平成31年3月5日(火) 13:00〜17:00
AP市ヶ谷 Learning Space 8階Aルーム
東京都千代田区5番町1-10 (JR・地下鉄各線「市ヶ谷駅」徒歩1分)
大学関係者 73大学 98名 (前年 69大学 114名)
企業関係者 32社 44名 (前年 24社 46名)
計 142名 (前年 24社 160名)
近未来には、IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどによる第4次産業革命が進展し、分野が融合して新たな社会的価値や経済的価値を生み出す様々な分野でのイノベーションが求められています。このような社会の変革に向けて大学教育はどのように対応していくべきでしょうか。そこで、今回は産業界から価値の創造に繋げられる人材育成の在り方について、指摘や提案をいただくとともに、オープンイノベーションによる価値の創造に向けた教育モデルの実現について意見を交換した。
1.開会挨拶
向殿 政男 氏(公益社団法人 私立大学情報教育協会会長)
2.情報提供
(1)価値を創り出せる人材の育成
小西 一有 氏(NPO法人CeFIL デジタルビジネス・イノベーションセンター 首席研究員)
価値創造をしていくには、「情報技術と現実を融合」して考えて取組む力が必要である。これまでは、問題解決することがイノベーションとして理解されてきたが、利用者側の立場に立って生活の豊かさや幸せ感をもたらす意味のあるイノベーションが必要であり、その背景として多様な経験をさせる中で多様な人々が有益となる価値創造が必要である。
(2)超スマート社会に求められる人材育成(産学連携による教育イノベーションの提案)
野村 典文 氏(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社ビジネス開発事業部長)
超スマート社会(Socety5.0)と言われる社会ではリアルな「もの」や「サービス」を「デジタル化」することで新しい事業価値が生み出され、文化、産業、人間のライフスタイルを一変させていくことが予測されている。そのような社会で求められるコンピテンシーの要素は、「データに基づく意思決定」、「ビジネスへの先端技術の適用」、「社内外の有識者とのコラボレーション」、「顧客体験のデザイン」である。その人材育成には、産学連携によるプラットフォームを設け、「企業の実データによる実践的授業」、「デザイン思考・アート思考を取り入れた大学・企業によるプログラムの開発」をバーチャルの場で実践する仕組みが必要となることから実践例を含む提案が紹介された。なお、産学連携の教育に資金をどう捻出するかが課題として指摘された。
(3)構想力・問題解決力の育成に向けた産学連携による分野横断PBL授業モデルの提案
大原 茂之 氏(公益社団法人 私立大学情報教育協会情報専門教育分科会主査)
オープンイノベーションに関与できる人材を育成するため、情報専門教育分科会で検討している分野横断型PBL授業について、起業学修を含む詳細モデルを提案した。イノベーションに関与できる教育を実現していくには、大学と社会が接続する「大社接続」という出口設計が必須であり、形式や組織のあり方にとらわれずに連携・接続する教育のオープンイノベーションが急がれる。SDGs(持続可能な開発目標)など答えが定まらない課題をテーマに、多分野の学生、留学生、教員、社会の有識者などを対象に、暗黙知を伝える教養教育とIoT空間を介して社会で起きている事象をリアルタイムに見せながら、情報や知識を新結合して、問題意識の気づきや価値創造の機会を提供する授業が望まれる。なお、学修過程で生じたアイデアなどの知的財産を管理するために知財検証機構を設置する。評価は、例えば、クラウドファンディングを通して、社会の反応を受けるが、成功・失敗が重要ではなく、結果を見直し、次に繋げる観点を評価ポイントとする。
3.全体討議
「価値創造ができる力の育成」について、大学と産業界がどのように連携・接続して取組むべきかについて、情報提供者を交えて以下の視点で意見交換し大学教育の転換について考察した。
(1)イノベーションに関与できる人材育成には、大学と社会が接続する「大社接続」という出口設計が必須となることについて
- 大社接続の考え方、必要性についてはその通りと思う。
- 産業界も人材教育に「大社接続」が必要と声を出すべきである。
- 期待する人材像を大学と企業で認識し、カリキュラムを共同開発する他に卒業後の処遇について外国に遅れを取らないような対策が必要。
- このような取り組みの先進例として、シンガポールマネジメント大学ではカリキュラムまで企業がかかわっている。企業も必要な資金を出して取り組むべき。
以上のような意見を踏まえて「大社接続」の考え方について意見を確認したところ、殆どの参加者から賛同が得られた。
(2)大学を越え企業、地域社会でネット上にPBLのプラットフォームを設け、新しい学びの場をつくることの必要性と可能性について
- 今までの授業のやり方では限界があることから、テストケースとして意義があると思う。
- 想定していないような個性の強い学生が出てくることを期待したい。
- アジャイル系のソフト開発現場では、このようなプラットフォームで世界の開発者と開発を行っている。時代がこのように変化していることを学生に体験させる、学ばせる意義は大きい。
- 大学の枠を超えた学びが期待できる。発展的に学ぶ意欲のある学生に時間や空間を超えた学びの場が提供できる。
- 全員でなく、希望する学生が参加し談論創発的な議論を通じてイノベーションが期待できる。
- 来年度ネット上で、自治体、卒業生、企業とこのような授業を計画している。
- コアカリが決まっている中で難しい面もあるが、単位とは別にこのよう形で意欲ある学生を支援することは意義があり重要なことと思う。
以上のような意見を踏まえて、「ネット上にPBLのプラットフォームを設ける新しい学びの場」について意見を確認したところ、殆どの参加者から賛同が得られた。
(3)学修活動を価値創造につなげる仕組みについて
- スタートアップをテーマにモデルを考えさせるのであれば、可能ではないか。企業も支援しやすい。
- SDGs(持続可能な開発目標)など答えが定まらない課題を考えさせることで、自分の新しいチャレンジに結びつける取り組みは効果があるのではないか
- SDGsのような社会貢献テーマだと起業も支援しやすい。
- 世界の難民支援や地域の課題解決に取り組むCBL(Community Based Learning)を行っているが、これも一つの方法である、多文化・共創に企業や学生を巻き込んでいくことで、課題解決型の価値創造が期待できる。
- クラウドファンディングなどで失敗を経験させ、そこから学びを高めていくことが価値創造に繋がる。
以上のような意見を踏まえて、「学修活動を価値創造につなげる仕組みの必要性」について意見を確認したところ、殆どの参加者から賛同が得られた。
4.会場の風景
話題提供 全体討議
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