社団法人私立大学情報教育協会

平成 17 年度第 2 回会計学教育 IT 活用研究委員会議事概要

 

T.日時:平成17年7月16日(土)午後2時から午後4時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:岸田委員長、椎名副委員長、黒葛、木本、阿部、金川各委員
        井端事務局長、木田

W.検討事項

•  会計学教育のコア・カリキュラムについて

(1)財務会計

 はじめに、椎名副委員長、阿部委員より財務会計に関するコア・カリキュラム案について説明がなされた。

 阿部委員からは「一般常識としての財務会計モデル」として、一般の学部生を対象とした全15回の授業を想定した授業モデルを紹介いただいた。具体的な項目は、以下の通りである(詳細な学習項目は省略)。

1.会計とは何か

 会計の全体像、情報システムとしての会計の役割、会計情報の利用者について

2.企業における会計

 企業形態と必要とされる会計情報について

3.財政状態と会計等式

 資産・負債・資本とその増減の仕組みについて

4.財務諸表とは何か

 貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の概要とその関係について

5.制度会計の仕組み

 財務会計における法規および原則について

6.決算書の読み方

 決算書をどう読むか

7.貸借対照表とは何か

 貸借対照表とは何か、区分・配列・表示について

8.資産・負債・資本

 資産・負債・資本の詳細、勘定科目について

9.損益計算書とは何か

 損益計算書とは何か、損益計算の諸原則、区分・表示について

10.損益計算の方法

 各計算区分の計算方法について

11.キャッシュフロー計算書とは何か

 キャッシュフロー計算書の意義と概要、作成方法、様式について

12.連結財務諸表について1

 連結財務諸表の意義、連結の範囲、連結貸借対照表の作成方法について

13.連結財務諸表について2

 連結損益計算書、連結剰余金計算書、連結キャッシュフロー計算書の作成方法について

14.税金と資金調達

 納めるべき税金、資金の調達方法について

15.財務諸表分析

 財務諸表の収集、分析方法について

 

次に椎名副委員長より、「一般常識としての財務会計(素案)」、「一般常識としての会計学入門(会計学総論)」、及び日立総合経営研修所の課長研修として担当された会計学講義について紹介いただいた。

まず、「一般常識としての財務会計(素案)」では、会計情報の提供者と利用者の立場を勘案すべきであるという前回の議論を踏まえ、会計情報提供側(一般ビジネスマン)、会計情報利用側(一般投資家)ごとに必要な財務会計の項目を列挙いただいた。しかし、より仔細なカリキュラム案を検討するに従い、財務会計よりも会計学入門にふさわしいカリキュラム体系に収斂したことから、財務会計とは別枠として、新たに「一般常識としての会計学入門(会計学総論)」のカリキュラムを提案いただいた。具体的な項目は下記の通りである。

 

[T] Accounting とはなんだろう?

[ 1 ] Accounting (会計)の意義

[ 2 ]会計の目的は 4 つ!

[ 3 ]まず、会計のしくみ(構造)を把握しよう!

[ 4 ]会計のはたらき(機能)も把握しよう!

[ 5 ]会計の入門はまず簿記と財務諸表!

[U]会計手続きの一巡を考えるの巻き

[ 6 ]会計手続き一巡− AccountingCycle

[ 7 ]利益計画と資金計画

[ 8 ]製造予算と原価計算

[ 9 ]変動費と固定費の区別

[ 10 ]新しい株主利益の追求= EVA

[V]企業活動と会計との密接な関係

[ 11 ]会計から見た企業活動の 3 つの形態

[ 12 ]企業活動と 3 つの財務諸表との関係

[W]会計の基本一簿記の構造

[ 13 ]簿記の魔法の力を考える

[X]簿記と財務諸表を理解する方法

[ 14 ]簿記と財務諸表を具体的に考えて確認する

[ 15 ]試算表による簿記の流れ

[ 16 ]簿記の構造− B / S , P /し, C / F の関係を考える

[ 17 ]簿記の構造− B / S , P / L の関係を復習する

[Y]株式会社(株)の財務諸表

[ 18 ]日本の財説話表制度の特徴

[ 19 ]会計ピックバン

[Z](株)貸借対照表の構造とその見方

[ 20 ]貸借対照表の基本構造

[ 21 ]貸借対照表の基本的な分析

[ 22 ]日立製作所の個別貸借対照表

[[](株)損益計算書の構造とその見方

[ 23 ]損益計算書の基本構造

[ 24 ]損益計算書の基本的な分析

[ 25 ]日立製作所の個別損益計算書

[\]キャッシュ・フローの構造とその見方

[ 26 ]キャッシュ・フロー計算書の基本的な見方

[ 27 ]キャッシュ・フロー経営について考える

[ 28 ]営業キャッシュ・フローの増減項目の分析を観てみる

[ 29 ]自主補習一問接法のキャッシュ・フロー計算書の作成

[ 30 ]日立グループの連結キャッシュ・フロー計算書

 

なお、この項目は、日立総合経営研修所の課長研修 MMC において椎名副委員長が担当された講義のカリキュラム編成をもとに作成されたものである。この講座は、日立製作所の会計知識を有さない課長職対象に実施され、@会計一巡の手続きと予算制度、A貸借対照表、Bこの財務3表の読み方や財務分析の方法を理解することを目的としている。

上記の案について、「『一般常識としての会計学入門(会計学総論)』の対象は実務経験者であれば良いが、学生を対象とするならば[7]、[8]、[9]、[10]は抽象的概念を中心とした内容なので、配置を再検討した方が良いのではないか」との意見があり、次回椎名副委員長、阿部委員には再検討いただくこととした。

なお、高松委員、河崎委員より、会計専門職志望者、一般学生それぞれを対象とした財務会計カリキュラムを事前に提出いただいたが、意見等がある場合にはメールにて送信することとした。

 (2)会計情報システム

金川委員より、15回の授業を想定した会計情報システムのコア・カリキュラム案について説明いただいた。ここでは、各回の授業テーマに対して、具体的な授業内容、課題、配布物を列挙いただいた。詳細は、配布資料を参照されたい。

なお、本案について意見交換したところ、下記の旨の意見があった。

 

  • 会計情報システムは、目的の設定により教育内容も多様である。例えば、経営者意図に従うためのシステムを設計するのか、あるいはシステム設計能力を育成するために基本的概念や設計手法を学ぶのかによっても教育内容は異なる。ここでも、教育目標を明確化すべきではないか。
  • 日本においては、会計情報システムの教育内容の平仄が併せられていないが、米国では、情報システムを主体とした教育内容が施されている。
  • 極端に言うと、会計情報システムは、企業に出入りする事物を対象として、その流れをデータベース化し、いかに情報として抽出すべきかを論じるものであるから、基本的には財務会計情報を中心とした内容と考えられるが、そのシステムをいかに設計し、現実に帳票としてアウトプットする作業も欠かすことができない。特に、私立大学の学生は抽象的概念から演繹する能力に乏しいから、より必要となるのではないか。
  • 会計情報システムを独立した科目として考えるよりも、財務会計、管理会計との関連性の中で授業内容も検討しないことには、学生を充分に理解させることは難しい。本来であれば、科目の学年配置や多科目との進行度を考慮したカリキュラム編成が成される必要がある。

 

以上の意見を踏まえ、次回委員会までに、金川委員には会計情報システムの一般的な教育目標を明確化した上で、カリキュラムを再検討いただくこととした。

(3)管理会計

岸田委員長より、会計専攻者、一般利用者それぞれのコアカリキュラム案を説明いただいた。詳細は、配布資料を参照されたい。

なお、一般利用者を対象としたコアカリキュラムについては、原価計算を除いては椎名副委員長に提出いただいた「一般常識としての会計学入門(会計学総論)」の項目と重複する箇所が多いことに鑑みて、会計学入門と統合することとした。

会計専攻者を対象としたコアカリキュラムについては、「3.製品原価計算の項目が仔細過ぎるのではないか」との指摘がなされたが、時間の都合上見直しを図るまでには至らなかったため、意見のある場合にはメールにて送信いただくこととした。

 

最後に、事務局より今後の方針として、報告書の作成に向けて、コア・カリキュラムに対応した、具体的な IT を活用した授業モデルを検討いただきたい旨の説明がなされた。それを受けて、次回委員会では、委員各位、それぞれ担当されている分野において、 IT 活用が可能な授業モデルを考案いただくこととした。

 なお、報告書では、一委員会につき、配分されるページ数は20?25ページ程度

であり、授業モデル数は4事例程度紹介する予定である。