのためには、医学歯学薬学分野で導入されたように、最低限の学生の能力を保証するための学問分野別コア・カリキュラムの構築が必要ではないか。

2.教育改革のための大学戦略(主に大学の制度的問題点を指摘)
  1で挙げた課題を受けて、課題解決に向けた大学の組織的戦略を論ずる。具体的には、カリキュラム構築、授業間連携、成績評価法、予算措置などの課題と改善策を提起する。
カリキュラム構築については、1でも取り上げたコア・カリキュラムに加え、大学としての人材育成に向けた教育政策が欠落していることを指摘する。

3.大学教員に求められる教育力(主に教員の教育能力に関する問題点を指摘)
  学生の基礎学力低下にばかりスポットを浴びせるのではなく、ここでは大学教員の教育指導能力や教育方法に関する問題点を指摘する。問題解決のために、大学設置基準の改正や教育業績評価制度の導入を提起し、その上で今後教員に求められる10数項目に亘る「教育力」を提示する。具体的には、ソクラティックメソッド、ケースメソッド、PBL、基礎学力補強のための授業時間外学習の徹底、因果関係を明示する授業内容など、IT活用の有無に関わらず教育力を構成する要件を取り上げる。
4.ファカルティ・デベロップメント改善のIT活用
  3で取り上げた教育力の構成要件のうち、IT活用した教育方法を紹介する(各委員会の授業モデルからいくつかピックアップ?)

5.教育の支援体制と今後の課題
  1~4で取り上げた問題解決策を具現化するために必要とされる教育支援体制、大学執行部の執るべき行動を提起する。今後の課題としては、政府に対して大学教育に関するガイドライン作成や大学設置基準改正などの施策を訴える。

(2)執筆分担について
<各論>「FDとしてのIT活用授業モデル」の執筆分担について協議したところ、当初「4.ITを活用した授業モデルの事例紹介」として、児童福祉(戸塚委員)、高齢者福祉(前田委員)、障害者福祉(井村委員)、公的扶助を予定していたが、公的扶助の適任者が見つからなかったことに伴い、公的扶助から地域福祉へと分野を変更し、錦織委員と安西委員長に共同執筆いただくことにした。また、「1.コア・カリキュラムを意識した教育の到達目標」、「2.教育現場での課題」、「3.教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性」、「5.IT活用に伴う課題」については安西委員長に執筆いただくこととした。
なお、次回委員会にて各委員より草稿を提出いただき、それに基づき意見交換することにした。