社団法人私立大学情報教育協会
平成16年度第3回経営工学IT活用研究委員会議事次第

T.日時:平成16年9月13日(月)午後6時から午後8時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.出席者:渡辺委員長、越島、玉木、米内山各委員

W.検討事項

1. 社会に即した実習モデルの構築について
 
  議事に先立ち、今後委員補充のため、委員各位、適任者が見つかり次第随時報告いただくことが確認された。

次に事務局より、理事長学長等会議で提案のなされた「教育の社会支援についての提案」(以後「提案」と略す)中教審大学分科会「わが国の高等教育の将来像(審議の概要)」(以後「将来像」と略す)について説明された。

学生の学力・学習意欲の低下のため、大学における人材育成の充実、教育内容の通用性を保証することが、大学の教育プログラム・学習環境だけでは困難になりつつある。「提案」は、学生に対して現実感覚を身に付ける教育を施すとともに、社会から教育内容に対する評価・助言を求めることを目的として、教育における産官学連携の積極化を提言している。
具体的な連携方法としては、社会からの大学教育に対する支援内容として、@社会での現場情報・体験情報の紹介・説明、A知的情報の電子化と教育への利用実現、B実務経験者による授業の実現、C学習成果に対する専門家の助言・評価、Dインターンシップ、ワークショップ、調査実習の受け入れ、Ee-ラーニング等教育プログラムの共同開発が挙げられている。また、大学からの社会貢献としては、企業の問題解決に対する助言や企業研修のための授業の実施が考えられる。
実現に向けては、関係機関に対する理解を得る必要があるが、私情協としては以後政策課題として文部科学省に提言するとともに、事業の一環として検討していく。

「将来像」は、中教審大学分科会が2015年〜2020年頃までを想定した日本の高等教育の将来像とそこに至る施策の方向性を提示したものである。この中では、高等教育の発展を支える各方面の取組として、産業界等の取組、特に人材の流動化に関する提言がなされているが、教育面については「研究面にとどまらず人材養成面でも十分な産官学連携が求められる」との記述がなされている。
「将来像」のポイントをなす5つの方向性としては、@誰もがいつでも学べる高等教育(ユニバーサル・アクセスの実現)、A誰もが信頼して学べる高等教育(高等教育の質の保証)、B世界最高水準の高等教育、C「21世紀型市民」の学習需要に応える質の高い高等教育、D競争的環境の中での国公私それぞれの特色ある発展が挙げられている。特にCにおいては、教育の充実のため、分野ごとにコア・カリキュラムが作成されることが望ましいことが提言されている。
本委員会では18年後に報告書の上梓を予定しているが、その中では経営工学教育のコア・カリキュラムを想定しながら、個々の学習項目の具体的な教育目標(ex.「〜ができる」)と目標達成に向けたIT活用事例を提案いただきたい。

次に、玉木委員より前回の委員会の議事を踏まえ、今後の委員会における研究テーマを提案いただいた。要旨は下記の通りである。

前回の委員会では、学生の基礎学力、常識的な言動、思考力等人間力の低下や企業サイドから即戦力となる人材の育成が要望されていることから、今後教育の産官学の連携必要であること、それと併せて、教育現場でも教育の質保証として、単位・学位認定による質保証と教育内容そのものの質保証、教員の指導能力の向上、さらに、学生が主体的に学習するよう導くために、動機付けや授業毎の授業評価を学生から調査することの必要性が確認された。そこで、今後本委員会としては、下記の6つのテーマによる研究を提案する。

1) 企業が求める経営工学の学部卒業生、修士修了者の人材像(知識、スキル、態度)と学習目標の設定

具体的なプロセスは、@経営工学カリキュラム体系の調査と並行して行い、現在の在籍者、教員に対する調査、A人材像(知識、スキル、態度)の仮説設定、B卒業生、社会人、企業人へのインタビュー調査、C人材像(知識、スキル、態度)と学習目標の再設定、D関連する資格制度、あるいは新たに策定すべき資格制度の調査(JABEEの近況と将来予測、その他の資格制度)を実施。

2)これからの経営工学のカリキュラム体系の策定と有効性の検証
具体的なプロセスは、@現状の日本における大学・大学院の経営工学のカリキュラム調査、A関連する学問分野のカリキュラムを含めた動向調査(MOTのカリキュラムと専門大学の課題把握)、B海外における大学・大学院の経営工学のカリキュラム調査、C社会潜在ニーズと現状のギャップ分析、Dあるべき経営工学のカリキュラム体系の設計、Eあるべき経営工学のカリキュラム体系のなかでITの有効活用による教育革新の可能分野を検討、F社会人、企業人、大学教員によるレビューが考えられる。

3)実践教育、実践力要請のための実習科目の充実のためのコンテンツの共有化
上記のカリキュラムを一大学で全て網羅することは困難であるから、コンテンツの共有化が必要である。具体的には、あるべき経営工学のカリキュラム体系のなかで、共通基礎となる実習の科目群の設定、各実習科目における学習項目の設定し、それに応じた実習用ケース、実習で利用する素材コンテンツ、シミュレーション等で利用する実習ソフトを産学連携によち共同開発するとともに、コンテンツ、ソフト等のマネジメントシステムの構築と共有化を図る。

4)経営工学分野の授業と連動したインターンシップ、調査実習に関する基本プログラム
現状でも各大学インターンシップを実施しているが、内容は企業に任せきりで授業内容と連関性の無いものが多い。そこで、あるべきカリキュラム体系に準拠したインターンシップ、調査実習に関する基本プログラムを策定し、企業側、教員側の指導ポイントの明確化、各大学、各企業での実施事例の紹介、IT活用を想定したインターシップ・ワークショップ・調査実習の提案、学生グループによる成果発表のワークショップを開催し、各大学におけるインターシップ、調査実習を担当する企業人や教員による評価、表彰を実施する。

5)経営工学分野以外を含めたFD、SDに対する研修プログラムの開発と講習会の実施
教員自身の意識改革のために、ITを有効に活用した教育の質保証、動機付け学習に関する研修プログラム・講習会の実施、セルフチックシステム、または共有試験制度、意欲向上のための私情協等による修了証、資格認定証の発行、私情協の全国大会等での発表会、表彰制度を設置する。

6)各大学でのFD、SDに基づいたIT実践教育を推進する組織体制づくりのガイドラインの策定

学長、事務長等に対する研修会や、教員、事務スタッフの担当者レベルの研修会、各現場での実施後の発表会を開催する。

以上の玉木委員の提案を踏まえ、次回委員会では、まず委員校及び主要大学の経営工学カリキュラム、及びMOTカリキュラム、JABEE評価基準、外国大学の経営工学カリキュラムを収集し、比較分析を行うこととした。