私情協ニュース

第54回通常総会開催される

 第54回総会は、平成22年3月30日(火)午後1時30分より、東京のアルカディア市ヶ谷(私学会館)にて開催。平成22年度事業計画、同収支予算、基本財産の一部処分の審議の他、分野別教育に求められる情報活用力、情報倫理教育のガイドライン、情報セキュリティの点検システム、産学連携人材ニーズ交流会の実験等について報告協議した。以下に、主な議事の一部を報告する。
 本協会は、公益法人新制度に基づき5年以内の25年11月30日までに移行認定を受けなければならなくなっている。情報通信技術の活用や情報教育の充実、情報環境の高度化整備、教職員の職能開発・向上を通じ、私立大学における教育研究の質的向上及び人材育成の充実を図り、我が国の発展に寄与することを目的としており、公益社団法人への移行を目指すべく、昨年5月の第52回臨時総会において、定款の案の変更案を決定し、22年度に申請手続きを予定している。

1.平成22年度事業計画

 22年度事業計画は、公益社団への移行を前提とし、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する「公益目的事業」と、加盟校等の利益を一層増進するための「共益目的事業」に区分して計画した。

【公益目的事業】

[公益1]私立大学における情報通信技術による教育改善の調査及び研究、公表・促進

1)21年度とりまとめた分野別教育の学士力に基づき、教育改善するための情報通信技術の活用モデルをとりまとめる。その上で、23年度には学士力を担保するための分野別教員の教育力について研究し、24年度に大学教育への提言としてとりまとめる計画としている。

2)私立大学の教育改善に対する教員の取り組みを3年ごとに把握するため、加盟校の専任教員7万人を対象に調査を実施する。

[公益2]私立大学における情報教育の改善充実に関する調査及び研究、公表・促進

新たに情報教育研究委員会及び分科会を組織して、学士力として求められる分野共通の情報リテラシー能力の教育モデルをとりまとめるとともに、情報専門教育の教育モデル、分野別教育の情報活用力に求められる学習成果の目標について、21年度の中間まとめについて意見を公募・とりまとめる。情報倫理教育は、21年度とりまとめたガイドラインに沿って、教材、授業の運営方法について意見交流することを計画している。

[公益3]私立大学における情報環境の整備促進に関する調査及び研究、公表・推進

1)情報通信技術活用に関する財政援助の在り方について21年度の実態を踏まえ、改善の提言を予定している。

2)高度な情報環境の持続可能性を高めるため、クラウドコンピューティングによる外部データセンタ利用の可能性を整理するとともに、大学連携による教育機能の高度化・協同化に効果的な教育クラウドの可能性についても研究する。

[公益4]大学連携、産学連携による教育支援等の振興普及

1)電子著作物の相互利用を飛躍的に高めることを計画している。大学関係部門、教員に事業ニーズの周知徹底を図るため、映像による紹介、インターネット上に本事業の教材情報が反映できるようにする他、コンテンツの図や写真などの素材、FD情報、授業でのコンテンツ利用情報など新たな機能を持たせることにしている。コストパーフォマンスを改善するため、7年前のシステムを廃棄し、賃貸借で維持運営することで経費負担の大幅な削減を図ることにしている。

2)大学教員と産業界関係者による人材育成の意見交流の場として、「産学連携人材育成ニーズ交流会」の実験を継続し、産業界による教育支援の可能性を推進し、実験を通じた支援の具体化の見通しを計画している。

3)eラーニングによるオープン教育の振興普及・支援として、学びを希望する高校生、大学生、社会人を対象に、ネットワーク上で双方向によるオープンな「学びの場」を形成し、社会、世界に通用する知見をeラーニング手法を用いたグランドデザインの研究を継続する。

[公益5]大学教職員の職能開発及び大学教員の表彰

1)情報通信技術を活用した優れた授業研究の評価と顕彰で、22年度より教員の授業研究に加えて、大学での組織的な授業研究も評価の対象とすることにした。これにより事業組織を「ICT利用による教育改善研究発表会」に改組した。

2)教育改革を推進するための情報通信技術活用に伴う知識と戦略的活用の普及を目的に、事業組織を「教育改革ICT戦略大会」と「短期大学教育改革ICT戦略会議」に改組した。

3)教員および職員の情報通信技術活用力の研修として、教員のプレゼンテーション力、教材作成力、授業設計力を3日間で習得する「FDのための情報通信技術講習会」と職員の情報通信技術を用いた教育・学習支援の基礎や応用を講習又は研究する「大学職員情報化研究講習会」を実施する。

4)情報セキュリティの危機管理能力の強化を推進する「大学情報セキュリティ研究講習会」を継続実施する。

[公益6]この法人の事業に対する理解の普及

年4回発行の機関誌と事業への理解を求める地域別事業交流会を計画した。

【共益目的事業】

[共益1]高度情報化の推進支援

1)教育改革に求められる情報技術の活用、課題や戦略などの企画・提言を加盟校の要望に応じて個別に助言支援するとともに、クラウドコンピューティングについて必要に応じて実験を支援する。

2)大学団体と連携の「教育研究用電子情報整備支援機構」にて、教育研究用のデータベース、電子ジャーナル等の導入条件の改善を図るため、国の関係機関と連携して経費負担の軽減に努める。

3)大学間による授業支援などの連携事業を持続可能にするため、連携の拠点となる大学に対して、要望に応じて助言支援を行う。

4)加盟校の情報化投資の実態を毎年調査して、費用対効果の視点から投資規模を分析し、適正化の判断資料を大学個別に提供する。

5)加盟校間で教育戦略の情報交流を支援する大学間情報交流システムの運営を継続する。

[共益2]経営管理者等に対する教育政策の理解の普及

1)加盟校の理事長、学長、学部長を対象にしたトップセミナーとして、大学ガバナンスに求められる教育力強化の政策、大学連携および産学連携の推進、情報化投資額の負担軽減を模索するため、「教育改革FD/ICT理事長学長会議」を実施する。

2)加盟校の事務局長、課長など管理職者を対象に、教育改革戦略としての情報通信技術の活用政策、情報環境の高度化・安全化・負担軽減化の対策、教育学習支援の体積などの課題について理解を深める「教育改革事務部門管理者会議」を実施する。

[共益3]「研究会等のビデオ・オンデマンド配信」

本協会で講演・発表されたコンテンツで著作権処理された映像、資料を21年度から19年度までを配信。会議等に参加できなくとも教職員の職能開発及び賛助会員への研究材料として提供する。

2.分野別教育に求められる情報活用力の考察

 情報教育のガイドラインについての考察は初めての取り組み。これまでは授業の中で教員の裁量で個別に取りあげられていたが、学士力の質保証という観点から情報を活用する能力はあらゆる分野で不可欠となっている。知識、技術だけでなく、情報を取り扱う「心」の教育が今後ますます重要となる。協会では、これを契機に各大学での学士力実現に向けた取り組みの中で、大学教育において組織的に情報教育が推進されるよう振興・普及に努めていくことにしている。
 情報教育は、これまで基礎的な情報通信技術の習得に比重が置かれてきたが、これからは、本質的な学びを目指す学士力の構成要素として機能することが要請される。情報活用力の範囲は、情報リテラシーから分野固有の信頼できる情報の収集、社会秩序に配慮した情報の加工・表現・発信等の取り扱い、ソフト等の活用技術、ソフト使用結果に対する正当性の判断、関連情報のデータベース化、コミュニケーションを深める情報技術の習得などを想定した。
 初年次教育、共通教育での情報リテラシー教育の習得を前提に、情報の「信頼性」、「倫理性」、「正当性」、「相関性」等に配慮し、4年間または6年間の修学期間で身に付けることが望まれる理想的な能力を目指した。とりわけ、瓢窃など情報倫理に関する教育は、初年次教育、共通教育に依存するだけでは実践力として身に付かないことから、あらゆる授業の場を通して理解の徹底を図ることを指摘。その上で学習の到達目標を三つ以内掲げ、それぞれに学びの深さとしての「到達度」、授業のイメージを例示した「教育内容・教育方法」、「到達度確認の測定手段」を整理した。
 大学での情報教育の実現には、教員間の連携、情報環境の整備・支援が大きく関与する。今後も実現に必要な課題について整理し、解決に向けての情報提供も含め研究を展開していく。
 今回の中間的なとりまとめは、本協会が昨年とりまとめた27分野の学士力と医学、歯学、薬学のモデルコアカリキュラムを踏まえ、30分野における情報活用能力を整理した。22年6月までに意見を公募し、8月までに見直しを行い、当面のガイドラインを報告する予定にしている。中間まとめは本協会のWebサイトに掲載。

http://www.juce.jp/computer-edu/

3.情報倫理教育のガイドライン

 本協会では、社会の発展が情報活用の進展に大きく左右されることに鑑み、平成2年より情報を取り扱う「心」の教育の必要性を指摘し、6年には日本で始めて情報倫理を定義付けし、「情報倫理教育のすすめ」を出版した。7年には情報倫理学としてのテキストの作成、11年に教員向けテキストとして「インターネットと情報倫理」を出版した。17年にはeラーニング教材を開発し、Webサイトで自由に学習できるように教材環境を整備した。このような中で情報倫理の教育の重要性は理解され、教育が実施されるようになったが、情報の利用・発信に求められる適正な判断力の育成はあまり進んでいない。そのような状況に鑑み、昨年度とりまとめた分野別教育の学士力を実現する一つの能力要素として、情報の取り扱いを適正に判断する情報倫理力のガイドラインをとりまとめ、振興・普及することが重要であることを指摘した。
 心の教育でもある情報倫理の教育を学士力の中でしっかり実施することを提案している。情報倫理の問題は、高度情報社会に生きる人間のあり方にかかわる問題で、社会正義に照らして自律的に加害を防止する「心」の教育が不可欠であること。それには、権利の侵害、他人と衝突するのを避けるために、個人が最低限度守るべきルールとしての倫理を認識させた上で、内心に働きかけて適切な情報の取り扱いができるよう、あらゆる分野で学士力の一部として、情報倫理の教育を展開していくことが必須となる。
 具体的には、被害を被らないようにする「予防」や被害を最小限度に抑える「回復」の教育は、知識理解を中心としたもので、一般的には初年次教育、共通教育の中で講義やeラーニングなどで対応できる。情報の取り扱いを様々な場面で適切かつ適正に判断し、個人の行動基準を求めていく「加害防止」の教育は、不適切な情報の取り扱いがもたらす影響などを予測させ、自律的に判断できるようにするため、ケーススタディなどによるグループ学習を通じて、身近な問題として認識させることが必要であることから、専門教育の様々な授業において取り上げることを期待している。
 心にかかわる問題であることから学生だけでなく教員、職員一人ひとりに職能として求められる。とりわけ、教員は授業の中で情報の取り扱いについて話題として取り上げ、教員も参加して議論し、確認していくことが重要。真正情報の選別、剽窃、著作権、個人情報保護、発信・表現による文化摩擦、情報の不適切な管理など、情報の取り扱いに関する問題について常に関心を持ち、進んで研修や研究、または実践していることが望まれる。そのことから、大学は情報の取り扱いに関する研修をファカルティ・ディベロップメントの中で位置づけ、本協会などと連携して積極的に取り組まれることが望まれる。他方、学校法人は情報管理適正化への取り組みとして、構成員である教職員には就業規則、学生には学則の中で、不正な情報の取り扱いに対して制裁を規定し、加害防止に対する学校法人の社会的責任を表明しておく必要がある。以上のような方針の下に、学生が身に付けるべき情報倫理力の学習成果を「到達目標」として設定し、その上で学びの深さとしての「到達度」、教育・学習内容・方法の例示としての「指導上の要点」、到達度の達成を把握する手段としての「測定方法」を整理した。ガイドラインとして、四つの到達目標を掲げた。詳細は本協会のWebサイトに掲載。ここでは、四つの到達目標の概要を報告する。

【到達目標1】

「情報通信技術の有用性・利便性、ぜい弱性の仕組を説明できる」

 インターネット社会は記録が残り、個人が特定される仕組みを理解している点を重視。擬似体験によりサーバ上の記録を解析させて個人の特定が可能なことを理解させる。

【到達目標2】

「情報社会の光りと影を認識し、情報の内容を適切に判断して安全に利活用することができる」

 情報に信頼性・真鷹性を識別することの重要性を認識させる。真実・正確な情報、偽り・不正確な情報があることを事例を示し、偽り・不正確な情報を信用したことによる影響の大きさを事例研究させる。また、情報活用の長所と短所を見極め、安心・安全な情報行動をとれるよう、グループなどの事例研究を通じて理解させる。

【到達目標3】

「情報社会における被害防止、被害回復について理解し、取り組むことができる」

 ウイルス対策など必要最小減の予防と不用意な個人情報の提供を控えることとを理解させ、被害の拡大を防ぐ知識を持たせる。

【到達目標4】

「情報社会において他者の権利を尊重し、自律的に加害防止に取り組むことができる」

 情報を利用する姿勢として、知的財産権の侵害、不正アクセス、プライバシー侵害などを題材に、社会秩序の形成・維持の関与の仕方を自らの問題として捉えられるようグループ討議などで検討させる。情報発信で遵守すべき点、自己責任の範囲について理解させるため、実例をもとに個人の意図的な発信による被害や文化摩擦などをグループで討議させる。社会正義の視点から情報を取り扱う個人の配慮や遵守すべき事柄を事例研究などを通じて、規範として明文化されていない社会秩序を身に付けさせる。
 情報倫理活用力は、学生が卒業までに身に付けることを目指しているので、試験ではなく、学生自身による自己点検・評価によることを想定している。そこで、自己点検・評価を標準化、客観化するため、学習ポートフォリオのモデルを作成した。点検の水準は、「資料などを用いて説明できる」、「おおよそ知っている」、「学習したが自信がない」、「学習していない」の4段階とした。身に付けていない部分をWebサイトで大学として把握し、卒業までにeラーニングや対面による補習などの学びの場を別途設けて支援することが必要となる。今後、大学関係者から教育実践を経た意見を求め、情報倫理教育の質向上を目指し、改善に努めることにしている。今回のガイドラインを参考に情報倫理の教育を学内で徹底いただくことを要請する。

http://www.juce.jp/rinri-gakushiryoku/

4.情報セキュリティの点検システム

 大学は、教育・研究活動の持続的発展を支える基盤として、大学の情報資産を適切に管理し、情報の創造・発信拠点としての社会的責任を遂行する重要な責務を担っている。大学にとって、情報資産が持つ価値を認識し、適切に活用することが、教育・研究活動の成否を決することになる。情報セキュリティポリシーを策定・運用している加盟校は20年度で3割に留っており、情報資産の把握、危機管理対策への認識や取り組みが遅れていることが判明した。
 そこで、本協会としては、大学としての責任を明確化し、取り組み状況を体系的に把握した上で弱点の発見と改善を期すため、当面、必要と思われる情報セキュリティの自己点検・評価のチェックリストを作成した。情報資産の把握、組織的な対応、人的な対応、技術的・物理的な対応の四つの視点から、大学のガバナンスとして組織的に取り組めるよう項目を整理した。

「情報資産の把握」

 大学が保有の紙媒体を含むすべての情報を対象としており、情報資産の目録作成、情報資産の重要度、情報資産の管理・運用、リスク分析・対応を点検項目として設定した。

「組織的な対応」

 大学ガバナンスとしての取り組みとして、セキュリティ問題の意思決定、または企画・実行・評価・改善の面から対応できるように、運用体制、監査体制、情報セキュリティポリシー、対策基準、実施基準と制度の問題を中心に項目設定した。

「人的対応」

 制度、規程の裏付けとして、個人の行動面での取り組みを関連業者も含め、職務責任、機密保持、情報資産の利用と引き継ぎ、罰則規定、情報セキュリティ教育、事故対応などの行動指針を中心に項目設定した。

「技術的・物理的な対応」

 上記での対応が出きない技術的・物理的な部分を含め、ネットワーク、サーバ、クライアント、情報媒体の管理、情報施設・設備の管理として点検項目を設定した。
 情報管理の責任者が適切な取り組みに入れるよう項目ごとに点検の「ねらい」を付けて、点検の必要性を説明し、さらに項目について詳細な説明を付け、大学として「取り組むべき対策」を紹介した。また、関連資料又は情報として、関係機関の参考事例へ接続できるようにした。詳細は、本協会のWebサイトに掲載。

http://www.juce.jp/sec-check/

5.産学連携人材ニーズ交流会の実験

 次代を担う人材育成の負託に応えるためには、大学はもとより国、社会が一体となり、それぞれができる範囲で一致協力していく仕組み作りが急がれる。人材育成は、教育現場の教員と企業等とのオープンな意見交流の場が少なく、大学教育の目標と企業が求める目標とにミスマッチが生じてきているとのことから、情報を専門とする分野の人材育成について、産学連携による人材ニーズ交流会を以下のプログラムにより実験した。

社団法人 私立大学情報教育協会
産学連携人材ニーズ交流会の実験
(情報を専門とする分野)
 
開催挨拶 向殿 政男 会長 (私立大学情報教育協会)
 
産学連携人材ニーズ交流会の実験構想について
井端 正臣 事務局長(私立大学情報教育協会)
 
本協会が取りまとめた情報系分野の「学士力考察」について
大原 茂之 氏 (東海大学専門職大学院組み込み技術研究科長、教授)
 
紹 介「大学側からの情報提供」
  1. 学士課程(情報系分野)で身につけるべき学習成果の教育目標
2.
学習成果の目標に対する課題
3. 産業界への支援・要望
 
休 憩
 

紹 介「企業側からの情報提供」

  1.

企業の新入社員教育及び社内の人材育成プログラムの紹介

2.

新入社員(学部卒業生)に望む力

3.

情報系人材に期待する能力・要素

 

大学と産業界相互に質疑応答、意見交換、情報交換

 
まとめ、総括
 
閉 会

 3月5日に66大学92名、賛助会員26社54名、それに経済産業省3名、独立行政法人情報処理振興機構1名の150名が参集した。最初に、人材ニーズ交流会の実験構想の意義について、井端事務局長から人材育成の成否が国・社会の将来を決するという認識を大学、企業が共有する中で、大学、企業の役割分担を明確にし、問題点・課題の解決に向け、意見交流する場を持つことが重要。連携による試行プログラムとして、教員が企業の現場を知ることができるような教員のインターンシップ、学びの動機付などの生の体験情報、キャリアアップ教育の講座、学習成果の助言・評価、教育プログラム・教材の共同開発、実務者による教育支援などの教育環境の充実を掲げ、持続可能な大学教育の支援体制を開発することの重要性を説明。
 次いで、本協会でとりまとめた情報系教育の学士力の概要について東海大学専門職大学院の大原茂之教授より、大学の教員は企業の現場を知らないで授業しているので、学生に動機付や気づきを与えることができないことの指摘があった。
 引き続き、大学側からの情報提供として、5大学から、「ITの利活用や展開への気づきを与えてほしい。専門理論の実践力習得にインターンシップに協力してほしい。社会の新しい風を大学に取り入れるため、企業の経験豊かな人材を大学に送り込んでほしい。」企業側からは、「物を作った経験がなく中身に興味がない。IT全般の知識と専門知識の少しは深い見識を持たせてほしい。PBLの能力がないので新人研修ではチームでシステムを完成させることや、文章作成、プレゼンテーション、問題解決能力を教えている。専門分野の原理・原則を身につけてほしい。自律的な行動力、好奇心。プレッシャーにくじけてしまうので精神面の強さが課題、自分で論理的に考え、結論を出す能力の教育を手掛けてほしい。」との意見があった。
 双方、意見交流の結果、企業が求めているのは専門的なものだけではなく人間力を含めた力であることの意識を新たにした。企業から大学に最低限求められる知識を具体的に明示してほしい。企業でのOJTなどの研修内容を連携の中で学生にも体験させることが必要。モチベーションを持たせるために、企業現場の見学、第一線の担当者による体験話、学生だけでなく教員も企業現場を知る必要があるとのことであった。
 結果としては、意識の違いが見られたが、学生に動機づけを与えることが重要であることを確認できた。大学だけでは実現できない部分があるので、今後、双方、意見を出し合って企業へどのような支援を望むのか、企業は人間力の他にどのような専門能力をもった人材を求めるのか、どこまで支援できるのか、議論を詰める必要性を確認した。


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