社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第3回建築学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成17年1月

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:若井委員長、衣袋副委員長、真下、関口、安藤、寺尾、横井各委員、井端事務局長、木田

W.検討事項

1. 建築学教育における産官学連携について

 はじめに、事務局より、7月30日に開催された理事長学長等会議での提案「教育の社会支援についての提案」について下記の旨の説明がなされた。

本提案は、大学教育に対する社会からの評価、とりわけ人材育成面での評価が厳しいことに鑑み、学生の意欲向上、教員の授業支援、及び社会人の授業参画による教育の質的保証に資するために考案されたものである。具体的には、@社会での現場情報・体験情報の紹介・説明、A知的情報の電子化と教育への利用実現、B実務経験者による授業の実現、C学習成果に対する専門家の助言・評価、Dインターンシップ、ワークショップ、調査実習の受け入れ、Ee-ラーニング等教育プログラムの共同開発を、主に情報技術を活用して実施・協力いただく。
今後は社会からの支援を得るために、文部科学省に対して政策提言するほか、経済各団体に対しても理解を得るよう努める。合わせて、支援依頼の方法や仲介機関の設置、支援内容・方法を研究する。
  本会議に先立ち、18の学系別教育IT活用研究委員会に対して教育における産官学連携に関するアンケートを行ったが、今後も文部科学省との協議に向けて、委員各位より知恵を拝借したい。また、委員会活動としても、産学連携授業を実験的に実施し、18年度発刊予定の報告書に効果など紹介いただきたい。

 以上の説明を踏まえ、各委員より、自身あるいは大学としての取り組みを報告いただいた。

衣袋副委員長
  芝浦工業大学システム工学部では、1年生を対象とした総合科目T「創る」をはじめとして、学年ごとに学生が学科横断的にチームを組み、与えられたテーマに対して取り組むコラボレーション型授業を実施している。例えば3年生を対象としたシステム工学Vでは、企業から与えられたテーマに対して学生が問題解決を行う授業内容であり、その他にも学生フォーミュラ選手権に出場するために必要な資金を企業から調達するなど、企業とのコラボレーションも自然と行われている。また、衣袋副委員長自身も、授業において大宮市の駅前商店街の再開発プロジェクトに参加するなど、産学連携を実践している。

真下委員
  東海大学では、大学院の授業において、大手建設会社の部長や建築事務所の社長などを非常勤講師として計7名招聘して、各2回ずつ講義いただいており、学生からの評価も高いが、予算措置などの問題もある。このような授業は、公開授業として他大学の学生にも広聴してもらえば、講師のやりがいも向上するし、学生も現場の体験談を聞くことで学習意欲が向上するのではないか。

関口委員
  日本大学理工学部建築学科では、卒業制作の作品に対して専任教員が賞を与えているが、それとは別に大学外の建築家も含めた非常勤講師の組織による表彰制度も設けており、学内の建築雑誌では、双方隔たり無く紹介している。その他には、年に5?6回建築現場で活躍しているOBを招いたフォーラムを開催し、終了後に懇親会を設けて学生との交流を図っている。建築学科以外では、人力飛行機のプロジェクトなどで、OBの参与がある。

安藤委員
  法政大学工学部建築学科では、JIAの主催する実務家講義を大学院生が受講することに単位認定している。学部においては、実務実習としてインターンシップを実施しており、在学生の8割が受講を希望している。また今年度から、建築総合演習という授業において、建築家や映像作家など各回異なるゲストによる講義を実施しているが、形式的に彼らは非常勤講師ではなくゲストとして招聘し、報酬手数料を支払っている。今後は講師のみならず受講者も外部から呼びたいと思うが、制度的には難しい。

寺尾委員
  神奈川大学においては、年6回外部より設計、環境等の実務家を招いた講演会を実施している。また、設備関係においては、外部講師を招くと却って学生の意欲を削ぐ可能性もある。また、英語の授業においては、建築に必要とされる英語を学生に教えるために、英語講師の派遣会社から非常勤講師を招き授業を実施している。

横井委員
  福山大学では、年に1回外部の実務家を招いた特別講義を実施している他、3年生対象に実務実習を実施している。3年生も当初は大抵の学生が受講を希望するが、実際には実施される夏期休暇では10名程度の学生が参加するのみである。その他に、横井委員が担当する建築情報処理では、学生に情報処理技術の実務での必要性を認識してもらうため、工務店を営むOBを招聘して話をしてもらうが、謝礼金の予算措置ができ無い問題を抱えている。

2. 報告書の内容について

 事務局より、18年度に発刊を予定している報告書に付いて説明がなされた。
大学では、授業内容が担当教員に一任されており、人材育成を目標とした一貫的なカリキュラム設計がなされていない。そのため、社会から大学教育に対する批判の声が上がっている。それを受けて、中教審大学分科会の答申「我が国の高等教育の将来像」においても、各学問分野別のコアカリキュラムの作成及びコアカリキュラムの実施状況と大学評価の有機的連動が謳っている。
  そこで、18年度の報告書においては、建築分野においてもコアカリキュラムを意識して、学習項目ごとに教育目標を明示して、その到達に向けた効果的なIT活用モデルを提言いただきたい。それに向けて、まずは建築学教育の各分野における教育目標を整理することが求められる。

3. その他
  若井委員長が今年度をもって委員長満期を迎えるため、次回の委員会において後任者を検討することとした。