社団法人私立大学情報教育協会
平成17年度第6回経営工学教育IT活用研究委員会議事概要

T.日時:平成18年2月2月25日(土)午後2時から午後4時まで

U.場所:私情協事務局会議室

V.渡辺委員長、越島、玉木、細野、後藤、佐々木、中島、小池各委員、井端事務局長、木田

W.議事進行

1.報告書の授業モデルについて

 事務局より、18年度発刊の報告書について、下記の旨の説明がなされた。

T.報告書のタイトル
  「大学教育への提言 〜ファカルティ・デベロップメントとしてのIT活用」

U.編集方針
  ファカルティ・デベロップメントとの視点から教育改善のための課題を整理し、解決に向けた方策を大学のガバナンス、教育政策、教員の意識改革、IT戦略など「総論」として網羅的に報告する。その上で、学系別教育におけるコア・カリキュラムを意識して、教育成果として求める能力を整理し、能力達成に必要な授業設計の在り方を概括する中で、ITを活用した授業の事例を「各論」で紹介する。

V.目次構成

<総論>「人材育成のためのIT活用」(20ページ)・・・事務局担当

 1.大学教育における人材育成の課題
2.教育改革のための大学戦略
3.大学教員に求められる教育力(教育の業績評価制度の導入、望まれる教育力)
4.ファカルティ・デベロップメント改善のIT活用(教育での多様なIT活用を紹介)
5.教育の支援体制と今後の課題
※総論は大学の執行部を対象とした内容とする。

<各論>「FDとしてのIT活用授業モデル」・・・委員会担当

W.FDとしてのIT活用授業モデル(1委員会:15ページ)
1.コア・カリキュラムを意識した教育の到達目標
(学部教育を中心とするが、必要に応じて大学院教育も対象とする)
2.教育現場での課題
3.教育改善のための授業設計・開発・運営の方向性
4.ITを活用した授業モデルの事例紹介(4モデル×3ページ程度)
5.IT活用に伴う課題

X.資料
  コア・カリキュラムの他、授業内容、コンテンツの一部をCD−ROMで添付。

Y.原稿締め切り
  18年8月末を目途とする。(9月〜10月は編集期間)

Z.出版日程
  18年11月臨時総会にて報告。


(1) 経営工学出身者のキャリアプランニングについて
  玉木委員より、資料「経営工学人材のキャリアプラニング」について説明がなされた。この資料は、縦系列に経営工学出身者の経歴、横系列に人材像、活躍すべき職場・業界、スキル・素養の要件、教育内容、教育・育成方法の工夫、既存・新規の資格試験制度、学会の役割を配したキャリアプランのマトリックスである。詳細は実際の資料を参照されたい。
  玉木委員の報告について、以下の旨の意見があった。

<スキル・素養の要件に関連して>

  • 「学部卒」の「教育内容」に金融工学とあるが、アカウンティング、ファイナンスという表現の方が適切ではないか。
  • 「学部卒」の各項目には、現場マネジメント、現場管理という言葉が目立つが、現場という言葉に対する拒否反応が学生に見受けられるので、修正したほうが良い。
  • 「学部卒」の基本的な管理技術を習得することに対照して、「修士修了」では管理技術の開発・運用を「人材像」または「スキル・素養の要件」に入れた方がよい。
  • 「修士修了」の「スキル・素養の要件」に「6)コミュニケーション能力・プレゼンテーション能力」とあるが、さらに「ドキュメンテーション能力」も加えた方が良い。それと同時に「学部卒」では相手のドキュメンテーションを理解するための「受信能力」が必要ではないか。
  • ドキュメンテーション能力は、「学部卒」でも必要なスキルではないか。
  • 「修士修了」の「スキル・素養の要件」にはシミュレーション力も加えた方がよい。
  • 「修士修了」の「スキル・素養の要件」に「検証・評価力」があるが、問題発見能力がなければ問題を検証評価することはできないのではないか。
    → 「修士修了」時点は、問題発見まで至らないと考え、「実務経験5年」の「スキル・素養の要件」に記した。「修士修了」時点では、教員から問題を提示され、それを解決する程度の能力を習得するのが一般的ではないか。
  • 人材像などの細かい部分に入る前に、経歴ごとにキャッチフレーズを付与すると学生にとってもキャリアプランが明確化するのではないか。
    → 例えば意思決定を一つのキーワードにすると、学部卒では、部署内で意思決定するための情報を提供できる人材、修士修了レベルでは、部署内で意思決定するための情報を取りまとめ代替案化することが可能な人材、実務経験5年では、複数の部署に対して意思決定するための情報を提供できる人材、実務経験10年では、複数の部署間で意思決定することが可能な人材、などのキャッチフレーズが考えられる。意思決定だけでなく、資料内の「スキル・素養の要件」にある「モデリング力」や「コミュニケーション能力」をキーワードとすることも可能であり、さらに「スキル・素養の要件」の個別要件全てに対してこのような具体的な目標を付与することができれば、学部、修士教育と実務との間のミッシング・リンクも明らかになるのではないか。

<関連資格・学会の役割に関連して>

  • JABEEの認定コースを卒業して技術士の資格を取得しても、結局大抵の学生は技術士の資格を必要としない職種(特にサービス業)に就業することから、認定されても意味が無いとの意見もある。それ故JABEEの認定コースを卒業した学生は、卒後も学会発表等によってCPDのポイントを取得し、スキルアップを図るようJABEEとして促していく必要があるのではないか。
  • 経営工学会の企画行事運営委員会では、経営工学関連の資格制度の充実や生涯教育の積極化を提言することを目的としている。前回の議論にもあったように、経営工学の必要性を社会的に認識してもらうためにも、専管業務が必要であると考える。
  • 教員の責務は、経営工学の社会的な重要性、例えば取引条件や労使関係、業務改善に実際に役立っているという事実を学生に認識させることではないか。
    → しかしながら、経営工学には専管業務が無いのと同様に、経営工学を学んだ者しか扱うことのできない特殊なツールが無い。確かにスケジューラなどはあるが、社会に出て汎用的に活用することが可能なツールでは無い。安価で学生実務家問わず用いることが可能なツールが必要である。

以上の意見を踏まえ、玉木委員には「経営工学人材のキャリアプラニング」を再検討いただき、次回委員会の事前に、修正案をメールによって送付いただくことにした。

次に、越島委員より、バリューチェーンと既存の経営工学科目との比較考察に関して、下記の説明がなされた。

従来のバリューチェーンは、企業のプライマリ活動をサポートする活動として経済的な側面のみを想定しているが、昨今企業も環境問題、社会持続性、CSRなどにも対処せざるを得ない状況にあることに鑑みると、プライマリ活動をサポートするためには環境的側面の視点も補足する必要がある。そこで、ここでは従来のバリューチェーンに、エコロジカルサポート活動として、「3R処理」、「エコエンジニアリング」、「エコマネジメント」を加え、さらにサポート活動から得られるマージンを「エコノミックマージン」と「エコロジカルマージン」と二分化した。
さて、このような視点から経営工学の既存科目を捉ええると、インフラストラクチャに相当する科目数が圧倒的に多く、環境関連の科目は殆ど設置されていない。またインフラストラクチャに相当する科目があっても、科目間の繋がりはなく、価値を連鎖するような体系にはなっていない。そこで、今回玉木委員より提出された資料を参照しながら、今後はバリューチェーンに基づいき、配当年次も考慮したカリキュラムマップを作りたい。

(2)各科目に対応した授業モデルについて
後藤委員より、ITを活用した授業の取組みについて紹介がなされた。ここでは、「ネパールと連携した環境教育コンテンツの構築による実践教育」、「オーストラリア熱帯雨林保全プログラムにおける環境教育と情報教育との相乗効果について」、「大学の情報系授業における学生アンケートの分析」、「高齢者向けパソコン教室の設計と運営による実践的教育」、「企業シミュレータを実装するケーススタディ型eラーニング環境の構築に関する研究」を中心に説明された。
なお、今回紹介いただいた取組みは、経営工学の周辺科目における実践としての要素が強かったが、来年度大学院の授業にてマーケティング論を担当する予定であり、そこでもITを活用した教育方法を実践することは可能である、との補足説明もなされた。

2.その他

 次回委員会では、報告書の授業モデルに関して情報収集するため、渡辺委員長、中島委員より、それぞれ10~20分間程度、授業事例を報告いただくことにした。