社団法人私立大学情報教育協会
平成19年度第3回会計学教育FD/IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成19年9月29日(土)午後2時から午後4時まで

U.会場:私情協事務局会議室

V.岸田委員長、椎名副委員長、黒葛、河崎、金川各委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

1.会計学教育における産学連携授業に向けて
  事務局より、産学連携について株式会社リコーとの折衝経過について報告がなされた。要旨は以下の通り。

  • 椎名副委員長より紹介いただいた株式会社リコーの北氏とコンタクトを取り、私情協における産学連携の趣旨説明とインタビュー教材作成に向けての協力を打診した結果、経理部長が適任であることから社内で調整する旨の回答を得た。
  • この報告を受けて、委員より研究集会における特別講演も株式会社リコーの経理部長に依頼することが提案された。
      次に井端事務局長より、産学連携事業の今後の方向性について提案がなされた。要旨は以下の通り。
  • これまで他の委員会においても産学連携に向けて協議をしてきたが、教育素材やデータの大学への提供に対して、機密・顧客情報の流出やその場合の責任の所在に鑑みてナーバスになっている感を受けた。
  • そこで、教育素材やデータの提供については一旦保留し、まずは委員の先生方が企業の現場を理解するために企業訪問し、財務・経理担当者と話し合いの場を持つことを提案したい。
  • 企業訪問することにより、財務・経理担当者の日常業務を理解することが可能となり、また話し合いを通じて企業の期待する会計スキルや教育内容と先生方の考える教育目標との刷り合わせを行い、先生方自身の授業内容にフィードバックすることが期待できる。
  • 将来的には、教育における産学連携実現に向けて、企業に対して大学教育に対して協力可能な取り組みを伺い、教育素材やデータの提供を依頼していきたいと考える。
  • 以上の提案について意見交換したところ、以下の旨の意見があった。
  • 企業側が大学に大して産学連携することにより何を期待しているのかヒアリングすることが第一歩ではないか。
  • 企業側には教育における産学連携という意識自体がない。ましてや会計学等個別の分野に対する教育内容については尚更関心がないと思われる。そのため、先生方の考える教育目標を企業側にぶつけても、何も響かない恐れがある。まずは現場の状況やニーズを把握するためにも、先生方のフィールドワークが必要ではないか。
  • 会計大学院は、将来的に公認会計士の再教育や企業の経理財務担当者の教育を請け負いたいと考えている。国際会計基準や新しい会計の動向など、実務の傍らでは習得することのできない知識を大学院で教育して欲しいという要求は企業側からも起きている。問題は学部教育である。採用試験においても、会計的能力をどの程度有しているかは問われず、むしろ体力やコミュニケーション力を重視される。このような状況において企業が会計教育に対してどのような意識を持っているのかは知りたいと思う。
  • 先生方の従来の意識や価値観の下で授業を行うことにより、本当に学生のためになっているのか反省する意味でも、先生方の企業現場へのフィールドワークを行った方が良い。フィールドワークにより、先生方の価値観が社会に適応しているのか確認することができるのではないか。
  • 米国大学の会計学コースにおいては、教員だけでカリキュラムを作成するのではなく、BIG8など大手会計事務所と協同して作成するなど、産学連携が実現している(大手事務所からの寄付金を受けているため、教育内容に対する助言を受け入れざるを得ない)
  • むしろ本委員会に企業の方をお招きして、授業内容や教材などを見ていただきコメントをもらった方が実現性が高いのではないか。

 以上の意見を踏まえ、産学連携についてリコーからの承諾を得られた場合には、打ち合わせのために会社訪問できるよう併せて打診することとした。

 次に、椎名副委員長に作成いただいた資料「12月末を目安に産学協同も含めた会計教材のコンテンツ作り具体案」に基づき、それぞれの項目の進捗について報告いただいた。要旨は以下の通り。なお、本案のフレームワークは以下の通りである。

(理 念)
会計学総論を意識して会計マインドを形成させるために効果的な教材提供
(構成指針)
Web上で各大学の教員が自由に利用できるよう項目別(ピース・ミール)配置とする。本来、産学協同で用意すべきであるが、今回は諸般の事情で間に合わないので、今までの各委員蓄積のマルチメディアを利用した教材も取り入れる(ただし、著作権等をクリアーしてから)。
(内容の体系)
「大学教育への提言―ファカルティ・デベロップメントとIT活用2006年版」113頁会計学総論のテーマを基本に提供できる教材で項目をアレンジする。
 
<T会計の意義と機能―企業会計を取り巻く環境>
  @「経理課の1年」については、岸田委員長の関与する企業にヒアリングを行った結果として、一般的な経理業務をリストアップしていただいた。しかし、この業務内容と本委員会の趣旨である会計マインドの育成とがどのようにリンクしているのか明確化することは難しいとのコメントが岸田委員長より述べられた。また、「経理課の1年」をテーマとするのではなく、「経理課の仕事内容、業務内容」とした方がインタビューやビデオ化しやすいとの意見があった。 
  Aについては、日立製作所からの協力を得ることが困難であることから、場合によってはリコーに依頼することとなった。

<U複式簿記>
  @については、椎名副委員長、黒葛委員協同作成によるPowerPoint教材を割り当て、Aについては黒葛委員作成のビデオ教材を割り当てる(公開可能な場合)こととした。
 
<V財務諸表(B/S,P/L,C/F,連結)>
@については、日立製作所からの協力を得ることが困難であることから、場合によってはリコーに依頼することとなった。

<W管理会計―原価計算含む>
Aについては、黒葛委員がビデオ教材を作成中であり、公開可能な場合にはそれを割り当てることとした。

<X会計情報システム(U、Vと関連あるので独立かいなかの体系の検討は必要)>
岸田委員長にも公開可能なコンテンツを提供いただくこととした。
 
<Y 新しい会計環境>
配布資料の通り。

 以上を踏まえ、公開可能なコンテンツについては順次Webにアップすることとした。
2.研究集会について
  3月中下旬に開催を予定している研究集会のプログラムについて検討した。まず、特別講演については、株式会社リコーの経理部長の方に打診することとした。なお、特別講演では教員が授業を行う上での参考となるような実務の内容(例えば国際会計基準への対応等)や、実務の立場から大学教員に対して伝えたいメッセージなどをお話いただく方向で検討することとした。
  また、一般の講演のように一方通行でお話いただくのではなく、委員をインタビュアーとした対談形式の方が、伺いたい話を引き出せるのではないかとの意見があった。
  以上を踏まえ、プログラムについては継続して検討することとした。